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訪問介護の高齢者虐待防止マニュアル【研修資料につかえる】

訪問介護 高齢者虐待防止マニュアル 研修資料

 

訪問介護事業所を運営されている管理者やサービス提供責任者のみなさん。

「高齢者虐待防止に関する研修」は行っていますでしょうか?

高齢者虐待防止に関する研修は、2023年現時点では「努力義務」の扱いですが、2024年4月から「義務化」となります。

つまり、来年度から必ず実施しなければなりません。仮に行っていなかった場合は基準違反となり、実地指導(運営指導)時にそれが明らかになれば指導対象になります。

とはいえ、訪問介護向けの高齢者虐待防止に関する資料がない事業所も多いはず。

そこで、今回は厚生労働省の資料や各自治体のガイドラインを参考に、高齢者虐待防止の研修に使える資料を作成しました。

 

ぜひ本記事を、事業所内で高齢者虐待防止の研修を実施する際の資料としてご活用ください。

 

研修テーマ集:【研修資料つき】訪問介護のヘルパ-勉強会テーマ39案

この記事を書いた人

執筆者

えみ八(ライター)

1976年生まれ、愛媛県出身。介護・福祉系副業ライターとして活動中。高校卒業後、販売や営業事務職を経験。30代後半から通信制の大学や専門学校で学びながら看護助手として勤務。夜勤もこなしつつ、学士、介護福祉士、社会福祉士など複数の資格を取得。現在は老人保健施設で支援相談員として従事している。

【保有資格】
社会福祉士/介護福祉士/福祉住環境コーディネーター2級/メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種
【ポートフォリオ】
https://emihachi.com/

監修者

ヘルパー会議室編集部

くらたろう(管理人)

30代男性。大阪府在住。東証一部上場企業が運営する訪問介護事業所に3年従事し、独立。事業所の立ち上げも経験。訪問介護の経験は11年目、現在も介護現場に自ら出つつサービス提供責任者として従事している。その中でヘルパー・サ責の学ぶ機会が少ないことに懸念を抱き、2018年に訪問介護特化型ポータルサイト「ヘルパー会議室」を設立した。

【保有資格】
訪問介護員2級養成研修課程修了/介護職員基礎研修修了/社会福祉士/移動支援従業者養成研修全身性課程修了(ガイドヘルパー)/同行援護従業者養成研修修了

 

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高齢者虐待とは

訪問介護高齢者虐待とは

高齢者虐待とは、本来、高齢者を守る立場にある他者(養護者・介護従事者等)からの不適切な関わりによって権利や利益が侵害され、生活や心身の状態に支障をきたしている状況を指します。

「身体的虐待」「ネグレクト」「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」、こうした虐待行為から、高齢者の生命・尊厳をを守るのが『高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支援等に関する法律』です(以下、高齢者虐待防止法)。

訪問介護を含めたあらゆる介護サービス事業者は、高齢者虐待防止法を遵守し運営しなければなりません。また、従業員にも虐待の早期発見に努める、高齢者保護の施策に協力するなど、とても大きな責務が課せられています。

 

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高齢者虐待防止法の目的

高齢者虐待防止法

高齢者虐待防止法は、平成18年4月1から施行されました。

前述したように高齢者を虐待から守るための法律です。

 

高齢者の定義 法の目的
65歳以上の者
  • 高齢者虐待の防止等に関する国や地方公共団体、介護事業所等の責務を定める
  • 虐待を受けた高齢者を保護する際の措置を定める
  • 擁護者の負担軽減等の措置を定める
  • 高齢者虐待の防止や養護者への支援を推進する

 

高齢者虐待防止法は高齢者保護のため、様々な措置を定めています。国や地方自治体、医療福祉関係者等多様な立場の人々に対する責務も定められており、国全体で高齢者保護を行っていくための法律となっています。

同法の目的として掲げられた項目は、高齢者の権利や利益を擁護するためのもの。そのため、法規定では虐待かどうかの判断が難しい場合でも、防止・対応を行うことが必要です。

 

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高齢者虐待防止法における虐待の種類

虐待防止法上の虐待の種類

高齢者虐待防止法では、虐待の種類を下記のように定義しています。

 

