
訪問介護の開業を考えている。
指定基準がイマイチ理解できなくて困ってます。
初心者にも分かるように教えてほしい・・・
こんな悩みを抱えている方は多いです。
法令や省令を読んでも、慣れない用語ばかりで意味不明…
とはいえ指定基準をクリアしなければ訪問介護事業を開業できません。
そこで今回は
- これから訪問介護事業を立ち上げる方
- 実地指導対策として指定基準を理解したい方
に向けて、訪問介護の指定基準をどの媒体よりも分かりやすく丁寧に解説していきます。

かなりの長文になってますが、本記事は指定基準をすべて理解できるように構成しています。
- 訪問介護の指定基準は「人員・設備・運営」の3つに分けられる
- 【指定基準その1】訪問介護の「人員基準」とは?
- 【指定基準その2】訪問介護の「設備基準」とは?
- 【指定基準その3】訪問介護の「運営基準」とは?
- ①【内容及び手続の説明及び同意】
- ②【提供拒否の禁止】
- ③【サービス提供困難時の対応】
- ④【受給資格等の確認】
- ⑤【要介護認定の申請に係る援助】
- ⑥【心身の状況等の把握】
- ⑦【居宅介護支援事業者等との連携】
- ⑧【法定代理受領サービスの提供を受けるための援助】
- ⑨【居宅サービス計画に沿ったサービスの提供】
- ⑩【居宅サービス計画等の変更の援助】
- ⑪【身分を証する書類の携行】
- ⑫【サービスの提供の記録】
- ⑬【利用料等の受領】
- ⑭【保険給付の請求のための証明書の交付】
- ⑮【訪問介護計画の作成】
- ⑯【同居家族に対するサービス提供の禁止】
- ⑰【利用者に関する市町村への通知】
- ⑱【緊急時の対応】
- ⑲【管理者及びサービス提供責任者の責務】
- ⑳【運営規程】
- ㉑【介護等の総合的な提供】
- ㉒【勤務体制の確保等】
- ㉓【衛生管理等】
- ㉔【掲示】
- ㉕【秘密保持等】
- ㉖【広告】
- ㉗【苦情処理】
- ㉘【地域との連携】
- ㉙【事故発生時の対応】
- ㉚【居宅介護支援事業者への不当な働きかけ・利益供与の禁止】
- ㉛【会計の区分】
- ㉜【記録の整備】
- 障害福祉サービスも一体的に提供する場合の指定基準
- 変更があった場合は10日以内に変更届を提出
- 【さいごに】指定基準違反は最悪の場合「指定取り消し」処分となる
訪問介護の指定基準は「人員・設備・運営」の3つに分けられる
訪問介護事業は「人員基準」「設備基準」「運営基準」の3つの指定基準を法令で定められています。
指定基準は厚生労働省令である「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」をベースに
各自治体が地域の特性に合わせた独自の条例を制定しています。
そのため指定基準は自治体によって少し違いがある場合もありますので注意してください。
いわゆるローカルルールというやつです。

本記事ではローカルルールをすべて網羅しているわけではないので、実際の運用については各自治体の意見も参考にしてくださいね。
\ 知りたいところから読めます/
【指定基準その1】訪問介護の「人員基準」とは?
