- 訪問介護の書類が多すぎて訳が分からない…
- 訪問介護ではどんな書類を揃えればいいの?
- 利用者個人ファイルに保管しておく必要書類ってなに?順番はある?
今回はこんな悩みにお答えします。
指定事業である訪問介護は、利用者に対して質の高いサービスを提供することと同時に、それを支える帳票書類を整備しなければなりません。
とはいえ忙しいサ責や管理者にとって書類作成はなかなかに至難のワザ。サービス提供ばかりに目がいき、書類整備がおろそかになっている事業所は多いのではないでしょうか?
「結局なにが必要な書類なのよ?」とイマイチ理解できず困りますよね。
そこで本記事では「これだけ揃えておけば訪問介護の運営はOK!」な41種の書類をすべて解説します。

本記事を読むことで「なにが必要」で「なにが不要」な書類か一覧でサクッと分かります。
※なお本記事は、令和6年3月31日まで経過措置期間が設けられている、業務継続計画関連や虐待防止関連書類は省いています。
【全41種】訪問介護の「必要帳票書類」一覧まとめ

本記事では、帳票書類を分かりやすく理解してもらうために
- 個人ファイルで保管する必要書類「19」種
- その他の事業所で保管する必要書類「22」種
の2つに分けて41種の帳票書類を解説していきます。
訪問介護の「個人ファイル」19の必要書類
①相談受付票
相談受付票は、新規利用の依頼受付時に作成する書類です。
訪問介護は、原則、以下にあげた正当な理由がなければサービス提供を拒否できません。
- 当該事業所の現員からは利用申込に応じきれない場合
- 利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合
- その他利用申込者に対し自ら適切な指定訪問介護を提供することが困難な場合
そのため、受け入れを拒否した場合に正当な理由で拒否したものだと証明できなければならず、その根拠書類となるのが相談受付票です。
ですから、依頼を受託する・断るにかかわらず必ず作成し保管してください。受託した場合は個人ファイルへ、断った場合は別途専用ファイルを設け保管しておくと良いでしょう。
関連:訪問介護の「サービス申し込み」対応ガイド【受付時に確認すべき9項目】
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参考省令
【第九条:提供拒否の禁止】
②緊急連絡票
緊急連絡票は、サービス中に緊急事態が発生した際に、「どこに連絡するのか」や「連絡先の順序」が書かれた書類になります。
主に
- 利用者の氏名
- キーパーソン
- 既往歴
- 服薬の詳細
- 主治医
- 搬送先の指定病院
- 緊急時の連絡順序
を記載しておき、有事の際は緊急連絡票をもとに対応していきます。
緊急連絡票は「事業所の個人ファイルに保管しておくもの」、「利用者宅に保管しておくもの」2部用意しておくと良いです。
緊急連絡票があることで現場のヘルパーやサービス提供責任者は、落ち着いて緊急時対応ができますので確実に作成しておきましょう。
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参考省令
【第二十七条:緊急時等の対応】
訪問介護員等は、現に指定訪問介護の提供を行っているときに利用者に病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、速やかに主治の医師への連絡を行う等の必要な措置を講じなければならない。
③介護保険証&負担割合証
介護保険被保険者証と負担割合証、それぞれのコピーを保管しておく必要があります。
チェックしておく項目は下記のとおり。
介護保険被保険者証
- 被保険者番号
- 氏名
- 住所
- 生年月日
- 交付年月日
- 要介護度
- 認定有効期間
- 給付制限の有無
- 担当の居宅介護支援事業所
負担割合証
- 利用者負担の割合
- 負担割合の適用期間
介護保険被保険者証と負担割合証は、ケアマネからもらう or 利用者から原本を預かってコピーをとるようにしてください。
参考省令
【第十一条:受給資格等の確認】
指定訪問介護事業者は、指定訪問介護の提供を求められた場合は、その者の提示する被保険者証によって、被保険者資格、要介護認定の有無及び要介護認定の有効期間を確かめるものとする。
④訪問介護計画書
訪問介護計画書は、訪問介護サービスの土台となる超重要な書類です。
「援助目標」やそれに対する「サービス内容」を定め、訪問介護計画にもとづいてヘルパーはサービスを提供します。
訪問介護計画書の作り方や完成例を知りたい方は下記をチェックしてください。
