- サービス実施記録の書き方がイマイチ分からない・・・
- そもそもサービス実施記録はなぜ必要?
- 実地指導で、指摘されない正しい書き方が知りたい・・・
今回はこんな疑問や悩みに答えます。
訪問介護のサービス実施記録は、行政からの実地指導でも厳しくチェックされる超重要な書類のひとつです。
そのため“正しい書き方”が求められることは言うまでもありません。
とはいえ実際の現場では、サービス提供ばかりに目がいき、記録がおろそかになっていることは多いのではないでしょうか?
本記事では、そんな方のためにサービス実施記録の必要性と正しい書き方を5つのstepに分けて解説します。
すぐにつかえる記入例も多数紹介していますのでぜひ参考にしてください。
※サービス実施記録の『書き方』を今すぐ知りたい!って方は下記から読み飛ばせます。
訪問介護のサービス実施記録(提供記録)とは?
訪問介護のサービス実施記録は、利用者へ提供したサービス日時・内容、その際の健康状態や様子などを記録する書類です。
“訪問記録“や“提供記録”とも呼ばれており、サービス提供ごとに必ず作成しなければなりません。
参考省令
【第十九条】サービスの提供の記録
指定訪問介護事業者は、指定訪問介護を提供した際には、提供した具体的なサービスの内容等を記録するとともに、利用者からの申出があった場合には、文書の交付その他適切な方法により、その情報を利用者に対して提供しなければならない。
なおサービス実施記録の様式に決まりはないですが、ほとんどの事業所で“2枚複写式”が採用されています。
原本を事業所に保管し、ひかえ(写し)を利用者宅に保管しておいてもらいましょう。

ちなみにサービス実施記録のひかえは、利用者宅に事業所用ファイルを置かせてもらって、そこに挟んでいくと良いですよ。
サービス実施記録の4つの必要性
次にサービス実施記録(以下、実施記録)はなぜ必要なのか?についてです。
もちろん省令で義務付けられていることも理由のひとつ。
しかし、その他にも4つ大きな理由があります。
- サービス提供の証拠
- 介護報酬請求の根拠
- ヘルパー同士の連携
- 訪問介護と他職種との連携
必要性① 実施記録は『サービス提供の証拠』
訪問介護はサービスの特性上「1対1の閉ざされた空間」で業務にあたるため、ヘルパーがサービスを提供したと第三者からは証明できません。
例えば、ヘルパーが掃除をした後に利用者が汚してしまったら、本当にヘルパーが掃除をしたのか分からなくなりますよね。さらに、この状況下で家族が来訪したらどう思うでしょうか?きっと「ヘルパーが掃除をしていない」とクレームが発生するでしょう。
第三者である家族からは、ヘルパーが掃除をしたことも、利用者が後から汚したことも視えないのです。
そのため実施記録に“どのヘルパーが何をしたのか”を記録しておくことで、『ヘルパーが確実にサービスを提供した』と証明できるわけです。
したがって実施記録とは、サービス提供の証拠書類であると同時に、ヘルパー自身を守る役割もあることを良く理解しておきましょう。
必要性② 実施記録は『介護報酬請求の根拠』
サービス提供への対価である介護報酬は、国民健康保険団体連合会へ請求することで事業所に支払われます。
参考:【図解】訪問介護の介護保険請求マニュアル【専門家が0から解説】
この介護報酬請求の根拠となる書類が実施記録です。
実地指導においても事細かにチェックされるため、実施記録が“無い”、または“誤りがある”と「介護報酬の返還」や最悪の場合だと「指定取り消し」といった行政処分が科せられる可能性があります。
そのため、実施記録は必ず作成し保管しておくだけではなく、正確性が求められるものと理解しておきましょう。
必要性③ 実施記録は『ヘルパー同士の連携』ツール
訪問介護は、複数人のヘルパーが日時をまたいで利用者へサービスを提供するため、『引き継ぎ』がとても重要になります。
過去にさかのぼって実施記録を確認し、得られた情報を“今日”のサービスに活かす。
この繰り返しによりサービスの質は担保されています。
例えば
過去の実施記録に「一昨日から右足に痛みがある」と書かれていたなら、今日のサービスでは『今も痛みがあるのかを聞く。歩行時に注意して見守る。』などの対応が必要となるでしょう。
他にも
過去の実施記録に「昨日のサービスで肉じゃがを調理した」と書かれていたなら、今日のサービスでは『魚料理を調理する』など、前回と重ならない献立を考える必要があるでしょう。
このように実施記録をとおしてヘルパー間が連携を図ることで、“継ぎ目がない”サービスを提供できるのです。
必要性④ 実施記録は『訪問介護と他職種の連携』ツール
実施記録は、訪問介護と他職種との連携においても重要な役割を担っています。
例えば、利用者の「自宅での生活状況」や「心身の変化」といった情報は、医師や訪問看護、訪問リハなど訪問回数が少ない専門職からすると、なかなか把握しずらいですよね。
対して訪問介護は、利用者の生活により近い専門職ですので、これらの情報を得やすい面があります。
そのため実施記録を他職種に読んでもらうことで、訪問介護“ならでは”の情報を共有できるというわけです。
また訪問介護側としても、他職種から専門的なアドバイスを得られる機会にもつながります。
このように実施記録は、チームケアを遂行する上で欠かせない連携ツールとなるのです。