「人員基準」は最低でも訪問介護員2.5人以上、サービス提供責任者1人以上、管理者1人を訪問介護事業所に配置しなければならないルールを指します。
また資格要件や勤務形態の要件など、さまざまな基準がありますので必ず確認しておきましょう。
人員基準を満たす各職種の配置を下記表にまとめました。
職種 | 配置人数 | 勤務形態 | 必要資格 |
---|---|---|---|
管理者 | 1人 | 常勤専従 (サービス提供責任者または訪問 介護員との兼務可) | なし |
サービス提供責任者 | 1人以上 (利用者40名または端数 を増すごとに増員) | 常勤専従 (管理者または訪問介護員との 兼務可) |
|
訪問介護員 | 2.5人以上 (常勤換算で計算) | - |
|

なるほど。
ん…?兼務?専従?常勤換算?なにそれ・・・
と、思う方もいると思います。
各職種の詳しい人員配置を解説していきたいところですが
まずは『常勤・非常勤』『専従・兼務』『常勤換算』といった用語を説明しておきます。
知っておくと人員基準を理解しやすいと思いますので。
すでに知っているという方は下記から読み飛ばしてください。
「常勤・非常勤」「専従・兼務」の説明と組み合わせ例
常勤と非常勤の違い
常勤は『従業員の実際に勤務した時間』が『その事業所で定めている常勤が勤務すべき時間数(下限は週32時間)』に達している場合を指します。
例えば、就業規則に記載している勤務すべき時間数が1日8時間(週40時間)だとして、1日8時間(週40時間)勤務している職員はすべて「常勤」ということです。
逆に上記の勤務すべき時間数に満たない職員は「非常勤」となります。
また、職員が『常勤なのか』『非常勤なのか』は正社員、パート、アルバイト、契約社員などの雇用形態に関係なく、勤務時間数が指標となるので注意しておきましょう。
【勤務すべき時間数を週40時間としている場合】
正社員A…1日8時間、週40時間勤務⇒「常勤」
正社員B…1日4時間、週20時間勤務⇒「非常勤」
パートC…1日8時間、週40時間勤務⇒「常勤」
このようにパートでも勤務すべき時間数を満たしていたら常勤、逆に正社員でも勤務時間が満たないと非常勤扱いということです。
※ちなみに育児や介護で短時間勤務している従業員の場合、30時間勤務することで常勤として取り扱ってOKです。(育児・介護休業法に則り、常勤の従業員が勤務すべき時間数を30時間にしている短縮措置の対象者)
専従・兼務の違い
「専従」は勤務している時間帯に、一つの職種のみ従事することを指します。
例えばサービス提供責任者としてのみ勤務している場合は専従ということです。
逆に勤務している時間帯に、他の職種と同時並行的に従事している場合は「兼務」となります。
訪問介護員としてのみ勤務している⇒「専従」
管理者をしながら訪問介護員としてサービス訪問も行っている⇒「兼務」
管理者をしながらサービス提供責任者としても業務をしている⇒「兼務」
訪問介護の管理者をしながら併設デイサービスの管理者もしている⇒「兼務」
ということです。
「常勤・非常勤・専従・兼務」の組み合わせの考え方
常勤・非常勤・専従・兼務の組み合わせは下記表のように考えます。
組み合わせ例 | 専従 | 兼務 |
常勤 | ①『常勤専従』 1日8時間(週40時間)勤務している職員で、勤務時間内にその職種のみの業務に従事している場合。 | ②『常勤兼務』 1日8時間(週40時間)勤務している職員で、勤務時間内にその職種+他の職種の業務に従事している場合。 |
非常勤 | ③『非常勤専従』 1日3時間(週15時間)勤務しいてる職員で、勤務時間内にその職種のみの業務に従事している場合。 | ④『非常勤兼務』 1日3時間(週15時間)勤務している職員で、勤務時間内にその職種+他の職種の業務に従事している場合。 |
(※事業所で定めている勤務すべき時間を週40時間としている場合)
「常勤換算」はその事業所に勤務している平均職員数のこと
常勤換算とは、その事業所で働いている常勤職員の平均人数を指します。
要は「常勤の職員が何人いるのか」を表しているということです。
常勤換算の計算方法は、『1ヵ月(4週)の常勤・非常勤職員の合計勤務時間』を、『事業所が定めた常勤が勤務すべき時間数』で割って算出します。(※小数点第2位以下は切り捨て)
訪問介護員の配置基準は「常勤換算で2.5人以上」
ここでは訪問介護員の配置基準について深掘りしていきます。
訪問介護事業所は訪問介護員を常勤換算で2.5人以上配置しなければなりません。
たとえ「利用者数が少なく、サービス訪問が1件もない」状況だとしても必ず配置が必要となります。
まず訪問介護員の常勤換算を計算するうえで、良くある疑問を解消しておきましょう。
- 「サービス提供責任者は訪問介護員として含む?」
- 訪問介護員として含んでOKです。
サービス訪問に行っているかどうかは関係なく訪問介護員として常勤換算「1」です。
- 「管理者と訪問介護員を兼務している場合、勤務時間数はどう考える?」
- 管理者業務をしている時間を除いた分を計上します。
例えば、管理者業務が1日4時間、ヘルパー業務が1日4時間ならば常勤換算で0.5となります。
- 「登録ヘルパーの勤務時間はどのように計算する?」
- ①前年度の勤務実績がある場合は、前年度の週当たりの平均稼働時間を計算します。
②勤務実績がない場合は、確実に稼働できるものとして勤務表に明記している時間を計算します。
※勤務実績がない場合は、予定と実態に乖離があると指導対象になるので注意しておきましょう。
- 全ての勤務時間を常勤換算に含めても良い?
