さっそくですが、みなさん。「老計第10号」をきちんと理解されていますか?
老計第10号は訪問介護において、特にサービス提供責任者の方々が理解しておかなければならないものです。
とはいえ、
老計10号ってなに?何の略?
なんとなく知ってるけど、いまいちよく分かってない…
こんな方が多いのではないでしょうか。
実際、老計第10号を正しく理解できている方はほとんどおらず、また誤った解釈をしてしまっている方も少なくありません。
今回は、そもそも老計第10号とはなにか?を解き明かし、運用上の注意点をわかりやすく解説します。
加えて本記事の後半で、老計第10号の最新内容を提示していますので、ぜひ最後まで読み、日々の業務の参考にしてください。
老計第10号とは?何の略?
老計第10号とは、正式名称を『訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について(厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長通知)』と言い、介護保険制度における訪問介護の“できること”を明示した厚生労働省通知です。
具体的には「身体介護」と「生活援助」の標準的なサービス提供の流れや手順が示されており、ケアプランに訪問介護を位置づける際や、訪問介護計画の策定にあたって具体的なケア内容を決める際の指針となります。
また、どのようなサービス行為が身体介護または生活援助に該当するのか区分を判断する基準にもなりますので、介護報酬の請求にも深くかかわってきます。
このように事業運営を適切に行うにあたって欠かせないものが老計第10号であると言え、当然ながら訪問介護の主軸を担うサービス提供責任者は、通知内容をきちんと把握しておかなければなりません。
老計第10号は平成30年に一部改訂されている
老計第10号は、平成30年度の介護報酬改定にともない一部見直しが行われています。
なお、以降の変更は行われていませんので、2023年6月時点では平成30年度の改訂版が最新の内容となります。
平成30年度に見直しが行われたのは、「自立生活支援のための見守り的援助」の明確化。
これまで見守り的援助として身体介護で算定する事例は7種類あげられていましたが、見直しにより15種類まで増えました。
この見守り的援助をよく理解していないと本来、身体介護で算定できるサービス内容を生活援助で算定してしまいます。収益的なマイナスが発生し事業経営にも影響を与えかねませんので、どういった内容が見守り的援助に該当するのかを把握しておきましょう。
老計第10号に書かれてる内容がすべてではない
老計第10号に書かれていない内容は、行ってはいけません。
といった話をよく耳にしますが、これは完全に誤った解釈です。
老計第10号に書かれている内容は、あくまで例であり運用上の目安。
厚生労働省によれば、利用者それぞれの身体状況や生活実態などに即した取り扱いが求められるとされており、老計第10号に記載がないからといって訪問介護で行えないわけではありません。
例えば、電球交換や窓ふきなどは老計第10号に示されていませんが、自治体によっては利用者の状況を鑑みて算定対象とするケースも多々あります。
電球交換であれば、独居であり他に代替手段がない場合に認められたり、窓ふきであれば、磨くレベルのふき掃除はNGだがホコリをとる程度ならOKとしたり、とさまざま。
ですので訪問介護計画の策定にあたっては、老計第10号を絶対的なものと捉えるのではなく、自治体へ確認しつつ利用者の状態・状況に適したサービス内容を検討することがとても大切です。
「サービス準備・記録」の取り扱いに注意
老計第10号には、「1-0サービス準備・記録等」や「2-0サービス準備等」と身体介護・生活援助それそれの開始地点にサービス準備・記録の記載があるかと思います。
これは健康チェックや環境整備、相談援助、サービス提供記録の作成などを指すものですが、介護報酬算定上の取り扱いに注意してください。
というのも、サービス準備・記録は、身体介護や生活援助の提供に際する「事前準備」として位置づけられており、この行為だけをもってして介護報酬を算定することができないからです。
要は、身体介護や生活援助を行わず、安否確認や体調確認のみ、相談援助のみのサービス提供では報酬請求できないということ。
もちろん無報酬でボランティア訪問するのであれば問題はありません。
しかし、これらの行為のみを目的とした訪問介護計画を立て、介護報酬を請求する、といったことはできませんので注意しておきましょう。
