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喀痰吸引を安易に考えていませんか?喀痰吸引等研修の内容と取得するメリットを解説。

喀痰吸引を安易に考えていませんか?

訪問介護では施設介護に比べると喀痰吸引の現場に出くわすことは少ないかもしれませんが、在宅介護でも、例えばターミナルケア(看取りケア)の利用者のケアでは喀痰吸引が必要になる場合が多くあります。

その時、在宅介護では訪問看護や家族によって喀痰吸引を行うケースが多く、その様子を見ていると「結構簡単そうだなー」と思われたヘルパーさんもいるのではないでしょうか?

喀痰吸引は医行為として、本来は医師や看護師などの免許を持ったものでないと行うことは出来ません。

医行為というのは、医師等の免許を持つ者以外の者が行うと生命又は身体に危険が及ぶ可能性のある医療的な行為を言います。

 

見様見真似で行うものではない

認定特定行為業務従事者の認定を受けていないヘルパーさんが、喀痰吸引を見様見真似で行うことは絶対に止めましょう。

また、自分自身が認定を受けていても事業所も届出を行なっているか確認して下さい。

傍目には吸引チューブを口腔や鼻腔から入れて、吸引圧を掛けて痰を引いているだけに見えるかもしれません。が、実際は細かく様々な事を観察しています。理由は、吸引することで負っているリスクを下げる為です。

喀痰吸引の研修に行ったヘルパーさんが周りにいる人はその人でも良いですし、いなければ看護職にでも良いですが、何の知識もない人が喀痰吸引を行うことで遭遇する最悪の事態を聞いてみて下さい。衝撃の答えが返って来ると思います。

 

喀痰吸引を見様見真似で行うリスク

喀痰吸引を見様見真似で行うリスクとは、何でしょうか?

絶対に覚えておいて頂きたいことですが、喀痰吸引の最悪のリスクは吸引された人が亡くなることです。チューブで少し吸っただけで亡くなるって?!と思われたかもしれませんね。

 

人体には、迷走神経というはっきりと何処を通っているか分からない神経があり、副交感神経もその一つです。そして副交感神経が心臓に対して負っているのは拍動を抑制することです。

 

吸引チューブを奥まで入れすぎて、チューブで副交感神経を刺激したことによる迷走神経反射を引き起こすと、チアノーゼが一気に出て、心臓が止まります。迷走神経反射によるCPAを防ぐ、又は蘇生させるには心臓マッサージや気道の確保に加えて医療職の静脈注射による薬物投与などが必要です。そして、迷走神経反射から薬物投与までの時間が開き過ぎて間に合わない為、在宅や施設で吸引を行なっており、迷走神経反射を引き起こすとまず亡くなると思って差し支えありません。

 

 

もう一つの亡くなるリスクが無気肺です。喀痰吸引のチューブは圧をかけて痰を吸引しています。吸引圧を掛けて痰を引くときは、痰だけでなく同時に肺の空気も吸っています。

無気肺は、吸引だけが原因になるものではありませんが、吸引圧が高過ぎたり、吸い続けたりすると肺の空気が無くなることで、収縮することでもなり得る状態です。

無気肺が広範囲且つ急激に起こった場合は、呼吸困難やショック症状によって生命に危害が及ぶこともあります。

 

 

亡くなる以外のリスクは感染症にかかることです。喉より奥は無菌に近い状態の為チューブを奥まで入れ過ぎると、それによる感染症が起こります。気管切開の喀痰吸引に無菌の清潔操作が必要なのはこれが理由です。

 

生命や身体への影響以外の影響とは?

