介護予防のために高齢者に「できることはやってもらう」ヘルパーの実践的支援方法。

 

 

介護の仕事をしていると「できることは自分でやってもらう」という言葉を良く使います。

ヘルパーは「なんでもかんでもやってはいけない、利用者のできる部分は自分でやってもらい、できない部分を支援するもの」

と言われています。

確かにその通りで、介護予防の観点から高齢者のできる部分までヘルパーがしてしまうと、どんどん機能低下を招くし、さらにヘルパーに依存するようになってしまうかもしれません。

なので、できる部分を自分で行っていただくことは非常に大事なことになります。

ですが、実際に訪問介護現場を見てみると

利用者がどこまでできるのか分からなったり・・・

本当はできるのにやらない利用者がいたり・・・

利用者の本当はできる部分に気づかずヘルパーが代行していたり・・・

逆に

利用者からするとリスクのある動作をヘルパーが利用者にさせていたり・・・

と実践は意外と難しいものです。やる気に満ち溢れた利用者ばかりではないですし、利用者の状態をしっかりと見れているヘルパーも少なかったりします。

 

今回は介護のプロとして、どのように「できる部分」、「できない部分」を見極め、できる部分を維持向上を図り、できない部分を少しでもできるようにしていくための訪問介護現場で活かせる実践的方法を解説していきます。

 

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介護予防のために必要なことはIADLの支援

 

そもそも介護予防とは

「生活の中で常日頃行っている日常生活行為」を増やしそれを習慣化することで「重度化の予防」「機能改善」を目指すための支援

を指します。

そのために必要なことはIADLの支援です

IADLは日本語で「手段的日常生活動作」と呼ばれます。

具体的には買物や洗濯、家事全般、金銭管理、服薬管理、交通機関の利用などの動作の事で、この動作を増やしていき習慣化できるように支援していくことが介護予防につながるということになります。

 

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IADLの支援は「行為分析」がカギ

IADLは「一連の動作の積み重ね」で成り立っています。

この一連の動作の積み重ね細かく見ていくことが行為分析です。

 

良く分からないと思うので「トイレ掃除」を例に見ていきましょう!

普段私たちは何の疑問もなくトイレ掃除を行っていますが、このトイレ掃除も一連の動作の積み重ねで成り立っています。

掃除のやり方は人それぞれ違いはありますが、一般的な感じでトイレ掃除を一つ一つの動作に分けてみます。

 

すると

  1. 道具を準備する
  2. 便器に洗剤をかける
  3. 便器の内側をブラシでこする
  4. 便座を拭く
  5. 便器の外側を拭く
  6. 床・壁を拭く
  7. 道具を片づける
  8. ゴミを捨てる

 

というように8個の動作の連続でトイレ掃除が成り立っていることが分かりますね。

一つ一つの動作ごとに利用者にとって「できる動作」なのか「できない動作」なのか、を見ていくことが行為分析ということです。

 

行為分析をしっかりと行うことで

  • 「できる事はやってもらう」
  • 「介助すればできる事は自立に向けての支援を行う」

ということを効果的に行うことが出来ます。

 

ヘルパーは利用者を感覚的に見ないようにしましょう。行為分析を行わずに「できること」「できないこと」は分かりません。

 

掃除・洗濯・買物・調理の行為分析の例

IADLでありヘルパーが日常的に関わる掃除、洗濯、買物、調理の行為分析をしてみましょう!

家事は行い方が人それぞれ違いますが一般的な感じで分析していますので参考にしてみてくださいね。

掃除の行為分析

 

◎居室掃除の場合

  1. 道具を準備する
  2. 雑巾を濡らして絞る
  3. 家具・テーブルの拭き掃除を行う
  4. 床の掃除機をかける
  5. 床の拭き掃除を行う
  6. 身の回りの物を片づける
  7. 道具を片づける
  8. 雑巾を洗い干す

というようになります。

さらに居室掃除の中の拭き掃除に焦点を絞り行為分析すると・・・

◎拭き掃除の場合

  1. 道具の準備
  2. 雑巾を濡らす
  3. 雑巾を絞る
  4. 拭き掃除をする場所の物を動かす
  5. 拭き掃除を行う
  6. 雑巾を洗う
  7. 雑巾を干す

 

 

洗濯の行為分析

  1. 洗濯物をまとめる
  2. 洗濯機に洗濯物を入れる
  3. 洗濯機を使う
  4. 洗濯機から洗濯物を取り出し洗濯カゴに入れる
  5. 洗濯カゴを干し場までもっていく
  6. 洗濯物を干す準備をする
  7. 洗濯物をハンガーに干す
  8. 洗濯物を洗濯バサミをつけて干す
  9. 洗濯カゴを片づける

というようになります。

調理の行為分析

  1. 献立を立てる
  2. 調理道具と食材を用意する
  3. 材料を切るなどの下ごしらえ
  4. 材料に火を通す
  5. 味付けをする
  6. 盛り付けをする
  7. 配膳をする
  8. 下膳をする
  9. 片付けをする

というようになります。

買物の行為分析

  1. 買うものを決める
  2. 買物をする店を決める
  3. 店に行く
  4. 買物を選ぶ
  5. お金を支払い購入する
  6. 自宅へ帰る
  7. 買ったものを片づける

というようになります。

 

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行為分析ができたら、支援の計画を立てましょう!

 

利用者の行為分析ができたら、分析した事をもとに支援の計画を立てる必要があります。

では今回は上記で説明した、「居室掃除」と「調理」ならどのように計画を立てるのかを見ていきましょう!

