認知症のある利用者は意思の疎通が難しい方が多く存在しています。
そのため、自分の意思をうまく伝えることができず介護者に怒ってしまうこともしばしば・・・
私も介護職についたばかりの頃、認知症の利用者へどのように対応して良いか分からず怒られてしまったことがありました。
何度かそのことで介護がしづらくなったり、認知症の利用者に関わることに苦手意識がついてしまった時期がありました。

そこで今回は現役ヘルパーである私が
■認知症ケアで大事にしたい2つのポイント
■在宅介護における認知症ケアとは何をするのか?
■認知症ケアの実践例
を解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
ホームヘルパーが認知症ケアで大事にしたい2つのポイント
訪問介護で認知症の利用者に関わる際には下記の2つのポイントを大事にしてください。
- 尊厳を守ること
- 笑顔で接すること
これは当たり前のことなのですが、意外と実践できている人は少ないので意識しておきましょう!
利用者の尊厳を守るとはどういうこと?
利用者の尊厳を守るということは、認知症になってもその人らしさを尊重するということです。
認知症の利用者に関わったことがある人は分かるかもしれませんが、認知症の利用者は、理解力が乏しかったり、急に突飛な返答や行動をしたりと時に「小さい子供」のように映ることがあります。
そういった部分から認知症の利用者を「かわいい」と表現したりする介護職もいます。
かわいいと感じる気持ちは分かります。ただ、介護職は言動や行動に出してはいけません。
要するに「この利用者は何も理解できない人」と決めつけて子ども扱いしたり、上から目線で対応することがあってはならないということです
たとえ認知症で理解力が低下していても、その利用者の歴史が無くなるわけではないということをしっかりと理解しておきましょう。

認知症の利用者さんは、私たちが思っている以上に敏感です!
介護職の態度を少し変えるだけで利用者との関係性が変わってくるのです。
認知症の利用者は笑顔で安心する
利用者にとって認知機能が低下していく状況は常に不安感が付きまといます。時には周りの人がすべて敵に見えることもあるでしょう。
そんな利用者からすると介護職が「笑顔」でいてくれるだけで安心できます。
「笑顔」から柔らかくて穏やかな雰囲気を感じ取ることで利用者自身も穏やかな気持ちになれるのです。