>>【つかえる文例】訪問介護計画書の作成ガイド【書き方の完全版】
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参考省令
【第二十四条】
「サービス提供責任者は、利用者の日常生活全般の状況及び希望を踏まえて、指定訪問介護の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した訪問介護計画を作成しなければならない。」
⑤居宅サービス計画(ケアプラン)
居宅サービス計画(ケアプラン)は、利用者にかかわる「すべての介護サービス」の援助目標や内容がまとめられている設計図のようなものです。
ケアマネが作成し、各サービス事業所に対して発行されます。
また発行されたケアプランには「受領書」が2部添付されているので、1部をケアマネに返送し、1部をケアプランと一緒に個人ファイルに保管しておきましょう。
参考省令
【第十六条:居宅サービス計画に沿ったサービスの提供】
指定訪問介護事業者は、居宅サービス計画(施行規則第六十四条第一号 ハ及びニに規定する計画を含む。以下同じ。)が作成されている場合は、当該計画に沿った指定訪問介護を提供しなければならない。
⑥アセスメントシート
アセスメントシートは利用者へのアセスメント(課題分析)に用いられるツールです。
上記画像のとおり「利用者の心身の状態や状況」「解決すべき課題」「ニーズ」などを可視化するために作成します。
アセスメントをもとにして訪問介護計画書の援助目標やサービス内容を策定し、利用者に対する『訪問介護の役割』を明確にします。
アセスメントの実践的な手法や、シート完成例を知りたい方は下記をチェックしてください。
>>【すぐつかえる】訪問介護のアセスメントの実践手順を5stepで完全解説
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参考省令
【第二十四条】
「サービス提供責任者は、利用者の日常生活全般の状況及び希望を踏まえて、指定訪問介護の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した訪問介護計画を作成しなければならない。」
⑦モニタリング報告書(サービス実施状況報告書)
モニタリング報告書(サービス状況報告書)は、訪問介護計画にもとづいたサービスの『利用状況』や『評価』を記入する書類を指します。
一般的には毎月末に利用者ごとのモニタリング報告書を作成し、月初1~3日頃にケアマネへ提出します。
モニタリング報告書に書くべき項目は下記のとおり。
- 居宅介護支援事業所と担当ケアマネの氏名
- 訪問介護事業所と担当サ責の氏名
- 利用者氏名
- 認定有効期間
- 介護度(要介護1~5、要支援1~2)
- モニタリング報告書の作成日
- ケアプラン&訪問介護計画の実施状況
- 期待された効果に対しての状況
- 心身、家族などの状況変化
- 利用者本人、家族の意向や意欲、満足度
- ケアプラン&訪問介護計画の見直しの必要性
- サービス状況の詳細(特記事項)
モニタリング報告書の具体的な書き方や文例を知りたい方は下記をチェックしてください。
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参考省令はこちら
【第二十四条】
「サービス提供責任者は、訪問介護計画の作成後、当該訪問介護計画の実施状況の把握を行い、必要に応じて当該訪問介護計画の変更を行うものとする。」
⑧契約書 & 重要事項説明書
訪問介護サービスの契約は「契約書」「重要事項説明書」「個人情報使用の同意書」の3点セットが必要となります。この3点を利用者へ説明し、同意をへて契約締結です。
それぞれ2部用意しておき、1部を事業所で保管、1部を利用者宅にて保管するようにしてください。
契約書
契約書は、事業所と利用者の合意の証となります。さらに利用者とトラブルになった際のリスクヘッジ(紛争予防)としても必要です。
記載しておくべき項目は下記のとおり。
- 契約の目的
- 契約の期間
- サービスの中止事由について
- 契約の終了事由について
- その他、必要な事項
重要事項説明書
重要事項説明書は、運営規定をもとに作成されるもので、サービス利用においての重要事項が書かれています。
記載しておくべき項目は下記のとおり。
- サービス事業所の概要
- 事業の目的及び運営方針
- 従業員の職種、人数、職務内容
- 営業日、営業時間、サービス実施地域
- 訪問介護サービスの内容
- 訪問介護サービスの禁止行為
- サービス記録について
- 利用料について
- 虐待防止の体制
- 苦情処理の体制
