訪問介護の「事故対応」完全マニュアル【事故発生時にすべき6つのこと】

訪問介護 事故対応マニュアル

 

  • (ヘルパー)もし訪問先の物を壊したり、利用者をケガさせてしまったらどうしよう…
  • (サ責)事故対応って具体的になにをすれば良いの?焦りそう…
  • (管理者)もし家族から損害賠償請求されたら対応はどうすべき?

 

今回はこんな疑問や不安にお答えします。

訪問介護は利用者と1対1の閉ざされた空間でサービスを提供します。

単独で仕事をするヘルパーは、そばで誰かからフォローを得られるわけではありません。さらに利用者の状態や自宅環境は本当にさまざま。

こういったことから訪問介護では事故が発生しやすい条件がそろっていると言えるでしょう。

 

とはいえ事故は頻発するようなものではないので、事故対応の経験がないヘルパーやサ責って意外と多いです。

経験がないゆえに「もし事故が発生したらうまく対応できるかな…」と心配になるものですよね。

 

そこで本記事では訪問介護の事故対応ですべきことを6つに分けて解説していきます。

本記事を読むことで、いざ事故が発生した時にも焦らず正しい対応ができるようになります。

 

※すぐに訪問介護の「事故対応ですべきこと」を知りたい方は下記から読み飛ばしてください。

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本記事の信頼性
  • 介護業界11年目、現役の管理者兼サービス提供責任者が執筆しています。
  • 保有資格:ヘルパー2級、基礎研修、社会福祉士、同行援護、全身性ガイドヘルパー、ほか
  • 制度などの解説は「厚生労働省の一次情報」をもとにしています。
  1. 訪問介護の事故とは
    1. 訪問介護で発生する事故は「訪問先の破損・紛失」がダントツで多い
    2. 訪問介護で発生しやすい25例の事故
  2. 訪問介護の事故対応4つの原則
    1. 原則①『個人ではなく組織として対応』
    2. 原則②『事実をベースとした対応』
    3. 原則③『利用者・家族への誠意ある対応』
    4. 原則④『対応窓口を一本化して対応』
  3. 訪問介護の事故対応ですべき6つのこと
    1. すべきこと① 『利用者への対応』
      1. 「人身事故」発生時の対応
      2. 「物損事故」発生時の対応
    2. すべきこと②『家族への対応』
      1. 事故発生後、速やかに連絡を入れる
      2. 事故の詳細は包み隠さず伝える
      3. 改善策を伝える
      4. 事故が発生したことへの謝罪をする
    3. すべきこと③『ケアマネへの連絡』
    4. すべきこと④『市町村への報告』
    5. すべきこと⑤『事故報告書の作成』
    6. すべきこと⑥『損害賠償』
      1. 賠償金が支払われるまでの流れ
  4. 賠償認定は「事実・結果・因果関係・過失の有無」から判断される
    1. 賠償認定された訪問介護事故の判例
      1. 『転倒事故』の判例
      2. 『誤嚥事故』の判例
  5. 事故の原因は「利用者・ヘルパー・環境」から分析し、再発防止策を検討する
  6. 訪問介護の事故を防ぐリスクマネジメント3選
    1. ヒヤリハットの報告 & 研修で共有
    2. サービス指示書に事故リスクを落とし込んでおく
    3. 事故対応マニュアルを作成し、周知しておく
  7. さいごに

訪問介護の事故とは

 

訪問介護の事故とはサービス提供を原因とした介護事故を指します。

例えば「利用者宅の所有物の紛失・破損」「やけどや骨折などのケガ」他にも「個人情報の漏洩」などコンプライアンス事故も含まれます。

 

基本的には事故の大小やケガのあるなしにかかわらず、利用者に実害がおよぶ可能性があった場合は、すべて介護事故と考えておきましょう。

 

訪問介護で発生する事故は「訪問先の破損・紛失」がダントツで多い

訪問介護 事故の分類

「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業」報告書より参照

上記は平成26年~平成29年に消費者庁から厚生労働省老健局に報告された、訪問系サービスの事故142件の内訳となっています。

ご覧の通り、訪問介護では「訪問先の紛失・破損」が80件で56.3%とダントツで多いです。

これは利用者の所有物にふれる機会が多い、訪問介護ならではの事故と言えます。

続いて

  • 転倒、転倒、滑落…23.2%
  • 来訪時の交通事故…4.2%
  • ペットトラブル…2.8%(ペットに噛まれた等)
  • ケアプラントラブル…0.7%
  • 車いすと壁の間に挟まれた外傷…0.7%
  • その他…11.3%