- NOです。
①訪問介護員が介護保険外サービス(自費)を提供した時間
②非常勤職員の休暇や出張の時間(常勤は1ヵ月を超えない限り含めてOK)
③残業時間
このような時間は常勤換算に含めない勤務時間となります。
具体例から訪問介護員の常勤換算をしてみる
ここでは具体例をあげて訪問介護員の常勤換算をしていきます。
下記、人員の常勤換算を計算してみましょう。
職員 | 1週間 | 一か月(4週) | 常勤・非常勤 |
---|---|---|---|
管理者A(訪問介護員兼務) | 週20時間 | 80時間 | 常勤 |
サービス提供責任者B | 週40時間 | 160時間 | 常勤 |
正社員ヘルパーC | 週40時間 | 160時間 | 常勤 |
パートヘルパーD | 週8時間 | 32時間 | 非常勤 |
登録ヘルパーE | 週15時間 | 60時間 | 非常勤 |
(※常勤が勤務すべき時間を週40時間と定めていて、管理者Aは管理者業務を週20時間、訪問介護員業務を週20時間で想定しています)
【常勤換算の計算式】
『1ヵ月の総勤務時間数×常勤の勤務すべき時間数=常勤換算人数』
職員の1ヵ月勤務時間数の総合計が492時間
事業所で定めている常勤が1ヵ月に勤務すべき時間数が週40時間
492時間(4週分)÷160時間(4週分)=3.075(※小数点第2位以下は切り捨て)
この場合、常勤換算数は3.0となるので訪問介護員の配置基準を満たしているということです。
サービス提供責任者の配置基準は「常勤専従を1人以上」
訪問介護事業所では常勤のサービス提供責任者を利用者40名ごとに1人を配置しなければなりません。
利用者数 | 常勤配置人数 |
1~40 人 | 1人 |
41~80 人 | 2人 |
81~120人 | 3人 |
121~160人 | 4人 |
161~200人 | 5人 |
このように利用者数の増加に応じてサービス提供責任者を配置します。
ここで言う利用者数は、前3カ月の平均値のことを指します。
【月ごとの利用者数の合計を3で割って算出】
4月・・・40人
5月・・・38人
6月・・・39人
の場合だとすると
- 3カ月の合計117人÷3=39人
前3カ月の平均値は39人となります。
※ちなみに通院等乗降介助のみを提供した利用者は0.1人として数えます。
利用者40人以上になると常勤換算による配置が可能
利用者が40人を超える場合は、常勤換算方法を使用できます。
ざっくり説明すると、非常勤職員が本来、配置すべき常勤サービス提供責任者の人数を一部補えるということです。
つまり、常勤のサービス提供責任者の人数が少なくて済むわけです。
利用者数が41人~200人の事業所の場合
利用者数が41人~200人以下の事業所で常勤換算方法を採用する場合は、
常勤換算方法を採用しない場合に必要なサービス提供責任者の人数から1を引いた数以上の常勤を配置します。
81÷40=常勤換算で2.1人以上の配置が必要(小数点第1位に切り上げ)
常勤換算方法を採用しない場合…常勤サ責3人を配置
常勤換算方法を採用する場合…3-1=常勤サ責2人を配置
この場合、配置すべきサ責3人の内訳を常勤サ責2人+常勤換算1人(非常勤1人)でOKということになります。
※非常勤職員をサ責として配置する場合は、常勤の訪問介護員が勤務すべき時間数の2分の1以上でなければなりませんので注意しておきましょう。(常勤換算で0.5以上)
利用者数が201人以上の事業所の場合
利用者数が201人以上の事業所で常勤換算方法を採用する場合は、
常勤換算方法を採用しない場合に必要なサービス提供責任者の人数に2を掛けて3で割った数以上の常勤を配置します。
220÷40=常勤換算で5.5人以上の配置が必要(小数点第1位に切り上げ)
常勤換算方法を採用しない場合…常勤サ責6人を配置
常勤換算方法を採用する場合…6×2÷3=常勤サ責4人を配置
この場合、配置すべきサ責6人の内訳を常勤サ責4人+常勤換算2人(非常勤2~3人程度)でOKということになります。
利用者数に応じたサービス提供責任者の人員配置表
利用者の人数に応じた、常勤のサービス提供責任者数を表にまとめました。
利用者数 | 【必要な常勤のサービス提供責任者】 | |
常勤換算方法を採用しない場合 | 常勤換算方法を採用する場合 | |
40人以下 | 1人 | 1人 |
41~80 人 | 2人 | 1人 |
81~120人 | 3人 | 2人 |
121~160人 | 4人 | 3人 |
161~200人 | 5人 | 4人 |
201人~240人 | 6人 | 4人 |
要件を満たすと利用者50人ごとに1人配置も可能となる
下記の要件を満たしている場合、利用者50人に対して常勤サービス提供責任者1人の配置とすることができます。
- 常勤のサービス提供責任者を3人以上配置
- サービス提供責任者の業務を主として従事するものを1人以上配置
- サービス提供責任者が行う業務が効率的に行われている場合
「サービス提供責任者として主として従事するもの」とは?
