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訪問介護の感染症・食中毒対策マニュアル【研修資料に使える】

訪問介護の感染症・食中毒予防対策マニュアル

 

訪問介護では、従来より感染症・食中毒予防のために衛生マニュアルを整備する必要があり、介護サービス情報公表制度においても必須研修項目のひとつとして求められている所です。

そして、令和3年度の介護報酬改定により、感染症・食中毒の予防およびまん延防止のための指針の設置や研修、訓練の実施が令和6年4月から義務化されることとなりました。(訪問系障害福祉サービスについても同様)

現在は猶予期間中ですが、義務化までの期限は残りわずか。令和6年4月以降にこれらが未整備・未実施であれば、運営基準違反となるため早急に着手しておかなければなりません。

とはいえ、

 

感染症や食中毒予防の研修資料がありません。

施設介護向けのものはあるけど、どうしたものか…。

 

こんな方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、訪問介護ならではの要素を盛り込んだ「感染症・食中毒対策マニュアル」をヘルパー会議室運営部にて作成しました。

本記事は、感染症および食中毒の基礎的な知識や訪問介護における感染対策の基本原則、そして感染症・食中毒発生時の対応方法にいたるまで網羅的に解説しています。(訪問系障害福祉サービスにも対応)

なお、令和6年4月以降義務化される「感染症の予防及びまん延の防止のための研修」の内容は、本記事の内容に加えて「指針」にもとづき行うものとされています。

ですので、みなさんの事業所独自の「指針」を必ず作成し、その上で本記事を参考にしてください。

指針の作り方が分からない方は、ヘルパー会議室より販売のサ責教材に、特典として指針テンプレートをお付けしていますので購入を検討してもらえると幸いです。

サ責教材の購入はこちら

 

本記事は、厚生労働省の資料「介護現場における感染対策の手引き(第3版)」を参考に作成しました。

本記事は、実際に事業所に整備しておくマニュアルとしても活用できますので、本記事の項目、内容をみなさんの事業所向けにアレンジして使ってくださいね。

 

訪問介護のヘルパ-勉強会テーマ39案

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この記事を書いた人

ヘルパー会議室編集部

くらたろう

30代男性。大阪府在住。東証一部上場企業が運営する訪問介護事業所に3年従事し、独立。事業所の立ち上げも経験。訪問介護の経験は11年目、現在も介護現場に自ら出つつサービス提供責任者として従事している。ヘルパー・サ責の学ぶ機会が少ないことに懸念を抱き、2018年に訪問介護特化型ポータルサイト「ヘルパー会議室」を設立。

【保有資格】 訪問介護員2級養成研修課程修了/介護職員基礎研修修了/社会福祉士/全身性ガイドヘルパー/同行援護従業者養成研修修了  
「ヘルパー会議室」コラム内文章の引用ポリシー
コラム記事内の文章の引用については、著作権法第32条1項で定められた引用の範囲内であれば自由に行っていただいて構いません。ただし、引用にあたっては引用する記事タイトルを明記した上で、当該記事のリンクを必ず貼ってください。近頃、ヘルパー会議室コラム記事の無断転載や言い回しを変えただけの文章が散見されています。運営部により定期的にチェックを行っており、無断転載等が発覚した場合は厳正に対処いたしますのでご注意ください。

感染症とは

感染症は、病気のもととなるウィルスや細菌、寄生虫などが人の体内に侵入して、さまざまな症状が現れる病気の総称です。

よく勘違いしている方がいますが、「感染すること」と「感染症になること」は必ずしも同じではありません

感染とは体の中に入った病原体が増殖することであり、それにより熱発や下痢、嘔吐等の症状が引き起こされることを感染症と言います。そのため、予防接種の有無やその人の抵抗力によっては、感染したが症状が現れない場合もあります。

 

