- 障害福祉サービスって種類が多すぎてよくわからない…
- 障害者総合支援法の全体像が知りたい。
- 障害福祉サービスってどのように利用するの?
ヘルパー会議室をご覧のみなさんは、障害福祉サービスのうち居宅介護や重度訪問介護、同行援護、移動支援などを実施している事業所の方々が多いかと思います。
ですが、これらのサービスが法的にどのような位置づけにあるのかを把握している方は少なく、事業運営にあたって給付等の体系などをきちんと理解しておくことが大切です。また、訪問系障害福祉サービスのみを知っていても、利用者の悩み事や困り事に対して、適切な情報提供はできません。
そこで今回は、障害者総合支援法にもとづく福祉サービスの全体像を明らかにし、各給付・事業の詳細や障害福祉サービスの利用手続きの流れ、利用者負担額、介護保険サービスとの適用関係、情報公表制度などについてまるっと解説します。
本記事は事業所内研修の資料としてもご活用いただけます。
ぜひ参考にしてくださいね!
【全体像】障害者総合支援法にもとづく福祉サービスの体系
障害者総合支援法にもとづく福祉サービスは、「自立支援給付」と「地域生活支援事業」で構成されています。
自立支援給付は、障害支援区分に応じて介護等のサービスを提供する「介護給付」、自立した社会生活を送るために必要な訓練等を提供する「訓練等給付」などがあり、全国共通の仕組みで実施されているのが特徴です。
みなさんが日々提供している訪問系障害福祉サービスは、介護給付に位置づけられています。そして国がサービスごとに詳細な対象者等を定めており、これに該当すれば全国どの地域でも利用することができます。
一方で、地域生活支援事業は、市町村や都道府県が実施主体となり、地域の特性や利用者の状況に応じて柔軟な形態により実施する事業です。このため、みなさんにとって身近なものである移動支援(ガイドヘルプ)では、実施主体(市町村、特別区、一部事務組合および広域連合)によって対象者や実施方法が異なることから、同一の状態であっても利用できる・できない等といった地域差が発生するサービスとなります。
ちなみに「障害福祉サービス」とは、自立支援給付のうち「介護給付」と「訓練等給付」のことをいいます。
障害者総合支援法の基本理念
障害福祉サービスの根拠法である障害者総合支援法では、基本理念に以下の6つを掲げています。
- 全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されること
- 全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現すること
- 全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられること
- 社会参加の機会が確保されること
- どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと
- 障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資すること
障害者総合支援法の対象者
障害者総合支援法によるサービスの対象者は、次のとおりです。障害者・児だけではなく一部の難病等の方も対象となります。
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者(発達障害、高次脳機能障害を含む)
- 障害児
- 難病等の対象者(※)
※ 令和6年4月より対象となる難病が、366疾病からMECP2重複症候群などが追加される等により369疾病に見直しが行われています。
また先に触れたとおり、各サービスごとに詳細な対象者が定められています。
自立支援給付の概要
介護給付
訪問系 | ||
サービス名 | 対象 | 概要 |
居宅介護 | 者・児 | 居宅において、入浴、排せつ、食事等の身体介護や家事の援助などを行います。 |
重度訪問介護 | 者 | 重度の肢体不自由者または重度の知的障害もしくは精神障害により行動上著しい困難を有する方で常に介護を必要とする障害者に、居宅において身体介護や家事援助ならびに外出時の移動中の介護、入院・入所中の支援などを総合的に行います。
※重度訪問介護は障害児を対象外としていますが、15歳以上の障害児であって、児童福祉法附則第63条の3の規定により児童相談所長が重度訪問介護を利用することが適当であると認め、市町村長に通知した場合は、障害者とみなすことができ、障害者の手続に沿って支給の要否を決定することとされています。 |
同行援護 | 者・児 | 視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等に、外出時において移動に必要な視覚情報の提供(代筆・代読を含む)や移動の援護、排せつ・食事等の外出支援を行います。 |
行動援護 | 者・児 | 知的障害は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等に、危険を回避するために必要な援護や外出支援を行います。 |
重度障害者等包括支援 | 者・児 | 常時介護を要する障害者等であって、意思疎通を図ることに著しい支障がある方のうち、四肢のマヒおよび寝たきりの状態にある方ならびに知的障害は精神障害により行動上著しい困難を有する方に、居宅介護や重度訪問介護など複数のサービスを包括的に行います。 |
