訪問介護事業所の中心的存在なサービス提供責任者。
サービス提供責任者は訪問介護事業所で働く役職名であり、どの訪問介護事業所でも働いており、サービス提供責任者の配置は必須となっています。
訪問介護事業所はサービス提供責任者で成り立っていると言っても過言ではありません。
今回は現役サービス提供責任者がサービス提供責任者の仕事に関して
どこよりも詳しく、リアルな現場に沿った形で説明します。
将来サービス提供責任者として勤務を考えているヘルパーや、
将来訪問介護事業所で働こうと考えている介護士の方々などは是非参考にしてくださいね。
サービス提供責任者の仕事内容とは?
サービス提供責任者の業務は多岐に渡ります。仕事内容を分かりやすく大きく分類すると
- ヘルパーに対しての業務
- ケアマネ等の外部機関に対しての業務
- 利用者に対しての業務
- 事務的な業務
の4つの業務に分けられます。

ヘルパーさんは基本的に利用者に対してのみの仕事ですが、それに対してサービス提供責任者になると仕事の幅が全然違いますね。最初は結構大変です・・・それぞれを見ていきましょう!!
ヘルパーに対しての業務
サービス提供責任者はヘルパー達のまとめ役的存在です。ではさっそく実際の現場ではどのような役割があるのか見ていきましょう。
仕事の調整
代表的なものとしては、ヘルパーとの仕事の調整業務があります。多数いるヘルパーに対してケアサービスを割り振る業務です。
通常訪問介護事業所は数名のサービス提供責任者と正社員のヘルパー、多数の登録ヘルパーで成り立っています。サービス提供責任者は正社員のヘルパーと登録ヘルパーにそれぞれ仕事をあてがう調整を行います。
そのためには、ヘルパー(特に登録ヘルパー)の働ける時間帯、訪問できるエリア、得意不得意な仕事、性格などを把握しつつ、ヘルパーに稼働してもらわらなければいけません。
この調整力がしっかりとしているサービス提供責任者であれば、仕事の割り振りに無駄がなく運営も順調に行きます。

まずはヘルパーさん達の人となりを知ることから始めましょう!!色々なヘルパーさんがいますよー。
サービス状況の把握と情報の共有
サービス提供責任者は利用者の状態や提供しているサービスの状況がどのようになっているかを常に把握している必要があります。
サービス提供責任者も介護業務も行いますが、すべての利用者のサービスに行くわけではありません。利用者に一番近い所でサービスを常に提供しているのはヘルパーの方々になります。
そのためヘルパーと連絡を密にとり現場での状況を把握できる体制をとっておく必要があります。
またサービスの方針や細かい決め事は、利用者の状況や状態に応じて日に日に変化していきます。決まった事を各ヘルパーに伝達し統一したサービスを提供できるようにすることもサービス提供責任者の大事な業務になります。

ヘルパーさんとの信頼関係を築くためにはヘルパーさんの話をどれだけ聞いたかが大事です!!毎日の積み重ねが信頼関係を生みます。
指導と助言
ヘルパーに対しての指導と助言も大事な業務の一つです。ヘルパーの中には非常に仕事ができる人もいますが、反対に仕事があまりできない方もいます。
例えば仕事を時間内に終わらせることが難しいヘルパーや利用者からの苦情が多い等のヘルパーにはサービス提供責任者からの指導を行います。時には直接現場に行き指導することも大事です。
他にも対応が難しい利用者、いわゆる困難ケースに行っているヘルパーへの助言を行うことも大切な仕事の一つです。出来るだけ仕事がスムーズに出来るようにアドバイスを行います。

訪問介護では新人のヘルパーさんには特にこまめに指導や助言が必要です。知らない間に我流のケアをしてしまって将来的に取り返しのつかないヘルパーさんが育ってしまいます。泣。
内部研修

研修はスキルアップの為だけではなく、普段顔を合わさないヘルパーさん同士が交流できる良い機会にもなります!!
外部機関に対しての業務
介護サービスはチームケアで成り立っています。それは在宅介護においても同じで、様々な外部機関と協力しあってサービスを提供していきます。
ケアマネジャーとの連携業務
訪問介護事業所の仕事はケアマネジャーからの紹介が大半です。そのため、ケアマネジャーとの連携が必須になります。
利用者の状態変化などあらゆることに対してケアマネジャーに連絡し報告を行い時にはサービスの変更をしてもらったり。伝達するのはサービス提供責任者ですし、ケアマネジャーの窓口の役割をしています。