【記入例】サービス実施記録の「書き方」を5stepで解説
訪問介護の実施記録は“ ただ単に書けば良い ”わけではありません。
何度も言いますが、実地指導で必ずチェックされるので「制度的な知識」が必須です。
ここからは『実施記録の書き方』を注意点をまじえて5stepで解説していきます。

実施記録は公式な文書です。
そのため、前提として必ず消せないボールペンで書くようにしてくださいね。
摩擦で消えてしまうペンもNGですよ。
- STEP1【利用者・ヘルパー氏名を記入する】
- STEP2【サービス提供日&提供時間を記入する】
- STEP3【サービス種類、内容を記入する】
- STEP4【特記事項を記入する】
- STEP5【利用者の印鑑をもらう】
step1:利用者・ヘルパー氏名を記入する
まず利用者・担当ヘルパーの氏名をフルネームで書きます。
利用者の氏名を間違えないように注意しておきましょう。
実施記録は利用者が見ることもあるので、クレームにつながります。
step2:サービス提供日&提供時間を記入する
次にサービス実施日、時間を書きます。
サービス提供時間は必ず、実際にかかった時間を記入するようにしてください。
『訪問介護計画通りの時間を記入する』と勘違いしている方も多く、これはNGです。
例えば、
- 訪問介護計画の時間・・・11:00~12:00
- 実際のサービス提供時間・・・10:55~11:55
だとすると、実施記録には10:55~11:55と書きます。
11時きっちりにサービスを開始し、12時きっちりにサービスを終了することは現実的にはありえません。
実施記録には1分単位で正しく記入しましょう。
サービス実績票も1分単位で正しい時間を記入するべきか?と疑問に感じると思います。
サービス実績票は、計画と実際の提供時間に15分以上の差がなければ計画通りの時間で作成します。
例えば
- 訪問介護計画・・・11:00~12:00
- 実際の提供時間・・・10:55~11:55
だとすると、実施記録は10:55~11:55と記入、サービス実績票は11:00~12:00でOKです。

ただし、このあたりは自治体によって判断が分かれる所ですので、管轄の自治体に確認はとってくださいね。
ちなみに大阪市では上記のように記入しなければならないと実地指導で注意されました。
step3:サービス種類、内容を記入する
次にサービス種類、内容を訪問介護計画どおりに記入します。
ヘルパーは基本的に訪問介護計画にのっていない内容は行えないので注意しておきましょう。
例えば
- 訪問介護計画・・・身体介護2
- サービス内容・・・入浴介助
ならば、そのとおりに確実に記入してください。