日中活動系 | ||
サービス名 | 対象 | 概要 |
短期入所 (ショートステイ) |
者・児 | 居宅において介護者が病気などの場合に、施設等へ短期間の入所を必要とする障害者等に、当該施設で入浴、排せつ、食事などの介護を行います。 |
療養介護 | 者 | 病院において必要な医療を要し常時介護を要する障害者に、病院で機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護および日常生活上の支援を行います。 |
生活介護 | 者 | 常時介護を要する方に、昼間において、入浴、排せつ、食事等の介護っや家事援助ならびに創作的活動または生産活動の機会を提供します。 |
施設系 | ||
サービス名 | 対象 | 概要 |
施設入所支援 | 者 | 施設に入所する障害者に、夜間や休日に入浴、排せつ、食事等の介護などを行います。 |
訓練等給付
居住支援系 | ||
サービス名 | 対象 | 概要 |
自立生活援助 | 者 | 一人暮らしに必要な理解力・生活力等を補うため、定期的な巡回または随時通報を受けて行う訪問や相談対応等により日常生活における課題を把握し、必要な支援を行います。 |
共同生活援助 (グループホーム) |
者 | 共同生活を行う住居で、相談、入浴、排せつまたは食事の介護その他の日常生活上の援助を行います。 |
訓練系・就労系 | ||
サービス名 | 対象 | 概要 |
自立訓練(機能訓練) | 者 | 一定の期間、障障害者支援施設もしくはサービス事業所に通い、または居宅を訪問して、理学療法、作業療法等の訓練を行います。 |
自立訓練(生活訓練) | 者 | 一定の期間、障障害者支援施設もしくはサービス事業所に通い、または居宅を訪問して、入浴、排せつ、食事等に関する自立した日常生活を営むために必要な訓練を行います。 |
就労選択支援 | 者 | 一定の期間、就労または就労の継続を希望する障害者に就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望や就労能力、適性等に合った選択(就労移行支援もしくは就労継続支援または通常の事業所に雇用されること)を支援します。
※就労選択支援は障害者総合支援法の一部を改正する法律(令和4年12月16日公布)により新たに創設されたサービスです。令和7年10月以降は、就労継続支援B型の利用前に、原則として就労選択支援を利用することになります。また、新たに就労継続支援A型を利用する意向がある方や就労移行支援における標準利用期間を超えて利用する意向のある方は、支援体制の整備状況を踏まえつつ、令和9年4月以降、原則として就労選択支援を利用することとなります。 |
就労移行支援 | 者 | 一定の期間、一般企業等への就労を希望する人に、就労に必要な知識・能力の向上のために必要な訓練や求職活動に関する支援、適性に応じた職場の開拓などの支援を行います。 |
就労継続支援(A型・B型) | 者 | 一般企業等での就労が困難な方に、働く場の提供や就労に必要な知識・能力の向上のために必要な訓練などを行います。
※就労継続支援にはA型とB型があり、A型は雇用契約を結ぶ雇用型、B型は雇用契約を結ばない非雇用型になります。 |
就労定着支援 | 者 | 一般企業等に雇用された方の就労の継続を図るため、企業や関係事業者・機関等と連絡調整を行うとともに、就労に伴う日常生活または社会生活を営む上での問題に関する相談などの支援を行います。 |
相談支援
サービス名 | 対象 | 概要 |
地域相談支援 | 者 | ■地域移行支援
■地域定着支援
※指定一般相談支援事業者が実施します。 |
計画相談支援 | 者・児 | ■サービス利用支援
■継続サービス利用支援
※指定特定相談支援事業者が実施します。 |
自立支援医療
自立支援医療は、指定自立支援医療機関から心身の障害を除去・軽減するための必要な医療を受けた障害者・児に対して個別に支給される給付です。
名称 | 対象 | 概要 |
精神通院医療 | 者・児 | 統合失調症や精神作用物質による急性中毒、その他の精神疾患(てんかんを含む)を有する方で、通院による精神医療を継続的に要する病状にある方に対して費用の支給を行います。(※実施主体は、都道府県および指定都市) |
更生医療 | 者 | 身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できるものに対して提供される、更生のために必要な費用の支給を行います。(※実施主体は、市町村) |
育成医療 | 児 | 児童福祉法第4条第2項に規定する障害児で、その身体障害を除去、軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる方に対して提供される、生活の能力を得るために必要な費用の支給を行います。(※実施主体は、市町村) |
補装具費
補装具費とは、身体障害のある方や難病の方の失われた身体機能を補完または代替し、かつ長期間にわたり継続して使用されるものその他の主務省令で定める基準に該当するもの(※1)として、義肢・装具・車椅子等の購入または修理に要する費用を支給する制度です。
