訪問介護における他職種との連携業務は、サービス提供責任者(以下サ責)が窓口となります。
この連携業務の良し悪しによって利用者の生活の質は大きく左右されるため、サ責の腕が試される仕事のひとつと言えるでしょう。
しかし、いざ実践するとなると
- どう連携すれば良いか分からない…
- そもそも連携ってなぜ必要なの?
- ケアマネや医療職との連携に引け目を感じてしまう…
このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか?
「連携の大切さ」は良く耳にするものの詳しく教えてもらう機会って少ないですよね。
そこで今回は、サ責の目線から連携の“必要性”や“実践方法”をわかりやすく解説します。

他職種との連携は、省令により定められている訪問介護の責務です。
そのため「単に相手の顔や名前を知っている」だけでは責務を果たしていると言えません。
本記事を読むことで、円滑な他職種との連携方法がすべて分かります。
訪問介護と他職種の連携方法
訪問介護と他職種の連携は、「ケアマネを介す」あるいは「サービス担当者会議」のどちらかで行います。
ただしサービス担当者会議は頻回に開催されるものではないため、実際にはケアマネを介した連携手法がほとんどです。
このようにケアマネを中心とした情報共有や意見交換を行うことで連携を図ります。
また訪問介護と他職種が直接やりとりをしてはいけないのか?というと、そんなことはありません。
例えばターミナル期の利用者を想像してみてください。この際、ケアマネを通じて医療職に報告していたらタイムラグが発生してしまいますよね。
ターミナルケアに限らず医療ニーズが高い利用者はリアルタイムの連携が求められます。
したがって、このようなケースではサ責またはヘルパーから直接、医療職へ連絡することが望ましいと言えるでしょう。

ちなみに直接、他職種に連絡してやりとりをすることがあるなら、あらかじめケアマネに了承を得ておく、もしくはサービス担当者会議で連携方法を定めておくと良いですよ。
他職種との連携は「それぞれの専門性を補完し合える」
そもそも、訪問介護と他職種の連携はなぜ必要なのでしょうか?
もちろん省令で定められていることも理由のひとつ。
ですがもっとも大きな理由は「それぞれの専門性を補完し合える」ことにあります。
例えば訪問介護は利用者の生活に密接したサービスですので、「自宅での生活状況」や「心身の変化」といった他職種が持っていない情報を得やすいですよね。
対して医師・看護であれば医学的所見にもとづいた利用者の情報を持っているでしょう。
このように各職種の専門性から得られる情報は、それぞれ異なります。
したがって職種間で情報共有することで、お互いが持っていない専門性を補完し合えるというわけです。
そしてこの積み重ねが結果的に、医療・介護の継ぎ目がないサービス提供へとつながっていくのです。
他職種との連携で押さえておくべき2つの基本
他職種と連携するにあたって、サ責に知っておいてほしいことが2つあります。
この2つはスムーズな連携を図るための基本となるので必ず押さえてください。
- 他職種それぞれの役割を理解する
- ヘルパーへの働きかけ
基本① 他職種それぞれの役割を理解する
まずサ責は前提知識として「他職種それぞれの役割」を理解しておかなければなりません。
それにより相手の立場に立った“訪問介護に期待されている情報”の提供が可能となります。
下記に、訪問介護と連携が多い職種をまとめました。
ケアマネジャー | 介護保険サービスと利用者のつなぐ役割。ケアプランの作成やサービス事業者との調整など総合的なケアマネジメントを行う。 |
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医師 | 医療のスペシャリスト。診断に基づく治療方針の決定、健康管理および指導を行う。 |
訪問看護 | 訪問看護ステーションや病院・診療所から派遣された看護師が、療養上のサポートや診療の補助、医療処置を行う。 なおサービス利用には医師の指示書が必要。 |
訪問リハビリテーション | 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が自宅に訪問し、利用者の心身機能の維持向上・日常生活の自立を図るために理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行う。
なおサービス利用には医師の指示書が必要。 |
薬剤師 | 主に居宅療養管理指導サービスにより薬剤師が自宅に訪問。 医師の指示に基づいて、処方薬の管理方法や服薬指導を行う。 |
管理栄養士 | 主に居宅療養管理指導サービスにより管理栄養士が自宅に訪問。 医師の指示に基づいて、嚥下機能に配慮した食事指導や栄養管理、食事相談を行う。 |
歯科衛生士 | 主に居宅療養管理指導サービスにより歯科衛生士が自宅に訪問。 口腔ケアや歯の磨き方、義歯の手入れ方法のアドバイス、その他、嚥下機能の維持向上の指導を行う。 |
福祉用具支援専門員 | 福祉用具貸与・販売事業所に所属している福祉用具のスペシャリスト。 福祉用具に関する相談、選定方法・使用方法の指導、用具の点検などを行う |
デイサービス | 施設への送迎、食事・入浴・排泄介助、レクリエーション、機能訓練などを行う通所サービス。 自宅とは違った利用者の一面が見られることも。 |
通院が難しい利用者に対して、医師・歯科医師・歯科衛生士・看護師・保健師・薬剤師・管理栄養士が自宅に訪問し、療養上の管理および指導を行う介護保険サービスのこと。
基本② ヘルパーへの働きかけ
次にサ責は、他職種との連携を意識した“ヘルパーへの働きかけ”を行う必要があります。
具体的には
- 利用者ごとの専門職チームの構成と、それぞれの役割を伝える
- 他職種から得た情報の共有と、明確な指示出し
この2点を行いましょう。
『連携業務を担うサ責』と『サービス提供を担うヘルパー』の双方が協力しあうことで、はじめて他職種との連携は成り立ちます。
上記のとおりヘルパー⇔サ責⇔ケアマネ⇔他職種の流れで連携は展開されるため、「ヘルパーから報告が上がってこない」などの状況は避けなければなりません。
そこで重要になるのは「その利用者に、どの職種が、どのような役割をもって支援しているのか」をヘルパーに知ってもらうことです。
さらにその上で
- 医師から○○と言われているので、○○に注意してサービスを提供してください。
- 訪問看護に○○を報告したいので、○○を観察してください。
というように他職種から得た情報をサービスに反映する、あるいは他職種へ提供したい情報を得れるような指示出しを行いましょう。