訪問介護における感染症対策の重要性

とはいえ、わたしたちが相手にする利用者は、基礎疾患や加齢、障害などにより抵抗力が落ちている方々です。

ひとたびウィルス等に感染して発症すれば、命に関わるケースも少なくありません

加えて、一人でも利用者やホームヘルパーが感染者となれば、各訪問先を順次回る訪問介護という業態において、訪問先から訪問先へと集団感染になりうる可能性があります。

そのため、利用者宅に出入りするホームヘルパーは、病原体を訪問先に持ち込んだり、訪問先で拡げたり、訪問先から持ち出したりしないよう細心の注意を払わなければなりません。

感染症について正しく理解し、適切に対策を講じて対応することは、利用者・家族の生命や健康を守るだけでなく、みなさん自身や周囲の人を守ることでもあります。

過度に感染症を怖がる必要はありませんが、決して軽んじることなく感染症予防に取り組み、感染症が発生した場合には、最小限に食い止められるよう対応にあたりましょう。

 

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さまざまな感染症の種類と症状

適切な感染症対策を実施するためには、感染症にはどういった種類のものがあり、それぞれどのような症状が現れるのか、その特徴を理解しておく必要があります。

以下の表に、訪問介護において特に注視すべき感染症の種類と概要、症状をまとめました。

 

結核 【症状】

  • 咳や痰(血痰の場合もある)などの呼吸器症状、発熱や倦怠感、体重減少などの全身症状。

 

※結核は結核菌によって発生する慢性の感染症です。主な結核の病巣は肺ですが、免疫力が低下した人や高齢者が感染をすると全身感染症となります。
※高齢者の中には、過去に結核に感染をして無症状で経過したが、免疫力が低下をして結核を発症する場合や、治療後に結核を再発する事例もあります。
※肺結核は、初期のころ特に高齢者の場合は、症状がわかりにくいのが特徴です。咳が2週間以上続く場合は注意してください。

疥癬 【症状】

  • 頭部と首を除く全身に、かゆみや赤い湿疹、小さなしこりが出現。手のひらや指の間(手首から先)に「疥癬トンネル」と呼ばれる線状の皮疹が見られる。

 

※疥癬は、ヒゼンダニというダニの一種が皮膚に寄生(トンネルを掘りながら卵を産む)ことにより発生します。
※かゆみは、特に夜間に強く出現しますが、高齢者の場合はそれほど強くない場合もあります。
※抵抗力が落ちている方の場合、「ノルウェー疥癬(角化型疥癬)」という重症型の疥癬になる場合があります。ノルウェー疥癬は感染力が強く、集団感染を引き起こすおそれがあるため注意が必要です。

インフルエンザ 【症状】

  • 急な38℃~40℃程度の高熱、頭痛、咳、鼻水、咽頭痛、関節痛、全身倦怠感、合併症(肺炎、脳炎など)、その他、嘔吐、下痢、腹痛等の消化器症状が現れる場合もあり。

 

※11月~3月がインフルエンザの流行シーズンです。
※高齢者の場合、発熱が顕著に出ない場合もあります。
※脳症を併発して引き起こした場合、けいれんや意識障害を来し、命に関わったり後遺症を残したりすることもあるため特に注意が必要です。(異常行動や異常言動が見られる場合もあります)
※利用者、職員ともにワクチンを接種することが予防および重症化に有効です。

新型コロナウィルス 【症状】

  • 発症時の症状は、発熱、呼吸器症状、倦怠感、頭痛、消化器症状、鼻汁、味覚異常、嗅覚異常、関節痛など。高齢者や基礎疾患(慢性呼吸器疾患、糖尿病、心血管疾患等)がある人は重症化しやすいと考えられてる。

 

※新型コロナウイルスは、令和2年2月、まん延により国民の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして指定感染症に指定されました。その後令和3年2月に指定感染症から二類相当の新型インフルエンザ等感染症に変更、令和5年5月(現在)から「五類感染症」に変更されています。
※新型コロナウイルスの情報は、研究の進歩等により随時更新されています。以下、厚生労働省ホームページにて最新の情報を常にチェックしてください。

介護事業所等における新型コロナウイルス感染症への対応等について|厚生労働省

MRSA 【症状】

  • 発熱、寒気、ふるえ、菌が入った皮膚や筋肉の発赤・腫れ、膿など。

 

※MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、抗生物質(メチシリン)が効かなくなり耐性化した黄色ブドウ球菌です。この菌は、保菌しているだけでは無症状で、健康的な人でも鼻の中や脇の下、手指などに生息しています。ただし、抵抗力の落ちている人が感染すると重篤化する危険性があります。

B型・C型肝炎 【症状】

  • 全身倦怠感や食欲不振、悪心、嘔吐、黄疸(皮膚や目が黄色くなる)。

 

※黄疸が出現しているときは、尿の色が紅茶色のように濃くなる場合があります。
※C型肝炎は、B型肝炎よりも症状が軽く、上記が発生しないまま進行する場合があります。

誤嚥性肺炎 【症状】

  • 発熱、咳、痰、食欲不振、倦怠感、なんとなく元気がない、など。

 

※誤嚥性肺炎の発生機序は、食べ物や飲み物の誤嚥が起点となり、口腔内の細菌が肺に入り込んで生じる肺炎のひとつです。嚥下能力が低下した高齢者や脳卒中の後遺症により嚥下機能が低下した人が発症しやすいとされています。
※「不顕性誤嚥」という本人の自覚なく、例えば、睡眠中に唾液が肺に流れ込んで誤嚥を起こす可能性もあります。予防方法は、適切な口腔ケアの実施、嚥下能力が低下している人の食事形態の変更、必要に応じて食事介助が必要となります。
※誤嚥性肺炎の場合、他の利用者等に感染が伝播することはありません。

尿路感染症 【症状】

  • 排尿痛、残尿感、頻尿、血尿、尿が濁る、など。

 

※尿路感染症は、何かしらの理由で尿路の出口から細菌が入り、尿の排出にかかわる器官(腎臓や膀胱、尿道など)に細菌が付着・増殖し炎症する感染症です。感染する場所によって膀胱炎と腎盂腎炎に分けられます。
※腎盂腎炎の場合、腎臓部を主とする痛みや炎症反応による発熱をともなうことがあります。
※尿路感染症は、他の人に感染が拡大することはありません。尿路感染症を予防するためには、水分補給をこまめにすることや、排尿をしっかりして清潔を保持することが必要です。

 

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訪問介護における感染症対策の基本

訪問介護 感染対策の基本

 

感染症は、病原体・感染経路・感受性宿主(感染のしやすさ)の3つの要因がそろうことで成立します。

したがって、これら3要因を取り除いていくことが訪問介護における感染症対策の基本であり、そのために実施すべきことは、「①スタンダード・プリコーション(標準予防策)」「②感染経路別予防策」「③利用者・ヘルパーの健康管理」を徹底することです。

 

対策の基本①:スタンダード・プリコーション(標準予防策)

スタンダード・プリコーション(標準予防策)とは、利用者の感染症の有無にかかわらず、血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜などはすべて感染源とみなし、感染する危険性があるものとして取り扱う対応の方法を指します。

具体的には、手洗いや手指の消毒、うがい、感染源に接する際は素手で扱うことを避けて手袋をすること、必要に応じてマスクやエプロン、ゴーグルをつけること、リネンの消毒、使用した器具の洗浄・消毒などがあげられます。

 

感染源となる可能性があるもの

感染症の原因となる微生物(細菌、ウイルス等)を含んでいるものを感染源といい、以下は感染源となる可能性あります。

  • 嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
  • 血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
  • 使用した器具・器材(注射針、ガーゼ等)
  • 上記に触れた手指等

 

手洗い

手洗いは、感染対策の基本中の基本です。「1ケア1手洗い」「ケア前後の手洗い」を徹底し、加えて利用者に触れる前後や血液・体液等に触れた後、利用者の周囲の環境や物品に触れた後にもしっかり手を洗いましょう。

なお、爪は短く切っておき、手を洗う前に指輪や時計、ブレスレットなどの装飾品を外してから実施するようにしてください。

正しい手洗いの手順は以下のとおり。

  1. 流水で手をぬらして石けんを手に取る
  2. 石けんをよく泡立てて、手のひらをこすり洗いする
  3. 手の甲をこすり洗いする
  4. 指先を立てながら指先やつめの間を洗う
  5. 手を組むようにして指の間、付け根を洗う
  6. 親指をねじるようにして洗う
  7. 仕上げに手首を洗う
  8. 流水で石けんと汚れを洗い流す

