訪問介護でおこなう通院介助は医療と利用者をつなぐ役割を持ったサービスです。
利用頻度が高いサービスであるものの、「ただ利用者を病院に連れていけば良い」と安易に考えているヘルパーが多かったりします。
ですが、通院介助は注意すべきポイントが多く、正しい知識を身に着けておく必要があります。
そこで今回は
- 通院介助の具体的な「流れ」と「介助内容」
- 通院介助を算定する上での4つの注意点
- 通院介助で良くあるQ&A
を初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
訪問介護の「通院介助」とはどんなサービス?
訪問介護でおこなう通院介助は、利用者の病院受診に付き添い、介助するサービスを指します。
利用者の中には自力での通院が難しい方も多いので、通院介助は利用者の健康や生命に直結する重要なサービスとなります。
通院介助の「具体的な流れ」とヘルパーがすべき介助
イメージしやすいように一般的な通院介助の流れと介助内容を紹介しておきます。
- STEP1「自宅を訪問」
利用者宅に訪問し、体調確認を行います。
- STEP2「通院準備」
通院準備では更衣や診察券や保険証を用意します。
一人で準備ができる利用者であっても持ち物確認は行っておきましょう。
- STEP3「利用者宅から交通機関までの介助」
交通機関はバス、電車、タクシーなど様々です。
バス、電車の場合は時刻表を調べておき間に合うように移動します。
タクシーの場合はあらかじめ呼んでおくとスムーズです。
移動については徒歩や車いすなど利用者の状態に合わせて介助します。
※交通機関を利用せず、家から近所の病院へ通院することもあります。
- STEP4「交通機関への乗り降りの介助」
車いすの場合でバス、電車を利用するのであればスロープを用意してもらい乗車します。
転倒に注意しながら乗り降りの介助を行います。
- STEP5「車内での気分確認などの援助」
乗車した途端、体調不良になる利用者は多いです。車内では気分の確認を行います。
- STEP5「交通機関から病院までの介助」
下車後、病院まで移動します。
- STEP5「受診手続きなど」
病院到着後、受付に保険証や予約票などを提出します。
- STEP5「院内での安全確保、移動、排泄などの介助」
院内では必要に応じて「検査室への移動」や「排泄の介助」を行います。
- STEP5「診察」
診察時には基本的に主治医と利用者との間で話をしてもらいます。
補足としてヘルパーから主治医に利用者の日常生活での様子(食事、運動、排泄、服薬状況、病状など)について伝えましょう。
主治医から指示などがあればメモをとっておき後にケアマネや家族などへ報告します。
- STEP5「会計、次回予約など手続き」
診察後に会計、次回予約の手続きを行います。
- STEP5「薬の受け取り」
病院の帰りに調剤薬局に寄り、処方箋を提出して薬を処方してもらいます。
利用者の体調に応じて、一旦自宅に帰宅した後にヘルパーが単独で薬をもらいに行くこともあります。
- STEP5「記録を記入し退室」
利用者宅に帰宅し、記録を記入し退室します。
理解力に乏しい利用者であれば、帰宅後に主治医からの話を分かりやすく伝えてあげると尚良いです。
あくまでも一般的な例ですが、大体このような流れで通院介助は行われています。
通院介助を算定する上での4つの注意点
通院介助で最も注意すべきポイントは「介護報酬の算定」についてです。
主に下記4つの注意してください。
- 通院介助は必ず「居宅が起点」でなければならない
- 通院介助には「通院準備」も含まれる
- 「院内の介助」は原則、算定できない
- 通院介助は「記録に残す」ことが大切
① 通院介助は必ず「居宅が起点」でなければならない
訪問介護は本来、利用者の居宅内で行われるサービスです。
そのため通院介助などの外出介助では必ず居宅が起点となりサービス開始する必要があります。
例えば、下記のパターンは対象外となります。
- 病院で待ち合わせて院内のみ付き添う
- 病院で待ち合わせて、そのまま他の病院に付き添う
- 友人の自宅から病院まで付き添ってほしい