かなり曖昧な表現なので自治体によって解釈が分かれるところがあります。
基本的には『訪問介護員として行ったサービス提供時間が1ヵ月で30時間以内』を基準としている自治体が多いです。
業務が効率的に行われている場合とは?
これは、例えば「訪問介護計画書の作成」「訪問介護員の勤務調整」「利用者情報の共有」などをICT化するなどして、業務の省力化・効率化ができている場合が該当します。
緩和要件が適用された場合の人員配置表
緩和要件が適用されて、さらに常勤換算法を採用した場合の配置は下記のとおり。
利用者数 | 【必要な常勤のサービス提供責任者】 | |
常勤換算方法を採用しない場合 | 常勤換算方法を採用する場合 | |
50人以下 | 3人 | 3人 |
51~100 人 | 3人 | 3人 |
101~150人 | 3人 | 3人 |
151~200人 | 4人 | 3人 |
200~250人 | 5人 | 4人 |
251人~300人 | 6人 | 4人 |
サービス提供責任者が兼務できる職種
サービス提供責任者は原則、専従とされていますが業務に支障がない場合は兼務が可能となっています。
- 同一の訪問介護事業所の管理者
- 同一の訪問介護事業所の訪問介護員
- 同一敷地内にある定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所の業務
- 同一敷地内にある夜間対応型訪問介護事業所の業務
これらの業務を兼務することができます。
ただし、最低でも1人のサービス提供責任者は常勤専従となるので注意しておきましょう。
つまり、そのサービス提供責任者に限っては兼務は不可ということです。
管理者の配置基準は「常勤専従を1人以上」
訪問介護事業所では管理者を常勤専従で一人配置しなければなりません。
ただし、管理者業務に支障がない場合は兼務が可能となっています。
同一の訪問介護事業所の訪問介護員
同一の訪問介護事業所のサービス提供責任者
同じ敷地内にある他の事業所、施設の管理者・従業者
これらは兼務可能です。管理業務と同時並行できない業務は兼務できません。
ほとんどの訪問介護事業所は管理者とサービス提供責任者、訪問介護員と兼務しています。
兼務をすることで管理業務が適正に行われていない場合は問題です。
例えば「管理者がサービス訪問で一日中外に出ずっぱり」な状況だと確実に実地指導で指摘されます。
基本的には「管理者業務」と「兼務の業務」が半々ぐらいだと問題はないとされていますが
自治体によって解釈が分かれる部分ですので注意しておきましょう。
開業時の人員パターンを2つ紹介

結局、これから訪問介護を開業するなら何人必要なの?
できるだけ少ない人数にしたいんだけど・・・
と考えている方も多いと思いますので開業時の人員を2パターン紹介しておきます。
- 管理者 兼 訪問介護員…1人
- サービス提供責任者…1人
- 常勤の訪問介護員…1人
この場合は3人で開業ができます。
おそらく最少人数のパターンになります。
常勤換算の内訳を解説しておくと
管理者兼訪問介護員は、訪問介護員としての常勤換算0.5人
サービス提供責任者は常勤専従で配置して常勤換算1.0人
訪問介護員は常勤で配置して常勤換算1.0人
常勤換算2.5人以上をクリアしてるので人員基準を満たしています。
※開業時は管理者とサービス提供責任者の兼務できません。(常勤専従のサ責を最低1人配置)
- 管理者兼訪問介護員・・・1人
- サービス提供責任者・・・1人
- 非常勤の訪問介護員・・・2人~3人
計4~5人での開業となりますが、非常勤を雇っているので人件費は安くなるかもしれません。
※非常勤の常勤換算の内訳(週40時間勤務と定めている場合)
週20時間勤務する職員を2人=常勤換算1.0人
週10時間勤務する職員2人+週20時間勤務する職員1人=常勤換算1.0人
などさまざまなパターンが考えられます。
【注意】「勤務表」を毎月しっかり作成しておきましょう
ここで言う勤務表はシフト表のことではなく「従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表」を指します。
このように人員基準が満たされているかを確認するための書類となっています。
勤務表の取り扱いは厚生労働省によると下記のとおり定められています。
- 毎月作成する
- 訪問介護員などについては勤務時間、業務内容、雇用形態(常勤・非常勤)を記載
- 管理者との兼務はあるか記載
- サービス提供責任者かどうかを明確に記載
厚生労働省が全国統一フォーマットを用意していますので必要な方は下記からどうぞ。

勤務表は実地指導で必ずチェックされます!