 

【注意】
※せっけんは、固形のものではなく液体せっけんを使用してください。
※流水によるすすぎは最低でも30秒程度は行ってください。
※共有のタオルは使用せず、使い捨てのペーパータオルで水気を拭き取るようにしてください。

 

洗い残しの発生しやすい場所


きちんと洗っているように思えていても意外と洗い残しは多いものです。上記の図、洗い残しの多い箇所を参考に、入念に手洗いを実施しましょう。

 

手指の消毒

先の液体せっけんによる手洗いに加えて、エタノール含有消毒薬による手指消毒を行います。

主な手指消毒の方法は、以下のとおり。

洗浄法(スクラブ法) 消毒薬を約3ml手に取りよく泡立てながら洗浄する(30秒以上)さらに流水で洗い、ペーパータオルで拭き取る
擦式法(ラビング法) エタノール含有消毒薬を約3ml、手に取りよくすりこみ、(30秒以上)乾かす
擦式法(ラビング法)
※ゲル・ジェルによる
エタノール含有のゲル・ジェル消毒薬を、約2ml手に取り、よくすりこみ、(30秒以上)乾かす
清拭法(ワイピング法) エタノール含浸綿で拭き取る

 

ラビング法による手指消毒の手順

  1. 十分な量のエタノール含有消毒薬を手に取る(ワンプッシュ約2~3ml)
  2. 手のひらをこすりあわせ、指先・爪の間にもすりこむ
  3. 手の甲をあわせてすりこむ
  4. 手を組むようにして指の間、付け根にすりこむ
  5. 親指をねじるようにしてすりこむ
  6. 仕上げに手首にすりこむ

※消毒後、十分に乾燥していることを確認してください。
※ラビング法は、手が汚れているときには効果がありませんので、液体石けんによる手洗い後に行ってください。

 

手袋の着用

手袋は、接触予防策を実施するにあたって、最も一般的かつ効果的な防護具です。

血液や体液、排泄物などに触れる場合、または触れる可能性がある場合に、ディスポーザブル(使い捨て)の手袋を着用します。

具体的には、以下のタイミングで手袋を着用して対応にあたってください。

  • おむつ交換等の排泄介助時
  • ポータブルトイレ内の排泄物を処理するとき
  • カテーテルや採尿パックを取り扱うとき
  • 喀痰吸引を実施するとき
  • 口腔ケア時(義歯の扱い時を含む)
  • 自分の手指に傷などがあるとき
  • 血液、尿や便などの排泄物、嘔吐物などで汚染された衣類等に触れるとき
  • 床に付着した血液、尿や便などの排泄物、嘔吐物などを拭き掃除するとき

 

手袋使用時の注意点

  • 一度着用した手袋を連続して使用しないでください。1ケアごとに取り替えましょう。
  • 原則として手袋を外した際には手洗い・手指消毒を行ってください。
  • 使い捨て手袋は、その素材によって、手荒れやアレルギーを引き起こす場合があります。選定時には粉の有り無しや材質を確認してください。

 

マスク・エプロンの着用

感染防護具には、先の使い捨て手袋やマスク、エプロン、ガウン、ゴーグル、フェイスシールドなどがあり、これらを状況に応じて選定し、都度組み合わせて使用します。

基本的には血液や体液、嘔吐物、排泄物などが飛び散って顔にかかる可能性があるときには、マスクを着用(必要に応じてゴーグル、フェイスシールドを着用)してください。

また、血液や体液、嘔吐物、排泄物などが衣類や身体にかかる可能性があるときには、使い捨てのエプロンやガウンを着用しましょう。

エプロン等の着脱方法について、以下、厚生労働省のYouTubeチャンネルで詳しく解説されていますので、こちらも参考にしてください。

 