サービス提供責任者は事業所の顔です。新規利用者獲得のためにケアプランセンターに営業に行くこともあります。
他事業所との連携業務
サービス提供責任者はケアマネジャー以外にも他の介護事業所とのやりとりも行います。
在宅介護では訪問看護、デイサービス、在宅医、福祉用具、薬剤師、など様々な事業所が関わっています。通常はケアマネージャーを通して他の事業所と連携を図っていくことになりますが直接連絡し連携をとる場面もあります。

特に訪問看護とは連携をとることが多いです。利用者さんによっては医療と介護の連携を密にとってサービスを行っていきます。
他には複数の訪問介護事業所で同じ利用者さんのサービスを提供する場合等は、訪問介護事業所同士で連携を取り合うこともあります。
担当者会議や退院前カンファレンスへの出席

入院していた利用者さんの場合はカンファレンス後に在宅復帰→自宅で担当者会議→サービス開始の流れが一般的ですね。
利用者に対しての業務
訪問介護事業所にとっての顧客である利用者に対してはどういった役割があるのでしょうか。
介護業務
サービス提供責任者は現場の介護業務もあります。
ヘルパーの体調不良や調整が出来なくて、誰もサービスに入れないという場合もあります。その際はサービス提供責任者が穴埋めとしてサービスに入るケースがあります。
他にはいわゆる困難ケース等のどうしてもサービス提供責任者のみしか入れないケースも、どこの事業所でもあるのが現状です。
生活援助や身体介護など一通りの業務をこなしていく必要がありますので注意しておきましょう。

サービス提供責任者はヘルパーよりもサービス訪問は少ないですが1日に1~3件程度は訪問している事業所が多いです。
新規利用者の契約
訪問介護の契約は、契約書・重要事項説明書・個人情報使用の同意書(都道府県による)の3点セット各2部(利用者保管と事業所保管分)になっています。
担当者会議の時に一緒に行うことが多く、家族も来ていることが多いので一緒に説明を聞いてもらい契約を締結します。利用者が文字を書けない場合は家族に代筆してもらいます。

ちなみに個人情報使用の同意書は、利用者家族にも記入してもらう必要があります。
契約については詳しく下記で説明していますので参照ください。
新規の利用者のサービス
介護業務に含まれますが、新規の利用者のサービスをサービス提供責任者が行う目的が明確にあります。
新規の利用者のサービスは、担当者会議時にある程度サービス内容を決めていきますが、実際にサービスをスタートしても人間を相手にしているので当初の予定通りに進むことはありません。
身体面では考えていた以上にADlが高い場合や低い場合、生活面では利用者なりのこだわりや要望など、実際にサービスを始めてみないと分からないことも多いです。(担当者会議では限られた時間内ですのですべての把握は不可能です。)
その為、最初のアセスメントやニーズをしっかりと聞き取り、サービスを固めていきヘルパーに引き継ぐことになります。
利用者もヘルパーサービスに慣れておらず勝手がわからないことも多いです。特に高齢者の場合は「誰かに世話になる」事にかなり気を使われる方もいます。
またヘルパーサービスで「できる事、できない事」への理解も乏しいことも多いためヘルパーサービスとはこういうサービスだということを理解してもらう期間でもあります。
初回加算はサービス開始月内にサービス提供責任者が訪問すれば算定できます。
必ずサービス提供責任者が訪問しなければならないため新規利用者の訪問は基本的にサービス提供責任者が訪問するのが一般的になっています。
初回加算は200単位と微々たるものではありますが事業所にとっては取得できるなら取得しておきたい加算ではあります。
ケアマネジャーからすると新規の利用者の場合は利用者の状態がどのような状態か、またヘルパーサービスの経過状況などを特に知りたいと考えています。
そのためサービス提供責任者が直接サービスを提供し新鮮な情報を報告することでケアマネージャーから信頼を得ることが出来やすくなります。
ヘルパーからの報告だけでは分からないことも多く、やはり直接見てみないと知りえない情報もあります。ケアマネージャーからすると新規依頼をした利用者の事をサービス提供責任者に聞いても情報が薄かったら不信感を抱くのも当然です。