※1)その他の主務省令で定める基準に該当するもの
- 障害者等の身体機能を補完し、または代替し、かつ、その身体への適合を図るように製作されたものであること。
- 障害者等の身体に装着することにより、その日常生活においてまたは就労もしくは就学のために、同一の製品につき長期間にわたり継続して使用されるものであること。
- 医師等による専門的な知識に基づく意見又は診断に基づき使用されることが必要とされるものであること。
補装具費の支給範囲が拡大され、購入・修理に加えて障害者等の利便性に照らして「貸与」が適切であると考えられる場合に限り、貸与も支給の対象となりました。
地域生活支援事業の概要
地域生活支援事業は、地域の特性や障害のある方の能力や適性に応じて、自立した日常生活または社会生活を送ることができるように、自治体が中心になって実施する事業です。
また自治体のうち、市町村が行うものを「市町村地域生活支援事業」、都道府県が行うものを「都道府県地域生活支援事業」といいます。そして、次にあげる必須事業を実施するものとされており、地域の実情に応じて次にあげる任意事業を実施することができるとされています。
市町村地域生活支援事業
必須事業
事業名 | 概要 |
理解促進研修・啓発事業 |
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自発的活動支援事業 |
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相談支援事業 |
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成年後見制度利用支援事業 |
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成年後見制度法人後見支援事業 |
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意思疎通支援事業 |
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日常生活用具給付等事業 |
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手話奉仕員養成研修事業 |
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移動支援事業 |
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地域活動支援センター機能強化事業 |
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任意事業
事業名 | 概要 |
日常生活支援 |
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社会参加支援 |
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就業・就労支援 |
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都道府県地域生活支援事業
必須事業
事業名 | 概要 |
専門性の高い相談支援事業 |
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専門性の高い意思疎通支援を行う者の養成研修事業 |
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専門性の高い意思疎通支援を行う者の派遣事業 |
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意思疎通支援を行う者の派遣に係る市町村相互間の連絡調整事業 |
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成年後見制度法人後見支援事業 |
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広域的な支援事業 |
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任意事業
事業名 | 概要 |
サービス・相談支援者、指導者育成事業 |
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日常生活支援 |
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社会参加支援 |
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就業・就労支援 |
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重度障害者に係る市町村特別支援 | 訪問系サービス利用者全体に占める重度障害者の割合が高く、訪問系サービスの支給額が国庫負担基準を超えた市町村のうち、利用者全体に占める重度障害者の割合が一定以上の市町村に対して都道府県が一定の財政支援を行う |