【指定基準その2】訪問介護の「設備基準」とは?
ここでは指定基準の2つめ「設備基準」について解説していきます。
設備基準はざっくり言うと訪問介護を運営できる「広さ・設備・備品」を揃えましょう!ってことです。
厚生労働省令による設備基準は下記のとおり。
第三節 設備に関する基準(設備及び備品等)
第七条 指定訪問介護事業所には、事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の区画を設けるほ か、指定訪問介護の提供に必要な設備及び備品等を備えなければならない。
「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」より引用
厚生労働省令だけでは少し具体性に欠けるのでイメージできないですよね。

具体的にどんな物件を借りて、どんな物品を用意したら良いの?
と、思いますよね。
【これだけ押さえればOK】訪問介護の設備基準「5つのポイント」
ここでは「これだけ押さえとけば開業できる」ポイントを5つ紹介します。
- 建物について
- 訪問介護に必要な「備品」をそろえる
- 「感染症対策」に配慮した設備
- 事務所の広さ
- 相談スペースの設置
それぞれ具体的に解説していきます。
建物について
訪問介護事業所の建物については、一軒家・アパート・マンション・オフィスビル、どれでもOKです。
ただし自治体によってはエレベーターがないマンションの2階以上では指定が下りない所もあるので注意してください。(※車いすの利用者が来訪できないため)
そのためマンションで開設するのであれば1階もしくはエレベーターありの物件を選ぶようにした方が無難だと思います。
他にも「玄関に大きな段差がある」場合、簡易スロープを設置するように指示されることもありますので、各自治体と相談してみましょう。
訪問介護に必要な「備品」をそろえる
訪問介護の運営上で必要な備品は次のとおりです。
- 机・イス(相談室用も含む)
- 鍵付きの書庫(利用者ファイルを保管する用)
- 電話
- FAX
- プリンター
- 自転車(必要に応じて)
- 自動車(必要に応じて)
- パソコン
- タイムカード
自転車、自動車を使用するのであれば、駐輪場や駐車場のことも考えて物件を探しましょう。
感染症対策に配慮した設備
衛生面では職員が手指を消毒するための洗面台を設ける必要があります。
基本的にトイレの手洗い設備では認められませんので、独立した洗面台がある物件を選びましょう。
その他、感染症対策として下記の物品を用意します。
- 液体せっけん
- 消毒液
- ペーパータオル(共用タオルはNG)
- ディスポーサブル手袋
事務所の広さ
事務所の広さは下記を目安にしてください。
- 職員3~5名分の机とイスを置ける
- 書庫棚を置ける
- 相談スペースとして3畳
この3点を満たす広さが良いです。9~10畳程度と考えておけばOKです。
相談スペースを設ける
相談スペースは「新規利用の受付」「利用者からの相談受付」「ケアマネなどとの打ち合わせ」「社内会議」などに必要となります。
注意点としては下記のとおり。
- 4人が入れる広さにする
- プライバシーへの配慮
4人が入れる広さにする
目安としては最低でも3畳程度で考えておきましょう。
テーブル1つにイス4つを設置、4人が窮屈なく座って会話ができればOKです。
プライバシーへの配慮
利用者や家族が来訪することもありますのでプライバシーへの配慮が必要です。
例えばパーテーションなどで間仕切りし、外から見えないようにする、など。
ドア付きの別室であればさらにgoodです。
相談スペースは事務所入り口の近くに設置するようにしましょう。来客をすぐに誘導できるためです。
【設備基準チェック表】
前述の5つのポイント概要を表にまとめました。
\ 設備基準はこれでクリア /
【建物】 | 一軒家、アパート、マンション、オフィスビル、どれでも可 マンションの場合、1階もしくはエレベーターありの物件がベター |
---|---|
【事務スペース】 | 10畳程度の広さがあればOK |
【相談スペース】 | 事務スペース内の3畳程度を利用して設置 パーテーションでプライバシーに配慮 |
【感染対策】 | 手洗いができる洗面台の設置 |
【備品】 |
|
訪問介護の設備基準でよくある質問
ここでは訪問介護事業の開業時によくある質問をまとめました。
- 自宅で訪問介護を開業することはできる?