といった結果に。訪問介護では人身事故より物損事故の方が多い傾向にあることが分かります。

 

ただし訴訟に発展するケースは人身事故が圧倒的に多いです。

なので、事故の種別にかかわらず最新の注意を払っておきましょうね。

 

訪問介護で発生しやすい25例の事故

 

訪問介護でリアルに発生しやすい25個の事故例を紹介します。

よりイメージしやすいように「生活援助」「身体介護」「コンプライアンス」に分けています。

 

【生活援助での事故】

 

  • 食材を細かく切らないまま食事を提供し、利用者がのどに詰まらせた
  • 掃除機をかけている最中に骨董品や花瓶にぶつけてしまった
  • 洗い物中に皿を割ってしまった
  • 買い物代行で預かった金銭を紛失した
  • 食事制限がある中、本来食べてはいけない料理を提供し、利用者の病状が悪化した
  • ヘルパーが掃除中、目を離した隙に利用者が転倒していた
  • 洗面台の蛇口が壊れてしまい、床が水浸しになった

 

【身体介護の事故】

 

  • 嚥下機能のアセスメントせずに食事介助を行い誤嚥させた(誤嚥リスクが高かった)
  • 室内を車いす移動していた際に壁にぶつけて穴をあけてしまった
  • 外出介助で車いすを押している道中、段差につまづき利用者が前のめりに転倒した
  • 外出介助中に利用者の荷物を置き忘れた
  • トイレでの排泄介助中に補聴器が水没した
  • ベッドから車いすへ移乗する際に、ブレーキが止まっておらずそのまま転倒した
  • 入浴介助中にお湯の温度を確認せず火傷を負わせた
  • 浴槽へつかる際にバスボードがうまくセットできておらず体制を崩して転倒した
  • 浴槽内に滑り止めマットを敷き忘れ、すべって転倒した
  • 滑りやすい靴下を履いていたことから立位、移動時にすべって転倒した
  • 朝食後の間違えて夕食後の薬をだしてしまった(誤薬)
  • 陰部洗浄に使用するお湯が熱すぎたため火傷を負わせてしまった
  • ベッドの高さが上がったままヘルパーが退室、その後利用者がトイレに行こうとして転倒した
  • 口腔ケアで口腔内を傷つけてしまった

 

【コンプライアンス事故】

 

  • 利用者の状態を記録したサービス実施記録を紛失した
  • 利用者の状態報告をケアマネにFAXしようとしたところ、番号を間違えて送信してしまった
  • ヘルパーへの伝達ミスがあり、本来訪問すべきであった利用者宅のサービスが抜けてしまった
  • ヘルパーが訪問を忘れてしまい、サービスが抜けしまった

 

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訪問介護の事故対応4つの原則

訪問介護 事故対応4原則

 

ここでは訪問介護における事故対応の原則を4つ紹介します。

基本的な対応指針となるものですのでしっかり理解しておきましょう。

※参考厚生労働省「福祉サービスにおける危機管理に関する取り組み指針」

 

4つの原則
  1. 個人ではなく組織として対応
  2. 事実をベースとした対応
  3. 利用者・家族への誠意ある対応
  4. 対応窓口を一本化して対応

 

原則①『個人ではなく組織として対応』

 

事故はヘルパー個人ではなく組織として対応する必要があります。

契約の当事者である訪問介護事業所が「知らぬ存ぜぬ」は通りません。

決して事故を起こした個人に対応を丸投げするのではなく、事業所が一体となって対応しましょう。

 

 

原則②『事実をベースとした対応』

 

事故対応は『事実』をベースとした対応が求められます。

事故発生時からの全容を記録しておき、事実を整理・調査した上で対応していきます。

ポイントとしては

  • いつ、どのような事故が発生したのか
  • いつ、だれがどこに、どのような連絡をしたのか

など時系列がわかる経過記録を残しておくと良いでしょう。

 