『サービス項目のチェック漏れ』はめちゃくちゃ多いです。
しっかり確認してくださいね。
計画はあくまで計画なので、予定どおりにサービス提供できないことも当然あります。
その際は、訪問介護計画どおりに提供できなかった『理由』を特記事項に記入してください。
step4:特記事項を記入する
次に特記事項を書きます。
特記事項に「特変なし」と書いている方は多いですが、実地指導で指摘されるので注意してください。
とはいえ特記事項って何を書けば良いの?と迷いがち。一番時間がかかるところですよね。
特記事項に書くべき4つの内容
特記事項は、基本的に下記4つを書けばOKです。
- 『予定どおりにサービス提供できたか』どうか
- 『ヘルパーが介助した内容』&『利用者が行った内容』
- 利用者との『会話』
- 利用者の『心身の変化』
内容① 予定どおりにサービス提供できたか
予定していたサービスを行えたのか?を書きます。
例えば下記のとおり。
- 「特に危険なく入浴介助行っています。」
- 「居室内、トイレの掃除を行っています。」
- 「○○スーパーへ買い物同行しています。」
- 「予定通り、○○病院へ通院介助しています。」
など
予定どおりに行えなかった場合は『なぜ』できなかったのか理由を書きます。
例えば下記のとおり。
- 「雨天により買い物同行を代行に変更しています。」
- 「血圧が○○/○○と高いため入浴中止し、清拭に変更しています。」
- 「訪問時、不在のため待機。10分後に本人が帰宅され遅れてサービス開始しています。」
- 「訪問時より不穏な様子で、数回声掛けしましたが拒否され入浴介助できませんでした。」
など
内容②『ヘルパーが介助した内容』と『利用者が行った内容』
サービス中にヘルパーの介助内容と利用者の行動を書きます。
例えば下記のとおり。
- 「入浴時は、洗身と浴槽へのまたぎ動作のみ介助し、その他は本人が行っています。」
- 「買い物同行時は車いすでスーパーまで移動、スーパー内は本人がカートを押して商品を選ばれました。」
- 「掃除中は、身の回りの物を本人が片付けたりと積極的に動かれています。」
- 「掃除後に本人にチェックしてもらっています。」
- 「洗濯を取り込み、本人と一緒にたたんでいます。」
- 「掃除中は、ベッドから起きてもらい居室のイスに腰掛けていただいてます。」
など

介助内容におうじて「排泄の量や質」「食事・水分量」なども書くと良いです。
排泄であれば・・・
- 尿量(〇mlなど数字で書くまたは、+などを用いて量を表す)
- 色(褐色尿や血尿など)
- 便の量(ゴルフボール程度×3、握りこぶし台×1など例えて書く)
- 便の状態(硬便、軟便、水様便など)
食事・水分量であれば・・・
- 主食〇割、副食〇割
- お茶○○ml
など客観的に分かりやすい書き方を心がけましょう。
内容③ 利用者との『会話』
サービス中の利用者が話していた内容を書きます。
表情や活気のある・なしも記入しておくと情景が浮かびやすくgoodです。
例えば下記のとおり。
- 浴槽につかりながら、仕事をしていた時の話を楽しそうにされていました。
- 「この前、友人と出かけた」と話をされており、活気があるご様子です。
- デイで行事があったようで「景品が当たった」と喜ばれていました。
- 「昔のように体がうまく動かない」と衣服が着れなかったことに対して苛立ちがあるご様子でした。

ただし『グチ』や『内緒の話し』は書かないようにしてください。
- 家族、友人、ヘルパー、他職種への愚痴などのネガティブな内容
- ヘルパーにしか話せない内緒話
などを身近な存在であるヘルパーにポロっと話してくることがあります。
“あえて”特記事項には書かず、必要であれば口頭でサービス提供責任者に伝えましょう。
内容④ 利用者の『心身の変化』
サービス時に利用者の精神・身体面での変化を書きます。
例えば下記のとおり。
- 「右腸骨と仙骨に3㎝台の発赤がありました。痛みは伴っておらず左側臥位で休んでいただいてます。」
- 「ズキズキとした頭痛があるとの事でお聞きすると「いつも雨の日は痛くなる」と仰っていました」
- 「訪問時、居室内で転倒されていて起き上がれない状態でした。右大腿部に強い痛みがあり自立歩行が難しいため救急搬送しています。」
- 「通常時にくらべ歩行時のふらつきが強い様子でした。血圧○○と高め。水分補給し休んでいただいてます。」
このように利用者の体調変化に対してヘルパーが行った対応も書くとgoodです。

体調変化を書く時は“具体性”がポイント。
例えば「足が痛いと言っていました」だけでは具体性に欠けます。
- 痛みはいつから?
- 痛みの部位
- 通常時との見た目の変化(腫れている等)
- 痛みの程度(強弱)
- 痛みの質(ズキズキ、ジンジン)
など、深掘りしてから書くようにしましょう。
ほかに「○○mm程度の湿疹」「体温〇℃」「血圧 〇/〇」など数字を取り入れると説得力が増しますよ。
step5:利用者の印鑑をもらう
最後に利用者に印鑑をもらい完成です。
印鑑が無ければサインでもOK。
注意点をおさえた実施記録の『完成例』はこちら
step1~step5までの注意点をおさえた完成例を紹介しておきます。
2つ用意していますので参考にしてみてくださいね。
完成例①
※サービス内容は入浴介助で身体介護2を想定しています。
\ クリックすると拡大します /
完成例②
※サービス内容は掃除と排泄介助で身体1生活1を想定しています。
\ クリックすると拡大します /