  1. 養護者による虐待
  2. 養介護施設従事者等による虐待

 

1つずつ見ていきましょう。

 

養護者による虐待

養護者とは「高齢者を現に擁護する者」あるいは「養介護施設従事者等以外の者」を指します。

つまり、高齢者の世話をする家族、親戚、同居人等です。入所施設の数は増加していますが、在宅介護をしている家庭もかなりの数。自身の親、義理の親、または兄弟姉妹を介護している家庭もあれば、中には祖父母やおじ、おばの介護をしている人も多いのが現状です。

介護は心身共に相当な疲労感を伴います。

  • 自分の時間が取れない
  • 高齢者の言動に振り回される
  • 気持ちを共有できる相手になかなか出会えず孤立する

同居している養護者の中には、次のような負担を背負って介護しているケースがあるため、虐待に至ってしまう可能性があります。

 

養介護施設従事者等による虐待

養介護施設従事者とは、老人福祉法・介護保険法が規定している「養介護施設」「養介護事業」に従事している人を指します。

老人福祉法で規定される施設・事業 老人福祉法で規定される事業 介護保険法で規定される施設・事業 介護保険法で規定される事業
  • 老人福祉施設
  • 有料老人ホーム
  • 老人居宅生活支援事業
  • 介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施
  • 地域密着型介護老人福祉施設
  • 地域包括支援センター
  • 居宅サービス事業
  • 地域密着型サービス事業
  • 居宅介護支援事業
  • 介護予防サービス事業
  • 地域密着型介護予防サービス事業
  • 介護予防支援事業

※訪問介護は居宅サービス事業に該当します。

養介護施設等で高齢者虐待が起こる背景要因として、

  • 慢性的な人手不足のため丁寧に関わる時間がない
  • 高齢者に対する理解や知識、ケア技術が足りない
  • 組織の職員に対するケアが十分に行われていない

などの問題があげられます。

 

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高齢者虐待の現状

養介護施設従事者等による高齢者虐待の相談・通報件数と虐待判断件数の推移

令和3年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果より引用(ヘルパー会議室運営部により一部改変)

養介護施設従事者等による高齢者虐待の相談・通報件数と虐待判断件数の推移を見てみましょう。

ご覧のとおり高齢者虐待防止法が施行された平成18年度から、徐々に右上がり。令和3年度の結果を見ると、相談・通報件数は平成18年度の約10倍、虐待判断件数は約13倍にも増加していることが分かります。

しかしながら虐待と判断されたのは相談・通報件数の3割程度であることから、判断基準に迷うケースが多いと推測されます。

 

養護者による高齢者虐待の相談・通報件数と虐待判断件数の推移

令和3年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果より引用(ヘルパー会議室運営部により一部改変)

では、養護者による高齢者虐待の相談・通報件数と虐待判断件数の推移はどうでしょうか。

相談・通報件数と虐待判断件数共に、養介護従事者のものとは比較にならないほどの件数です。高齢者虐待防止法の施行から、徐々に家庭内での虐待行為が表面化したのが窺えます。

虐待判断件数の推移を見ると、平成18年度からほぼ横ばい状態。対して相談・通報件数は令和3年度には倍の件数になっています。これは虐待の気配を感じた人が相談や通報しても家庭の問題に介入するのは難しく、事実確認が困難なケースが多いためと考えられます。

 

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高齢者虐待の考え方と具体例

訪問介護 高齢者虐待の考え方 具体例

高齢者虐待をどう捉えるか、そしてどのような行為が高齢者虐待にあたるのかは、非常にデリケートかつ難しい問題です。ここからは、高齢者虐待の考え方と具体例を深掘りして解説していきます。

 

高齢者虐待の考え方となる2つのベース

ベースとなる考え方は次の2つです。

 

  1. 高齢者本人と家族に生じている困難にフォーカスする
  2. 虐待の自覚は問わない

 

