障害福祉サービスの中で、重度訪問介護と居宅介護はともに訪問系のサービスに位置付けられます。
しかしながら、両者にどのような違いがあるのか分かりにくく、使い分けて活用できていない事業所があるのも事実です。

そこで今回は、重度訪問介護と居宅介護がどのように違うのか?3つのポイントに分けて解説していきます。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
重度訪問介護と居宅介護の違いとは?3つのポイントに分けて解説!
冒頭でも触れたとおり、重度訪問介護と居宅介護は同じ障害福祉サービス下の訪問系サービスになります。
両者の違いは大別すると3つのポイントに分けることができます。
それは
- 対象者の違い
- 支援内容の違い
- サービス単価の違い
です。それぞれを見ていきましょう!
① 重度訪問介護と居宅介護の「対象者の違い」とは?
ここでは、どんな人がそれぞれのサービスを利用できるのかについて見ていきます。
居宅介護の対象者
居宅介護は、障害支援区分1〜6まで全ての人が利用できるサービスです。
身体障害、知的障害、精神障害の種類に関わらず、区分1以上あれば利用することが可能という間口の広いサービスとなっています。
重度訪問介護の対象者
対して、重度訪問介護は区分4〜6の人のみ利用できるサービスです。
そこにはさらに条件があり
「重度の肢体不自由者または重度の知的障害、もしくは精神障害により行動上著しい困難を有する者であって、常時介護を要する障害者」
が対象者の定義となっています。
この定義の具体的な解釈として、以下の1か2に当てはまる人になります。
- 二肢以上に麻痺等がある者であって、障害支援区分の認定調査項目のうち「歩行」、「移乗」、「排尿」、「排便」のいずれもが「支援が不要」以外に認定されて いる者
- 障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上である者
重度訪問介護の対象者は、「常時対応が必要な方」である点が居宅介護との大きな違いです。
②重度訪問介護と居宅介護の「支援内容の違い」とは?
次に、それぞれのサービスにおける支援内容がどのように違うのかについて見ていきます。
どちらのサービスも、利用者のご自宅に訪問し、必要な身体介護や家事援助を行うことが基本になります。
居宅介護の支援内容
居宅介護は、その内容によって4種類に分けられます。
- 身体介護
- 家事援助
- 通院等介助
- 通院等乗降介助
(①と②は制度上分けられていますが、実態としては同じ時間の中でどちらも行われていることも多いです。)
内容は以下のようなことが挙げられています。
- 入浴、排せつ及び食事等の介護
- 調理、洗濯及び掃除等の家事
- 生活等に関する相談及び助言
- その他生活全般にわたる援助(※通院等介助、通院等乗降介助を含む)
重度訪問介護の支援内容
対して、
重度訪問介護は、長時間の総合的な支援を想定しているサービスなので、居宅介護のような細かい分類はありません。
内容は以下のようになっています。
- 入浴、排せつ及び食事等の介護
- 調理、洗濯及び掃除等の家事
- その他生活全般にわたる援助
- 外出時における移動中の介護
※日常生活に生じる様々な介護の事態に対応するための見守り等の支援を含む。
重度訪問介護と居宅介護の支援内容上の具体的な3つの違い
ここで、居宅介護と重度訪問介護の違いを3つ整理します。
Ⅰ.「生活等に関する相談及び助言」が重度訪問介護にはない
重度訪問介護は、居宅介護と異なり、利用者のご自宅に滞在する時間が基本的に長いサービスです。
短時間の居宅介護では見えないような暮らしの文化の中に介入するサービスのため
利用者の暮らし全体を変化させてしまいかねない相談や助言については明記されていません。
Ⅱ. 重度訪問介護には「外出時における移動中の介護」が組み込まれている
生活全体を総合的に支えるサービスなので、自宅だけでなく、買い物や役所への同行、カラオケや映画等の余暇の外出も支援内容に盛り込まれています。この場合別途移動加算がつけられます。
Ⅲ.重度訪問介護には「見守り等の支援」が含まれる
正確には「日常生活に生じる様々な介護の事態に対応するための見守り等の支援」と言います。
重度訪問介護は、常に介護が必要な重い障害がある方であっても、在宅での生活が続けられるために作られた制度です。
そのため、比較的長時間にわたり総合的かつ断続的にサービス提供が提供されるために、その場で見守りをする時間も支援の時間として組み込まれています。
③重度訪問介護と居宅介護の「サービス単価の違い」とは?
最後に、それぞれのサービスにおける報酬単価の違いについて説明します。
大きな特徴は、重度訪問介護は短時間利用の単価が居宅介護と比べて圧倒的に低くなっている点です。
重度訪問介護の単価設定
重度訪問介護は、サービスの支給決定の段階から1日3時間超を前提に設計されています。
算定できる最低時間も1時間未満〜となっています。
つまり、長時間サービスを提供することを前提に報酬単価が組まれており、単価設定は低いのが特徴です。
算定できる最低時間も1時間未満〜となっています。
居宅介護の単価設定
対して居宅介護の場合、30分〜算定可能となっており、基本的に30分〜90分の短時間集中型のサービスとなっています。
単価設定は高いことが特徴で、これは事業所側が1日に何人もの利用者に訪問することができるような制度設計になっているからです。
重度訪問介護と居宅介護は同日に併用はできない
同じ利用者に対して、同じ事業所が同じ日に重度訪問介護と居宅介護を併用することはできないというルールもあります。
例えば、朝と夜にそれぞれ1時間、日中6時間ほど見守りを含めた支援が必要なケースの場合に、朝夜だけ居宅、日中は重度訪問介護を使用することはできません。
この場合は次のような方法になります。
- 朝夜の時間は居宅介護を利用し、日中の時間を生活介護等のデイサービスを利用する
- 朝夜の時間も重度訪問介護で算定し、日中と合わせて8時間のサービス算定をする
あるいは、別事業所にお願いするパターンもありえます。

このようなルールと単価の違いのため、長時間の支援が必要なニーズの場合に重度訪問介護サービス、短時間のサービスでニーズを満たせる場合は居宅介護を使用することが基本です。
まとめ
今回は重度訪問介護と居宅介護の違いを3つのポイントに分けて解説しました。
重度訪問介護と居宅介護は、支援内容として重なる部分もあれば、はっきりと異なる部分も多々あります。
対象となる利用者の状態や暮らしに合わせて、適切にサービスを使い分けることは非常に大切ですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。少しでも参考になれば幸いです。