対策の基本②:感染経路別予防策

スタンダード・プリコーション(標準予防策)と併せて、感染経路に応じた予防策を行います。

これを感染経路別予防策と言い、感染が疑われる症状がある場合には、医師による診断の前であっても、すみやかに予防措置を図ることが重要です。

以下に、主な感染経路である「飛沫感染」「空気感染」「接触感染」「経口感染」「血液感染」それぞれの概要と予防策を列記します。

 

感染経路 概要 予防策
飛沫感染 会話やくしゃみ、咳などをしたときの飛沫を直接吸い込むことで感染する。飛沫は1m程度(くしゃみや咳の飛沫は2m程度)で落下し空中を浮遊し続けない。

【主な感染症】
かぜ・インフルエンザ・風疹・新型コロナウイルス等

  • 利用者に発熱等の感染が疑われる症状がある場合には、原則としてサービスを中止し、職員に感染が疑われる場合には、原則として出勤停止とする
  • 不織布マスクを着用してケアにあたる
  • 疑われる症状のある利用者には、呼吸状態により着用が難しい場合等を除き、不織布マスクを着用してもらう(新型コロナウイルス感染症では症状がなくとも着用する)
  • 居室の窓を開けるなど、十分な換気を行う
  • 飛沫感染する病原体では接触感染も起こりうるため、手すり、ドアノブ等の接触が多い箇所の消毒を行う(事業所内においては、パソコンのキーボード等も消毒すること)
空気感染 病原体が感染者の咳やくしゃみをしたときの飛沫と共に体外に排出され、その中に含まれる微粒子が空気中に漂い、それを吸い込むことで感染する。

【主な感染症】
結核・麻疹(はしか)・水痘等

  • 利用者に発熱等の感染が疑われる症状がある場合には、原則としてサービスを中止し、職員に感染が疑われる場合には、原則として出勤停止とする
  • 高性能マスク(N95等)を着用してケアにあたる
  • 利用者は不織布マスクを着用してもらう
  • 居室の窓を開けるなど、十分な換気を行う
接触感染 感染者との接触や、病原体に汚染されている物を触ることで感染する。病原体が付いた手で、目や鼻、口、傷口などを触ることで病原体が体内に侵入して感染が成立する場合が多い。

【主な感染症】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA)・疥癬・新型コロナウイルス等

  • こまめに手洗い、手指消毒を行う
  • ケア時に手袋を着用する
  • 利用者の膿、血液、嘔吐物、排泄物等を扱う場合にはガウン等を着用する
  • 手すり、ドアノブ等の接触が多い箇所の消毒を行う(事業所内においては、パソコンのキーボード等も消毒すること)
経口感染 食品や水、手指などに含まれる病原体が口に入ることで感染する。

【主な感染症】
ノロウイルス・腸管出血性大腸菌(О157、О111)・赤痢・A型肝炎・コレラ・新型コロナウイルス等

  • こまめに手洗い、手指消毒を行う
血液感染 血液や体液、分泌物に含まれる病原体が、注射や傷口を介して体内に侵入し、感染する。

【主な感染症】
B型肝炎・C型肝炎・エイズ等

  • 手袋、ガウン等を着用する

 

事業所内の環境整備

訪問介護は、事業所内研修などを除き、人が密集する場面が少ない業態です。しかし、上記の接触感染のとおり、職員や来客者が触れた物品や設備等から感染が広まるおそれもあるため、日ごろから事業所内の清潔を保持する必要があります。

具体的には、こまめに清掃して整理整頓するのはもちろんのこと、使用した雑巾やモップはしっかり洗浄・乾燥すること、そしてテーブルやイス、パソコン、電話機器、トイレ、ドアノブ、とって等を消毒用エタノールで適宜消毒してください。

 