任意事業については、自治体によって実施していない事業等もありますので確認しておきましょう。
児童福祉法による給付・事業
児童福祉法にもとづく障害児を対象とするサービスは、大きく「通所支援」と「入所支援」の2種類に分けられ、市町村が通所支援を、都道府県が入所支援を担います。また、先に解説した障害者総合支援法の福祉サービスも一部利用可能です。
障害児入所支援
事業名 | 実施主体 | 概要 |
福祉型障害児入所施設 | 都道府県 | 施設に入所している障害児に対して、保護、日常生活の指導および知識技能の付与を行います。 |
医療型障害児入所施設 | 都道府県 | 施設に入所または指定医療機関に入院している障害児に対して、保護、日常生活の指導および知識技能の付与並びに治療を行います。 |
障害児入所支援を利用する場合は、児童相談所に相談して都道府県に支給申請し、支給決定を受けて利用開始となります。
障害児通所支援
事業名 | 実施主体 | 概要 |
児童発達支援 | 市町村 | 日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練などの支援を行います。 |
医療型児童発達支援 | 市町村 | 日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、 集団生活への適応訓練などの支援および治療を行います。 |
放課後等デイサービス | 市町村 | 授業の終了後又は休校日に、児童発達支援センター等の施設に通わせ、生活能力向上のための必要な訓練、社会との交流促進などの支援を行います。 |
居宅訪問型児童発達支援 | 市町村 | 重度の障害等により外出が著しく困難な障害児の居宅を訪問して発達支援を行います。 |
保育所等訪問支援 | 市町村 | 保育所、乳児院・児童養護施設等を訪問し、障害児に対して、障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援などを行います。 |
障害児通所支援を利用する場合は、次に説明する障害児相談支援事業者等と利用計画案を作成、市町村に提出し、支給決定を受けて利用開始となります。
障害児相談支援
事業名 | 概要 |
障害児相談支援 | ■障害児利用援助
■ 継続障害児支援利用援助
※指定障害児相談支援事業者が実施します。 |
障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)の利用手続きの流れ
障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)を利用するためには、市町村に申請し、市町村から支給決定を受ける必要があります。ここではサービス利用に至るまでの流れを7つに分けて解説します。
①受付・申請
居住地の市町村に対して介護給付・訓練等給付の支給申請書類等を提出し、利用申請を行います。
②障害支援区分の認定
障害支援区分の判定等のため、市町村の認定調査員が申請のあった本人等と面接をし、3障害および難病等対象者共通の調査項目等について聞き取り調査を行います。そして認定調査の結果や医師意見書をもとにコンピュータによる一次審査を行い、市町村審査会における二次判定をへて、障害支援区分の認定となります。
障害支援区分とは、障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを総合的に示す6段階の区分です。非該当・1・2・3・4・5・6に分けられ、数字が増すごとに支援の度合いが高くなります。障害者総合支援法において、支給決定手続の透明化・公平化を図る観点から市町村がサービスの種類や量などを決定するための判断材料の一つとして導入されており、支給決定の過程で認定されます。
なお、以下については障害支援区分の認定は行われません。
- 同行援護:介護給付のうち同行援護の場合は、障害支援区分の認定を必要としていないため障害支援区分3以上支援加算の支給決定が見込まれる場合を除き、認定調査は行われません。(同行援護アセスメント調査票により調査が行われます。)
- 訓練等給付:訓練等給付の場合は、共同生活援助に係る支給申請のうち、入浴、排せつまたは食事等の介護を伴う場合を除き、障害支援区分の認定は行いません。
- 障害児:障害支援区分は障害者を対象としており、障害児は直ちに使用可能な指標が存在しないことから障害支援区分は設けていません。
③サービス等利用計画案の作成・提出
特定相談支援事業所と計画相談支援の契約を結びます。相談支援専門員が自宅を訪問して障害の状況や生活に関する希望、障害福祉サービスの利用意向などを聴き取り、サービス等利用計画案を作成、市町村に提出します。
なお、サービス等利用計画案の作成は、利用者本人や家族、サービス事業所などが特定相談支援事業所に代わって作成・提出することも可能です。これをセルフプランといいます。
④支給決定
市町村は、サービス等利用計画案や障害支援区分、その他勘案事項を踏まえてサービスの支給量等を決定し、負担上限月額と併せて申請者に通知するとともに障害福祉サービス受給者証を交付します。