 

原則③『利用者・家族への誠意ある対応』

 

事故の対応は、利用者・家族に寄り添った誠実な対応が求めれらます。

訴訟に発展するケースもあるため、事業所側に過失がある・なしにかかわらず謝罪をすることが第一歩と言えます。

「謝罪をしたら事業所側の責任を認めたことになる」と心配になる方も多いでしょう。

ですが、これは違います。

ここでいう謝罪とは、法的責任を認める謝罪ではなく、人としての道義的な謝罪を意味します。

 

例えば、家族に対しての謝罪であれば

  • 「サービス中にも関わらず事故が発生してしまい大変申し訳ございません」
  • 「○○様に痛い思いをさせてしまい誠に申し訳ございません」

このように事故が発生してしまった事実に対して謝意を示すことで、家族の感情は落ち着くものです。

 

ただし下記のような謝罪はNGです。

  • 「ヘルパーが注意を怠っていたことで転倒させてしまいました。弊社の責任です。大変申し訳ございません」
  • 「転倒防止策をしっかり行っておらず転倒させてしまいました。大変申し訳ございません」

このような謝罪だと法的責任を認めたと誤解されるおそれがあるため注意しておきましょう。

 

 

原則④『対応窓口を一本化して対応』

 

訪問介護の事故対応は、利用者だけではなく家族や市町村、ケアマネなどへの対応も行います。

そのため対応窓口は、専任の担当者をあらかじめ決めておきましょう。

例えば、第一報はAが行い、第二報はBが行う。こういった対応をしていると内容が二転三転する恐れがあります。

「前にAさんからは○○と言われたがどうなってるの?」と不信感を与えないように注意が必要です。

 

ちなみに一般的には管理者が事故対応の窓口になることが多いです。

 

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訪問介護の事故対応ですべき6つのこと

訪問介護 事故対応 すべき6つのこと

 

ここからは訪問介護の事故対応ですべきことを具体的に解説していきます。

まず厚生労働省が定めている事故対応を理解しておきましょう。

【事故発生時の対応】

第三十七条

1.指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により事故が発生した場合は、市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。

2.指定訪問介護事業者は、前項の事故の状況及び事故に際して採った処置について記録しなければならない。

3.指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない。

厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」より引用

この厚生労働省令から、いざ事故が発生した場合にすべきことは下記の6つとなります。

 

事故対応すべきこと6つ
  1. 利用者への対応
  2. 家族への対応
  3. ケアマネへの連絡
  4. 市町村への連絡
  5. 事故報告書の作成
  6. 保険会社へ連絡(損害賠償)

 

前提として事故対応は第一に①「利用者への対応」を、その後②~⑥を同時進行的に行っていくものと理解しておいてください。

ではそれぞれを深掘りしていきます。

 

すべきこと① 『利用者への対応』

事故対応① 利用者

訪問介護で事故が発生したら、第一に利用者への対応を行います。

 

「人身事故」発生時の対応

 

ヘルパーがすべきこと

  • 応急処置をする
  • 利用者の状態観察をする
  • 必要に応じて救急搬送、医療機関への連絡
  • サービス提供責任者or事業所へ連絡
  • 事故が発生したことについて謝罪する

 

緊急事態は1分1秒を争います。

判断に迷ったり、パニックになってしまったらすぐにサービス提供責任者や事業所に連絡をいれ指示を仰ぎましょう。

 

サ責&事業所がすべきこと

  • ヘルパーを落ち着かせる
  • ヘルパーへ救急搬送するかどうかの指示
  • 必要に応じて医療機関へ連絡
  • 救急搬送が必要ではないレベルなら訪問し、安全確認、状態確認をする
  • 事故が発生したことを謝罪をする
  • 賠償すべき事案であれば、保険会社に連絡する

 

事故に直面したヘルパーは焦ってしまうことが多いです。

ヘルパーから連絡があったらまずは落ち着かせて冷静に対処しましょう。

 

下記で急変時対応の手順を具体的に解説していますのでこちらも参考にしてください。

>>【決定版】訪問介護の緊急時対応マニュアル【あわてず急変対応ができる】

 

 

「物損事故」発生時の対応

 

