
今回は高齢者によくみられる病気の一つ「認知症」について訪問介護で気を付けたいポイントを解説します!
高齢者によくみられる病気のひとつ「認知症」とは?
認知症とは「脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態」を指します。(厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」より引用)

厚生労働省の発表によれば2012年時点での認知症患者数は462万人、65歳以上の高齢者の7人に1人が認知症と推計されています。
認知症の種類と症状
認知症は下記の5つに大きく分けられています。
- アルツハイマー型認知症
- レビー小体型型認知症
- 脳血管型認知症
- 前頭側頭型認知症
- 正常圧水頭症
それぞれ見ていきましょう!
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は脳全体が委縮することで起こります。脳の中の記憶を担当している「海馬」と言う部分から始まり脳全体に委縮が広がっていきます。
症状の進行は比較的穏やかに進みます。
アルツハイマー型認知症の症状として認知症になると必ず起きる症状と言う意味の「中核症状」と、進行すると二次的に起きて来る「周辺症状」があります。
周辺症状は認知症がすすむと起きやすい症状ではありますが、本人の体調や、介護環境、精神状態によっても変わってくるため、症状があるからと言って必ずしも認知症が悪化したとは限りません。
基本的には症状を遅らせる内服や日常でのケアを行っていきます。
中核症状
記憶障害や問題解決能力の障害、見当識障害など認知機能障害が現れます。
具体的には下記のようなことが起こります
- 話している言葉や言葉の意味が理解できない
- 新しい事を記憶できない
- 何度も同じことを言う
- 時間や場所、自分の置かれている状況が分からない
- 着替える、お風呂に入るなどの段取りや体を洗うためにはどうしたら良いのかなどが分からない
周辺症状
- 1人で歩き回る徘徊
- 誰かが入ってきて物を盗られたなどの幻覚、妄想
- 意欲低下
- 怒りっぽくなり暴言、暴力など
- 食べ物ではないものを食べてしまう異食行動
- 不眠などの睡眠障害
- 抑うつ、不安、焦りなど
などが現れます。
レビー小体型認知症
レビー小体と言われる特殊なたんぱく質が脳の神経細胞を壊すことで認知症症状がます。
レビー小体型認知症には「認知機能障害」「幻視」「パーキンソン症状」と言う特徴的な症状があります。
認知機能障害
話している相手が誰なのか分からなくなる、集中力の低下、計画や実行ができない。
幻視
「小人が山から自分を呼んでいた」「電柱の陰にこどもが居た」「小さいこどもたちが大勢遊びに来た」「虫が天井を這っていた」など実際に経験したかのような話をする。
パーキンソン症状
表情が硬い、バランスを崩しやすい、動きがぎこちない、手足が震える、小刻みに歩く。
その他
寝汗をかく、立ち眩みがする、眠っているにも関わらず大きな声で怒鳴ったり奇声を発する、抗精神病薬過敏症など。
このような症状は日によって良い時と悪い時があり、それを繰り返しながら症状が進行して行く事も特徴的です。
レビー小体型認知症には根本的に治療する方法は無く、治療で症状を遅らせる事が目的となります。
脳血管型認知症
脳梗塞、脳出血など脳の病気によって認知症症状が出るタイプの認知症です。動脈硬化が背景にあり男性に多い認知症だとされています。
障害を受けた部分以外は正常なため、まだらに症状がでるのが特徴的です。
初期症状は、もの忘れから始まり認知機能障害や意欲の低下、せん妄、感情のコントロールができない等が現れます。また運動障害や失語なども現れることがあります。
原因となっている病気の治療をすれば症状が落ち着きます。ただし時間が経過し過ぎている場合は治療で症状が良くならない場合もあります。
前頭側頭型認知症
若年性認知症の事で別名ピック病とも言い難病指定になっています。
前頭葉や側頭葉の神経細胞が少しずつ委縮して認知症症状が出ます。原因ははっきりとは分かっていません。
人格や理性、感情に急激な変化があり自分では抑えられなくなります。
信号無視や痴漢、万引きなど社会的に問題のある行動がきっかけで発見されることがありますが、精神疾患と間違われる事もあります。
若いだけに体力があり活動量も多いため介護者の負担が大きくなり、在宅でみる事が困難になってしまう事もあります。
主な症状としては「脱抑制」と「常同的行動」が特徴的です。
脱抑制とは
暴言や暴力、卑猥な発言、身だしなみに無関心、不潔、万引きなどが現れます。
常同的行動とは