⑤サービス担当者会議
特定相談支援事業者は、利用者の意向を踏まえた効果的かつ実現可能な質の高いサービス等利用計画を作成するために、各サービスが共通の目標を達成するための具体的なサービスの内容についてサービス等利用計画案に位置づけた福祉サービス等の担当者からなるサービス担当者会議を開催します。
サービス担当者会議では、利用者の望む生活やサービスへの希望等を改めて参加者全員で共有した上で、計画案の内容説明や専門的な見地から意見交換を行います。
⑥サービス等利用計画の作成
特定相談支援事業者は、サービス事業者等との連絡調整を行い、実際に利用する「サービス等利用計画」を作成します。
⑦サービス利用開始
障害福祉サービス事業者は発行された受給者証を確認し、サービス利用契約を結びます。
訪問障害福祉サービス事業者であれば、サービス等利用計画を踏まえて個別支援計画(居宅介護計画や重度訪問介護計画)を作成し、利用者等へ説明・同意を得て交付(併せて個別支援計画を特定相談支援事業所にも交付)、サービス利用を開始します。
特定相談支援事業者は、相談支援専門による定期的なサービス利用状況の確認(モニタリング)や生活環境・心身状態の変化に応じた計画の見直しなどが行われます。
障害福祉サービス等の利用者負担
障害福祉サービス等の利用にあたっては、利用するサービス等に応じて利用者負担が発生します。
ここでは障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、相談支援、補装具費の利用者負担について解説します。
なお地域生活支援事業については、自治体により異なりますので各自治体の取り扱いを確認してください。移動支援を例にあげると、市町村によって利用者負担が発生しない(無料)の所もあります。
障害福祉サービスの利用者負担
障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)の利用者負担は、応能負担(家計の負担能力に応じた負担)を原則としています。また、下表のとおり4区分の負担上限月額が設けられており、ひと月に利用したサービス量に関わらず、それ以上の負担は発生しない仕組みとなっています。(上限月額に至るまでは費用の1割を負担)
■障害者
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯(※1) | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満※2) ※施設入所利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く(※3) |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※1:3人世帯で障害基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象
※2:収入が概ね600万円以下の世帯が対象
※3:入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合「一般2」となる
■障害児
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 | |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 | |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 | |
一般1 | 市町村民税非課税世帯(所得割28万円未満※) | 訪問系障害福祉サービス、日中活動系障害福祉サービス等利用の場合 | 4,600円 |
入所施設利用の場合 | 9,300円 | ||
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※収入が概ね890万円以下の世帯が対象
■所得を判断する際の世帯の範囲
種別 | 世帯の収入状況 |
18歳以上の障害者 (施設に入所する18、19歳を除く) |
障害のある方(本人)とその配偶者 |
障害児 (施設に入所する18、19歳を除く) |
保護者の属する住民基本台帳での世帯 |
利用者負担の軽減措置
先ほど解説した負担上限月額の他にも、さまざまな軽減措置が設けられています。
高額障害福祉サービス等給付費
高額障害福祉サービス等給付費は、同一世帯に障害福祉サービス等を利用する者が複数いる場合などに、世帯の負担を軽減する観点から、世帯における利用者負担を負担上限月額まで軽減を図るために支給される給付費です。
世帯における利用者負担額が、基準額を超える場合に、償還払い方式により高額障害福祉サービス等給付費等が支給されます。(下表※1)
(1)一人当たりの支給額 |
※端数が生じた場合は世帯での負担額が基準額と同額になるよう、適宜割り振って端数を処理する ■支給決定障害者等按分率=支給決定障害者等利用者負担合算額(一人当たりの(2)①~⑤の負担額)/利用者負担世帯合算額 ※支給決定障害者等按分率を算定する際には、端数処理しない |
(2)合算の対象とする費用 | 同一世帯に属する者が同一の月に受けたサービス等によりかかる①~⑤の負担額を合算します。