高齢者本人と家族に生じている困難にフォーカスする

フラットな目線で、高齢者本人とその家族にどのような困難が生じているのかを把握しましょう。

高齢者の権利擁護のために援助を行うと共に、状態の改善を目指します。この時、見聞きしたことが虐待に当たるかどうかの判断自体が目的としないようにしてください。

主観を持ち出すと「本当に虐待と呼んでいいのか」「単なる親子喧嘩かもしれない」「気にし過ぎなのでは」といった感情に囚われ、対応が遅くなる危険性があります。

虐待の始まりは、日々の声かけや関わりの小さな綻びがきっかけとなります。この時点で、虐待行為とみなす人はほとんどいません。しかし、こうした些細なきっかけが後々深刻な高齢者虐待に至るのだと意識しましょう。

 

虐待の自覚や悪意の有無は問わない

虐待行為そのものを自覚せず悪意なく行う人は少なくありません

介護に無縁だった人が家族の介護にあたる場合、正しい介護技術を知らないままだと知らず知らずのうちに虐待行為を行う場合があります。

転倒による怪我を防ごうと高齢者の動きを極度に制限したり、適切なケア方法が分からず清潔の保持が十分に行えなかったりといったケースです。

本来高齢者のために頑張っている人が支援を得られないままでいるとこのような虐待行為を自覚せず行う場合があります。

 

5つの高齢者虐待と具体例

訪問介護高齢者の5つの種類と具体例

前述のとおり、高齢者虐待は5つに分けられます。

 

  1. 身体的虐待
  2. ネグレクト(介護放棄)
  3. 心理的虐待
  4. 性的虐待
  5. 経済的虐待

 

これらの概要、具体例について1つずつ解説します。

 

①身体的虐待の概要と具体例

高齢者の身体に傷や痛みが生じる、または生じる恐れのある暴力行為を指します。

  • 平手打ちをする
  • 拳で殴る
  • 蹴る
  • つねる
  • 押さえつける
  • 無理やり口腔内に食べ物を入れる
  • 突き飛ばす
  • 打撲させる
  • 火傷させる
  • 強引に薬を服用させる

身体的虐待は、目に見える虐待行為のため発見しやすい虐待です。介護職員は痣や火傷、骨折による腫れ等の異常を敏感に察知し、高齢者虐待の防止に向けて対策を講じなければなりません。

 

身体拘束も身体的虐待に含まれる

また、下記のような身体拘束も身体的虐待に該当します。

  • 四肢を抑制する
  • 体幹抑制帯でベッドに身体を固定する
  • ミトンを装着させる
  • Y字ベルトなどを用いて車椅子と身体を固定する

これらの身体拘束については、「緊急やむを得ない場合」とされるものに限り、以下の3要件のすべてを満たすことで高齢者虐待に該当しないとされています。

切迫性 利用者本人、または他者の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
非代替性 身体拘束以外に代替する介護方法がない
一時性 一時的な身体拘束である

 

②ネグレクト(介護放棄)の概要と具体例

高齢者の介護を行う家族がこれを放棄し、結果高齢者の生活環境及び心身の状態を悪化させる行為です。

  • 入浴していないため異臭がする
  • 髪や髭が伸びており清潔感が損なわれている
  • 食事を与えられていないため栄養失調の状態となっている
  • 水分が足りず脱水症状を起こしている
  • 劣悪な環境(室内にごみが溜まっている等)の中で生活させる
  • 本来必要な医療・福祉サービスを理由なく制限するまたは利用させない

整容の乱れ等が見られた場合、ネグレクトを疑い対応することが大切です。介護サービスの中でも特に訪問介護は、高齢者の変化に気付きやすいので普段の様子をしっかり観察しましょう。

 

セルフネグレクト(自己放任)

セルフネグレクトイメージ図
一人ぐらいの高齢者の中には、孤独感や認知症、うつ状態などにより生活意欲が低下している方が少なくありません。こうしたケースでは、自身の食事を怠り低栄養状態になったり、治療が必要な状態なのに病院受診しなかったり、身の回りの清潔保持に無頓着になってしまう場合があり、これをセルフネグレクト(自己放任)と言います。訪問介護で良くあるケースとして、「ゴミ屋敷」化した住居などはセルフネグレクトが作り出した典型的な例と言えるでしょう。

 