ちなみに「サービス準備・記録」は、単体での報酬算定はできませんが、身体介護や生活援助に付随するものですので、サービス提供時間(所要時間)には含まれます。
【2023年最新】老計第10号に書かれている内容
老計第10号は、身体介護を「1」、生活援助を「2」に分類しそれぞれのサービス行為の具体的な内容や流れを例示する構成となっています。
ここでは老計第10号(新旧対照表)から抜粋した最新内容を紹介します。各所にヘルパー会議室が作成したサービスマニュアルを貼っていますので、あわせて参考にしてください。
※先に述べたとおり、老計第10号は平成30年に改定されて以降、見直しは行われていませんので平成30年改訂版が最新のものになります。
1身体介護
身体介護とは、①利用者の身体に直接接触して行う介助サービス (そのために必要となる準備、後かたづけ等の一連の行為を含む)、②利用者のADL・IADL・QOLや意欲の向上のために利用者と共に行う自立支援・重度化防止のためのサービス、③その他専門的知識・技術(介護を要する状態となった要因である心身の障害や疾病等 に伴って必要となる特段の専門的配慮)をもって行う利用者の日常生 活上・社会生活上のためのサービスをいう。(仮に、介護等を要する状態が解消されたならば不要※となる行為であるということができる。)
※ 例えば入浴や整容などの行為そのものは、たとえ介護を要する状態等が解消されても日常生活上必要な行為であるが、要介護状態が解消された場合、これらを「介助」する行為は不要となる。同様に、「特段の専門的配慮をもって行う調理」についても、調理そのものは必要な行為であるが、この場合も要介護状態が解消されたならば、流動食等の「特段の専門的配慮」は不要となる。
1ー0サービス準備・記録等
サービス準備は、身体介護サービスを提供する際の事前準備等として行う行為であり、状況に応じて以下のようなサービスを行うものである。
1ー0ー1健康チェック
利用者の安否確認、顔色・発汗・体温等の健康状態のチェック
1ー0ー2環境整備
換気、室温・日あたりの調整、ベッドまわりの簡単な整頓等
1ー0ー3相談援助、情報収集・提供
1ー0ー4サービス提供後の記録等
1ー1排泄・食事介助
1ー1ー1排泄介助
1ー1ー1ー1トイレ介助
トイレまでの安全確認→声かけ・説明→トイレへの移動(見守りを含む)→脱衣→排便・排尿→後始末→着衣→利用者の清潔介助→居室への移動→ヘルパー自身の清潔動作
(場合により)失禁・失敗への対応(汚れた衣服の処理、陰部・臀部の清潔介助、便器等の簡単な清掃を含む)
1ー1ー1ー2ポータブルトイレ利用
安全確認→声かけ・説明→環境整備(防水シートを敷く、衝立を立てる、ポータブルトイレを適切な位置に置くなど)→ 立位をとり脱衣(失禁の確認)→ポータブルトイレへの移乗→排便・排尿→後始末→立位をとり着衣→利用者の清潔介助→元の場所に戻り、安楽な姿勢の確保→ポータブルトイレの後始末→ ヘルパー自身の清潔動作
(場合により)失禁・失敗への対応(汚れた衣服の処理、陰部 ・臀部の清潔介助)
1ー1ー1ー3おむつ交換
声かけ・説明→物品準備(湯・タオル・ティッシュペーパー等)→新しいおむつの準備→脱衣(おむつを開く→尿パットをとる)→陰部・臀部洗浄(皮膚の状態などの観察、パッティング、 乾燥)→おむつの装着→おむつの具合の確認→着衣→汚れたおむつの後始末→使用物品の後始末→ヘルパー自身の清潔動作
(場合により)おむつから漏れて汚れたリネン等の交換
(必要に応じ)水分補給
1ー1ー2食事介助
声かけ・説明(覚醒確認)→安全確認(誤飲兆候の観察)→ヘルパー自身の清潔動作→準備(利用者の手洗い、排泄、エプロン・タオル・おしぼりなどの物品準備)→食事場所の環境整備→食事姿勢の確保(ベッド上での座位保持を含む)→配膳→メニュー・材料の説明→摂食介助(おかずをきざむ・つぶす、吸い口で水分 を補給するなどを含む)→服薬介助→安楽な姿勢の確保→気分の確認→食べこぼしの処理→後始末(エプロン・タオルなどの後始末、下膳、残滓の処理、食器洗い)→ヘルパー自身の清潔動作
1ー1ー3特段の専門的配慮をもって行う調理
嚥下困難者のための流動食等の調理
1ー2清拭・入浴、身体整容
1ー2ー1清拭(全身清拭)
ヘルパー自身の身支度→物品準備(湯・タオル・着替えなど)→ 声かけ・説明→顔・首の清拭→上半身脱衣→上半身の皮膚等の観 察→上肢の清拭→胸・腹の清拭→背の清拭→上半身着衣→下肢脱衣→下肢の皮膚等の観察→下肢の清拭→陰部・臀部の清拭→下肢着衣→身体状況の点検・確認→水分補給→使用物品の後始末→汚れた衣服の処理→ヘルパー自身の清潔動作