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(3)高額障害福祉サービス等給付費等算定基準額(※2) |
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※1) 18歳未満の兄弟で障害児入所施設に入所している場合など、障害児入所支援を受ける障害児が同一の世帯に複数いる場合の利用者負担額については、入所給付決定保護者は一人であることから、当該保護者について一の障害児入所支援負担上限月額が適用されます。(高額障害児入所給付費によって償還が行われるものではない。障害児通所給付費も同様。)医療部分(食事療養に係る標準負担額を含む。)に係る利用者負担額については、高額療養費として償還されるものであり、高額障害児通所給付費または高額障害児入所給付費による償還の対象となりません。※2) ① 世帯見直し対象者は障害者とその配偶者に係る負担額のみを合算します。ただし、住民票上の同一世帯に障害児がいる場合は当該障害者を含めて障害児に係る高額障害福祉サービス等給付費等を算定します。なお、障害児の保護者が障害者である場合は当該障害者および配偶者のみで障害児に係る高額障害福祉サービス等給付費等を算定することなります。 ② 生活保護への移行予防措置の適用を受け、低所得者(市町村民税非課税世帯に属する者)として扱われている者については、当該額とします。 ③ 高額障害福祉サービス等給付費等の特例については、以上の他に、(1)費用の合計(2(1)②関係)、(2)障害児の特例があります。※3) 平成22年4月から、低所得者(市町村民税非課税世帯に属する者)の負担上限月額および高額障害サービス等給付費算定基準額が0円となることに伴い、低所得者については、特例介護給付費等を受けた場合にのみ、高額障害福祉サービス等給付費が支給されることとなります。 |
新高額障害福祉サービス等給付費
新高額障害福祉サービス等給付費は、平成30年4月より追加された高齢障害者の介護保険サービス利用者負担軽減措置です。障害福祉サービスを利用してきた方が、65歳になり介護保険サービスに移行すると、利用者負担が増加してしまうという事態を解消するため、利用者負担を軽減する仕組みが設けられています。
(1)対象者要件 |
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(2)対象となるサービス(介護保険相当障害福祉サービスおよび障害福祉相当介護保険サービス)(※2) | 同一世帯に属する者が同一の月に受けたサービス等によりかかる①~⑤の負担額を合算します。
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※1)入院その他やむを得ない事由とは、60歳から65歳の期間において、入院や震災等により、支給決定に係る申請を行うことができなかった場合等が該当します。 ※2)介護保険相当障害福祉サービスおよび障害福祉相当介護保険サービス共に、基準該当サービスを含みます。 ※3)介護予防サービスおよび地域密着型介護予防サービスは含まれません。 |
サービス固有の負担軽減策
対象サービス | 対象者 | 内容 | |
施設入所支援 | 20歳以上 | 生活保護 | ■補足給付
食費・光熱水費の実費負担の軽減(手元に一定額(少なくとも25,000円)が残るよう補足給付) |
低所得(低所得1・2) | |||
20歳未満 | 所得要件なし | ■補足給付
食費・光熱水費の実費負担の軽減(地域で子どもを養育する費用と同額の負担となるよう補足給付) |
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グループホーム(重度障害者等包括支援の一環として提供される場合を含む) | 生活保護 | ■補足給付
月額1万円を上限として家賃を補助(家賃の月額が1万円を下回る場合は、当該家賃の額を補足給付の額として決定) |
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低所得(低所得1・2) | |||
療養介護 | 20歳以上 | 市町村民税非課税世帯 | ■医療型個別減免
負担上限月額を超える部分について減免 |
20歳未満 | 所得要件なし | ■医療型個別減免
負担上限月額を超える部分について減免(地域で子どもを養育する世帯と同程度の負担となるよう、限度額を上回る額について減免) |
生活保護への移行防止策
負担軽減策を講じても、自己負担や食費等実費を負担することにより、生活保護の対象となる場合には、生活保護の対象とならない額まで自己負担の負担上限月額や食費等実費負担額を引き下げが行われます。
通所施設利用時の減免(障害児)
障害児の通所施設については、低所得世帯と一般1は食費の負担が軽減されます。
所得階層 | 食費 |
低所得 | 2,860円 |
一般1 | 5,060円 |
一般2 | 11,660円(※軽減なし) |
※月22日利用の場合。なお、実際の食材料費は施設により設定されます。
相談支援の利用者負担
地域相談支援・計画相談支援は、すべての利用者に対して利用者負担はありません。無料で利用できます。