嘔吐物・排泄物の処理方法

嘔吐物・排泄物の処理は、ノロウィルス等の感染性胃腸炎を想定し、速やかにかつ念入りに処理します。

嘔吐物・排泄物の処理手順は以下のとおり。

  1. 居室などの窓を開けて換気する。(トイレであっても十分に換気すること)
  2. マスク、使い捨て手袋、使い捨てエプロン(長袖ガウン)を着用する。
  3. ペーパータオルや布などを濡らして嘔吐物にかぶせる。(嘔吐個所から周囲2mくらいは汚染していると考えること)
  4. 外側から内側へ向けてゆっくりと拭き取る。(汚染を拡げないため一度拭き取ったペーパータオルは捨てること)
  5. 拭き取れたら、最後に次亜塩素酸ナトリウム液(0.02%)で浸すように拭き取り消毒し、その後、水拭きする。
  6. トイレ使用の場合は便座や周囲環境を消毒する。
  7. 使用した洗面所等はしっかり洗い、消毒する。
  8. 使用したペーパータオル等を、ビニール袋に密閉して廃棄する。(この際、ビニール袋に廃棄物が浸る量の次亜塩素酸ナトリウム液(0.1%)を入れることが望ましい)
  9. おむつ等は速やかに閉じて排泄物等を包み込み、ビニール袋に密閉して廃棄する。
  10. 処理が終わったら手袋、エプロン、マスクをはずして液体石けんと流水で入念に手を洗う。

 

血液等の体液の処理方法

血液等の体液を取り扱う際には、以下の3点を徹底します。

  1. 血液等の汚染物が付着している場合は、手袋を着用して清拭除去した上で、適切な消毒液(※)を用いて消毒する。
  2. 化膿した患部に使用したガーゼ等は、他のごみと別のビニール袋に密封して、直接触れることのないように取り扱う。(感染性廃棄物として分別処理が必要)
  3. 手袋、長袖ガウンなどは、使い捨てのものが望ましいく、使用後は、使用した場所で専用のビニール袋などに密閉し、破棄する際は専用の業者に処理を依頼する。

(※)適切な消毒薬の選定にあたってが以下の表を参考にしてください。

(出典:J感染制御ネットワーク「消毒薬使用ガイドライン 2015」より作成

 

環境消毒の方法

消毒は、病原微生物の数を減らすために用いられる処置法で、煮沸消毒や熱水消毒などの「物理的消毒法」と、消毒薬を用いる「化学的消毒法」があります。基本的に人体に害のない煮沸消毒や熱水消毒を優先し、それでは難しい場合に消毒薬を使用して消毒を行います。

以下は、対象物ごとの消毒方法の一覧です。

対象 消毒方法
嘔吐物・排泄物
  • 嘔吐物や排泄物で汚染された床は、手袋をして0.5%次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。
差し込み便器
(ベッドパン)
  • 熱水洗濯機(80℃・10分間)で処理し、洗浄後に乾燥させる。
  • 洗浄後、0.1%次亜塩素酸ナトリウムに5分間もしくは0.05%次亜塩素酸ナトリウム液に30分間浸漬する。
リネン・衣類
  • 80℃の熱水に10分間さらして乾燥させる。(やけどに注意すること)
  • 次亜塩素酸ナトリウム(0.02~0.1%)に30分間浸漬後、洗濯、乾燥させる。
食器
  • 自動食器洗浄器(80℃・10分間)。
  • 洗剤による洗浄後に熱水消毒する。
まな板・ふきん
  • 洗剤で十分洗い、熱水消毒する。
  • 次亜塩素酸ナトリウム(0.05~0.1%)に浸漬後、洗浄する。
手すり・ドアノブ・テーブル・パソコン・電話機器
  • 消毒用エタノールで清拭する。
浴槽
  • 手袋を着用して洗剤で洗い、温水(熱水)で流し、乾燥させる。
カーテン
  • 一般に感染の危険性は低い。洗濯する。
  • 体液等が付着したときは、次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。

(出典:株式会社三菱総合研究所「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月)」より一部改変)

 

次亜塩素酸ナトリウム希釈液の作り方

次亜塩素酸ナトリウムを用いた消毒は、原液を水で希釈したものを環境や器具等の使用し、消毒後は、水拭きして乾燥させましょう。

次亜塩素酸ナトリウム液の希釈する濃度は用途によって異なります。以下の表は、次亜塩素酸ナトリウム「市販の漂白剤で一般的な塩素濃度約5~6%の場合」の希釈方法です。

対象 濃度(希釈倍率) 希釈方法
一般的な消毒(ドアノブ、トイレ、リネン類、調理器具など) 0.02%濃度
(200ppm)

