認知症のある利用者には利用者本人の意思を上手く伝えられなかったりと意思の疎通が難しい方もいます。
訪問介護現場ではヘルパーが認知症のない方に関わる時も「どうせわからないだろう・・・」という勝手な思い込みや、幼稚な声掛けなどしてしまうことも良くある話です。
私も介護職についたばかりの頃、幼稚な対応をしてしまい利用者さんにすごく怒られてしまったことがありました。
何度かそのことで介護がしづらくなったり、認知症の利用者さんに関わることに苦手意識がついてしまった時期がありました。
認知症といっても様々ですが、利用者様のプライドや尊厳を傷つけてしまうと、その後のサービスの1時間~2時間がとてもやりにくくなることがあるからです。
在宅介護である1対1の関係性をどうやって良い形にもっていけるかで、サービスの内容もできることも変わっていきます。
つまりどれだけ訪問介護ヘルパーのペースに持っていけるかで認知症ケアの質は変わってくる
ということです。
言い方は悪いかもしれませんが、現場のヘルパーさんは理解できるかと思います。
今回は私の訪問介護経験での実例から、どのようにヘルパーのペースにもっていき質の高い介護を提供していけば良いのかを解説していきます!
認知症ケアでヘルパーのペースに持っていくための方法
訪問介護現場で認知症の方への介護では
ヘルパーのペースに持っていくために大事なポイントが2つだけあります。
それは
- プライドと尊厳を守ること
- 笑顔で接すること
に尽きます。
このことを踏まえて実例から解説していきますね!
「まだまだ自分でできる!」とプライドが高く紙パンツを嫌がるAさんの場合
Aさん
Aさんの状況や必要な介護
- 元社長で戦後何もない山に手を入れて開墾し、農業だけで家族と従業員と研修生を受け入れていくほどの大きな農家を築き上げた。
- 高齢となり息子に家業を継がせて自分は引退している。
- 妻は他界しており息子夫婦と3人での生活をしている。
- 歩いていける場所に農家はあり、時々農家ものぞいている。
- 排泄がコントロールできなくなり、排便排尿をパンツの中でしてしまったり、廊下でしてしまうなどということが増えた。
- ケアプランで清潔を保つことがあがってきた。
- 嫁の要望で紙パンツをはいてほしいが、立場上あまり強く言えず、はいても嫌がってすぐに脱いでしまうので困っている。
- 廊下によく便が転がっているなど掃除も大変。
- 本人はまだまだ自分でできる!とプライドが高く排泄に関して1番手をやいている。
Aさんに対してヘルパーが行った7つのこと
全く初対面のヘルパーがAさんのサービスに入ります。
利用者様との信頼関係によってこれからの介護に大きく影響をおよぼしてしまいます。
また、家族ともしっかりコミニュケーションがとれて家族が安心できる存在でもありたいです。
ヘルパーが行ったことは下記の通りです。
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笑顔で本人の尊厳を大切にするように接した
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会話の中で農家の創業のことなどよく覚えていたため苦しかったことや頑張って良かったことなど傾聴するようにした
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肩をさすったり手を握るなどして安心できるように接した
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笑顔でいろいろ話してくれるようになってからさり気なく入浴後に紙パンツをはくことを促した
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紙パンツははいているだけで安心だと話した
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家族にもヘルパーが感じた利用者様の状況を伝えた
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自分以外のヘルパーが入る時はスムーズにできた時のコツを伝えて共有した
このような流れで、まず1番に目的を達成するのではなく、本人との信頼関係を築いてからこちらのペースにもっていきました。
特に役職のある男性は、排泄に関して人に口出しされることを嫌います。
まして、自分が便失禁するなど受け入れられずに隠そうと思いがちです。
ヘルパーが他人だからこそ嫁にはできないことも可能となるので、そこを上手にいかします。
この男性利用者様は、名前は毎回忘れているもののヘルパーの顔を見たら「あんたがきてくれたんか。待っていたよ」と顔を覚えてくれて安心して任せてくれるようになりました。
では次の例も見ていきましょう!
「前はできていたのにできなくなっていく」自信を無くしているBさんの場合
Bさん
Bさんの状況と必要な介護
- 同居家族は姪のみ
- 自分の状況がまずまずわかるので時々忘れることに不安を覚えてできないことにもショックを受けている状況
- 姪が仕事のため昼間ヘルパーと料理をするなど家事を行うことが目的
- ヘルパーと一緒に料理をしてもらうことで達成感を感じ自信をつけてもらいたい
Bさんに対してヘルパーが行った7つのこと
では、利用者様の感情が安定し料理ができることから少しずつ自信をとりもどしてもらうためにヘルパーがしたことでポイントを押さえてみます。
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笑顔で本人の尊厳を大切にした
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料理がスムーズにできるように下準備をしっかりした
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こちらが先導するのではなく、本人の記憶を引き出しながらスムーズに作れるようにした
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まずは本人のやり方を尊重した
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出来上がった時の形などは関係なく、完成したことを一緒に喜ぶ
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完成したものを写真にとっておくなどキロクを残す(次回、本人が忘れていたとしても写真から2回目につなげることができる)
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どんな流れでうまくいったか、失敗したかを訪問するヘルパー同士で共有する
このような感じで
本人の「前はできていたのにできなくなっていく」という不安も理解することが大切です。
記憶は薄れていっても、長年台所で作ってきた定番の料理は身体が覚えているものです。
姪子からの情報で、この利用者の得意だったという厚焼き卵を訪問の時に一緒に作ることができました。
利用者をずっと見てこられた姪子さんだからこそわかる料理ですよね。
家族の協力があってこそ、なお認知症の利用者様へのケアの質が上がります。
まとめ
「在宅での認知症ケアはどれだけヘルパーのペースに持っていけるかによってサービスの質が決まる」の理由を解説しました。
私の介護経験から認知症ケアでは特に「尊厳を大切にすること」と、「笑顔で接すること」で、質の高いケアができるきっかけになったので、今回の記事を作成しました。
あたりまえの事かもしれませんが、意外とできていないヘルパーが多いように思います。
一度意識してやってみると意外と反応が変わってきますのでぜひ意識してみてくださいね!