③心理的虐待の概要と具体例

脅し、無視、嫌がらせ等で高齢者の精神や情緒に苦痛を与える行為です。

高齢者は立場が弱く、威圧的な態度に出られると萎縮する場合があります。しかし外傷や目立った風貌の変化に乏しいケースが多く、目に見えづらい虐待と言えます。

  • 怒鳴る
  • 脅す
  • 罵る
  • 子供扱いをする
  • 嫌味を言う
  • 悪口を言う
  • 無視する
  • 高齢者の失敗を笑ったり人前で話したりする
  • 刃物を見せて威圧的な態度を見せる

 

④性的虐待の概要と具体例

高齢者への性的虐待も存在します。合意のない、様々な性的な行為の強要を言います。

  • 排泄の失敗を罰する形で、下衣を着せないまま放置する
  • 高齢者の性器に接触する
  • 性器に接触する
  • 性器に接触させる
  • キスの強要
  • 性行為の強要

 

⑤経済的虐待の概要と具体例

合意なく高齢者の財産・金銭を使う、理由なく金銭を使わせない行為を指します。

年金や預金、宝飾品等、本来高齢者が保持する物を使わせないまたは奪うような行為です。

  • 生活に使う金銭を渡さない
  • 金銭の使用を禁止する
  • 同意なく家屋を売却する
  • 年金や貯金を本人の同意なく使う

経済的虐待は、家族自身が困窮しているケースもあります。適切な支援を提供できるよう努めることが肝要です。

 

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高齢者虐待における介護従事者の責務と義務

訪問介護 高齢者虐待 介護従事者の責務と義務

高齢者虐待防止法では、介護従事者が負う責務について次のように定められています。

 

(高齢者虐待の早期発見等)
第五条 養介護施設、病院、保健所その他高齢者の福祉に業務上関係のある団体及び養介護施設従事者等、医師、保健師、弁護士その他高齢者の福祉に職務上関係のある者は、高齢者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、高齢者虐待の早期発見に努めなければならない。
2 前項に規定する者は、国及び地方公共団体が講ずる高齢者虐待の防止のための啓発活動及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護のための施策に協力するよう努めなければならない。

 

(養護者による高齢者虐待に係る通報等)
第七条 養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
2 前項に定める場合のほか、養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報するよう努めなければならない。
3 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前二項の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。

ここでは、虐待の早期発見と通報の義務についてそれぞれ解説します。

 

虐待の早期発見

介護従事者は、その立場や職務上虐待にいち早く気付けます。そのため、虐待の早期発見に努め虐待防止のために行われる啓発活動や施策への協力を惜しんではなりません。

高齢者虐待を防ぐために、介護従事者はあらゆる手段を講じ対応していく義務があります。「これは虐待だろうか…」「気にし過ぎかもしれない…」と迷う場面があるかも知れませんが、虐待か否かを判断するのが目的ではありません。

高齢者の尊厳が守られ、安全に生活できるかが重要です。常にセンサーを張り、わずかな違和感も見逃さない意識を持ちましょう。利用者の身体面や行動面の変化はもちろん、家族や養護者の様子にも気を配りつつ観察してください。

もし虐待が疑われる場合、地域包括支援センターや担当ケアマネに速やかに報告してください。

 

虐待の通報義務

前述したとおり、高齢者虐待防止法第7条では虐待の通報について規定されています。

 

虐待の状況 市町村への通報義務
高齢者の生命、身体に重大な危険が生じている場合 通報義務
(通報しなければならない)
上記以外(重大な危険がない場合) 通報努力義務
(通報するよう努める)
自身が従事する訪問介護事業所による虐待の場合 通報義務
(通報しなければならない)

 

介護従事者からすれば、利用者やその家族について通報することに抵抗があるかも知れません。しかし、小さな芽が深刻な虐待に発展する場合もあります。更に生命を脅かす事態に陥るケースもあるのです。そうした場面に遭遇した時、通報をためらってはいけません。

 

通報と守秘義務の関係性

介護従事者は、利用者本人や家族の個人情報・プライバシーに配慮しなければなりません。しかし、高齢者虐待の対応にあたっては、家族間の関係性や問題等の私的な部分に関わるようになります。高齢者本人や家族からすれば「家庭の恥を晒したくない」という心情もあるでしょう。