- 可能ですが、自治体によって見解が分かれます。
①自宅と事務所の「入り口」を別々にする
②自宅スペースと事務所スペースを明確に分ける
基本的にはこの2点を実施し、間取り図を持参して各自治体と相談してください。 - 借りたテナントが共用の洗面台しかないのですが大丈夫?
- 共用の洗面台を「感染症対策に必要な手洗い設備」としての許可を得ておけばOKだと考えます。(事務所と洗面台の距離があまりにも遠い場合をのぞく)
その上で各自治体と相談してみましょう。 - 備品類は貸与のものでも良いですか?
- 原則、設備や備品は会社所有のものではなく貸与でOKです。
- 同一敷地内の併設事業所との設備共有について教えてください。
- 例えば、訪問介護とケアプランセンターが併設されている場合、事業に支障がなければ、両方のサービスに設備が義務付けられている設備について共用が可能です。
この場合、手洗い設備や相談スペースなどは共有OK。
他にも設備基準上規定がない玄関や廊下、階段などの設備についてもOK。
※ケアプランに限らず、訪問看護やデイサービスも同じ扱いになります。
【指定基準その3】訪問介護の「運営基準」とは?
ここでは指定基準の3つめ「運営基準」について解説していきます。
運営基準はサービス訪問に関する内容も多いので、管理者だけではなく各ヘルパーにも周知しておく必要があります。
- 【内容及び手続の説明及び同意】
- 【提供拒否の禁止】
- 【サービス提供困難時の対応】
- 【受給資格等の確認】
- 【要介護認定の申請に係る援助】
- 【心身の状況等の把握】
- 【居宅介護支援事業者等との連携】
- 【法定代理受領サービスの提供を受けるための援助】
- 【居宅サービス計画に沿ったサービスの提供】
- 【居宅サービス計画等の変更の援助】
- 【身分を証する書類の携行】
- 【サービスの提供の記録】
- 【利用料等の受領】
- 【保険給付の請求のための証明書の交付】
- 【訪問介護計画の作成】
- 【同居家族に対するサービス提供の禁止】
- 【利用者に関する市町村への通知】
- 【緊急・事故発生時の対応】
- 【管理者及びサービス提供責任者の責務】
- 【運営規程】
- 【介護等の総合的な提供】
- 【勤務体制の確保等】
- 【衛生管理等】
- 【掲示】
- 【秘密保持等】
- 【広告】
- 【苦情処理】
- 【地域との連携】
- 【事故発生時の対応】
- 【居宅介護支援事業者への不当な働きかけ・利益供与の禁止】
- 【会計の区分】
- 【記録の整備】

めちゃくちゃ多いですが、順に説明していきますね!
①【内容及び手続の説明及び同意】
サービス開始前に利用者または家族に対し、運営規定の概要、重要事項を記した文書を交付して説明を行い、同意を得なければいけません。
要するに重要事項説明書を交付して説明・同意を得るということです。
一般的には訪問介護サービスの契約時に行います。
>>【5分でわかる】訪問介護の『契約の進め方』と『注意したいポイント』
②【提供拒否の禁止】
訪問介護は「正当な理由なくサービス提供を拒めない」ことになっています。
拒否できる正当な理由としては、以下の3点です。
- 人員不足により対応できない場合
- サービス実施の範囲外
- その他適切なサービスが提供することが困難な場合
>> 訪問介護で「サービス提供拒否ができる正当な理由」と「中止する際の5つの注意点」
③【サービス提供困難時の対応】
訪問介護はサービス提供が困難になった場合は、居宅介護支援事業者への連絡して他の事業所を紹介するなどの必要な措置をしなければなりません。
④【受給資格等の確認】
介護保険被保険者証にて要介護度、認定の有効期間を確認しなければなりません。
⑤【要介護認定の申請に係る援助】
要介護認定を受けていない者から利用申込があった場合は、状況を確認して、申請等の必要な援助を行わなければなりません。
⑥【心身の状況等の把握】
ケアマネージャーが開催する担当者会議にて、利用者の心身の状況や置かれている環境、保険医療または福祉サービスの利用状況等の把握に努めなければなりません。
⑦【居宅介護支援事業者等との連携】
サービスを提供するにあたっては、居宅介護支援事業者等と密接な連携に努めなければなりません。
⑧【法定代理受領サービスの提供を受けるための援助】
利用申込者に対してどのようにすれば訪問介護サービスを受けれるのかを説明し、居宅介護支援事業所などの情報提供を行わなければなりません。