ヘルパーは単独で仕事をするため孤独を感じやすいもの。だからこそヘルパー自身も利用者を支えるチームの一員であることを自覚させる働きかけが大切です。
チームケアの意識をもったヘルパーからの報告はより良いものに変わっていきますよ。
サ責に求められる他職種への「報連相スキル」
サ責には、他職種と連携するに際して「報告・連絡・相談のスキル」が求められます。
他職種との連携は、結局のところ人と人との関係です。
相手の立場を考えた“伝え方”ができなければ円滑な連携は図れません。
ケアマネへの「報連相スキル」
先述のとおり、訪問介護と他職種の連携はケアマネを経由して行うことがほとんどです。
しかし、それゆえにケアマネとの人間関係に悩んでしまうサ責は多いです。
例えば
- ケアマネに報告しても反応が悪い…
- どこまでケアマネに報告すれば良いか分からない…
- ケアマネと話すといつも緊張してしまう…
こんな声をよく耳にします。
サ責としては優先的にケアマネへの報告・連絡・相談スキルを身に着けておくと良いでしょう。
※下記にケアマネへの「報連相の仕方」を実践的に解説していますので参考にしてください。
>>【ダメなサ責からの脱却】ケアマネへの「報告・連絡・相談」の仕方を5step解説
医療職への「報連相スキル」
訪問看護などの医療職へ報告・連絡・相談を行うのは、医療ニーズの高い利用者の状態変化時が想定されます。
例えば『利用者が強い腹痛を訴えている』など急を要する状況で、直接医療職へ連絡をして指示を仰ぎます。
この際、重要なことは“相手が判断しやすくなる情報”を提供できるかどうかです。
単に「利用者がお腹が痛いと言っている」と伝えても医療職は判断ができません。
例えば
- 痛みはいつからか?
- どの程度の痛みなのか?
- 痛みの質は?
- 腹部のどのあたりが痛いのか?
- 排便はあるのか?
など、判断材料となる根拠を示した報連相が求められます。
※下記でより詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
>>【決定版】訪問介護の緊急時対応マニュアル【あわてず急変対応ができる】
さいごに
今回は訪問介護と他職種の連携方法について解説しました。
他職種との円滑な連携は、良好な人間関係の延長上にあるものです。
ぜひ本記事を参考に日々の業務に活かしてくださいね。
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