- 秘密保持と個人情報保護について
- 事故発生時の対応(賠償保険など)
訪問介護サービスの契約フローを知りたい方は下記をチェックしてください。
>>【5分でわかる】訪問介護の『契約の進め方』と『注意したいポイント』
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参考省令
【第八条:内容及び手続の説明及び同意】
「指定訪問介護事業者は、指定訪問介護の提供の開始に際し、あらかじめ、利用申込者又はその家族に対し、第二十九条に規定する運営規程の概要、訪問介護員等の勤務の体制その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、当該提供の開始について利用申込者の同意を得なければならない。」
⑨個人情報使用の同意書
個人情報使用の同意書は、ケアマネや他サービス事業所との間で『個人情報を共有する』ことに対して同意をもらうための書類を指します。
例えば、サービス担当者会議など多職種との連携において個人情報を共有する機会があるため、同意書をもらっておきましょう。(ただし自治体によっては不要としている所もあります)
個人情報使用の同意書は、契約時に契約書・重要事項説明書と合わせて説明すればOKです。
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参考省令
【第三十三条:秘密保持等】
「指定訪問介護事業者は、サービス担当者会議等において、利用者の個人情報を用いる場合は利用者の同意を、利用者の家族の個人情報を用いる場合は当該家族の同意を、あらかじめ文書により得ておかなければならない。」
⑩支援経過記録
支援経過記録は、利用者それぞれの日々の支援経過を、時系列で記録したものを指します。
省令で定められている必須書類ではありませんが
- 過去から現在にいたるまでのサービス状況を把握できる
- スタッフ間の情報共有に役立つ
- 適切なサービス提供の証明になる
などのメリットがあるため、その日に起きた出来事は同日中に記録しておきましょう。
支援経過記録に記載すべき内容は下記のとおり。
- 契約を締結した旨
- 初回訪問のサービス状況や利用者の様子
- 利用者や家族の状態変化や環境変化
- サービス担当者会議の内容
- 緊急時訪問介護加算の算定要件を満たした旨
- ケアマネや他職種とのやりとりの内容
- ケアマネに催促してもケアプランをもらえない場合
- 利用者や家族からの苦情、事故などのトラブル
- サービスが終了した旨
など
支援経過記録の書き方や記入例を知りたい方は下記をチェックしてください。
⑪サービス担当者会議の記録
サービス担当者会議とは、利用者にかかわる家族、ケアマネ、他サービス事業所が集まり、意見交換を行う会議を指します。
会議では「サービス全体の方向性」や「具体的なサービス内容」が決定することもあるため、確実に記録を残しておかなければなりません。
サービス担当者会議の記録の方法としては
- 支援経過記録
- サービス担当者会議の要点(ケアマネが作成、もらえない場合もある)
これらに記録し、保管しておきましょう。
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参考省令
【第十三条:心身の状況等の把握】
指定訪問介護事業者は、指定訪問介護の提供に当たっては、利用者に係る居宅介護支援事業者が開催するサービス担当者会議等を通じて、利用者の心身の状況、その置かれている環境、他の保健医療サービス又は福祉サービスの利用状況等の把握に努めなければならない。
⑫サービス担当者に対する「照会」
『サービス担当者に対する照会(依頼)』は、サービス担当者会議を開催できない、もしくは各サービス担当者が会議に出席できない場合に、ケアマネから送られてくる書類です。
略して「照会」と呼ばれることが多く、ケアマネからの照会依頼に対してコメントを記入し返送します。
この書類をケアマネに返送することで「サービス担当者会議を実施した」と同じ扱いになるため必ず写しを保管しておきましょう。
参考:「サービス担当者に対する照会(依頼)」の書き方・回答例37パターン
⑬サービス指示書(手順書)
サービス指示書は、訪問介護計画で立てた「目標」や「サービス内容」の手順を、現場レベルに落とし込んだ個別マニュアルのようなものです。
サービス指示書は省令で定められている必須書類ではありません。ですがヘルパーは指示書があるからこそ安心して仕事ができますので確実に作成しておきましょう。
具体的な書き方を知りたい方は下記をチェックしてください。
>>【完成例あり】訪問介護の「サービス指示書(手順書)」作成ガイド