「目的地が病院であればなんでも良い」と勘違いされやすいのですが、必ず自宅から出発しないといけないと頭に入れておきましょう。
② 通院介助には「通院の準備」も含まれる
通院介助には利用者の居宅における準備や交通機関の乗降、車両内の気分確認、受診手続き、会計手続きなどを含む一連の行為を算定することができます。
ただし、交通機関の車内において「気分不良の確認などを行わず、ただ横に座っている」といった場合は算定できませんので注意してください。
③ 「院内の介助」は原則、算定できない
原則として訪問介護における通院介助では院内介助の算定は不可とされています。
理由としては、「基本的に病院内では病院のスタッフが介助するもの」と考えられているためです。
病院側の介助体制が整っている場合は、病院側のスタッフが優先的に介助を行わなければなりません。
とはいえ、介助体制が整っている病院など現実的にほとんどありませんので、例外的に院内介助を算定できるケースがあります。
例外的に「院内介助」を算定できるケース
厚生労働省老健局振興課「訪問介護における院内介助の取り扱いについて」によると
「適切なマネジメントを行った上で、院内スタッフ等による対応が難しく、利用者が介助を必要とする心身の状態であること」を前提とした上で下記の行為は院内介助として算定可能となります。
- 院内の移動に介助が必要な場合
- 認知症などの疾患から常時見守りが必要な場合
- 排泄介助を必要とする場合
ただし「単なる待ち時間」や「診察室内」「検査室内」などについては算定対象となりませんので注意してください。
自治体によって院内介助の取り扱いには差がある
いわゆるローカルルールというやつですが、自治体によって院内介助の取り扱いは微妙に差があります。
例えば、大阪市では院内介助の算定要件を下記のとおり定めています。
○以下の確認ができた場合に対応が可能とします。
- 院内介助が必要な状態であることを確認する。利用者の状態とどのような内容のサービスが必要であるかを明確にすること。
- 院内介助が必要な状態である場合、受診先の医療機関に院内介助の体制があるか否かを確認する。院内介助の体制がない場合、その旨を居宅介護支援経過に記録する。(対応できない理由、必要なサービス内容。「院内介助が必要」だけの記録では不十分)
- 1、2の状況をもって、サービス担当者会議で検討した結果、利用者の状態等から院内での介助が必要であることの判断がなされた場合、サービス担当者会議の記録にその旨を明記すること
多くの自治体は同じような感じですが、細かく院内介助の取り扱いは定められていますので、気になる方は問い合わせてみることをおすすめします。
④ 通院介助は「記録に残す」ことが大切
通院介助を行った場合は「通院介助記録」を毎サービスごとに残しておく必要があります。
理由としては正しく保険請求がなされていることの「証拠」となるためです。
前述のとおり、通院介助は保険給付の対象となる部分が難解なので、記録には算定の可否を明確に分けて記載する必要があります。
実地指導時にも通院介助記録は確認されるため必ず整備しておきましょう。
通院介助記録については下記で深掘りしてますので良かったらどうぞ。
>>【記入例あり】正しい通院介助記録の書き方を現役サ責が解説
通院介助は「自費サービス」をうまく組み合わせると良い
訪問介護の通院介助では介護報酬が発生しない時間帯だからと言って、その場を離れるわけにもいかないのも実情です。
例えば、診察室の中などは特にです。
診察時は自宅での利用者情報を主治医に伝える必要もありますし、主治医からの話も聞いてケアマネや家族に報告しなければなりません。
このような場合は自費サービス(介護保険外サービス)を活用すると良いです。
自費サービスであれば介護報酬が発生しない時間帯も対応できるので、あらかじめ利用者・家族に説明して契約しておくようにしましょう。
自費サービスについては下記で詳しく解説してますのでご参考ください。
>>【介護保険外】訪問介護でおこなう『自費サービス』とは?注意すべき5つのポイントを解説
訪問介護の通院介助でよくあるQ&A
ここでは訪問介護の通院介助について良くある質問と答えを紹介しておきます。
Q:病院への受診後に買い物に付き添っても良いのか?