ヘルパーがすべきこと

  • すぐに謝罪し、「会社に連絡して対応してもらいますね」と利用者に伝える
  • サービス提供責任者or事業所に連絡する

サ責&事業所がすべきこと

  • 同日に利用者宅へ訪問し、事実確認後、謝罪する
  • 賠償すべき事案であれば保険会社に連絡する

 

ヘルパーは物損事故の発生時点で「弁償します」など安易に伝えないように注意してください。勝手な判断をしてしまうと混乱をうみます。

 

すべきこと②『家族への対応』

事故対応② 家族

家族への対応は、下記の4つを意識して行いましょう。

 

  1. 事故発生後、速やかに連絡を入れる
  2. 事故の詳細は、包み隠さず伝える
  3. 改善策を伝える
  4. 事故が発生したことへの謝罪をする

 

事故発生後、速やかに連絡を入れる

 

事故発生後、速やかに家族に連絡を入れてください。

現時点で明らかになっていることを整理して、第一報をまず入れます。その後、徐々に明らかになった事実があればその都度報告するようにしましょう。

連絡が遅ければ遅いほど、家族は不信感を持つものです。

 

 

事故の詳細は包み隠さず伝える

 

家族は『事実をすべて知りたい』と思っています。

そのため事故の詳細は、ごまかしたり言い訳をせず、包み隠さず伝えるようにしましょう。

ポイントは結論から伝えることを意識してください。

例えば

「本日〇時からのサービス時、○○様が居室内にて転倒されました。痛みや打撲などはなく、今のところお変わりなく過ごされています。転倒時の状況ですが、ヘルパーがトイレ掃除を終えて居室にもどるとソファーの前にうつ伏せになって倒れている○○様を発見しました。お聞きすると座っていたソファーから立ち上がろうとして前のめりに転倒されたとの事でして、、、」

 

このように「転倒したがケガはない」といった結論から話すと、以降の内容が伝わりやすくなります

 

 

改善策を伝える

 

事故の事実を知った家族は「今後はどのように対応するのか」を知りたいと思っています。

一度発生した事故は家族の心に刻まれるもの。

  • 「また同じような事故が発生するのではないだろうか?」
  • 「今後もこの事業所に任せても大丈夫だろうか?」

といった感情がうまれます。

そのため発生した事故の要因を分析し、具体的な再発防止策を早急に検討し、家族へ伝えましょう。

 

改善策の検討方法は後で詳しく解説しています。

 

事故が発生したことへの謝罪をする

 

どれだけ丁寧に説明し、改善策を伝えても「謝罪をしてほしい」と家族は思うものです。

まずは誠実に謝罪して、家族の感情に寄り添うことを意識しておきましょう。

過去に「サービス中に起きた事故なのに謝罪がないのはおかしい」と訴訟を起こされた事案もあるため要注意です。

 

 

すべきこと③『ケアマネへの連絡』

事故対応③ ケアマネへの連絡

事故発生後に利用者の担当ケアマネにも連絡は必要です。

具体的には下記項目を報告してください。

  • 事故の詳細
  • 利用者への対応と経過
  • 家族への連絡の有無
  • 家族とのやりとりの詳細
  • 賠償の有無と経過

 

ケアマネに直接の被害はありませんが、間接的に仕事が増える可能性があります。ケアマネにも「ご迷惑をおかけし申し訳ございません。」と謝罪をしておきましょう。

 

 

すべきこと④『市町村への報告』

事故対応④ 市町村への報告

訪問介護で発生した事故は、内容によって5日以内に市町村へ報告しなければなりません。

厚生労働省によると下記のとおり。

 

 

○下記の事故については、原則として全て報告すること。

①死亡に至った事故

②医師(施設の勤務医、配置医を含む)の診断を受け投薬、処置等何らかの治療が必要となった事故

○その他の事故の報告については、各自治体の取扱いによるものとすること。

厚生労働省「介護保険施設等における事故の報告様式等について」より引用

 

 

これを受けて、例えば大阪市では下記のとおり報告すべき事故の範囲を定めています。

 

 

報告すべき事故は、事業者が行う介護保険サービス及び第1号事業(以下、「サービス」という。)提供中の利用者、入所(入院)者(以下、「利用者等」という。)の事故及び サービス提供に関連する利用者等の事故とする。