水3ℓに対して10㎖
(ペットボトルのキャップ2杯程度)

排泄物・嘔吐物の消毒 0.1%濃度
(1,000ppm)

水3ℓに対して50㎖
(ペットボトルのキャップ10杯程度)

※説明書をよく読んで使用すること。
※消毒効果が強いため原則、手指の消毒には使用しないこと。
※換気を十分に行い、手袋着用のもと消毒を実施すること。
※熱によっても濃度が低下するため、冷暗所等で保管すること。
※作った消毒液は、時間経過とともに効果が落ちるため、その日のうちに使用すること。
※希釈液をスプレーで吹きかけるなど、噴霧はしないこと。

 

対策の基本③:利用者、ヘルパーの健康管理

感染症対策では、日々の訪問業務の中で利用者の健康管理を適切に行い、「なんとなく様子がおかしい」「いつもと比べて口数が少ないな」など、普段との違いにいち早く気づくことが重要です。

また、ヘルパーが感染者となった場合、ヘルパーを介して利用者や家族、他の職員へ感染が拡大するおそれがありますので、ヘルパー自身の健康管理にも気を配る必要があります。

 

利用者の健康管理

利用者の状態変化を早期に発見するためには、前提としてアセスメントにより利用者の既往歴や心身の状況・状態等を把握しておきます。そして、その上で日々の健康状態の観察を注意深く行い、異常の早期キャッチアップに努めます。

具体的には、以下の項目をサービス提供の都度、観察してください。

  • 発熱
  • 発汗
  • 嘔吐(吐き気)
  • 下痢
  • 腹痛
  • 意識レベルの低下
  • 頻脈(または徐脈)
  • 呼吸数の増加
  • いつもと比べて活気がない
  • 咳、喀痰の増加
  • 咽頭痛・鼻水
  • 寝汗
  • 皮膚の発疹、発赤、腫脹、熱感
  • 摂食不良
  • 体重減少
  • 頭痛
  • 顔色、唇の色が悪い

これらの状態変化があった場合は、詳細を記録すると同時に、医療職と連携して適切な対応につなげることがとても大切になります。

利用者によって主治医の有無や訪問看護の利用状況などが異なりますので、誰にどの順序で報告をするのか、あらかじめ連携のフローを定めておきましょう。

訪問介護の観察マニュアル

 

利用者にも手洗いの促しを


利用者の健康管理のひとつとして、利用者にも必要に応じて手洗いなどの予防策を行ってもらうよう促します。例えば、食事の前や手指に排泄物等が付着した場合、その他、通院や買物など外出介助時にはマスクの着用を推奨し、帰宅後には手洗いとうがいを行ってもらいましょう。

 

ヘルパーの健康管理

感染症対策を確実に遂行していくためには、サービス提供にあたるヘルパー自身が心身ともに健康であることが必要不可欠となります。

ですので、事業所はヘルパーに無理をさせてはいけませんし、ヘルパー自身も「体調が優れないけど人が足りないし…」と無理に頑張ろうとしてはいけません。

決して無理をせず、休むときはしっかり休んで健康を管理することが感染予防および拡大防止につながります。

ヘルパー個人としては、

  • 出勤前に体温を測る
  • 発熱があるなど体調不良のときは、管理者等へ報告し、すみやかに医療機関へ受診する
  • 同居の家族が感染者となった場合は、管理者等へ報告し、指示を仰ぐ
  • スタンダード・プリコーション(標準予防策)を徹底して病原体を受け取らないようにする
  • 睡眠や栄養を十分にとるなど、抵抗力の向上に努める
  • 健康診断を受ける
  • 予防接種により免疫を得ておく

などを行いましょう。

事業所としては、日ごろからヘルパーの健康状態に留意するとともに、健康診断を受けさせます。(健康診断を各職員に受けさせるのは事業所の義務です)