上でご説明した通り、喀痰吸引は医行為に指定されています。

免許を持つものか講習を修了したもの以外が生業として喀痰吸引を行うと、医師法違反(無資格医業)に問われます

免許を持っていない・講習を修了していないものに吸引を指示した者も同様に無資格医業で医師法違反になります。医師であっても無資格者に指示すれば医師法違反に問われます。たかが痰の吸引と思っている行為が違法行為ということですね。

最近の例をいうと新潟の施設の施設長である医師が、講習を修了していない介護職に痰の吸引や胃瘻を指示して、無資格医業で送検されています。それも3年程度前のことを今指摘されています。

 

医師・看護師・介護福祉士などの資格者の場合は、信用失墜行為の禁止に関する条項に触れて資格が剥奪される可能性もある程の重大な行為であることを忘れてはいけません。

 

このように喀痰吸引は思っていた以上に大変な行為であることが分かりますね。喀痰吸引を専門職として安全にしっかりとした知識のもと行うためには喀痰吸引等研修を修了する必要があります。

では次は喀痰吸引等研修ではどのような事を学ぶのかを見ていきましょう!

 

喀痰吸引等研修で学ぶこと

認定特定行為業務従事者の研修の内容は、口腔からの吸引・鼻腔からの吸引・気管切開の吸引・経鼻経管栄養・胃瘻です。第1から3号認定まで類型があり、1と2は不特定多数の者に行えます。その違いは、認定の行為が全てか否かです。第3号は特定の者にだけ行えます。

 

この研修で扱う行為は、いずれも生命又は身体に危害が及ぶ恐れのある行為で、生命には至らなくても感染症にかかるという事態も起こり得ます

その為、喀痰吸引等研修の内容は多岐に及びます。

 

人体の作りと観察

 

喀痰吸引等研修では、空気の流れや二酸化炭素の交換の仕組みなど人体の作りを学びます。

これは、人体の作りを理解していないと、吸引や胃瘻・経鼻経管栄養で発生するリスクと、観察しなければならない理由を理解できない為です。同時に人工呼吸器についても習います。

 

 

例えば、

・たかが吐き気と侮ると吐瀉物が詰まったことによる窒息や、横隔膜の刺激による肺の圧迫による呼吸困難により、酸素飽和度が急落し最悪の場合は亡くなる可能性があります。
・鼻腔管の固定が外れているのに、少しくらい外れているぐらいと思って注入すると最悪の場合は亡くなる可能性があります。

理由は、胃に注入物が流れず、肺に入ることによる窒息です。

 

この2例だけでなく観察項目は多岐に渡ります。

  • 顔色と口唇色にチアノーゼが無いか
  • 口腔内と鼻腔内に傷や出血は無いか
  • 嘔気と嘔吐は無いか
  • 鼻腔管はしっかり固定されているか、又は上がってきていないか
  • 体位はずれていないか
  • チューブに破損はないか
  • 腹部の膨満感は無いか
  • 胃瘻の周囲に発赤、出血、びらん、不良肉芽は無いか

 

というのが対象者自体に関する項目です。

これ以外にも、本人の注入食か・吸引圧は適切な値で設定されているか・滴下は早すぎないか・手洗いと消毒は適切なタイミングで行われているかなどは最低限必要な観察です。

観察項目とその理由が人体の作りから分かっていると、逆もまた説明がつくので、これは非常に大事な内容です。

 

 

忘れがちですが利用者への説明と同意と、大人だけで無く子供の場合にも触れられます。

清潔と不潔の取り扱い、消毒と滅菌の違い

清潔と不潔の取り扱い、消毒と滅菌の違いも学びます。これは、感染症の予防のためで手洗いから完全な清潔操作に至るまで、幅広いです。

手洗いなども薬品にブラックライトでどれくらい残留しているかを実験するなど本格的です。気管切開の吸引の場合は絶対に習得していないといけません。理由は、気管切開をしている場所は、無菌に近い場所であるからです。

吸引チューブの袋を開けて、中に入っている滅菌手袋を清潔操作で付けてそのまま何処にも触れずに吸引しなければなりません。

 