(1)サービス提供中における死亡事故及び負傷等。(送迎、通院やレクリエーション等での外出時の事故も含む。)

(2)その他サービス提供に関連して発生したと認められる事故で報告が必要と判断されるもの。

ア 震災、風水害及び火災等の災害により、サービスの提供に影響するもの。

イ 感染症及び食中毒については区保健福祉センター保健業務担当(注:各区によって担当名異なる)へ届け出たもの。

ウ 利用者の処遇に影響がある事件等。職員(従業者)の法令違反・個人情報流出・医薬品の事故・行方不明等その他報告が必要と判断されるもの。

【報告すべき事故の範囲】

(1)負傷等については、骨折及び縫合が必要な外傷等により入院及び医療機関受診を要したもの(施設内の医療処置含む)とする。それ以外においても家族等との間でトラブルが生じているか、あるいは生じる可能性があると判断されるもの。

(2)事業者側の過失の有無にかかわらず報告すべき事故の対象に該当するもの。

(3)利用者等が病気等により死亡した場合であっても、死因等に疑義が生じる可能性のあるもの(家族等と紛争が生じる可能性のある場合)。

(4)その他報告が必要と判断されるもの。

大阪市福祉局「介護保険事業所等での事故発生時の報告等の取扱いについて」より引用

 

 

市町村への報告は5日以内となっていますが、基本的に事故発生の当日または次日には第一報を入れてください。

事故報告書が未完成であっても、明らかになっている事実を先に伝えておきましょう。

 

 

すべきこと⑤『事故報告書の作成』

事故対応⑤ 事故報告書

事故報告書はサービス提供をもとにして発生した事故の対応記録を指します。

「市町村への報告」や「利用者側への情報開示」「保険会社への提出」などに必要となる超重要な書類です。

第三者からみても分かりやすい書き方を意識しておきましょう。

事故報告書には主に下記項目を記入します。

 

  • 作成者氏名
  • 事故発生の日時
  • 事故発生時の状況
  • 事故発生時の対応
  • 家族への連絡
  • 損害賠償の有無
  • 事後が発生した経緯、原因
  • 事故の再発防止策

 

事故報告書の書き方については下記で具体的に解説してますので参考にしてください。

>>【文例あり】訪問介護の事故報告書で押さえるべき書き方ポイント5選

 

また市町村によって事故報告書のフォーマットを定めていることが多いので、基本的には市町村HPよりダウンロードして使用してください。

もし市町村からの指定がない場合は、当サイトでもテンプレを無料配布しています。

欲しい方は下記からどうぞ。

>> 事故報告書の無料テンプレートはこちら

 

 

すべきこと⑥『損害賠償』

事故対応⑥ 損害賠償

賠償がすべき事故が発生したら、すぐに保険会社へ連絡を入れます。

保険会社により調査が行われ、その事故が保険適用ケースであれば賠償金が支払われます。

 

賠償金が支払われるまでの流れ

 

  • STEP1
    保険会社による調査

     

    事故報告書を保険会社に提出し、聴き取りなどが行われ、保険適用ケースか調査します。

    過失の有無や、賠償範囲の調査には時間がかかるため注意してください。

    例えば「骨折して入院した」などの場合、症状が固定されるまで賠償金額は判定されません。

    そのため、あらかじめ利用者・家族へ時間がかかる旨を伝えておきましょう。

     

  • STEP2
    示談交渉

     

    保険適用ケースだと判断され、具体的な賠償金額が決定したら、利用者・家族へ提示します。

    基本的に、保険会社は示談交渉を行っていないため事業所側で行う必要があります。

    提示した賠償金額に利用者・家族が納得されたら、示談書にサインをもらい、示談成立です。

     

  • STEP3
    賠償金の支払い

     

    示談成立後、賠償金が利用者・家族の口座に入金されます。

     

 

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賠償認定は「事実・結果・因果関係・過失の有無」から判断される

 

事故対応では「利用者側と示談が成立せず、訴訟を起こされる」ことも想定しておく必要があります。

一般的に訴訟まで発展した場合、弁護士を立てて対応してもらうわけですが

事業所としては賠償認定の仕組みを理解しておくと良いでしょう。

 