この完成例のように書けば、基本的に実地指導で指摘はされないはずです。
訪問介護のサービス実施記録でよくある質問と答え
ここでは訪問介護の実施記録について良くある質問と答えを紹介します。
Q1:そもそも実施記録に『利用者の印鑑』は必要?
- 本来は実施記録に利用者印は“不要”ですが、押しておいた方が無難。
厚生労働省が定めている運営基準には下記のとおり記載されています。
指定居宅サービス等の運営基準 第十九条 2項
(サービスの提供の記録)指定訪問介護事業者は、指定訪問介護を提供した際には、提供した具体的なサービスの内容等を記録するとともに、利用者からの申出があった場合には、文書の交付その他適切な方法により、その情報を利用者に対して提供しなければならない
このように実施記録を作成する義務はありますが、利用者の印鑑が必要とは記載されていません。
ですが、下記2つの理由から利用者印を押していた方が良いと考えられます。
- 利用者印を押す“欄”があるのに、印が押されていないと不自然
- 利用者印が押されていないと、事業所側で不正や改ざんができてしまう

おそらく実地指導では利用者印がない場合、上記2点を“つっついてくる”ので利用者印をもらっておいた方が無難です。
Q2:実施記録を『書き間違えた』ときはどうする?
- 書き間違えたところに二重線をひき、利用者印を押して修正します。
訪問介護は時間に追われることも多く、書き間違いが起こりやすいです。
この場合、二重線を引き訂正印を押すようにしてください。
なお訂正印はヘルパー印だと後から改ざんができてしまうため、利用者の印鑑を使用しましょう。
Q3:『通院介助』の記録はどう書けば良い?
- 通院介助の場合、別紙に詳細を書きましょう。
通院介助は、サービス中に『算定できる時間帯』と『できない時間帯』が混在しています。
特に院内介助を算定している場合は、かなり細かく時系列で介助内容を書かなければなりません。
そのため実施記録とは別に、通院介助記録を作成して保管しておくことをおすすめします。
※下記で通院介助記録の書き方を解説していますので参考にしてください。
Q4:実施記録に『専門用語』は書かないほうが良い?
- 家族が記録を見るなら専門用語はできるだけ避けるべきです。
利用者の家族が実施記録を見るなら、専門用語は避けて書くようにしましょう。
例えば、下記のように専門用語を変化してあげると家族も理解しやすいです。
- 褥瘡 ⇒ 床ずれ
- 臀部 ⇒ お尻
- 水泡 ⇒ 水ぶくれ
- 擦過傷 ⇒ すり傷
- 仙骨部 ⇒ お尻の上あたり
など

ただし家族のリテラシーに合わせることも大事です。
『褥瘡』程度の用語なら知っている家族もいますので柔軟に。
Q5:実施記録を『書く時間』はサービスに含んでOK?
- 記録の作成時間はサービス時間に含まれます。
実施記録の作成時間については、厚生労働省「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」により下記のとおり明記されています。
【1-0 サービス準備・記録等】
サービス準備は、身体介護サービスを提供する際の事前準備等として行う行為であり、状況に応じて以下のようなサービスを行うものである。
利用者の中には「〇時までなのに5分前に記録を書きだした」とクレームを言ってくる方がいます。
この場合、記録の時間はサービスに含まれることを利用者に理解してもらいましょう。

ちなみにサービス提供責任者は、記録の時間をあらかじめ確保したサービス設計を考えましょうね。5分程度は余裕を持たせるようにプランを組みたいところ。
Q6:実施記録の『保管』期間は?
- 原則『2年』です。が、自治体によっては『5年』保管の場合もあります。
実施記録に限らず、下記の書類は原則2年保管、自治体によっては5年保管とされています。
- 訪問介護計画書
- 市町村への通知にかかる書類
- 苦情相談の記録
- 事故対応の記録

近頃は5年保管の自治体が増えています。必ず調べておきましょね。
最後に
今回は訪問介護のサービス実施記録の書き方について解説しました。
質の高いサービスを提供することはとても大事なことですが、そのサービスを証明する記録も同じぐらい大事なことだとを理解しておきましょう。
当サイトではホームヘルパー・サービス提供責任者の初心者向けに業務マニュアルを無料で公開しています。
良かったら下記から参考にしてみてください!
※ホームヘルパーはこちら
※サービス提供責任者はこちら
※そのほかの帳票一覧を知りたい方は下記をどうぞ。