⑨【居宅サービス計画に沿ったサービスの提供】
居宅サービス計画に沿ったサービスを提供し、計画に基づかない場合は、原則として介護報酬を算定できません。
⑩【居宅サービス計画等の変更の援助】
利用者が居宅サービス計画の変更を希望する場合は、ケアマネへ連絡等の必要な援助を行わなければなりません。
⑪【身分を証する書類の携行】
利用者宅へ訪問する際は、身分を証する書類(事業所名と氏名が記載された名札)を携行し、利用者や家族から求められたときは提示するように指導しなければなりません。
⑫【サービスの提供の記録】
訪問介護サービスを提供した際には下記内容について記載しなければなりません。
- 提供日
- サービス区分(身体、生活など)
- 提供した具体的サービス内容
- 利用者の心身の状況
また利用者から申し出があった場合は、文書の交付、利用者の手帳等に記録するなどの方法により情報提供を行わなければなりません。
⑬【利用料等の受領】
利用者負担として、1~3割の支払いを受けます。
利用者負担を勝手に免除すると、指定の取り消しにも繋がる基準違反になるので注意してください。
サービス提供の費用について領収書を交付しなければなりませんが、1~3割負担分とその他費用の額を区分して記載する必要があります。
⑭【保険給付の請求のための証明書の交付】
償還払いでの支払いは、提供したサービスの内容と費用、その他利用者が保険給付を請求する上で必要と認められる事項を記載したサービス提供証明書を利用者に交付しなければなりません。
⑮【訪問介護計画の作成】
訪問介護計画書は、利用者の日常生活の状況や希望をふまえた上で援助目標を設定します。
さらに目標を達成できる具体的なサービス内容を記載した計画書を作成しなければなりません。
⑯【同居家族に対するサービス提供の禁止】
訪問介護員等に、その家族である利用者に対するサービスの提供をさせてはなりません。
また、同居している家族のほか、同居していない二親等以内の親族のサービス提供も禁止となっています。
⑰【利用者に関する市町村への通知】
利用者が以下に該当する場合は市区町村に通知しなければなりません。
- 正当な理由なしにサービスの利用に関する指示に従わないことにより、要介護状態の程度を増進させたと認められるとき
- 偽り、その他不正の行為によって保険給付を受け、または受けようとしたとき
⑱【緊急時の対応】
サービス提供時に利用者に病状の急変が生じた場合は、速やかに主治医へ連絡を行う等の必要な措置を講じなければなりません。
そのため、緊急時の連絡方法のルールを決めておく必要があります。
⑲【管理者及びサービス提供責任者の責務】
訪問介護における管理者、サービス提供責任者の責務は下記のとおりです。
【管理者】
- 職員管理、業務管理を一元的に行う
- 職員に運営基準を遵守させるための指揮命令を行う
【サービス提供責任者】
- 指定訪問介護の利用の申込みに関する調整
- 利用者の状態の変化やサービスに関する意向を定期的な把握
- サービス担当者会議への出席等により、ケアマネと連携を図る
- 訪問介護員等に対し、具体的な援助目標及び援助内容を指示、利用者の状況についての情報の伝達
- 訪問介護員等の業務の実施状況の把握
- 訪問介護員等の能力や希望を踏まえた業務管理
- 訪問介護員等に対する研修、技術指導
- その他サービス内容の管理について必要な業務の実施
⑳【運営規程】
訪問介護事業所は運営規定を定めなければなりません。
具体的な項目は下記のとおりです。
- 事業の目的・運営の方針
- 従業者の職種・員数・職務の内容
- 営業日・営業時間
- 訪問介護サービスの内容・利用料、そのほかの費用の額
- サービス実施地域
- 緊急時などの対応方法
- その他運営に関する重要事項
㉑【介護等の総合的な提供】
身体介護・生活援助など特定の援助に偏ったサービス提供ではなく、総合的に提供しなければなりません。
㉒【勤務体制の確保等】
適切な訪問介護サービスを提供できるように職員の勤務体制を定めなければなりません。
令和3年4月~の介護報酬改定により「ハラスメント防止」が盛り込まれました。
具体的には、職場でのセクシュアルハラスメント・パワーハラスメント、利用者およびその家族からのカスタマーハラスメントに対する事業主の方針を明確化し周知する、さらには相談窓口の設置、マニュアル策定、研修の実施など必要な措置を講じる必要があります。
㉓【衛生管理等】