- 可能としている自治体が多いです。
最終的には自治体の判断によりますが、病院の帰りに買い物に行くことの必要性、合理的な理由を明確にしたうえで、ケアプラン・訪問介護計画に位置付けておくことが必要となります。
例えば、大阪府堺市では下記の場合はOKとしています。
- 複数の医療機関への通院介助
- 買い物が必要な利用者であって、定期的な通院に連続して買い物を行う場合
- 買い物同行や買い物代行が位置付けられている利用者であって、随時の通院に連続して当該買い物を行う場合
上記の1~3については、居宅外から居宅外(病院⇒病院、病院⇒スーパー等)の身体介護も含めて算定することができます。
3については例えば、水曜日に買い物同行が位置付けられている利用者で、通院日が水曜日となったためその通院帰りに買い物を行う場合や、通院日が火曜日となったため水曜日の買い物を火曜日の通院帰りに変更して行う場合など。
また他の自治体では「病院と自宅の経路上にあるスーパーしか認めない」と、している地域もありますので事前に自治体へ連絡し調べておくことをおすすめします。
Q:連続して2か所の病院への通院介助はできる?
- 可能です。
仮に自宅→A病院→自宅→B病院→自宅とした場合、利用者への負担がかなりかかってしまいます。そのため基本的には問題ありません。
ただしこれも先ほどの堺市の通知のとおり、ケアプランに連続して通院を行う必要性と病院間の移動が合理的であること分かるように記載している必要がありますので注意しておきましょう!
Q:診察券を先にヘルパーが病院へ出しに行っても良い?
- 可能です。
待ち時間を短縮するために先に診察券を出しておいて後で通院介助を行っても問題ありません。
ただし下記のように算定してください。
- 午前9時:ヘルパーが診察券をだす(20分)
- 午前10時30分:通院介助(50分)
一連のサービス行為とみなす必要があるので、1回の訪問介護として算定します。
なのでこの場合は身体2生活1となります。
Q:入院時、退院時の手続きを通院介助で行うことはできる?
- 基本的できません。
理由としては入退院の付き添いは家族が行うものだとされているからです。
ただし、下記の場合は通院介助を行える可能性はあります。
- 独居の利用者
- 家族がいない、または要介護状態にある
- 移動に特別な配慮が必要な場合(寝たきりなど、家族が対応困難なケース)
ケアマネがアセスメントを行い、ケアプランに入退院時の付き添いを訪問介護でしか対応できない根拠を明確に記載しておく必要があります。
Q:退院日に訪問介護サービスの利用はできる?
- 退院日に通常のサービスを居宅内で行うことはOKです。
これは通院介助とは若干ズレていますが良くある質問なので載せておきます。
退院日の介護保険サービスの利用については厚生労働省によると下記のとおり。
介護老人保健施設及び介護療養型医療施設の退所(退院)日又は短期入所療養介護のサービス終了日(退所・退院日)については、訪問看護費、訪問リハビリテーション費、居宅療養管理指導費及び通所リハビリテーション費は算定できない。訪問介護等の福祉系サービスは別に算定できるが、施設サービスや短期入所サービスでも、機能訓練やリハビリテーションを行えることから、退所(退院日)に通所介護サービスを機械的に組み込むといった居宅サービス計画は適正でない。
(平成12年3月1日老企第36号より抜粋)
Q:入院中の外泊時に訪問介護サービスは利用できる?
- 入院中の外泊時の利用はできません。
入院中は、医療保険の管轄内にあるため介護保険サービスの利用はできないです。
Q:鍼灸、接骨院、マッサージへの通院介助は可能?
- 自治体によって異なります。
自治体により「医師がいる所ではないとNG」「医療保険の対象でないとNG」としているところもあれば
利用者の状況に応じて必要であれば認められるところもあります。
例えば大阪府堺市では下記の場合はOKとしています。
医療保険対象か否かではなく
- その通院が日常生活上必要かどうか
- 要介護者等の身体の状況等から通院のための介助が必要かどうか
この二点を満たすかどうかで個別的に判断する必要がある。
ただし、治療のためではなく単なる慰安を目的とするものは介護給付費を算定することはできない。
障害福祉サービスにおける通院介助の取り扱いについて
障害福祉サービス(居宅介護や重度訪問介護など)を一体的に行っている訪問介護事業所は多いと思います。
障害福祉サービスにおける通院介助は取り扱いに違いがありますので注意が必要です。
下記にまとめてますので参考にしてみてください。
最後に
今回は訪問介護の通院介助について解説しました。
通院介助は制度面での知識をしっかり持っておく必要がありますので取り扱いに注意が必要です。
また当サイトではホームヘルパー・サービス提供責任者の初心者向けに業務マニュアルを無料で公開しています。
良かったら下記から参考にしてみてください!
※ホームヘルパーはこちら
※サービス提供責任者はこちら