介護事故 賠償責任認定の仕組み

 

賠償認定は上記イメージのとおり、①『事実』②『結果』③『因果関係』④『過失の有無』を順番に検証し、裁判所が判断します。

 

この際には、事故報告書や訪問介護計画書、サービス実施記録などが証拠材料となりますので各種記録をしっかり整備しておきましょう。

 

 

賠償認定された訪問介護事故の判例

 

訪問介護で発生した事故で、利用者家族から訴訟を起こされたケースを2つ紹介します。

どちらも裁判所から賠償認定されたケースですので、過去の判例から注意すべきことを学んでおきましょう。

 

『転倒事故』の判例

 

【事案の概要】

A(本件事故当時82 歳の女性。要介護状態区分5)は、平成22年3月2日、腎不全のため入院し、透析に必要な人工血管を体内に埋め込む手術を受けて約5カ月間入院した後、同年8月12日退院した。

同日、A はY(株式会社)との間で、その居宅において、入浴、排せつ、食事、移動移乗等の介護、調理、洗濯、掃除、買い物等の家事、車両への乗降の介護、生活等に関する相談および助言その他の日常生活上の援助を行うことを内容とする訪問介護契約(本件契約)を締結した。

Yの被用者であるB介護士は、同年10月22日午前9時40分頃、Aに対し人工透析のために自宅と医院との間を送迎する通院介助サービスを提供した。

Aは、その際、自室から玄関まで杖をつきながら自立歩行し、上がりかまち(玄関土間からの高さ約24cm)の上で立位のまま靴を履いた。

その時、Bは、玄関前に置かれたAを載せる車椅子が所定の位置とは異なる場所にあることに気づき、車いすを移動させるため、Aに対し、そのままの体勢で待つように指示して玄関の外に出た。

Aは、右手を玄関脇の下駄箱の上に置いて上がりかまちの上に立っていたが、B が玄関の外で車いすを移動させている間に転倒し、玄関土間に転落した(本件事故)。

Aは、本件事故により左大腿骨頸部内側骨折の傷害を負い、同日以降、C 病院・D 病院・E 病院にそれぞれ入院し、平成23 年11 月1 日、症状固定の診断を受けた。

以上の事実関係の下、A(平成24 年7 月に死亡)の相続人であるXからYに対し、債務不履行に基づく損害賠償の支払いを求めて訴えに及んだ。

 

【判決:請求一部認容】

「本件契約は、要介護状態にあるAに対して移動移乗等の日常生活上の種々の介助を行うことを内容とするものであるから、その性質上、Yは、Aに対して、本件契約に基づき、Aの安全に配慮して介助すべき安全配慮義務を負っていたというべきである。」

「B介護士は、本件契約に基づく安全配慮義務の一内容として、上がりかまちに立っているAから目を離す際には、Aを一旦上がりかまちに座らせるとか、Aの家族に一時的に介添えの代行を要請するなど、Aが転倒することを防ぐために必要な措置を執る義務を負っていたものというべきである。それにもかかわらず、B 介護士は、A を上がりかまちに立たせたまま玄関の外に出てAから目を離し、何らAの転倒を防ぐ措置を講じなかったのであるから、Y には本件契約に基づく安全配慮義務違反があるというべきである。」

裁判所は上記のとおり判事。院付添費・入院雑費・入院慰謝料・後遺障害慰謝料・弁護士費用として1726 万円余の請求を認容した。(東京地裁平成25年10月25日判決〔判例集未登載。LEX/DB文献番号25515600〕)

WAMNETより引用

 

このケースは「安全配慮義務違反」の有無を判断された事故です。

アセスメントで利用者が立位不安定だと評価していて、訪問介護計画にも落とし込んでいたようです。ですが、結果的にヘルパーは転倒を予見できたはずが、明らかにマズい行動に出ていますよね。

アセスメントや訪問介護計画の重要性をヘルパーにしっかり理解させておきましょう。

 

 

『誤嚥事故』の判例

 

【事案の概要】

本件は、中枢神経障害による体幹神経障害により、常時、身体・生活介助を必要としていた15歳の障害者Aが食事介護中の誤嚥により窒息死した事案につき、Aの両親X1・X2が、ホームヘルパーY1、事業主である有限会社Y2、代表取締役であるY3(看護師)に対し、損害賠償を求めた事案である(有限会社法は現在では廃止されている。本件では代表取締役Y3の賠償責任も問われ、否定されているが、本稿では触れない)。