ただ、こうした想いが高齢者虐待を助長する結果になっているのもまた事実。虐待の通報は守秘義務に触れるのではと考えるかも知れませんが、高齢者虐待防止法第7条3項により、高齢者虐待の通報義務は守秘義務に優先すると規定されています。

そのため、高齢者虐待の通報にあたって利用者本人ならびに家族(養護者)の同意は不要です。

 

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高齢者虐待のサイン

高齢者虐待のサイン

高齢者虐待の早期発見のためには、利用者の観察を行い虐待のサインを見逃さないことが大切です。

家庭での高齢者虐待は外からは見え辛いですが、常にアンテナを張り小さなサインもキャッチする意識を持ちましょう。高齢者が不当な扱いや虐待を受けていると疑われるサインの例として、東京都虐待防止対応マニュアルより高齢者虐待発見チェックリストを紹介します。

※複数のものにあてはまると虐待の疑いの度合いはより濃くなります。ただし、これらはあくまで例ですので、この他にも様々なサインがあることを認識しておいてください。

 

【身体的虐待のサイン】

  • 身体に小さなキズが頻繁にみられる。
  • 太腿の内側や上腕部の内側、背中等にキズやみみずばれがみられる。
  • 回復状態が様々な段階のキズ、あざ等がある。
  • 頭、顔、頭皮等にキズがある。
  • 臀部や手のひら、背中等に火傷や火傷跡がある。
  • 急におびえたり、恐ろしがったりする。
  • 「怖いから家にいたくない」等の訴えがある。
  • キズやあざの説明のつじつまが合わない。
  • 主治医や保健、福祉の担当者に話すことや援助を受けることに躊躇する。
  • 主治医や保健、福祉の担当者に話す内容が変化し、つじつまがあわない。

【心理的虐待のサイン】

  • かきむしり、噛み付き、ゆすり等がみられる。
  • 不規則な睡眠(悪夢、眠ることへの恐怖、過度の睡眠等)を訴える。
  • 身体を萎縮させる。
  • おびえる、わめく、泣く、叫ぶなどの症状がみられる。
  • 食欲の変化が激しく、摂食障害(過食、拒食)がみられる。
  • 自傷行為がみられる。
  • 無力感、あきらめ、投げやりな様子になる。
  • 体重が不自然に増えたり、減ったりする。

【性的虐待のサイン】

  • 不自然な歩行や座位を保つことが困難になる。
  • 肛門や性器からの出血やキズがみられる。
  • 生殖器の痛み、かゆみを訴える。
  • 急に怯えたり、恐ろしがったりする。
  • ひと目を避けるようになり、多くの時間を一人で過ごすことが増える。
  • 主治医や保健、福祉の担当者に話すことや援助を受けることに躊躇する。
  • 睡眠障害がある。
  • 通常の生活行動に不自然な変化がみられる。

【経済的虐待のサイン】

  • 年金や財産収入等があることは明白なのにもかかわらず、お金がないと訴える。
  • 自由に使えるお金がないと訴える。
  • 経済的に困っていないのに、利用負担のあるサービスを利用したがらない。
  • お金があるのにサービスの利用料や生活費の支払いができない。
  • 資産の保有状況と衣食住等生活状況との落差が激しくなる。
  • 預貯金が知らないうちに引き出された、通帳がとられたと訴える。

【ネグレクト(介護等日常生活上の世話の放棄、拒否、怠慢)のサイン(自己放任も含む)】

  • 居住部屋、住居が極めて非衛生的になっている、また異臭を放っている。
  • 部屋に衣類やおむつ等が散乱している。
  • 寝具や衣服が汚れたままの場合が多くなる。
  • 汚れたままの下着を身につけるようになる。
  • かなりのじょくそう(褥創)ができてきている。
  • 身体からかなりの異臭がするようになってきている。
  • 適度な食事を準備されていない。
  • 不自然に空腹を訴える場面が増えてきている。
  • 栄養失調の状態にある。
  • 疾患の症状が明白にもかかわらず、医師の診断を受けていない。