初回のサービス状況の報告書を作成しケアマネージャーに渡すとさらにグッドです。訪問介護事業所によっては初回訪問報告書を作成し提出している所もありますよ。
モニタリング・評価
月に一度は担当している利用者の所に訪問し利用者のサービス状況を直接把握しに行きます。
その他に、毎サービス時にヘルパーによって書かれたサービス実施記録に目を通し、利用者さんの状態を把握します。
転倒や深刻な体調不良があればケアマネージャーに連絡します。

月に1度しか顔を合わさない利用者さんもいますので、しっかりとヘルパーさんから情報を吸い上げてサービス状況を把握しましょう!!
スケジュール調整
通院や入院などによるスケジュール調整などもしています。

利用者さんの状態は日に日に変化します。急に通院が必要になったり、急に入院したり退院したり様々です。常に変化がある事を心に置いておきましょう。
苦情・クレーム対応
利用者から見たサービス提供責任者は「偉い人」です。つまりヘルパーの上司的な存在だと認識している利用者が多いです。
そのためヘルパーに対しての苦情は基本的にサービス提供責任者が対応することになります。
苦情の内容は様々です。
例えばヘルパーが何度断っても介護保険でできない事を頼んでくる利用者さんがいる場合、介護保険でできない事は断るしかありません。
たまに顔出したと思えば「介護保険では出来ません!自費ならできます」と納得してもらわなければならず、「あの人は融通が効かない‼」と言われることも多々ありサービス提供責任者としてはつらいものがあります。

介護保険で出来ないサービスを理解してもらうのは難しいことも多いです。介護保険は使えなくても自費サービスを行っている事業所もあるのでケアマネと相談して活用しましょう!!
事務的な業務
通常登録ヘルパーは事務作業をしません、正社員のヘルパーは現場で働いていることがほとんどであり、事務作業をする機会は少ないでしょう。
訪問介護事業所は様々な資料などを作成したり、事務的な作業が多いです。
その主となるのはサービス提供責任者になります。
書類作成
- 訪問介護計画書
- アセスメント
- サービス実施状況報告書(モニタリング報告書)
- 見取り図
- サービス指示書(手順書)
- 支援経過記録
- 緊急連絡票
上記の書類を作成し利用者毎にファイリングし保管しておく必要があります。

書類作成は結構多いです。しかも一度作ったら終了ではなく利用者の状態等に応じて更新していく必要もあります。


保険請求業務
請求業務は大きな訪問介護事業所であれば事務職員が行っていることが多いのですが、小規模のところであればサービス提供責任者が行っていることがあります。
1日~10日までに国民健康保険連合団体に介護保険請求を行います。基本的にどの事業所も介護請求ソフトを使っているので電子請求を行います。
介護保険請求には介護保険についてある程度知識が必要となりますし、ケアマネジャーとのやりとりも必要になってきますので、サービス提供責任者が適任であるといえます。
請求業務について詳しく解説しているので下記を参照にしてみてください!
月末・月初の業務
毎月ケアマネジャーから送られてくるケアプラン通りに予定を組み、実際その通りに行われたか月末にまとめ、報告します。
例えば、通院の予定がケア時間と重なる場合は時間や曜日変更を行い、ケアマネジャーにまとめて報告します。度重なる場合はケア時間を変える提案をします。実際ケア時間を変えるとなるとケアマネジャーに報告し、ケアプラン変更等必要になります。
月末はヘルパーから提出された実施記録を確認しサービス提供実績という書類を作成します。この書類は各利用者毎に何曜日何時にどのサービスで入ったかを記入します。
月初は基本的に1日~3日までに各ケアマネジャーに利用者のサービス提供実績を提出します。ケアマネジャーはこのサービス実績を確認し給付管理を行っています。ケアマネジャーに提出後実績に誤りがあると連絡があるため訂正し再提出を行うことも。