Xらは、Y2との間で、Aへの居宅介護サービス(食事・入浴介助)の提供に係る契約を締結しており、本件事故当日も、ホームヘルパー2級とガイドヘルパーの資格をもつY1が食事介助を行っていた。

午後7時25分頃、突然Aが上半身を前後に大きく揺らし、顔色が悪くなっていたことから、Y1は、背中を2、3回叩いて声をかけたものの反応がなかった。そこでY1は、別の部屋にいた祖父母にその旨を伝えたところ、祖母はてんかんの発作であると判断し、Aに座薬を投与した。しかしAに変化がなく、三男の通う中学校にいたX2(Aの母)の携帯電話にもつながらなかったので、Y1は祖父とともに車で、中学校までX2を呼びに行った。

午後7時40分頃Y1と共に戻ってきたX2は、119番通報後、救命措置をしようとして、Aの口を開けたところ、ロールキャベツのかんぴょうが詰まっているのが見えたことから、吸引機でAの口からかんぴょうを取り除いた。

この頃Y1は、Y2に電話連絡をし、Y3に対し、Aの顔色が悪いこと、チアノーゼ症状が起きていることを説明したところ、Y4は、誤嚥の可能性があると判断し、吸引と人工呼吸、心臓マッサージをするよう指示したため、救急隊が到着するまで、人工呼吸と心臓マッサージをX2とY1が交代しながら継続した。救急車で搬送された後、翌日Aは死亡した。

 

【判決:請求一部認容】

①「Y2においては、本件契約上の債務として、被介助者であるAの生命身体等に対する危険を予防すべき債務を負っているというべきであるし、ホームヘルパーであるY1も同様の注意義務を負っている」。「かかる注意義務違反の有無については、Y1がAの異変に気づいた際に、どの程度のことを認識すべきであったか、Y1が認識すべき状況において、Aの誤嚥による窒息死を防ぐことが可能であったか否かによって判断すべきである。」

②「Y1は訪問介護員2級課程を修了しているホームヘルパーではあるが、ホームヘルパーの養成における医学知識の受講時間に照らしても、医師はもちろん看護師と同程度の注意義務を認めることができず、本件においてY1 はAが誤嚥に陥っていることに直ちに気づくべきであったとまでは認め難い。」「もっとも、・・・Y1は、異常事態の原因を自ら判断できなかったとしても、少なくともY2ないしY3に対して連絡する程度の異常事態であったとの認識は持つべきであったと認められる。」

③「誤嚥の場合の対処法として、掃除機を使用する、指交差法による開口と指拭法、背部叩打法、ハイムリック法、側胸下部圧迫法などによる異物の除去を行うことが可能であった」ことなどからすると、「Y1が異常事態を認識して、早期にY2ないしY3に連絡を取れば、十分にAの誤嚥による窒息死を防ぐことが可能であったものと認められる。」

④以上により、Y1・Y2に対する損害賠償請求を認容し、死亡損害として1,800万円の慰謝料のほか、X1・X2に各300万円の慰謝料が認められた(ただし、祖母がてんかん発作であると判断した点に2割の過失相殺を認めた)

(名古屋地裁一宮支部平成20年9月24日判決・判例時報2035号104頁)

WAMNETより引用

 

このケースは「事故を予見できなかったのか?」「結果を回避できなかったのか?」の2点が争点となりました。

結果的に誤嚥を予見できた可能性はあった(少なくとも事業所に連絡は入れれた)と裁判所は判断しています。

緊急時の連絡体制をあらかじめ定めておくこと、そしてヘルパーに周知しておくことの重要性を改めて理解しておきましょう。

 

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事故の原因は「利用者・ヘルパー・環境」から分析し、再発防止策を検討する

事故の原因分析 3つの視点

 

事故対応は、事故の原因を究明し、再発防止策を策定するまでを含みます。

注意点としては「今後は細心の注意を払う」「気を付けてケアにあたる」など、ヘルパー個人の責任を終わらせないこと。

そのためには事故の原因を「利用者・ヘルパー・環境」の3要因から分析し、対策を講じましょう。

例えば下記のとおり。

 