⑭見取り図
見取り図は、利用者宅内の構造を可視化するために作成します。
居室、トイレ、風呂がどこにあるか、だけではなく「使用する物品の場所」や「段差の高さはどの程度なのか?」「手すりはついているのか?」などを具体的に記入することがポイントです。
省令で定められている必須書類ではありませんが、見取り図があることでサービスの効率化や事故防止につながるため、運営上欠かせない書類です。
⑮FAX(ファックス)などの記録
日々の業務の中で、利用者の状態変化などをケアマネにFAXで報告することがあるかと思います。
この際、基本的にケアマネとのFAX記録はすべて保管してください。
なぜなら訪問介護はケアマネや多職種との連携を義務付けられており、この連携がなされている証明としてFAX記録は有効だからです。
電話でのやり取りは文字に残らないのに対し、FAXであれば文字として残るので根拠証拠となります。
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参考省令
【第十四条:居宅介護支援事業者等との連携】
指定訪問介護事業者は、指定訪問介護を提供するに当たっては、居宅介護支援事業者その他保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との密接な連携に努めなければならない。
⑯鍵預かり書
鍵預かり書は、利用者宅のカギを預かる場合にとり交わす書類を指します。
書面に記載すべき項目は下記のとおり。
- 鍵の利用目的
- 鍵を紛失した場合の対応について
- 摘要(○○様自宅のカギなど)
- 鍵番号
- 預かる鍵の個数
- 利用者同意欄
- 事業所名
- 住所
- 連絡先
- 事業所の代表者氏名
鍵預かり書は2部用意しておき、1部を事業所にて保管、1部を利用者に渡してください。
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⑰鍵返却書
利用者から預かっていた鍵を返却する場合にとり交わす書類です。
書面に記載すべき項目は下記のとおり。
- 摘要(○○様自宅のカギなど)
- 鍵番号
- 返却する鍵の個数
- 利用者同意欄
- 事業所名
- 住所
- 連絡先
- 事業所の代表者氏名
鍵返却書は2部用意しておき、1部を事業所にて保管、1部を利用者に渡してください。
「鍵を返してもらってない」と後々トラブルになることもあるので必ず保管しておきましょう。
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⑱金銭管理に関する同意書
利用者の生活費などを預かり、事業所で管理する場合にとり交わす書類です。
同意書は2部用意しておき、1部を事業所にて保管、1部を利用者に渡してください。
金銭管理はトラブルになる可能性が高いので、必ず同意書をもらい保管しておきましょう。
⑲金銭出納帳
利用者の金銭管理を行っている場合は、金銭出納帳の作成が必要です。
金銭出納帳は1ヵ月ごとに作成し、利用者または家族などの代理人に報告してください。
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個人ファイルとは「別に」保管しておく22の必要書類
⑳苦情受付票(苦情対応記録)
苦情対応記録は、利用者や家族から寄せれた苦情・クレームへの対応記録を指します。
上記画像のとおり苦情の内容・要因・対応の経過などを記録し保管します。
苦情対応記録は
- 訴訟などのトラブルに発展した際に「適切な対応をした証拠」になる
- 悪質なクレーマーのサービスを終了する際の「根拠」となる
など事業所を守ることにも役立ちますので正確に記録しておきましょう。
苦情・クレーム対応の具体的な手法が知りたい方は下記をチェックしてください。
>> 訪問介護でよくある7つの「苦情・クレーム」と対応フローを5stepで解説
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参考省令
【第三十六条:苦情処理】
㉑事故報告書(事故対応記録)
事故報告書は、訪問介護サービスに起因した「所有物の紛失・破損」「転倒などのケガ」「個人情報漏洩などのコンプライアンス」事故などが発生した際の対応記録を指します。
事故報告書は
- 市町村への報告
- 保険会社への提出
- 職員間で共有して事故の再発防止に役立つ
- 訴訟などに発展した際に「適切な対応をした」証拠になる
などの用途として使用しますので確実に作成し、保管しておきましょう。
事故報告書に記載すべき項目は下記のとおりです。
- 作成者氏名