何度も言いますが、認知症の利用者はめちゃくちゃ敏感です。気難しいムスッとした顔をしていたら確実に認知症ケアは上手くいきませんので笑顔の練習をしましょう!
訪問介護における認知症ケアでは何をしたら良いの?
では訪問介護現場では認知症ケアは何をしているのか?
というとそれは利用者と一緒に作業を行うことがメインとなります。
特に生活援助の場面では認知症ケアが活躍できます。
生活援助で行える認知症ケア
生活援助はホームヘルパーの代表的なサービスです。生活援助には調理、洗濯、掃除、買い物などがあります。
調理であれば一般的にはホームヘルパーが調理をして利用者が食べるというのがサービスの流れとなっています。
しかし、認知症ケアではヘルパーが作るだけではなく利用者にも作ってもらうことがポイントとなります。
ただ実際に全ての工程を利用者一人だけで行うのは難しいでしょう。
認知症ケアが段階的に進めていく必要があります。
- STEP1利用者の「できる部分」を探す
認知症の利用者は短期記憶障害がある方が多いですので、複雑な工程を一人で行うことは難しくなります。
しかし、一部分だけの工程であれば、認知症があったとしても問題なく行うことが出来る場合もあります。
特に主婦の方であれば、元気な頃は家事をしていた方も多いですので、調理であれば皮むき、炒めもの、洗い物など単純な作業であれば、体が覚えていることがあります。
そのため、まずは利用者の残存機能を探すことを目的に「行為分析」から始めます。認知症とはいえ必ず「できる部分」はあります。
サクッと説明すると、例えば調理をするとして、調理の動作を細かく分けると下記の9つに分けれます。
- 献立を立てる
- 調理道具と食材を用意する
- 材料を切るなどの下ごしらえ
- 材料に火を通す
- 味付けをする
- 盛り付けをする
- 配膳をする
- 下膳をする
- 片付けをする
この9つから利用者のできる部分を探していきます。配膳だけできる方もいれば、献立を立てれる方もいるでしょう。
このように利用者の「できる部分」と「できない部分」を明確にしていくことが最初のステップとなります。
- STEP2一部分の工程だけを行ってもらう
利用者の行為分析が完了したら実際に一部分の工程だけを行ってもらいます。
- 調理であれば、食材を切るだけ、炒めるだけ、食器を洗うだけ、など
- 掃除であれば、ヘルパーが物をどかしながら利用者に掃除機をかけてもらう、廊下の片方からヘルパーが雑巾がけをして反対側から利用者に雑巾がけをしてもらう、など
- 洗濯であれば、取り込んだ洗濯物を一緒にたたむ、など
このように生活援助の中で一工程のみを利用者と一緒に行っていきます。ヘルパーが作業の見本をみせて利用者がマネをできるようにすると結構スムーズにいく場合が多いです。
また認知症の進み具合によっては、見守りがしっかりとしていれば問題なく日常生活の動作が可能な利用者もいます。
例えば洗濯機の使い方が分からない方には、洗濯機の扱い方を横から伝えるだけで自分でできるようになることもあります。
他にも料理で必要な材料の買い方や、調理の仕方などを横から伝えることによって、スムーズにできる場合もあります。
何か困った時にサポートできる体制を取っていれば認知症の方でも実行できることは結構あるのですよ!
ホームヘルパーは在宅介護において認知症ケアに一番適している
ホームヘルパーは認知症ケアを行う人としては非常に適した存在であることを認識しておきましょう!
なぜ在宅介護での認知症ケアはヘルパーに適しているのかというと理由は下記の3つがあげられます。
- マンツーマンで認知症ケアを行うことができるから
- 日々の様子変化を読み取りやすいから
- 家族にアドバイスを行いやすいから
それぞれ見ていきましょう!
① マンツーマンで認知症ケアを行うことができるから
ホームヘルパーは利用者とマンツーマンで認知症ケアを行えるという点はかなりのメリットがあります。
例えば、介護施設でも認知症ケアは行われていますが、ほとんどの場合は職員が数名に対して利用者が数十名というケースが多いです。
介護職が前に立って大勢の利用者の前で脳トレをしたり認知症の体操をおこなったりなどがそれに当たります。
しかし、ホームヘルパーの場合は基本的に1対1のマンツーマンで行います。
マンツーマンで行うということは、利用者の認知度に合ったケアを実施できるということです。
また、進み具合や反応を見ながら方法を変えたりなど、臨機応変に対応をすることができます。
② 日々の様子変化を読み取りやすいから
ホームヘルパーは少なくても週に1回、多ければ毎日訪問することになります。
常にその方の状態を把握できるということです。これが、例えば医師などの場合は月に数回しか診察をすることが出来ません。
ヘルパーは利用者の状態を見る機会が多いので、他の職種と比べると日々の様子変化を把握しやすくなります。
変化を把握しやすいということは、変化に合して対応を変えることができるのです。
認知症は日々状態が変わっていきますので、その状態変化をこまめに知れるということは認知症ケアには大切なことだといえます。
③ 家族にアドバイスを行いやすいから
認知症ケアで大切なことは家族へのアドバイスです。
ホームヘルパーは自宅に上がってサービスを提供していきますので、家族とのコミュニケーションが図りやすいというメリットがあります。
また、家族の認知症ケアに対する相談を受けたりなど、様々な面で家族をサポートできる立場であるからこそ、認知症ケアに適しているといえます。
また認知症ケアを進める場合、きちんと認知症ケアについて家族の理解を得ておく必要があります。
認知症の方がヘルパーの認知症ケアを受けることによって、様々なことに興味を示して自分でいろいろしてしまう場合があります。
ヘルパーが付き添っていれば問題ありませんが、ヘルパーが入っていない時間帯でも自分でしてしまうことがあります。上手くできれば良いのですが、一人ですると失敗することもあります。
そういった時にフォローするのは同居している家族になりますので、きちんと家族の理解を得たうえで認知症ケアを行うことが大切なのです。
実際にあった認知症ケアの実践例を紹介
ヘルパーは行う認知症ケアは実際のところどのような例があるのでしょうか。
ここでは実際にあったヘルパーが行う認知症ケアについて紹介していきます。
「前はできていたのにできなくなっていく」自信を無くしているAさんの場合

Aさんの状況と必要な介護
- 同居家族は姪のみ
- 自分の状況がまずまずわかるので時々忘れることに不安を覚えてできないことにもショックを受けている状況
- 姪が仕事のため昼間ヘルパーと料理をするなど家事を行うことが目的
- ヘルパーと一緒に料理をしてもらうことで達成感を感じ自信をつけてもらいたい
Aさんに対してヘルパーが行った7つのこと
では、利用者様の感情が安定し料理ができることから少しずつ自信をとりもどしてもらうためにヘルパーがしたことでポイントを押さえてみます。
- 笑顔で本人の尊厳を大切にした
- Aさんの行為分析から「できる部分」と「できない部分」を明確にした
- こちらが先導するのではなく、本人の記憶を引き出しながらスムーズに作れるようにした
- まずは本人のやり方を尊重した
- 出来上がった時の形などは関係なく、完成したことを一緒に喜ぶ
- 完成したものを写真にとっておくなどキロクを残す
- どんな流れでうまくいったか、失敗したかを訪問するヘルパー同士で共有する
このような感じで本人の「前はできていたのにできなくなっていく」という不安も理解することが大切です。
記憶は薄れていっても、長年台所で作ってきた定番の料理は身体が覚えているものです。
姪子さんからの情報で、この利用者の得意だったという厚焼き卵を一緒に作ることができました。
家族の協力があってこそ、認知症ケアの質は高まります。

いかがでしょうか?この実践例のように認知症だからと言って何もできなくなるわけではありません。
ヘルパー関わり方によっては「できること」が増えていくことも可能なのですよ!
まとめ
今回は在宅介護における認知症ケアについて解説しました。
認知症ケアは様々な取り組みがあります。ヘルパーが行うメリットなどを十分に理解をして効果的に認知症ケアを行えるように考えていきましょう。
また当サイトではホームヘルパー初心者向けに業務マニュアルを無料で公開しています。
良かったら下記から参考にしてみてください!