在宅高齢者の暮らしを支える訪問介護サービスは離れて生活したり、日中働いたりしている家族にとっては欠かせないサービスです。
しかし、そんな家族にも理不尽で過度のサービスを要求して聞き入れられないと一変、クレーマーと化す家族が居るのは事実です。
カスタマーハラスメントは介護現場にも存在しています。

そこで現役介護士である私が
- 実際に遭遇したクレーマー家族とその対応策
について解説します。
訪問介護で遭遇したクレーマー家族事例
- 「部屋の床が汚い!ちゃんと掃除しているのか」
- 「ヘルパーが作った料理を全然食べてない。ちゃんと作っているのか?」
- 「おいてあるお金が無くなっている。ヘルパーが取ったんじゃないか?」
- 居室で転倒を繰り返す利用者に対して「ちゃんと見守りして!」とのクレーム。
- 自身で空調のリモコンを操作される利用者の部屋が「暑すぎる」「寒すぎる」とのクレーム。
etc.
これらはすべて私が遭遇したクレーマー家族の事例です。
訪問介護では決まった時間内にヘルパーと利用者のみの空間で洗濯・掃除、入浴介助、調理、買い物代行などのサービスを利用者に対して行います。
上記のクレームは、利用者の家族がこの前提条件を把握していないために生じていると考えられます。
では新たなクレーマー家族を生まないためには、どうすれば良いのでしょうか?
クレーマー家族に対する基本姿勢
訪問介護サービス開始後のクレームやトラブルを避けるためには
契約時にヘルパーができること・できないことを家族やキーパーソンにハッキリと伝えることが重要です。
それでも残念ながらクレーマー家族が完全に居なくなることはありません。
家族の怒りに対してアプローチする
怒っている家族に対して、まず注意しないといけないのは、家族の理不尽なクレームに
「契約書の第〇条に書いてあります通り…」
といった返答は絶対してはいけません。
憤っている相手に対する返答としては最悪で、火に油を注ぐだけです。
家族の怒りは、
「訪問介護サービスという家族から見えない部分に疑心暗鬼になっている」
ことから来ています。
そのため、まずは疑心暗鬼になり怒りが沸いてしまっていることに対して謝ってみましょう。
真っ先にすべきことは、家族の誤りを指摘することではなく頭を下げることです。(なんで頭下げなあかんねん!と思うかもしれませんが・・・)
「申し訳ございません」と誠実に謝罪をした後、「大変恐れ入りますが」と契約内容や訪問介護の事情はあらためて説明するという手順を踏むと意外とスムーズです。
家族にヘルパーサービスを見てもらう
さっきも説明した通り、家族の怒りはヘルパーサービスという見えない部分に対しての疑心暗鬼から来ています。
そのため、家族のスケジュール的に問題が無い様であればヘルパーサービスに同席してもらいましょう。
「ヘルパーさんはちゃんと仕事をしているんだな」ということへの理解につながりますし
サービスでの決め事を共有しておくことも大事です。
「見えない部分を見えるようにしていく」
という事が大事で、そういった部分が家族からの信頼へつながります。
はたしてクレーマー家族は悪者か?
ヘルパー・事業者にとってクレーマー家族は本当に厄介な存在です。
しかし、クレームがまったく無い事業者が果たして優良であるかというと疑問が残ります。
ハインリッヒの法則という法則をご存じでしょうか?
1件の重大な事故の裏には29件の小さな事故があり、その裏には300件のヒヤリハットと呼ばれる事故には至らなかった危険な事例が含まれるという法則です。
事故をクレームに置き換えてみると、些細なクレーム事例を数多く集めることによって、損害賠償責任を問われるような重大なクレームを未然に防ぐことができます。
理不尽で悪質なクレームは別として、事業者に対してプラスに働くクレームもあります。
クレームが上がることによって、これまで見過ごされてきた訪問介護サービスの問題が明らかになり、改善のきっかけとなります。
社内全体への情報共有と事業本部への報告のため、記録としてクレーム受付表を必ず残しておきましょう。
まとめ
接客業の中でも24時間365日人と関わり続ける訪問介護にはクレームはつきものです。
しかし、クレームは理不尽で過度のサービスを要求してくるものばかりではなく、ヘルパーや管理者が気付いていない課題を見直すきっかけになる場合もあります。
クレームとの付き合いかたで事業者と利用者、その家族との信頼関係を左右すると言えるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました!少しでも参考になれば幸いです。