- 事故発生の日時
- 事故発生時の状況
- 事故発生時の対応
- 家族への連絡
- 損害賠償の有無
- 事後が発生した経緯、原因
- 事故の再発防止策
また事故報告書と合わせて、ヒヤリハット報告書も活用し、研修などで共有しておくと良いでしょう。
事故報告書の具体的な書き方は下記を参考にしてください。
>>【文例あり】訪問介護の事故報告書で押さえるべき書き方ポイント5選
事故対応について知りたい方は下記をどうぞ。
>> 訪問介護の「事故対応」完全マニュアル【事故発生時にすべき6つのこと】
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参考省令
【第三十七条:事故発生時の対応】
㉒年間研修計画
年間研修計画は、月1回の開催をベースとした年間の全体研修計画を指します。
訪問介護はヘルパー全員に対して研修機会の確保を義務付けられています。
また下記の「必須研修項目」をかならず計画に盛り込む必要があるので注意しておきましょう。
- 認知症及び認知症ケアに関する研修
- プライバシーの保護の取り組みに関する研修
- 接遇に関する研修
- 倫理及び法令遵守に関する研修
- 事故発生又は再発防止に関する研修
- 緊急時の対応に関する研修
- 感染症・食中毒の予防及び蔓延防止に関する研修
- ハラスメント研修(カスタマーハラスメントを含む)
- 人権擁護・虐待防止に関する研修
- 感染症および災害時に係る業務継続計画についての研修(令和6年度から義務化)
年間研修計画の立て方については下記を参考にしてください。
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参考省令
【第三十条:勤務体制の確保等】
指定訪問介護事業者は、訪問介護員等の資質の向上のために、その研修の機会を確保しなければならない。
【第二十八条:管理者及びサービス提供責任者の責務】
㉓個別研修計画
個別研修計画は「特定事業所加算」を算定するにあたり必要となる研修計画です。
少なくとも1年間に1回以上、ヘルパーごとに研修目標・内容・研修時期・実施時期などを定めた研修スケジュールを策定しなければなりません。
詳しくは下記で解説していますのでご参考ください。
>>【完全解説】訪問介護の特定事業所加算まるわかりガイド【一覧表あり】
㉔研修記録関連書類
先述の年間研修計画と個別研修計画は、あくまでも計画であり「研修を実施した」と証明できるものではありません。
そのため研修の実施にあたっては
- 研修記録
- 研修参加表
- 研修に使用した資料
- 研修受講報告書
などを保管しておきましょう。
また勤務スケジュールの都合などで不参加者がでた場合は、補講の状況がわかるように記載してください。
㉕サービス実施記録(提供記録)
サービス実施記録は、毎サービスごとに作成する訪問記録です。サービス終了の5分前ぐらいに記録を書き始め、利用者から印鑑をもらいます。
一般的に複写式の様式を取り入れている事業所が多く、原本を事業所で保管、ひかえ(写し)を利用者宅に保管しておきます。
サービス実施記録に書くべき項目は下記のとおり。
- 利用者氏名
- ヘルパー氏名
- サービス提供日
- 提供時間
- 具体的なサービス内容
- 利用者の心身の状況
またサービス実施記録は「介護報酬請求の根拠」となる重要な書類ですので、ミスなく確実に記録しておきましょう。
書き方や文例を知りたい方は下記をチェックしてください。
>>【訪問介護】サービス実施記録の書き方ガイド【記入例あり】
参考省令
【第十九条:サービスの提供の記録】
指定訪問介護事業者は、指定訪問介護を提供した際には、当該指定訪問介護の提供日及び内容、当該指定訪問介護について法第四十一条第六項 の規定により利用者に代わって支払を受ける居宅介護サービス費の額その他必要な事項を、利用者の居宅サービス計画を記載した書面又はこれに準ずる書面に記載しなければならない。
㉖通院介助記録
訪問介護の通院介助は、サービス内に「算定できる部分」と「算定できない部分」が混在している特殊なサービスです。そのため、通院介助を行った際にはサービス実施記録とは別に、通院介助記録を作成しなければなりません。
通院介助記録はサービス実施記録と同様に、介護報酬請求の根拠となる書類ですので確実に準備しておきましょう。
具体的な書き方が知りたい方は下記をチェックしてください。
>>【つかえる文例あり】訪問介護の「通院介助記録」書き方ガイド
㉗サービス提供票&別表
サービス提供票は、毎月の月初にケアマネから交付される訪問介護サービスの予定表を指し、別表には介護給付費の情報が記載されています。
