介護において観察は非常に重要な要素ですね。
観察の良し悪しがサービスの質を決めると言っても過言ではありません。
訪問介護の現場では
- 「歩行時にふらつきがあったので様子見といてください」
- 「前のサービスで咳が出ていたので様子観察頼みます」
とか、ヘルパーとして働いていると当たり前のように良く言われるワードです。

ヘルパーとして一つステップアップするためには「観察力」を身に着ける必要があります。
今回は訪問介護現場での観察力について学んでいきましょう!
訪問介護現場では観察力が特に必要だと言われる2つの理由
介護において観察は非常に大事な事ですが、訪問介護現場では特に重要になってきます。
それには大きく2つの理由があります。
在宅サービスの中で訪問介護が最も訪問頻度が多い
在宅サービスを利用している人の中で、最も使われているのは訪問介護です。
そのため、他のサービス事業者よりも利用者を観察する機会が多いと言えます。
ヘルパーは利用者の生活の一部分になりますので生活環境を一番知っているのはヘルパーです。
回数を重ねるごとに当初は見えてこない部分が見えてくる場合もありますので、観察力を高く持っておくと気づきが多くなると言えます。
施設介護と在宅介護の違い
施設介護では常に介護職員が施設内にいるため、入居利用者の一日全体の状態を把握することが出来ます。
反面、訪問介護では利用者の一日全体の状態を知ることは不可能です。毎日訪問する利用者もいれば週に1回~2回程度の利用者もいます。
一日の中で圧倒的に介護職員が関わらない時間の方が長くなります。
訪問している限られた時間の中で利用者を観察することになる為、観察力が非常に大事になってきます。
観察力を高めるポイントとは?
観察力を高めるためには具体的にどのような視点、意識、考え方をもっておけば良いのでしょうか。
ここでは、観察力を高めるためのポイントについてご紹介していきます。
観察の具体的なチェックポイントを知る
観察力を高める為に、まずは「部位ごとに捉える」ことを意識しましょう。
利用者をしっかり見るということがありますが、全体像をみてもあまり観察力が高まりません。
部位から全体をとらえることが大事です。
チェックポイントには以下のものがあります。
- 頭部・・・頭髪の汚れやにおい、発疹の有無
- 顔・・・活気があるか、ぼんやりしていないか、むくみや顔
- 眼・・・充血や目ヤニ、瞼のむくみ
- 鼻・・・鼻水、くしゃみ、嗅覚は正常かどうか
- 口・・・色や乾燥、口臭、ただれなど
- 歯・・・歯の状態や舌の色、入れ歯の噛み合わせ
- のど・・・嚥下力はどうか、痛みや咳痰はないか
- 耳・・・耳垢や耳鳴り、耳だれ、聴力
- 皮膚・・・傷や腫れ、むくみ、発疹、乾燥、汗、しびれの有無
- 爪・・・伸びていないかどうか、色など
- 下肢・・・歩行や立ち上がりなどの状態、関節の痛み、固さ、腫れなど
- 上肢・・・腕の動作、手の動作がどの程度可能か、関節の痛み、固さ、腫れなど
- 認知力・・・短期記憶障害があるのか、異常行動を取っているかどうか
- 言動・・・ろれつが回っているか、言動におかしな点が無いか(言葉と言葉の繋がりが無いなど)
- バイタルサイン・・・体温、脈拍、血圧などに変化が無いか
最初は意識をしないと難しいと思いますが、続けていくと無意識で観察ができるようになります。
観察は利用者の身体だけではない
身体面の観察ばかり意識してしまいがちなのですが、利用者の住環境や生活環境、精神状態、人間関係に渡るまであらゆる点を総合的に観察する必要があります。
訪問先の玄関を開けた瞬間のにおい、中から聞こえてくる音、室内の様子など、利用者本人に「調子はどうですか?」と聞く前から観察は始まっていることを十分意識しておきましょう。
振り返りを大切にする
訪問介護で利用者の自宅に行き介護サービスを提供するだけではなく、利用者がどんな様子であったのか、気になった点などはメモを取って振り返るようにしましょう。
例えば、自分がサービスに入った後転倒をした、風邪を引いているなとがあれば、サービスに入った際にどのような点がおかしかったのか振り返ることができます。
観察力を高めることが質の高い介護につながる2つの理由
観察力を高めることがどのようにして質の高い介護につながるのかを知っておきましょう。それには2つの理由があります。
観察力で異常の早期発見が出来る
高齢者の場合、
体に異常があったとしても自覚症状が薄かったり、人から言われるまで異常が分からなかったりします。
そのため、気づいたときにはかなり進行、悪化していたということも珍しくはありません。
早期発見が早期の対処が必要になるのです。
また少しの変化に利用者自身が気づいていても言わないこともあります。
高齢者の場合「迷惑かけられない」と思う方も多いので観察し様子の違いを敏感に感じる必要があります。
異常を知る為には、通常の状態を知っておかなければいけません。そのため最初のアセスメントが重要になりますし、日頃からの観察が必要になってくるのです。
例えば、日頃から平熱が低い方が、やや体温が高い状態ですと通常の人であれば熱発しているような状態になります。
これは血圧などにも同じことがいえます。日頃の状態を知っておくと、異常を発見しやすいと言えます。

観察をすることで
■利用者の状態の「現在地を把握すること」
■観察を継続することで「経過を把握すること」
が出来ます。
現時点での利用者を観察し1週間後、1か月後・・・の経過を把握していく事で異常を敏感に発見でき、発見後に柔軟な対応ができるようになります。
観察した内容で将来のサービス内容が変わってくる
観察は観察した「事実」をもとに「考える」ことで初めて意味を成します。
さらに言うと
観察は利用者を観て、その事実から考えて「見立てる」ために行います。
例えば

仙骨部に発赤があったので様子観察してください
と言われたとします。
ヘルパーはおむつ交換の際などに仙骨を観察します。
- 発赤が無ければ「今日は発赤がありませんでした」
- 発赤ができていれば「●●㎝程度の発赤ができていました」
と報告するヘルパーも多いでしょう。
他にも

前のサービスで移動時ふらつきが強い状態でした。様子観察お願いします。
と言われたとします。
ヘルパーは訪問した時にふらつきの状態を観察し
- ふらつきが強ければ「ふらつきが強く出ていました。転倒の危険もあったので介助しています」
- ふらつきが無ければ「今日はふらつきもなく歩行状態も良かったです」
と報告するヘルパーも多いでしょう。
これでは見たことを見たまま終わらしているだけになってしまいます。これでは観察した意味を成していません。
観察とは
なぜ発赤になっているか?
なぜふらつきがあったのか?
を考察し見立てるために行います。

身体機能が低下してきているのか?
栄養状態が悪いのか?
ベッドマットが原因か?
浮腫があるか?
など考えることで「発赤」「ふらつき」に対しての観察から大きく範囲が広がります。
その見立てをケアマネジャーや医療的な事であれば主治医に報告し多職種と連携することでケアサービスに生かすことができます。
最後に
今回は訪問介護で大事な「観察」について解説しました。
観察力の向上はヘルパーとしてレベルアップするためには必要な事です。
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