訪問介護での利用者からの無理な要望の一つに
「家の模様替えをしてほしい」と言われることがあります。
この要望はかなりトラブルになりやすいテーマです。
ヘルパーをしている方たちなら一度は利用者から依頼されたことがるのではないでしょうか?
特に経験の浅いヘルパーは判断に迷いますし、ベテランヘルパーも利用者となれあいになってくると、断りにくいことだったりします。

今回のテーマは私の訪問介護経験から
- 「家の模様替えをしてほしい」という要望を事例から対応方法を学ぶ
です!参考にしてみてください!
利用者とトラブルになりやすい要望「家の模様替えをしてほしい」を事例から考える対応方法
Aさんの場合

Aさんの状況状態
- 68歳男性で。10年前から一人暮らし。
- 人工透析に通っている。
- もともと都内で大手の会社役員をしており、キャリアも人生経験も豊富、頭の回転が早い。
- 高校野球では甲子園で上位に入るほどでチームを引っ張っていった実力者。
- 病気になってからも自宅で筋トレを続けている。
- 性格は物事を白黒はっきりさせるタイプで、気の弱そうなヘルパーや仕事の段取りが悪いヘルパーには厳しいタイプ。体育会系。
30代女性ヘルパーBが家事援助で、掃除や料理をするために訪問した際の出来事です。
いつものように掃除機からはじめていると利用者であるAさんより「Bさん!ちょっとこのタンスを隣の部屋まで運んでくれ」と声がかかる。ヘルパーBは介護保険でできる範囲が「掃除」であっても、タンスの移動は「日常生活に支障がないと判断される行為」ということを理解していました。
本人に言うと怒られるだろう、と思い悩みました。
でも、しっかりできることとできないことを伝えておかないと、後のヘルパーが困ると思い「タンスの移動は訪問介護ではできないことになっています。ごめんなさい」と伝えました。
しかしAさんは
「こないだ来たヘルパーCさんは、すぐにタンスを運んでくれたのに、なんであの人はできてあんたはできないのか!!」
「あんたたちはまるでお役所仕事だ!なんで融通がきかないのか!ちょっとぐらい手伝ってくれてもいいじゃないか」
「親戚が利用している○○(会社)のヘルパーさんは大掃除とか庭の草取りもするらしい」「もうよそのヘルパーに変えるぞ」
とご立腹です。
ヘルパーCさんがタンスを運んで前例を作ってしまった、という予想外の状況に困ってしまったヘルパーBさんですが「介護保険で決まっていることは私達も勝手に変えられないのです。ヘルパーCが混乱させるような行為をしてしまい、申し訳ありませんでした」と謝り「介護保険でできることはたくさんあるので、その中でAさんが快適に暮らせるようにお手伝いさせてください」と伝えました。
その場はなんとか切り抜けることができました。
ヘルパーステーションに戻った時に、事務所と責任者、担当ケアマネージャーに報告しました。そしてタンスを運んでしまったヘルパーCさんにも話ました。
ヘルパーCさん 50代男性 ヘルパー経験はまだ1年目だが、面倒見が良く人に頼まれると2つ返事で動いてしまうタイプ。
ヘルパーCさんは悪びれることなく
「タンスをちょっと隣の部屋に運ぶぐらいは、細かいことを言わなくてもいいじゃないか」
「一人暮らしで困っているのだし、タンスといっても一人で軽く持てる大きさだったし、喜んでくれるならいいじゃないか」
と、後々のことまで考えていない様子です。
Aさんは無理を言ってもヘルパーCさんなら動いてくれる、と思ったようです。
その後も、家具などの粗大ごみを出すから机を庭に運び出してほしい、などと無理な要望がCさんに増えてしまい、Cさんも途中でできないとも言えずにいた状況でした。
結局Aさんの無理な要望に振り回されてしまい、本来生活援助サービスで計画されていた掃除や料理の時間が足りなくなってしまいました。そのいい加減になった掃除を、他のヘルパーが入った時に余分に忙しくなってしまいました。
トラブル事例から見る4つの問題点と対応方法
できないサービスを契約時に説明してもほとんどの利用者は憶えていない
利用者にはサービスを始める前に、ケアマネや担当者から紙面と口頭で伝えている内容です。しかし、たくさんの契約に関する情報がありすぎて、聞いた話の中で記憶に残るのはほんの少しだと理解する。
したがって利用者にはできないサービスに印をつける、赤線を引くなどして大事な文面は強調してみましょう。
利用者は人生経験豊富なので相手を見て動かしているところがある
Aさんは、人生経験豊富なので相手を見て動かしているところがあります。逞しく一人で生きていくためには、駆け引きもするでしょう。
他の事業所や、動いてくれるCさんを引き合いに出してきます。
利用者に振り回されるようでは、良いサービスができるとは言えません。タンスを動かさなくても良いヘルパーとして仕事はできるはずです。
タンスの移動を断ったヘルパーBさんは、関係がぎくしゃくしないように工夫しました。掃除中にAさんの高校野球をしていた頃や、大手役員時代の頃の話題にふれることで本人の話を引き出すことができ、とても良い関係でサービスをすることができるようになったのです。
訪問に入るヘルパーの意識が大切
ヘルパーCさんは、とても親切な良い人でしょう。しかしチームで訪問介護をしている意識が低すぎました。ヘルパー自身も、何度も「できること・できないこと」のボーダーラインを意識すること。
ミーティングなどで「なぜタンスを運ぶことを断るべきなのか?その後に入るヘルパーがどんなふうに困るか?」というのを話しあって「チームで利用者の生活を援助している」という意識を高めることです。
代替えサービスの提案をしましょう
本当に模様替えをしたくて困っているとしたら、できる方法を考えてみます。昔からある家政婦なら、介護保険は関係ありません。最近では大掃除などの「家事代行サービス」などの選択肢も増えてきています。
訪問介護事業所も自費サービスで介護保険外のサービスを提供しているところも多いです。
利用者は知らない情報もあるので、ヘルパーができないことは、どういうところに依頼すると良いか、情報を提供してあげることも必要です。
まとめ
今回はトラブルになりやすい「家の模様替えをしてほしい」を事例から対応方法を解説しました。
サービスに統一性がないと、最終的には利用者様にしわ寄せがいきます。予定しているサービスは、ギリギリの時間で組んであることが多いのです。本来「何のために支援に入るのか?」を大切にしましょう!
どんなに難しい利用者で感情的になるようなトラブルがあっても、心の通うサービスを心がけていたらいつかは伝わるものです。
少しでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!