また、その月のサービスが終了後には、サービス提供票の実績欄に「1」(実績を示す数字)と記入し、ケアマネへ実績報告(提供票の提出)を行います。
サービス提供票は、ケアマネから貰った時点では「予定表」の役割を、サービス提供後は「実績記録」の役割を果たす書類です。
省令上、保管の義務はありませんが、請求業務でも必要になりますので保管しておきましょう。
㉘介護給付費請求書・明細書
介護給付費請求書・明細書は、国保連(国民健康保険団体連合会)への請求に必要となる書類です。
介護給付費請求書には、請求をあげる全利用者分の合計金額などを記入、明細書には利用者ごとの請求金額の詳細を記入し作成します。
省令上、必須書類となりますので国保連への請求後、保管してください。
訪問介護の請求業務について知りたい方は下記をチェックしてください。
>>【図解】訪問介護の介護保険請求マニュアル【専門家が0から解説】
㉙介護券
画像引用:名古屋市/生活保護法施行細則
介護券は、生活保護を受給している利用者に対してサービス提供を行う場合に、市役所または福祉事務所から発行される書類です。
ケアマネが生活保護担当者へケアプランを発行することで、訪問介護事業者へ自動的に送られてきます。
また介護給付費請求書・明細書の作成時にも必要な書類となります。
㉚利用者への請求書・領収証(控え)
利用者への利用料を徴収する際には、請求書・領収書を発行し、支払いを受けます。
この際、事業所は請求書および領収書の控えを保管しておかなければなりません。
また利用者が「医療費控除」の対象である場合、対象額を領収書に記載する必要があるため注意してください。
医療費控除は、訪問看護や訪問リハなどの介護保険下「医療系サービス」を利用していて、かつ身体介護中心型サービスのみが対象となります。
※参考:国税庁「医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」
参考省令
【第二十条:利用料等の受領】
指定訪問介護事業者は、法定代理受領サービスに該当する指定訪問介護を提供した際には、その利用者から利用料の一部として、当該指定訪問介護に係る居宅介護サービス費用基準額から当該指定訪問介護事業者に支払われる居宅介護サービス費の額を控除して得た額の支払を受けるものとする。
㉛鍵管理表
鍵管理表は、預かっている利用者宅の鍵の持ち出し管理表です。
「いつ・誰が」鍵を使用し、返却したのかを記録しておくことで紛失などの事故リスクを防げます。
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㉜各種マニュアル
訪問介護で必要なマニュアルは下記のとおりです。
- 認知症マニュアル
- プライバシー保護の取組に関するマニュアル
- 苦情対応マニュアル
- 倫理規程
- 職務権限規程
- 事故発生またはその再発防止に関するマニュアル
- 利用者の鍵の管理について記載があるマニュアル
- 利用者の金銭管理について記載があるマニュアル
- 移動介助、外出支援マニュアル
- 口腔ケアマニュアル
- 入浴介助、清拭マニュアル
- 食事介助マニュアル
- 排泄介助マニュアル
- 生活援助マニュアル
- 調理に関して留意すべき事項がある利用者の状態に合わせた調理の実施について記載しているマニュアル
- 接遇マニュアル
- 感染症および食中毒予防マニュアル
- 体調の悪い訪問介護員の交代基準マニュアル
- 予定していた訪問介護員が訪問できなくなった場合の対応手順書
- 非常災害時の対応手順、役割分担等について定められたマニュアル(防災マニュアル)
- ハラスメントについての基本方針およびマニュアル
これらは、関連法および介護サービス情報公表制度により訪問介護に求められているマニュアルです。
事業所の特性に応じたマニュアルを策定して、各ヘルパーへ周知しておきましょう。
㉝評価表
評価表は、利用者へ提供している訪問介護サービスの質を評価する書類を指します。
基本的には1年に1回は実施し、評価結果を「重要事項説明書に添付する」「利用へ配布する」「自社HPで公表する」「事業所内に掲示する」などが望ましいとされています。
参考省令
【第二十二条:指定訪問介護の基本取扱方針】
㉞身分証
訪問介護は、すべてのヘルパーに対して身分証を発行し、携帯させておかなければなりません。
身分証には
- 事業所の名称
- ヘルパーの氏名
- ヘルパーの顔写真
- ヘルパーの職種
を網羅したものを作成し、必要に応じて身分証を提示させるよう指導しておきましょう。
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参考省令