【 利用者要因 】

  • 前日に睡眠薬を服用していてふらつきが強かった
  • 嚥下機能が落ちていた
  • 下肢筋力が低下していた
  • 不穏だった(精神状態が不安定)

【 利用者要因への対策 】

  • 再アセスメントの実施
  • 作業療法士に評価してもらう
  • モニタリングの実施

 

【 ヘルパー要因 】

  • 精神的なトラブルを抱えていた
  • 体調が悪かった
  • 介助方法が不適切だった
  • サービス時間ギリギリで焦っていた

【 ヘルパー要因への対策 】

  • ヘルパーのメンタルヘルスケアに取り組む
  • 体調管理の見直し
  • サ責が同行訪問して技術指導をする
  • 訪問介護計画を見直し、サービス内容を変更する

 

【 環境要因 】

  • 車いすのブレーキが壊れていた
  • 床が滑りやすかった
  • 手すりが外れかけていた
  • 段差が高かった

【 環境要因への対策 】

  • 福祉用具業者への点検依頼、修理
  • 住環境を再度見直して適した福祉用具を導入
  • 住宅改修

 

こんな感じで精神論ではなく、仕組みやルールを変えるような対策を講じることが大切です。

 

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訪問介護の事故を防ぐリスクマネジメント3選

訪問介護 リスクマネジメント

 

残念ながら訪問介護の事故を100%防ぐことは不可能です。

とはいえ、“防げる事故”を発生させない対策を講じておくことは重要です。

ここでは事業所が普段から行っておくべきリスクマネジメントを3つ紹介します。

 

 

ヒヤリハットの報告 & 研修で共有

ヒヤリハット

 

ヒヤリハットとは「重大な事故が発生したかもしれない、一歩手前の事例」を指します。

上記イメージ図のとおり、労働災害の経験則“ハインリッヒの法則”によると「1件の重大な事故の背後には、29件の軽微な事故があり、さらにその背景には300件のヒヤリハットがある」とされています。

普段からヒヤリハット報告をヘルパーに上げてもらい、研修などで共有することで、似たような事故リスクや重大な事故を防げるのです。

ヘルパーからの報告はヒヤリハット報告書を活用すると良いでしょう。

当サイトではヒヤリハット報告書のテンプレートを無料配布しています。

欲しい方は下記からどうぞ。

>> ヒヤリハット報告書のダウンロードはこちら

 

ヘルパーをしていれば「ヒヤッ」としたり「ハッ」とした経験は誰でもあるはず。

事業所としてはヒヤリハット報告を上げやすい環境を作ることも大事ですよ。

 

 

サービス指示書に事故リスクを落とし込んでおく

 

事故リスクは単一的なものではなく、利用者の状態や自宅環境によって大きく異なります。

「利用者Aは○○だから、○○の事故リスクがある。なので○○に注意する」ということは必ずあるもの。

それぞれに適した『事故が発生するかもしれないリスク』と『対応方法』をサービス指示書に落とし込んでおくことで、重大な事故を未然に防げます。

 

手順書の具体的な書き方を下記で解説していますので参考にしてください。

>>【完成例あり】訪問介護の「サービス指示書(手順書)」作成ガイド

 

 

事故対応マニュアルを作成し、周知しておく

 

ヘルパーやサービス提供責任者は、事故が発生したらスピーディーかつ冷静に対応しなければなりません。

実際に事故が起きてからパニックにならないように、事故対応マニュアルを作成し周知しておきましょう。

 

事故対応マニュアルは本記事を参考にしてもらってもOKです。

(※参考、引用をする場合は、ホームページ等に当サイトのリンクを貼っていただければOK)

 

また当サイトでは簡易的なマニュアルを無料配布していますので欲しい方は下記からどうぞ。

>> 事故対応マニュアルのダウンロードはこちら

 

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さいごに

今回は訪問介護の事故対応についてを網羅的に解説しました。

ぜひ本記事を参考にしていただき、現場で活かしていただければと思います。

また当サイトではサービス提供責任の初心者向け業務マニュアルを無料で公開しています。

この機会に合わせてチェックしておきましょう!

 

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