1ー2ー2部分浴
1ー2ー2ー1手浴及び足浴
ヘルパー自身の身支度→物品準備(湯・タオルなど)→声かけ・説明→適切な体位の確保→脱衣→皮膚等の観察→手浴・足浴 →体を拭く・乾かす→着衣→安楽な姿勢の確保→水分補給→身体状況の点検・確認→使用物品の後始末→ヘルパー自身の清潔動作
1ー2ー2ー2洗髪
ヘルパー自身の身支度→物品準備(湯・タオルなど)→声かけ・説明→適切な体位の確保→洗髪→髪を拭く・乾かす→安楽な姿勢の確保→水分補給→身体状況の点検・確認→使用物品の後始末→ヘルパー自身の清潔動作
1ー2ー3全身浴
安全確認(浴室での安全)→声かけ・説明→浴槽の清掃→湯はり→物品準備(タオル・着替えなど)→ヘルパー自身の身支度→排泄の確認→脱衣室の温度確認→脱衣→皮膚等の観察→浴室への 移動→湯温の確認→入湯→洗体・すすぎ→洗髪・すすぎ→入湯→ 体を拭く→着衣→身体状況の点検・確認→髪の乾燥、整髪→浴室から居室への移動→水分補給→汚れた衣服の処理→浴槽の簡単な後始末→使用物品の後始末→ヘルパー自身の身支度、清潔動作
1ー2ー4洗面等
洗面所までの安全確認→声かけ・説明→洗面所への移動→座位確保→物品準備(歯ブラシ、歯磨き粉、ガーゼなど)→洗面用具準備→洗面(タオルで顔を拭く、歯磨き見守り・介助、うがい見守り・介助)→居室への移動(見守りを含む)→使用物品の後始末 →ヘルパー自身の清潔動作
1ー2ー5身体整容(日常的な行為としての身体整容)
声かけ・説明→鏡台等への移動(見守りを含む)→座位確保→物品の準備→整容(手足の爪きり、耳そうじ、髭の手入れ、髪の手入れ、簡単な化粧)→使用物品の後始末→ヘルパー自身の清潔動作
1ー2ー6更衣介助
声かけ・説明→着替えの準備(寝間着・下着・外出着・靴下等) →上半身脱衣→上半身着衣→下半身脱衣→下半身着衣→靴下を脱がせる→靴下を履かせる→着替えた衣類を洗濯物置き場に運ぶ→スリッパや靴を履かせる
1ー3体位交換、移動・移乗介助、外出介助
1ー3ー1体位交換
声かけ、説明→体位変換(仰臥位から側臥位、側臥位から仰臥位) →良肢位の確保(腰・肩をひく等)→安楽な姿勢の保持(座布団 ・パットなどあて物をする等)→確認(安楽なのか、めまいはないのかなど)
1ー3ー2移乗・移動介助
1ー3ー2ー1移乗
車いすの準備→声かけ・説明→ブレーキ・タイヤ等の確認→ベッドサイドで端座位の保持→立位→車いすに座らせる→座位の確保(後ろにひく、ずれを防ぐためあて物をするなど)→フ ットレストを下げて片方ずつ足を乗せる→気分の確認
その他の補装具(歩行器、杖)の準備→声かけ・説明→移乗→気分の確認
1ー3ー2ー2移動
安全移動のための通路の確保(廊下・居室内等)→声かけ・説明→移動(車いすを押す、歩行器に手をかける、手を引くなど) →気分の確認
1ー3ー3通院・外出介助
声かけ・説明→目的地(病院等)に行くための準備→バス等の交通機関への乗降→気分の確認→受診等の手続き
(場合により)院内の移動等の介助
1ー4起床及び就寝介助
1ー4ー1起床・就寝介助
1ー4ー1ー1起床介助
声かけ・説明(覚醒確認)→ベッドサイドでの端座位の確保→ベッドサイドでの起きあがり→ベッドからの移動(両手を引いて介助)→気分の確認
(場合により)布団をたたみ押入に入れる
1ー4ー1ー2就寝介助
声かけ・説明→準備(シーツのしわをのばし食べかすやほこりをはらう、布団やベッド上のものを片づける等)→ベッドへの移動(両手を引いて介助)→ベッドサイドでの端座位の確保→ベッド上での仰臥位又は側臥位の確保→リネンの快適さの確認(掛け物を気温によって調整する等)→気分の確認
(場合により)布団を敷く
1ー5服薬介助
水の準備→配剤された薬をテーブルの上に出し、確認(飲み忘れないようにする)→本人が薬を飲むのを手伝う→後かたづけ、確認
1ー6自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助(自立支援、ADL・IADL・QOL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)
- ベッド上からポータブルトイレ等(いす)へ利用者が移乗する際に、転倒等の防止のため付き添い、必要に応じて介助を行う。
- 認知症等の高齢者がリハビリパンツやパット交換を見守り・声かけを行うことにより、一人でできるだけ交換し後始末ができるように支援する。