【第十八条:身分を証する書類の携行】
指定訪問介護事業者は、訪問介護員等に身分を証する書類を携行させ、初回訪問時及び利用者又はその家族から求められたときは、これを提示すべき旨を指導しなければならない。
㉟運営規定
運営規定は、訪問介護事業を運営する上での重要事項を定めたものを指します。
記載すべき項目は下記のとおり。
- 事業の目的および運営の方針
- 従業者の職種、員数および職務の内容
- 営業日および営業時間
- 指定訪問介護の内容および利用料その他の費用の額
- 通常の事業の実施地域
- 緊急時等における対応方法
- 虐待の防止のための措置に関する事項
- その他運営に関する重要事項
また介護保険だけではなく、自費サービスも一体的に提供する場合は、自費サービス用の運営規定をあらたに作成する必要があるので注意しておきましょう。
㊱指定申請書・変更届け出書の控え
訪問介護の開業時に提出した指定申請書と、変更があった場合に提出した変更届け出書の控えは、必ず事業所に保管しておきます。
ちなみに変更届け出が必要な事項は下記のとおり。
- 管理者の変更
- サービス提供責任者の変更
- 事業所の名称、住所
- 事業所の専用区画の変更
- 運営規定の変更
- 会社の定款、寄附行為等およびその登記事項証明書又は条例等
- 会社役員の変更
これらは原則、10日以内に都道府県への変更届け出が必要です。
㊲「人員基準」についての書類
訪問介護の人員基準については下記書類が必要となります。
- シフト表
- 勤怠管理表(出勤簿)
- 勤務形態一覧表
- 資格証
- 履歴書
人員基準について詳しく知りたい方は下記をチェックしてください。
>>【すべて分かる】訪問介護の指定基準(人員、設備、運営)を完全解説
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㊳「設備基準」についての書類
訪問介護の設備基準については下記書類が必要となります。
- 備品台帳
- 平面図(指定申請時の状態と相違がないか)
設備基準について詳しく知りたい方は下記をチェックしてください。
>>【すべて分かる】訪問介護の指定基準(人員、設備、運営)を完全解説
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㊴「労務」関連の書類
訪問介護の「労務」関連では下記書類が必要となります。
- 就業規則(職員が10人以上、または介護職員処遇改善加算Ⅰ、Ⅱの取得に必要)
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 労働者名簿(職員名簿)
- 賃金台帳
- 秘密保持誓約書
- 健康診断の記録(常勤・非常勤に限らずすべての職員分)
>>「雇用契約書 兼 労働条件通知書」ひな形(登録ヘルパー用)
>>「雇用契約書 兼 労働条件通知書」ひな形(正社員、パート用)
㊵「会計」関連の書類
訪問介護では下記の「会計」関連書類が必要となります。
- 財務諸表(損益計算書、貸借対照表)
- 財産目録
- 総勘定元帳
- 仕訳帳
- 預貯金口座通帳
- 入出金表
また会計は拠点・事業ごとに会計を区分しなければなりませんので注意しておきましょう。
㊶「損害賠償」関連の書類
訪問介護は「損害賠償保険への加入」または「損害賠償ができる資産を有している」必要があります。
一般的には損害賠償保険に加入していることがほとんどだと思いますので、保険証書などを事業所で保管しておきましょう。
参考省令
【第三十七条:事故発生時の対応】
指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない。
必要書類の保管期間はサービス終了から原則2年間
主に下記の記録はサービス終了日から原則2年間保存しなければならないことになっています。
- 訪問介護計画書
- サービス実施記録
- 市町村への通知にかかる書類
- 苦情相談の記録
- 事故対応の記録
ただし、自治体によって保管期間を「5年」としている所もありますので確認しておきましょう。
当サイトでは帳票書類のテンプレを無料配布しています
当サイトでは、今回紹介した帳票書類のテンプレートを無料でダウンロードできます。
基本的な書類はすべてそろっていますので欲しい方は下記からどうぞ。
さいごに
今回は訪問介護で揃えるべき書類をすべて解説しました。
本記事で紹介した書類があれば問題なく運営できます。かなりの量になりますが何度も読み返し確認してくださいね。
当サイトではサービス提供責任者の初心者向けマニュアルを無料公開しています。
良ければこちらもチェックしてもらえたら。