設備の掃除、消毒、備品の保管方法などに配慮し、常に清潔に努めなければなりません。
また訪問介護員が感染症などの感染源にならないため、使い捨てのゴム手袋を使用するなどの対策をする必要があります。
令和3年4月~の介護報酬改定により「感染症対策の強化」のため下記4点が義務化されます。
- 感染症の予防・まん延防止対策を検討する委員会をおおむね6ヵ月に1回以上開催すること
- 委員会の内容を職員間で周知共有すること
- 感染症の予防・まん延防止のための指針を整備すること
- 職員などに対して感染症・まん延防止のための研修、訓練を実施すること
※2024年3月31日まで経過措置あり
㉔【掲示】
事業所内の見やすい場所に重要事項説明書を貼り付けるなどの掲示をしなければなりません。
令和3年4月~の介護報酬改定により、掲示の代わりとして「閲覧可能なファイル等で据え置く」などの対応でOKとなりました。
- 重要事項説明書を事業所に備え付け、いつでも自由に閲覧できるようにする。など
㉕【秘密保持等】
業務上知りえた利用者・家族の秘密を洩らさないようにしなければなりません。
㉖【広告】
広告は虚偽または誇大な広告にならないようにしなければなりません。
㉗【苦情処理】
訪問介護は苦情処理について下記を実施しなければなりません。
- 利用者、家族からの苦情を受け付けるための窓口を設置
- 苦情処理の体制、手順などを定める
- 上記の周知は重要事項説明書に記載する、事業所に掲示するなど
- 苦情を受け付けた場合は、苦情の内容などを記録に残す
㉘【地域との連携】
訪問介護への利用者からの苦情に関して、市が派遣するものが相談・援助を行う事業に協力しなければなりません。
㉙【事故発生時の対応】
訪問介護は事故が発生した場合、下記の対応をしなければなりません。
- 事故発生時は市町村・家族・ケアマネに連絡し、必要な措置を講じる
- 事故の状況や対応についての記録を残す
- 賠償すべき事故が発生した場合は速やかに損害賠償を行う
>> 訪問介護の「事故対応」完全マニュアル【事故発生時にすべき6つのこと】
㉚【居宅介護支援事業者への不当な働きかけ・利益供与の禁止】
訪問介護は居宅介護支援事業者へ下記を禁止されています。
- ケアプラン作成・変更時の不当な働きかけ
- 金品、その他の財産上の利益の供与
㉛【会計の区分】
訪問介護の会計は、拠点・事業ごとに会計を区分しなければなりません。
㉜【記録の整備】
サービス提供の記録、介護報酬の請求に関する記録、従業者、設備、備品、会計に関する記録などを整備・保存しておかなければなりません。
主に下記の記録はサービス終了日から原則2年間保存しなければならないことになっています。
- 訪問介護計画書
- サービス実施記録
- 市町村への通知にかかる書類
- 苦情相談の記録
- 事故対応の記録
※記録の保存期間は自治体によって「5年」としている所もありますので確認しておきましょう。
障害福祉サービスも一体的に提供する場合の指定基準
介護保険の訪問介護だけではなく、障害福祉サービス(居宅介護など)も提供したい場合「指定基準は緩和」されます。
いわゆる共生型サービスのことで、介護保険の指定を受けている訪問介護事業所は、そのまま障害福祉サービス(居宅介護など)の指定基準を満たしていると判断されます。
障害福祉サービスも併せて提供したい場合は別途、都道府県の指定申請手続きが必要です。
変更があった場合は10日以内に変更届を提出
下記の場合、都道府県等に変更の届け出を「10日以内」に提出しなければならないので注意しておきましょう。
- 管理者の変更
- サービス提供責任者の変更
- 事業所の名称、住所
- 事業所の専用区画の変更
- 運営規定の変更
- 会社の定款、寄附行為等およびその登記事項証明書又は条例等
- 会社役員の変更
【さいごに】指定基準違反は最悪の場合「指定取り消し」処分となる
これまで解説してきた指定基準は行政からの実地指導でも厳しくチェックされます。
そのため開業時だけではなく、開業後も指定基準は「常に満たし続ける」必要があります。
基準違反は最悪の場合「指定取り消し処分」といった事業運営を継続できない状態にもなりえます。
普段から指定基準を意識して運営をするとともに実地指導の対策をしておきましょう。
下記にマニュアルを作成していますのでご参考ください。
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