介護の多くは食事や排泄など日常生活の支援ですが、ベッド上の体位変換、車いすやトイレへの移乗といった重労働の介助に関わることも多く、介護に携わる方の多くが腰痛に悩まされています。
腰痛ベルトやコルセットなどのサポーターをしながら介護をしたり、腰痛悪化により介護を続けられなる場合もあります。介護従事者の8割が腰痛などの身体症状を経験したことがあるという調査結果も出ています。

そこで今回は腰痛を防ぐための方法として、今回はボディメカニクスの理論に基づいた車いすへの移乗方法についてお伝えします。
ボディメカニクスとは?
ボディメカニクスとは人間の体の動き(ボディ)に力学(メカニズム)の原理を応用し、より小さな力で、安全に、効率的に介助を行う技術です。
ボディメカニクスは車いすの移乗に限らず、ベッド上での体位変換の介助やトイレ介助などの重労働な介助にも応用できます。
ボディメカニクスを利用したベッドから車いすへの移乗方法
ボディメカニクスは利用者・介助者ともに負担のかからない介助方法になりますので、ぜひ参考にしてください。
ではさっそくベッドから車いすへの移乗方法をボディメカニクスの理論に基づいて解説していきます!
支持基底面を広げる
介助者の足を広げることで、倒れにくくなります。
介助者の足は、利用者の足底と移乗先の車いすを挟むように広げ、介助者の車いす側の足先は車いす側に向けましょう。
重心を近づける
お互いの重心が近いと、より小さな力で移乗が出来ます。
利用者がお辞儀をするように身体を前方に倒し、介助者は一側の手を利用者の腋窩(脇)から肩甲骨へ、もう一側を臀部(お尻)へ回します。
介助者が近づくのではなく、利用者をお辞儀するように前に倒すことで、利用者の重心を前へ移動させます。
もし、利用者の意思疎通ができ、かつ上肢の機能障害(骨折や麻痺など)が少ない場合は、利用者の腕を介助者の首や腰に回してもらうと、お互いの重心が近くなり、より楽に移乗することができます。
大きな筋を使う
大きな筋肉とは、大胸筋・広背筋・腹直筋・脊柱起立筋などがあります。
車いすへの移乗時は、特に太ももや裏の筋肉(大腿四頭筋、大殿筋)を使うよう意識します。
介助者の腰に利用者の重心を乗せるようイメージすると、これらの筋肉を使用できます。
介助者の指や腕に頼ると介助者の腰にも負担がかかりますし、利用者のズボンを掴み引っ張り上げようとしてしまいます。
ズボンを引き上げられると、利用者にとって大きな不快感を与えてしまいますので、注意しましょう。
重心を低くする
四股(しこ)のように膝を曲げ、腰を落とすことで、倒れにくくなります。
また、重心を低くすることで介助者の腰に利用者の重心を乗せやすくなり、大きな筋肉を使いやすくなります。
水平に動かす
上へ持ち上げようとすると、重力に逆らう形になり腰に負担がかかります。水平に滑らせるように移動することで負担が軽減します。
水平移動するためには、車いすのひじ掛けが邪魔になるので、外せるもしくは跳ね上げ式がおすすめです。
車いすの座面よりも少しベッドを高くすると、下に滑り落ちる形になるのでより楽に動かせます。車いすへ移乗する前に、あらかじめ利用者さんの臀部を移乗する方向へ向けるように座り直しの介助をしましょう。
移乗する距離が短くなり、介助が楽になります。
介助をさらに楽にするポイント
ボディメカニクスの理論をもとにしたベッドから車いすへの移乗を解説しましたが、他にも実践できる介助を楽にするポイントがあります。
利用者へ声掛けしよう
車いすへ移乗する際は「車いすに移りますよ」「せーの」「いちにのさん」などといった声掛けを忘れないようにしましょう。声掛けがあると、利用者にとって大きな安心となりますし、利用者の協力動作が得られやすくなります。
福祉用具を活用しよう
車いすは、ひじ掛けが外せるか跳ね上げができるもの、脚部が外せるもの(スイングアウト)を選びましょう。ひじ掛けを外せると、移乗時に水平移動が出来ます。
脚部が外せると、移乗先に十分に近づくことができますし、介助者や利用者の足にひっかからず、より安全に移乗介助が出来ます。
車いすの他にも、介助者や利用者の腰につける介助ベルトや、座ったままもしくは寝たきりの利用者でも使える移乗ボードなど、介助支援用の福祉用具は数多くあります。
利用者の身体機能に合ったものや、介助者にとって使いやすい福祉用具を選びましょう。
まとめ
今回はボディメカニクス理論に基づいた車イスの移乗方法解説しました。
ポイントは
- 支持基底面を広げる
- 重心を近づける
- 大きな筋を使う
- 重心を低くする
- 水平に動かす
でした。
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