救急蘇生法

そして、医行為を扱う最悪のリスクは亡くなることですから、救急蘇生法も学びます。

これは、消防署から本物の救急救命士を呼んで習います。この中には、どのくらいの早さで胸骨圧迫を行うのか、AED使用時などに胸骨圧迫を途切れさせないための交代方法、安楽且つ安全な姿勢、AEDの使用方法などが含まれており、私生活でも役に立つ内容になっています。

救急蘇生法を適切な方法で行う場合とそうでない場合で、救命率はかなり変わります

気道に滞留している異物の除去の仕方も習います。

 

万一の時の身を守る方法

業務上の行為で人が死傷すると、急変が吸引や経管栄養・胃瘻によるものでないと証明出来なければ責任を問われます

これは、刑事上の責任も同様で介護福祉士等の資格は剥奪になりますから、しっかりと覚えておいてくださいね。

面倒かもしれませんが記録に残すようにしましょう。どの医師の指示、どの看護師の指示でその行為を何時に行ったのか、吸引や経管栄養・胃瘻の前・最中・後に上記の観察項目はどうだったのか、を文章で記録しておきます。

 

特変なし・いつもと変わりありませんなどは、証拠能力が無いので注意してくださいね。

「顔色・口唇色にチアノーゼ無く、、、。」等ときちんと文章を残してください。この場合は、観察した証拠として認められます。

 

筆記テストと技術試験

ここまでくると、実地前の器具・物品の使用方法と注意点を習い、筆記テストと技術試験を人形で行います。

その後、自施設で口腔内吸引を10回・鼻腔内と気管カニューレは20回、経鼻経管栄養と胃瘻も20回です。

これを7割以上且つ最終3回を合格基準で行えた場合に修了とされ、書類を研修機関に送付します。

 

 

以上が喀痰吸引等研修の内容となっています。修了すると認定証が交付され無事喀痰吸引を行うことが出来るようになります。

 

1号と2号研修の講義は50時間で演習は別時間ですが、第3号研修は講義と演習が合わせて9時間で済みます。但し、重度訪問介護従事者養成研修と併せて行う場合は20時間半掛かります。

喀痰吸引等研修を修了するメリットって?

喀痰吸引等研修を修了するメリットは、色々あります。どのメリットに魅力を感じるかは人それぞれですし、修了していること自体に意味を感じる人もいるでしょう。

ではメリットについて見ていきましょう!

 

安全に行うことができる

医行為である喀痰吸引・経管栄養・胃瘻を一定の条件下で研修を修了した介護職が行なっても良いとされたのは、ニーズがあるからです。

しかし、あくまでもヘルパーの本分は、医行為ではなく生活を支援することです。

その上で、医師の指示の下で医療職と連携して吸引や経管栄養・胃瘻を行う以上安全が担保されなければなりません。この研修を修了することで、リスクとその回避の仕方、万一の時の救急蘇生法などを身に付けるので、より安全に行えるようになります。

 

また、救急蘇生法は医行為に限らず、もっと言えば仕事中に限らず私生活でも役に立つ内容です

自分の配偶者や子供たちが目の前で急変したり、異物を詰まらせた場面を想像して下さい。あなたは助けることができますか?救急蘇生法や異物除去の方法を知っている、又は実践したことがあるのと全く知らないのとでは、大事なご家族の救命率は異なります。

つまり、職務だけでなく大事な家族を守る確率を上げられる手立てを身に付けられるということですね。

 

コンプライアンスを遵守する

吸引等の為にこの研修を修了することは、コンプライアンスを遵守することになり、信用度も異なるでしょう

最近は、吸引などに限らず内部告発などがあるのか数年前の内容を指摘され、介護保険法や医師法違反などで処分される例がよくあります。そのようなことにならないようにする為にも、是非とも修了しておきたいところですね。

 

啓発できる

吸引や経管栄養などの部分だけでなく、手洗いや清潔・不潔、救急蘇生法、観察項目を根拠に基づいた内容で周囲に啓発できるようになりますね。

 