- 認知症等の高齢者に対して、ヘルパーが声かけと誘導で食事・水分 摂取を支援する。
- 入浴、更衣等の見守り(必要に応じて行う介助、転倒予防のための声かけ、気分の確認などを含む)
- 移動時、転倒しないように側について歩く(介護は必要時だけで、 事故がないように常に見守る)
- ベッドの出入り時など自立を促すための声かけ(声かけや見守り中心で必要な時だけ介助)
- 本人が自ら適切な服薬ができるよう、服薬時において、直接介助は行わずに、側で見守り、服薬を促す。
- 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う掃除、整理整頓(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)
- ゴミの分別が分からない利用者と一緒に分別をしてゴミ出しのルールを理解してもらう又は思い出してもらうよう援助
- 認知症の高齢者の方と一緒に冷蔵庫のなかの整理等を行うことにより、生活歴の喚起を促す。
- 洗濯物を一緒に干したりたたんだりすることにより自立支援を促すとともに、転倒予防等のための見守り・声かけを行う。
- 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行うベッドでのシーツ交換、布団カバーの交換等
- 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う衣類の整理・被服の補修
- 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う調理、配膳、後片付け(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)
- 車イス等での移動介助を行って店に行き、本人が自ら品物を選べるよう援助
- 上記のほか、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うもの等であって、利用者と訪問介護員等がともに日常生活に関する動作を行うことが、ADL・IADL・QOL向上の観点から、利用者の自立支援・重度化防止に資するものとしてケアプランに位置付けられたもの
2生活援助
生活援助とは、身体介護以外の訪問介護であって、掃除、洗濯、調 理などの日常生活の援助(そのために必要な一連の行為を含む)であり、利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるものをいう。(生活援助は、本人の代行的なサービスとして位置づけることができ、仮に、介護等を要する状態が解消されたとしたならば、本人が自身で行うことが基本となる行為であるということができる。)
※次のような行為は生活援助の内容に含まれないものであるので留意すること。
① 商品の販売・農作業等生業の援助的な行為
② 直接、本人の日常生活の援助に属しないと判断される行為
2ー0サービス準備・記録等
サービス準備は、生活援助サービスを提供する際の事前準備等として行う行為であり、状況に応じて以下のようなサービスを行うものである。
2ー0ー1健康チェック
利用者の安否確認、顔色等のチェック
2ー0ー2環境整備
換気、室温・日あたりの調整等
2ー0ー3相談援助、情報収集・提供
2ー0ー4サービス提供後の記録等
2ー1掃除
- 居室内やトイレ、卓上等の清掃
- ゴミ出し
- 準備・後片づけ
2ー2洗濯
- 洗濯機または手洗いによる洗濯
- 洗濯物の乾燥(物干し)
- 洗濯物の取り入れと収納
- アイロンがけ
2ー3ベッドメイク
- 利用者不在のベッドでのシーツ交換、布団カバーの交換等
2ー4衣類の整理・被服の補修
- 衣類の整理(夏・冬物等の入れ替え等)
- 被服の補修(ボタン付け、破れの補修等)
2ー5一般的な調理、配下膳
- 配膳、後片づけのみ
- 一般的な調理
2ー6買い物・薬の受け取り
- 日常品等の買い物(内容の確認、品物・釣り銭の確認を含む)
- 薬の受け取り
さいごに
今回は、老計10号を読み解き、注意点などを解説しました。
繰り返しになりますが、老計第10号はサービス提供責任者であれば必ず知っておかなければならない厚労省通知のひとつです。
基本的に今回紹介した内容を理解できていれば問題ありませんので、繰り返し読んで理解しておいてください。
当サイト「ヘルパー会議室」では、サービス提供責任者の初心者向けに業務マニュアルを無料で公開しています。
この機会にあわせてチェックしておきましょう。