【セルフネグレクト(自己放任)のサイン】

  • 昼間でも雨戸が閉まっている。
  • 電気、ガス、水道が止められていたり、新聞、テレビの受信料、家賃等の支払いを滞納している。
  • 配食サービス等の食事がとられていない。
  • 薬や届けた物が放置されている。
  • ものごとや自分の周囲に関して、極度に無関心になる。
  • 何を聞いても「いいよ、いいよ」と言って遠慮をし、あきらめの態度がみられる。
  • 室内や住居の外にゴミがあふれていたり、異臭がしたり、虫が湧いている状態である。

【養護者の虐待にみられるサイン】

  • 高齢者に対して冷淡な態度や無関心さがみられる。
  • 高齢者の世話や介護に対する拒否的な発言がしばしばみられる。
  • 他人の助言を聞き入れず、不適切な介護方法へのこだわりがみられる。
  • 高齢者の健康や疾患に関心がなく、医師への受診や入院の勧めを拒否する。
  • 高齢者に対して過度に乱暴な口のきき方をする。
  • 経済的に余裕があるように見えるのに、高齢者に対してお金をかけようとしない。
  • 保健、福祉の担当者と会うのを嫌うようになる。

【その他(地域からのサイン)】

  • 自宅から高齢者や介護者・家族の怒鳴り声や悲鳴・うめき声、物が投げられる音が聞こえる。
  • 庭や家屋の手入れがされていない、または放置の様相(草が生い茂る、壁のペンキがはげている、ゴミが捨てられている)を示している。
  • 郵便受けや玄関先等が、1週間前の手紙や新聞で一杯になっていたり、電気メーターがまわっていない。
  • 気候や天気が悪くても、高齢者が長時間外にいる姿がしばしばみられる。
  • 家族と同居している高齢者が、コンビニやスーパー等で、一人分のお弁当等を頻繁に買っている。
  • 近所づきあいがなく、訪問しても高齢者に会えない、または嫌がられる。
  • 高齢者が道路に座り込んでいたり、徘徊している姿がみられる。

 

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高齢者虐待未然防止のとりくみ

訪問介護 高齢者虐待未然防止の取組

高齢者虐待を未然に防ぐためには、常日頃から様々な対応策を備えるほか次のような取り組みが求められます。

 

  1. 事故報告書やヒヤリハット、苦情を分析する
  2. 現在提供しているサービスの点検
  3. 研修等を通じて権利擁護や虐待防止意識の醸造を図る
  4. 認知症ケアの専門的知識と技術の習得

 

高齢者虐待は、「不適切なケア」や事業所運営の延長線上で発生します

不適切なケアの段階で虐待の芽を摘むための取り組みが非常に重要です。

 

①事故報告書やヒヤリハット、苦情を分析する

事故報告書、ヒヤリハットは介護職員であればほとんどの人が提出した経験があるでしょう。

これらの内容から、介護従事者の不適切なケアが浮き彫りになる場合があります。

  • 言うことを聞かない認知症の利用者に対して力ずくで動きを止めた結果内出血を起こす
  • 食事を食べないからと強引に口に入れ、激しいむせ込みを起こす
  • 「〇〇しないで!」と強い口調で行動を制限する

また、苦情には小さな虐待の芽が隠れているケースがあります。

介護従事者が高齢者虐待を発見しやすい立場であるということは、同時に高齢者と共に暮らす家族もまた虐待に気付きやすいことを意味します。

以下に、家族から事業所への苦情の例を挙げました。

  • 職員がまるで赤ちゃんに話しかけるような口調で声を掛けていた
  • 排泄の失敗を報告してくれるのはいいが、明らかに馬鹿にしたように笑っていた
  • 「ヘルパーに無視される」と落ち込んだ様子で話していた

こうした事故やヒヤリ、苦情に真摯に向き合うのは精神的に労力が必要です。

しかし、これら一つひとつに高齢者虐待のきっかけが潜んでいます。なぜ起こったのか原因をしっかり洗い出し、防止する手段はなかったのかを検討しなければなりません。

さらに今後同様の事態に陥らないよう、どのようにすれば良いかを関係者全員で振り返ることが重要です。

 