 

◎居室掃除の行為分析から計画を立てるとすると・・・

居室掃除の行為分析は

  1. 道具を準備する
  2. 雑巾を濡らして絞る
  3. 家具・机の拭き掃除を行う
  4. 床の掃除機をかける
  5. 床の拭き掃除を行う
  6. 身の回りの物を片づける
  7. 道具を片づける
  8. 雑巾を洗い干す

でしたね。

ここから「できる事」・「できない事」を把握し、長期・短期計画を立てていきます。

 

長期目標
  • 居間の掃除を安全に自分で行うことができるようになる。

 

短期目標
  • 道具の準備や片付けができるようになる。
  • 家具や机の拭き掃除ができるようになる。
  • 床の掃除機がけができるようになる。

 

というように計画をたて支援を行っていきます。

 

◎次に調理の行為分析から計画を立てるとすると・・・

調理の行為分析は

  1. 献立を立てる
  2. 調理道具と食材を用意する
  3. 材料を切るなどの下ごしらえ
  4. 材料に火を通す
  5. 味付けをする
  6. 盛り付けをする
  7. 配膳をする
  8. 下膳をする
  9. 片付けをする

でしたね。

ここから「できる事」・「できない事」を把握し、長期・短期計画を立てていきます。

当然ながら利用者の状態に応じて計画は変化しますので2パターン見ていきましょう。

 

計画パターン①

長期目標
  • 自分で調理ができる

 

短期目標
  • 料理に必要な材料を準備することができる。
  • 下ごしらえと材料に火を通すことができ、味付けができるようになる
  • 盛り付けや配下膳、片付けができる

 

計画パターン②

長期目標
  • 2つの料理を自分で作ることができる。(肉野菜の煮物、うどん)

 

短期目標
  • 料理の食材が準備できる。
  • 肉野菜の煮物を作ることができる。
  • うどんを作ることができる。

 

と、いうような感じで利用者の状態に応じて計画を立てましょう!

 

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計画を立てたら介護予防のための支援の具体的ステップへ

行為分析ができて、利用者に応じた計画を立てることができたら実際に支援をしていきます。

ですが冒頭でもお話したとおり、利用者は「頑張ってやろう!!」と意欲的な人ばかりではありません。

「料理はもうできない・・・したくない・・・ヘルパーさんして・・・」

「掃除は体もしんどいしやりたくない・・・」

という利用者もしばしばです。

 

ではどのようなステップで支援を進めていけば良いのでしょう??

 

ステップ①ヘルパーと一緒に行うことのメリットを利用者に理解してもらう

なんといってもまず、「ヘルパーと一緒に行う」ことから進めていくことがベストなのですが、それだけでは利用者は動きません。体は動くかもしれませんが、無理やり動かしても意味はありません。

何より利用者の心を動かすことが大事です。

心が動けば体は自然と動きます。

そのためには

ヘルパーと一緒に行うことで利用者にとってどのような「良いこと」があるのかを理解してもらうことで利用者の心は動きます

 

実践方法としては、

例えば部屋が荒れていてよくものを無くすことがあるならば
  • 「掃除をしていたら探し物が見つかるかもしれませんよ!」

 

例えば出来るだけ食費を少なくしたいと考えているならば

  • 「調理をしたら経済的に安く済みますよ!」

 

などなど・・・

こればかりはその利用者によって違いすぎるので答えはありませんが、心に引っ掛かるキーワードは必ずあるので根気よく探してみましょう。

 

ステップ②まずは〇〇を・・・たまには●●を・・・から始める

  • 洗濯であれば「まずは下着を洗濯してみましょう!」「まずはハンカチを畳んでみませんか?」「まずは洗濯物を取り込むところからはじめてみませんか?」といった具合に。
  • 調理であれば、まずは一番簡単な物や自分の好みのものを一品から始めてみましょう!お酒のつまみやお菓子でも良いと思います。
  • 掃除であれば、利用者の好みに合わせて「たまには部屋に花でも飾ってみませんか?」「たまには部屋に動物の写真でも飾ってみませんか?」「お孫さんが描いた絵を飾ってみませんか?」など、一見掃除とは関係なく感じますが、違った角度から提案してみると効果がある場合もあります。

 

ステップ③利用者宅への来客イベントを作る

人は誰しもが家に誰かを招き入れるとなると、「おもてなし」をしないとと思うものです。高齢者の場合は特に顕著であることが多いです。

来客イベントを行うためには家族や近所の友人、ケアマネジャーに協力してもらいましょう!

  • 近所の友人に遊びに来てもらう
  • 家族を家に呼んで作った料理を食べてもらう
  • 月に一度でも、地域の民生委員などの特別な人が来る日を決める
  • 誰かのためのプレゼントとしてお菓子作りをイベント化する

などなど・・・

イベント化することで「自分の為」ではなく「誰かの為」になります

人は誰かに喜んでもらえたり、誰かに必要とされることで生きている実感を得ることが出来ます。すると自ら進んで自発的に行っていくようになる可能性があります。

 

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まとめ

介護予防のために高齢者に「できることはやってもらう」ヘルパーの実践的支援方法を解説しました。

  • 介護予防はIADLの支援
  • IADLは行為分析がカギ
  • 行為分析で「できること」「できないこと」がわかる

 

支援の実践方法のポイントは

  1. 一緒にすることのメリットを理解してもらうことで心が動く、そして体も動く
  2. まずは〇〇、たまには●●から始めてみる
  3. 来客イベントを作ることで誰かのために自発的に家事を行える

でした!

ぜひ介護現場で活用していただけたらと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!!