補装具の利用者負担
補装具に係る利用者負担は、障害福祉サービスと同様に応能負担となっており、利用者の世帯における所得に応じて負担上限月額が設定され、上限月額に至るまでは費用の1割を負担することになります。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯(※1) | 0円 |
一般 | 市町村民税非課税世帯(※2) | 37,200円 |
※1:市町村民税非課税世帯(例…3人世帯で障害基礎年金1級受給の場合、概ね300万円以下の収入)
※2:世帯最多課税者の所得割が46万円以上の場合は、支給対象外
■所得を判断する際の世帯の範囲
種別 | 世帯の収入状況 |
18歳以上の障害者 (施設に入所する18、19歳を除く) |
障害のある方(本人)とその配偶者 |
障害児 (施設に入所する18、19歳を除く) |
保護者の属する住民基本台帳での世帯 |
障害福祉サービスと介護保険サービスの適用関係
これまで解説してきた障害福祉制度と介護保険制度には、それぞれさまざまなサービスが設けられていますが、サービス内容や機能から、障害福祉サービスに相当する介護保険サービス(※1)がある場合は、社会保障制度の原則である保険優先の考え方のもと、原則介護保険サービスの利用が優先されます。
ただし、上記図のとおり介護保険サービスには相当するものがない障害福祉サービス固有のサービス(※2)については、介護保険サービスと別に利用(併用)可能です。
また、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合であっても、一律的に介護保険サービスを優先的に利用するものではなく、申請者の個別の状況に応じ、申請に係る障害福祉サービスの利用に関する具体的な内容(利用意向)を聞き取りにより把握した上で適切に判断することとされています。
※1)障害福祉サービスに相当する介護保険サービス
相当するサービス | ||
居宅介護・重度訪問介護 | ⇔ | 訪問介護 |
生活介護 | ⇔ | 通所介護(デイサービス) |
短期入所(ショートステイ) | ⇔ | 短期入所(ショートステイ) |
※2)障害福祉サービス固有のサービス
・行動援護、同行援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援など
介護保険サービスの対象者
- 65歳以上の第1号被保険者
- 40歳以上65歳未満の第2号被保険者で、加齢に伴う疾病(16の特定疾病※)をお持ちの方
障害福祉サービスの利用者が、上記に該当し要介護認定を受けた場合であって、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、原則として介護保険サービスに移行することになります。
※16の特定疾病 | |
①末期がん(医師が一般に認められている知見にもとづき回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの) | ⑨脊柱管狭窄症 |
②関節リウマチ | ⑩早老症 |
③筋萎縮性側索硬化症 | ⑪多系統萎縮症 |
④後縦靱帯骨化症 | ⑫糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症 |
⑤骨折を伴う骨粗鬆症 | ⑬脳血管疾患 |
⑥初老期における認知症 | ⑭閉塞性動脈硬化症 |
⑦進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病 | ⑮慢性閉塞性肺疾患 |
⑧脊髄小脳変性症 | ⑯両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 |
みなし2号とは、第2号被保険者でない40歳~65歳未満の生活保護受給者(特定疾病により要支援・要介護の認定がある生活保護受給者)を指します。第2号被保険者と“みなして”、同等のサービスが受けられるように、生活保護の「介護扶助」で介護報酬の全額(10割)が支払われます。
この「みなし2号」の利用者の場合は、生活保護の「補足性の原理」により障害者総合支援法の給付が優先されます。つまり、例えば障害福祉サービスの居宅介護と介護保険サービスの訪問介護であれば、みなし2号の方は、訪問介護は利用できず、居宅介護を利用することになるということです。
ただし、みなし2号の方が65歳に到達すると、第1号被保険者となり、介護保険サービスに切り替わりますので注意が必要です。
併用が可能となる要件
先のとおり障害福祉サービスの利用者が、介護保険サービスの対象者となった場合に、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスにより必要な支援を受けることが可能と判断される場合は、基本的には障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)の支給(併用)は受けられません。
ですが、以下に該当し、適切なサービス量が介護保険サービスのみによって確保することができないと認められる場合等には、個別のケースに応じて障害福祉サービスを利用することが可能とされています。