月末月初の訪問介護事業所はバタバタです・・・ですが非常に大事な仕事になります。
サービス提供責任者の仕事の流れ

サービス提供責任者の仕事内容が分かったでしょうか?次は仕事の流れが知りたいところ。新規の依頼をケアマネージャーから受けてからの仕事の流れを詳しくみていきましょう。
新規の依頼からの一連の業務の流れ
① 新規依頼
前述した通りサービス提供責任者は事業所の窓口的存在です。
ケアマネージャーから新規利用者の依頼があると性別、住所、利用者の状態(疾患やADL等)、希望曜日・時間帯、サービス内容をある程度聞きます。(個人情報ですので詳しく教えてくれないこともあります。)
その上で事業所で依頼を受けることができるかどうかを検討することから始まります。

新規の依頼を受けずに断ったケースも記録に残しておきましょう。特に障害福祉サービスを提供している訪問介護事業所の場合、当事者から直接依頼があることがあります。事業所で受けれず断った事で後々クレームにつながることもあり記録に残しておく事で適切な対応が可能になります。
② 担当者会議への出席
依頼を受けると決まったら、利用者宅で行われるサービス提供責任者会議に出席します。(前述のとおり入院している利用者の場合は退院前にカンファレンスがあり、そちらにまず出席します。)
③ 訪問介護サービスの契約
④ アセスメントと訪問介護計画書の作成
会議が終わるとアセスメント表を作成。利用者の状態を動作、記憶、病歴等全て把握します。
その後、訪問介護計画書を作成します。ケアマネージャーが作ったケアプランを元に、短期目標や長期目標を設定し、どういうケアを何曜日の何時に行うか利用者さん及びご家族に示します。
これに同意していただいて初めてケアサービスがスタートです!
⑤ サービススタート
サービスがスタートし作業指示書(手順書とも呼ばれる)を作成。ケア時間内で、何にどの位の時間をかけ、物品はどこにあって、どのような手順で行なうのかを記載します。

新規の利用者さんの場合は初回訪問時に作業を確認しながら行っていきます。そのため手順書が後になる事も多くなります。サービス開始前に詳しい手順書は作れません。
⑥ ヘルパーの割り当て
新規の利用者に関しては基本的にサービス提供責任者が最初の頃がサービスに入るのが望ましいです。(事業所にもよります。初回にヘルパーも同行するパターンもあります。)
利用者も訪問介護に慣れてきてケア内容も固まってきたらサービスを提供するヘルパーを割り当てていきます。
あとは決まった曜日、時間にヘルパーが訪問しサービスを提供していきます。

ヘルパーさんの事を良く把握しているサービス提供責任者であれば問題なくスムーズに引き継ぎが出来ます。が、逆に相性の悪いヘルパーに引き継いでしまうと後々トラブルになってしまうこともありますので注意しましょう。
⑦ モニタリング(サービス実施状況)の把握と評価
介護目標に対する進歩状況、利用者満足度、新しいニーズの確認の三点を中心に評価を行います。このままのサービスで良いのかを検討し必要であればサービス内容の変更を行うこともあります。
その際はケアマネージャーに報告し連携を取りながらサービス内容を利用者の自立支援のために変更していきます。

新規依頼を受けると上記の①~⑦の流れで行われていきます。
上記の業務をサービス提供責任者は日々繰り返し行っています。少しサービス提供責任者の仕事の流れはつかめたでしょうか?
サービス提供責任者の一日の仕事の流れも記事にしていますので参考にしてみてください!
最後に
かなりの長文になってしまいました。説明した通りサービス提供責任者の業務内容は多岐に渡ります。
「サービス提供責任者は大変な仕事」「残業も多い」「サービス提供責任者は割に合わない」なんてことを言う人が多いです。
実際に大変な仕事だと思います。私もヘルパーからサービス提供責任者になったころは、四苦八苦し結構苦労しました。ですが今思うとサービス提供責任者になってよかったと思います。
それはヘルパーの時にはなかった視点でケアサービスを考えることが出来るようになったからです。ヘルパーの時は何て狭い視野で利用者を観ていたんだと思います。
サービス提供責任者になりたいが迷っている人は是非一度チャレンジしてみてください。自分に向いてないと思ったらヘルパーに戻れば良いですし、きっと新しい考え方が身についていくと思います。