毎日同じ時間に同じ行動をする、例えば同じ時間に同じコースを散歩したり、同じものばかり食べたり、同じ言葉を発したりします。
正常圧水頭症
正常圧水頭症は脳内を循環する脳脊髄液が、通常より多く頭蓋骨の内側に溜まることで脳機能に障害をきたしている状態を指します。
くも膜下出血などが原因で起きる「続発性」と原因不明の「持発性」の正常圧水頭症があります。
主な症状は「歩行障害」、「認知機能の低下」、「失禁」が3大徴候と言われています。
歩行障害
小股でよちよち歩くような歩行、Uターンでふらつく、歩き出したら止まることができないなど
認知機能の低下
常にボーっとしている、呼びかけに反応が鈍い、意欲低下など
失禁
尿意を我慢できず、頻回な状態

三大徴候と言われているものの、どの症状も加齢に伴って現れるものだったりします。
なので「高齢になるとそんなもんだから」と正常圧水頭症は見落とされがちで、病状が進行してから発覚することがあります。日々の観察が重要ですね・・・
「認知症」について訪問介護で気を付けたいポイント
認知症について解説しましたが、そんな高齢者に対してヘルパーが介護する際に日常生活で気を付けるポイントは下記のとおりです。
- 残存機能の維持のため、本人の能力を生かした介助を行う。
- 家族への認知症の理解を深める。
- 会話を積極的に行う。
- 利用者の行動や言動を否定しない、またはこちらの都合を押し付けない。
- 利用者がどのタイプの認知症なのかを理解しておく。
- 内服薬や張り薬の種類と副作用について主治医に聞いておく。
- 内服薬の飲み忘れを防ぐために服薬確認を行う。
こういった部分を意識しながら訪問介護サービスを提供していきましょう!
認知症とうまく付き合っていくための具体的対応例
「言った」「言わない」の論争は意味がない
「言った」「言わない」「聞いていない」などの論争をしても、本人の記憶から欠けてしまっている記憶なので話がまとまる事はありませんし、本人は険しい表情と強い口調で言われた事で興奮して手をあげてしまう可能性もあります。
穏やかな口調で話し、一緒にやるようにしましょう。
ガスのつけっぱなし・水の出しっぱなし
一人暮らしの場合はヘルパーや家族の見守りつつ一緒に料理をしてもらいましょう。
また必要な量の食事を作って、目に見える所に置いておけば、本人がひとりで料理をする必要がなくなります。
同じものを買う、しまい込む
同じものを買う場合、そのほとんどが日用品の場合が多いです。
金銭管理を家族や社会福祉協議会が行っているサービスを利用することで不要な高額商品を買ってしまうなどのトラブルが避けられます。
しまい込みは自由に探させてあげましょう。探している途中で興味が他に移る場合もあります。
また途中で行動を遮断すると興奮してしまう場合があります。通帳や重要な書類、カード類は本人としっかり話をしたうえで家族に管理してもらうことが良いです。
自宅に居るのに帰ろうとする、外出しようとする
「帰る前にお茶でも飲んで行ってください」「お父さんが帰ってきたら送っていくので、それまでお話ししましょう」など話を合わせながら興味を違う方に持っていく。
それで納得しない場合は、家族が付き添って近所を1周する事で落ち着く場合もあります。
食事を食べた後に「ご飯を食べていない」と主張する
何度も繰り返し主張が続くようならば軽いおやつで対応しましょう。
食べ物以外の物を食べようとする
石鹸やチューブタイプの軟膏、包帯など、手に取れる物は食べ物と勘違いして口に入れてしまいます。
食べてはいけないものは手の届かない、目に付かない場所で必要があれば鍵のかかる所に収納しましょう。
手が届かなくても見える場所では、なにかしらの台を使って取ろうとして転んでしまうケースもありますので、目に付かない場所を選びましょう。
トイレ以外で排泄してしまう
目の高さで大きくトイレである事を表示しましょう。年齢によっては「トイレ」よりも「お手洗い」や「便所」がなじみのある言葉だったりします。
徘徊について
名前・住所・連絡先を書いた布を衣服に縫い付けておきましょう。紙やポケットに入れると本人が取り出して捨ててしまう可能性もあります。
さいごに
今回は高齢者によくみられる疾患である「認知症」について解説しました。
認知症の方との関りは介護者にとっても忍耐が必要になります。
話が食い違うたびに腹を立てていては介護者の負担が大きくなりますし、本人もその世界の中で実際に起きた事や感じた事なので論争しても平行線になるだけです。
話を受け入れて穏やかに対応する、一緒に行動する事で関わり合いのポイントが見えて楽になります。
介護は長い時間を要しますので相手を受け入れで楽しく介護時間を過ごしましょう。
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