■具体的な要件
- 在宅の障害者で、申請に係る障害福祉サービスについて市町村において適当と認める支給量が、当該障害福祉サービスに相当する介護保険サービスに係る介護保険サービスの区分支給限度額の制約から、介護保険のケアプラン上において介護保険サービスのみで確保することができないと認められる場合
- 利用可能な介護保険サービスに係る事業所や施設が身近にない、あっても利用定員に空きがないなど、障害者が実際に申請に係る障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用することが困難と市町村が認める場合(当該事情が解消するまでの間に限る)
- 介護保険サービスによる支援が可能な障害者が、介護保険の要介護認定等を受けた結果、非該当と判定された場合など、当該介護保険サービスを利用できない場合であって、申請に係る障害福祉サービスによる支援が必要と市町村が認めるとき(介護給付費に係るサービスについては、必要な障害支援区分が認定された場合に限る)
訪問系障害福祉サービスでよくあるのが、居宅介護や重度訪問介護の利用者であって、個々の障害者の障害特性を考慮し、介護保険の訪問介護の支給限度額では必要な支給量が不足する場合などにおいて訪問介護と併用するケースです。
この場合、不足分を上乗せとして障害福祉サービスの居宅介護や重度訪問介護で補填する形で支給決定されます。
障害福祉サービスの情報公表制度
障害福祉サービス等の利用者が、個々のニーズに応じた良質なサービスの選択や事業者が提供するサービスの質の向上に資することを目的として、平成30年度より「障害福祉サービス等情報公表制度」が施行されています。
障害福祉サービスを提供する事業者は、事業内容等について都道府県知事等に報告する義務があるとともに、都道府県知事等は事業者から報告された内容を公表しなければなりません。
なおサービス事業者が都道府県知事等に報告した内容は、独立行政法人福祉医療機構が運営する「障害福祉サービス等情報検索」上で公表されます。
公表対象となるサービスの種類、事業者
対象となる障害福祉サービス等の種類 | ■指定障害福祉サービス(共生型障害福祉サービスを含む)
■指定地域相談支援
■指定計画相談支援 ■指定通所支援
■指定障害児相談支援 ■指定入所支援(指定発達支援医療機関が行うものを除く)
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対象となる事業者 |
※上記の「実施要綱」は、都道府県知事等が毎年度策定します。(「基準日」は4月1日)所管の自治体ホームページ等に実施要綱が公開されていますので、確認しておきましょう。 |
主な報告・公表事項
①基本情報 |
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②運営情報 |
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報告内容に係る調査
サービス事業者が都道府県知事等に報告した内容は、都道府県知事等が公表を行うため必要と認める場合に、報告が真正であることを確認するのに必要な限度において「調査」を行うことができるとされています。
調査を実施することが適当な場合としては、
- 報告された内容に虚偽が疑われるとき
- 公表内容について、利用者から苦情等があったとき
- 指定障害福祉サービス等に係る実地指導を行うとき
- その他(食中毒や感染症の発生、火災、虐待等の問題が生じたとき等)
などが考えられ、面接調査等により先の基本情報および運営情報について確認されることとなります。
都道府県知事等は、情報公表に係る報告を行っていない、または虚偽の報告をする、または調査を妨げたサービス事業者に対して、期間を定めて、報告内容の是正や調査を受けることを命令することができます。そして、この命令に従わなかった場合、「指定取り消し」等の対象となりますので十分に注意してください。
情報公表未報告減算の新設
令和6年度の報酬改定により、利用者への情報公表、災害発生時の迅速な情報共有、財務状況の見える化の推進を図る観点から、情報公表に係る報告がされていない場合に所定単位数を減算する「情報公表未報告減算」が新設されました。
対象サービスおよび減算率は以下のとおりです。
対象サービス | 単位数 |
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所定単位数の10%を減算 |
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所定単位数の5%を減算 |
訪問系障害福祉サービスの場合は、5%の減算です。
情報公表に係る報告は、面倒な作業と思うかもしれませんが、先のとおり指定取り消しの事由となったり、減算が適用されたりしてしまいますので、必ず行ってくださいね。
さいごに
障害者総合支援法まるわかりガイドは以上となります。本ガイドをしっかり把握できれば相談支援専門員や利用者に対して、より高度な提案や情報提供ができるはずです。一部省略しているところもありますが、押さえておくべき内容はすべて網羅していますので繰り返し読み学んでくださいね。