市場価値の上昇

転職の時などでは特に自分の市場価値がどれくらいなのかは気になるところです。安売りしたくはないし、高く買ってもらうには付加価値を付ける必要がありますね。

その付加価値の1つとして、認定特定行為業務従事者の認定を使います。

合法的な医行為の実施と知識や技術の証明に用いることも勿論出来ます。

 

 

この研修は、自事業所から何人も行けるわけではなく、あまり多いと他の事業所の人が受けられない為、人数を制限されます。せいぜい2人位です。また、事業所の費用で受講させるよりも既に持っている人を雇う場合は、この研修だけを観点に据えれば受講のための経費が浮きます。
喀痰吸引等研修を修了することで様々なメリットがあることが分かりますね。喀痰吸引研修修了者の方は転職にも有利です。ですが注意しておかなければならないことがあります。

喀痰吸引等研修修了者が転職の時に気を付けたい事

介護職員が喀痰吸引等研修を修了して吸引等の認定特定行為を行える場合は、一定の条件下に限られます

この条件とは何でしょうか?このことについて気をつけておかないと、せっかく転職しても再度就職先を探すなんていうことにもならないとも限りません。

 

転職先が喀痰吸引等事業者の登録を行っている

喀痰吸引等の制度では、認定特定行為業務従事者として認定を受けた介護職は、喀痰吸引等を行えることになりますが、それ以外にも条件があります。

転職しようとしている先が喀痰吸引等事業者の登録を受けていることを必ず確認しましょう

介護職本人が認定特定行為業務従事者の認定を受けなければならない様に、事業者も喀痰吸引等事業者の登録を受けていなければ、介護職員が認定特定行為業務従事者の認定を受けていても、喀痰吸引等を行う事は出来ません。

喀痰吸引等研修を修了した後に転職した人の転職先が喀痰吸引等事業者の認定を受けておらず、再度転職することになった人も居たようです。

 

喀痰吸引等事業者の登録を受けるには、医療職との連携・安全で適正に実施できる措置が不可欠です。

具体的にどの様な内容かというと

  • 口頭ではなく医師による文書での指示があること
  • 喀痰吸引等を行われる対象者の心身の状況を医師や看護師が定期的に確認していること
  • 定期的に確認している対象者の心身の状況を介護職と共有し、連携を確保するとともに役割を分担すること
  • 前出の条件に対象者の意思も加え医師や看護師との連携の下に喀痰吸引等の実施内容や特記事項等を記載した喀痰吸引等の計画書を作成すること
  • 実施状況に関する報告書を医師に提出すること・対象者の急変等に備える為に医師や看護師との連絡方法を予め定めていること
  • 以上の様な必要な事項を記載した喀痰吸引等業務に関する業務方法書を策定していること

 

リスクのある医療行為を診療の補助として行うのであって介護職は医療職ではないことを踏まえると、省令の内容としては適切ですね。

認定特定行為業務従事者でも、医師の文書による指示や医療職による確認の上で情報を共有するなどが必要で、この認定だけで喀痰吸引等を行えるわけではありません。

つまり、そこまでして喀痰吸引等事業者の登録をしている事業所は、医療職とも風通しの良い事業所である1つの目安でもありますね。

また、認定を受けていない者に喀痰吸引等をさせるなどのことも無いでしょうから、安心して転職出来るとも考えられますね。

 

最後に

今回は喀痰吸引について説明しました。在宅介護のニーズは年々増しています。喀痰吸引等事業者の登録をしている事業所はまだまだ少ないのが現状ですが、在宅介護での訪問介護に求められるニーズの増加に伴って喀痰吸引等事業者は増えていくでしょう。

そうなったときにヘルパーは喀痰吸引を決して安易に考えず、しっかりとした知識を持った専門職である必要がありますね。

是非この機会に喀痰吸引等研修を受講し、現場で活かしてみましょう!!