②現在提供しているサービスの点検

そもそも、今のサービスが適切なのかどうかを見直す必要もあります。

安全面はもとより、倫理的に健全であるのかも都度考えてみましょう。

自分達は普通に介護サービスを提供しているつもりかも知れません。しかし、外から見ると明らかにサービスとは言えない礼節を欠いたものや不衛生なもの、倫理的に逸脱している関わり方が蔓延しているケースもあります。

こうした場合、本人達は自分の行為が虐待に該当する自覚を持ち合わせていないことがほとんどです。

その場合、まず必要なのは知識と誠実な内省です。

  • 高齢者虐待に該当する行為にはどのようなものがあるのかを知る
  • 自分が提供するケアは、虐待行為に触れていないかを振り返る
  • 高齢者の尊厳を保つために介護従事者としてどうするべきかを考える

「忙しいからそこまで丁寧に関われない」「私だけじゃなく皆がやっていること」といった考え方では、高齢者虐待の防止には至りません

以下は、東京都福祉保健財団が作成した訪問介護用のチェックリストです。虐待の芽や不適切なケアを防ぐために、ぜひこのチェックリストを参考に自己点検してみましょう。

訪問介護 虐待の芽チェックリスト

東京都福祉保健財団高齢者権利擁護支援センター「虐待の芽チェックリスト」より引用

 

③研修等を通じて権利擁護や虐待防止意識の醸造を図る

権利擁護や虐待行為、その予防についての意識を高めるには、個人としてはもちろん外部の声を聴くのが効果的です。

自分の頭の中だけでは考えにどうしても偏りが生まれ、その人自身の価値観に頼る部分が多くなります

結果、本来の考え方を知らないままという結果になりかねません。他者と研修で関わりながら、自らの意識を高めるよう心掛けてください。

事業所内研修や地方自治体等が行う研修に積極的に参加し、介護従事者に求められる知識や考え方を吸収しブラッシュアップしていきましょう。

 

④認知症ケアの専門的知識と技術の習得

誰もが認知症の人の対応に悩むものです。

何度も同じ話をしたり徘徊を繰り返したりと、こちらの言葉が認知症の高齢者には届かない場合があります。時には暴言暴力など、一生懸命にケアしている人を傷つける行為におよびます。

養護者の心身は疲弊し、やがて高齢者への虐待に走るケースも少なくありません。一見すると、認知症の人の言動はこちらには非常識に感じられるかもしれません。

しかし、その根底には、高齢者がこれまで辿ってきた人生の記憶や繰り返してきたルーティンがあります。高齢者の行動には彼らなりの理由があるのです。

養護者がそれを理解していないままケアに当たると「何で言うことを聞かないの?」「どうせ何を言っても分からないんだから」といった苛立ちや諦めの感情が生まれます

こうした事態を未然に防ぐために、認知症の人を深く知るところから始めましょう。

地方自治体や社会福祉法人が主催する認知症ケアの研修を受けたり、認知症ケア専門士等資格取得を目指しつつ学ぶのもおすすめです。

またヘルパー会議室にて認知症ケアの研修資料を作成しましたので、以下コラムもあわせて参考にしてください。

参考:訪問介護の認知症ケア対応マニュアル

 

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さいごに

高齢者の人口はこれからも増加する見込みです。

特に第2次ベビーブームの頃に生まれた世代が65歳以上となる2040年には過去最多を記録すると見込まれています。

介護保険制度ができてから、様々な介護福祉サービスが高齢者を支えていますが、自宅介護を懸命に行う家族がいるのも事実です。介護の仕事を知らない家族が十分な知識やケア方法を知らないままに介護を行っていると、小さなきっかけから深刻な高齢者虐待へ発展する危険性があります。

介護従事者は、その専門性をもって高齢者とその家族に関わらねばなりません。そのためには、介護従事者自らも研鑽を怠ってはいけないのです。正しい知識と健全な心身を備えていなければ、高齢者への適切なケアはできません。

専門職として冷静に利用者とその家族を観察し、どんな小さな虐待の芽も摘み取る意識を持ち続けてくださいね。

>>【研修資料つき】訪問介護のヘルパ-勉強会テーマ38案【ネタ探しに困らない】

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