介護業界では大きく分けると特別老後老人ホームなどの「施設系」、デイサービスなどの「通所系」そして訪問介護などの「訪問系」の3種に分かれます。
サービス提供責任者(以下、サ責)とは、訪問介護サービスにおけるご利用者が必要とするサービスの計画を立て、ヘルパーさんを統括し計画通りにサービスを提供するための要となる責任者のことを言います。
略称として「サ責」と呼ばれることも多い役職です。
サ責は事業所の管理者と兼務することもできる役職で、それだけ重要なポジションであることが伺えます。
サービス提供責任者の主な仕事
- 訪問介護計画書の立案・実施
- ご利用者、ご家族とのアセスメント
- ヘルパー調整
- ご利用者、ケアマネージャー、ご家族、その他関係機関との連絡調整
- モニタリング
- サービス担当者会議出席
- 社内研修担当
- 請求業務
- 現場業務
など。
1日の中でこれだけの業務が混在する中で仕事をしなければなりません。
そんな中でも常に良質なサービスを提供し続けなければならず、業務に追われる毎日ではモチベーションの維持も難しくなります。
一つひとつの仕事を理解し、丁寧にこなしていくことで結果としてご利用者にとって良質なサービスを提供していくことに繋がります。
下記にサービス提供責任者の仕事内容の詳細を解説してますので参考にしてみてください!
サービス提供責任者の一日の流れ
まずはサ者としての一日の流れを見ていきましょう。
- 出社~ 前日の申し送り事項の確認・当日のサービス提供内容の確認
- 09:30~ 訪問介護計画書の作成・各種連絡調整
- 10:30~ サービス担当者会議出席
- 12:00~ 昼休憩
- 13:00~ 現場支援
- 14:30~ ヘルパーと同行訪問にてモニタリング
- 15:00~ 訪問介護計画書の作成・各種連絡調整・社内研修資料の作成
- 16:30~ 請求業務
- 17:30~ 当日の振り返り・介護日誌作成・翌日の申し送り事項の確認
- 18:00 退社
ご利用者あっての仕事ですので、仕事内容や順番などはその日ごとに変化します。
毎日同じルーティンになることはまずありえません。
ヘルパーさんが体調不良で突然欠勤になる場合もあり、現場支援の時間が増えることも十分に予想されます。
現場でのトラブルやご利用者の転倒事故など様々な予期せぬ事態も発生します。
だからこそサービス提供責任者の仕事を理解し、一つひとつ丁寧にこなしていかなければやるべき仕事がどんどんあと回しになりご利用者のサービスについて考える時間が無くなってしまいます。
申し送り事項の確認について
まず出社時に前日の申し送り事項の確認と当日のサービス提供内容の確認を行い、一日の流れを組み立てることが大切です。
「当たり前」と思われるかもしれませんが、意外とこの当たり前ができていないことで同じ事業所のサ責でも働き方が大きく変わります。
そして退社時にも同じく一日のまとめと翌日に引き継ぐべき内容を整理して帰ることで翌日出社した時により簡潔に、短時間で一日の組み立てを行うことができます。
訪問介護計画書の作成
訪問介護計画書の作成についてはいくつかのパターンに分かれます。
- 新規利用開始時
- 介護認定の更新時
- サービス内容変更時
「新規利用開始時」は文字通り新しくサービスが始まる方への計画書作成。
「介護認定の更新時」は、初めて介護認定を受けた方であれば原則1年で次回更新、継続の方であれば原則2年で介護認定の更新が訪れます。(期間はその利用者の状況による)
介護認定期間の更新に気づかずに計画書の作成忘れが発生しやすい内容であるため注意が必要です。
最後に「サービス内容変更時」については、ご利用者のニーズの変化によりサービス内容が変わったり訪問回数が増回になったりとこれまでの契約に変更が生じた時に作成が必要となります。
各種連絡調整
連絡調整の対象となる関係者は主に
- ご利用者、ご家族
- ヘルパー
- ケアマネージャー
- その他関係機関
主に、ご利用者、ご家族、ヘルパー、ケアマネジャーなどに対して「報連相」や変更事項などの連絡を行います。
またその他関係機関についての代表例としてはそのご利用者が利用している「デイサービス」「ショートステイ」「かかりつけ医」などです。
原則としてはケアマネージャーを介して情報共有を行いますが場合によっては事業所毎に連絡を取り合うことも珍しくはありません。
サービス担当者会議
サービス担当者会議はご利用者のサービスを決める際に、あらゆる関係者と意見を交わしながらその利用者に合ったサービスを作り上げていくための会議です。
新規サービス開始時であれば、ご利用者が利用するであろう関係機関、介護認定更新時期やサービス内容更新時であれば利用中のサービス関係機関が出席し意見を交わします。
日々の介護日誌を細かに書き溜めておくことで時系列順にご利用者の様子や変化を明確に理解し意見を交わすことができます。
現場支援
現場支援とは、ヘルパーとしてサ者が通常のサービスを行うことを言います。
多くの会社ではサ責とヘルパーを兼務しているところがほとんどです。
突然のヘルパー欠勤やヘルパーの調整がどうしてもできなかったサービス枠に関してはサ責がヘルパーとして担当することがあります。
サ責になると多くのご利用者を抱えることで現場へ出向く回数が激減する場合があります。
時折ヘルパーとして働くことで普段のヘルパーさんの悩みや、ご利用者との直接の会話から得られることも多く非常に大切な時間であることは言うまでもありません。
ヘルパーとの同行訪問・モニタリング
先ほどの現場支援とは異なり、担当しているヘルパーと同行してサービスの現場を見ることもあります。
目的としては、ヘルパーが計画通りサービスを提供できているかの確認とサービスの内容がご利用者のニーズに合っているかの確認。
ご利用者が新たなニーズを抱えていないかの確認やご利用者は気づいていないが追加した方が良いかもしれない潜在的なニーズなどを探します。
社内研修について
社内研修については、常勤ヘルパーや登録ヘルパー、またサ責に対しても研修を行います。
特定事業所加算などの関係で義務化されている事業所とそうでない事業所などはありますが、原則月に1回開催するということをベースに様々な内容をサ責が講師となって研修を行います。
それに伴い前もって研修資料の作成を行っておく必要があります。
請求業務
請求業務とは、サービスを提供した「実績」を記録し、月末締めで書類を作成し、利用実績表をケアマネージャーに送付します。
この利用実績が直接会社の売上となり皆さんの給料として支払われます。
まとめ
「サービス提供責任者の一日の流れ」ということで、今回ご紹介した仕事内容はあくまで最低限の業務です。
一つひとつの業務を細分化していくとここでは書ききれないほどの注意点が存在しますし、今回記載していない業務もたくさん存在します。
それぐらいサ責の仕事は多岐に渡り、また責任を伴う重要なポジションです。
サ責の仕事を理解しないまま年月だけが過ぎていくといつしか業務に追われるばかりの毎日になり、気が付けばサ責になりたての時に想っていた「ご利用者のために」という気持ちが忘れ去られてしまいます。
「業務のために」ご利用者がいるのではなく、「ご利用者のために」責任のある業務があります。
ご利用者のためにサ責だからこそできる仕事がたくさんあります。
時折、初心を振り返る時間を作りながら少しずつサ責としての自覚と自信を作っていきましょう。