また管理者から積極的に声かけするなど、ヘルパーが体調不良になった際に気兼ねなく事業所へ相談できる労働環境の構築に努めましょう。

その他、感染症流行時には、ヘルパー自身に基礎疾患がある場合や妊娠している場合など、感染に際して重篤化するおそれがある職員のシフト調整への配慮も必要です。

 

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訪問介護で注意したい食中毒とは

訪問介護 食中毒予防対策

食中毒とは、病原体(細菌、ウイルス、真菌、寄生虫など)や有毒物質を含む食品や飲料を摂取したことにより起こる、下痢、嘔吐、発熱などの症状の総称を指します。

主な原因は細菌またはウィルスによるものであり、カンピロバクターやサルモネラ菌などの細菌による食中毒は「夏場(6月~8月)」に発生しやすく、ノロウィルスなどのウィルスによる食中毒は「冬場(11月~3月)」に多いのが特徴です。

訪問介護では、施設介護のように事業所主導で食品管理を行うことができません。また利用者によって生活環境が異なり、その方に適した食中毒対策を求められます

細菌、ウィルスのいずれにせよ、訪問介護では調理などにおいて食品や食器、調理器具等を扱うことになりますので、季節を問わず細心の注意を払ってサービス提供に臨んでください。

 

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食中毒を防ぐ3つの原則

食中毒対策3原則

食中毒を予防するためには、原因菌を「①つけない」「②増やさない」「③やっつける」の3原則を徹底します。

 

原則①:つけない

食材や調理器具に原因菌をつけないように手指や調理器具等の洗浄、消毒を行います。

肉・魚介類用の調理器具と野菜など用の調理器具を分けるなど、用途別に使い分けることも有効です。

また、手指には多くの雑菌が付着していますので、調理の前や肉類・魚介類・卵などを取り扱う前後、調理中にトイレに行った場合、食事の配膳前などには必ず手洗いを行いましょう。

 

原則②:増やさない

細菌は、高温多湿な環境で増殖が活発化するため、冷蔵庫や冷凍庫にて低温保存するのが効果的です。

一般的には10℃以下で細菌の増殖が鈍り、-15℃以下で増殖が停止すると言われています。しかし、菌が死滅するわけではなく、保存温度が十分ではない場合はゆっくりと増殖が進行するため注意が必要です。

訪問先の冷蔵庫・冷凍庫の冷却機能が低下している、あるいはそもそも冷却機能が低いものを使用している場合もありますので、あらじめ確認しておきましょう。

そして、冷蔵保存する必要がある食品(生鮮食品や総菜など)は購入後早めに冷蔵庫へ入れ、さらに冷蔵庫へ入れた食品も長期間放置せず早めに食べてもらうようにしてください。

 

原則③:やっつける

原因菌の多くは、加熱処理することにより死滅します。『食材の中心部を75℃で1分以上加熱」を処理の目安とし、特に肉類を取り扱う際には、中心まで十分に加熱するよう調理にあたりましょう。

また、肉類・魚介類・卵などを扱った後の調理器具(包丁やまな板など)にも、細菌が多く付着しています。ですので、調理後には洗剤等で器具をしっかり洗浄してから熱湯をかけて殺菌してください。

 

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さまざな食中毒の特徴と対策

ひとくちに食中毒といっても、その種類は色々であり、また種類によって予防対策が異なります。

ここでヘルパーが押さえておくべき代表的な食中毒の概要と対策を解説します。

 

腸管出血性大腸菌(O157、O111など) 【概要】

人間の体内には大腸菌という菌が存在しています。大半の菌は無害ですが、いくつかの菌は毒素を含んでおり、下痢などの消化器症状を引き起こすものがあります。毒素を含んだ菌を病原大腸菌といい、その代表的なものがO157、O111などの腸管出血性大腸菌です。腸管出血性大腸菌は、加熱不十分な肉を食べたり、生肉を食べたりすることで引き起こします。

【対策】

  • 食材の十分な加熱(特にハンバーグなど、ひき肉を使用した食肉調理品は確実に中心部まで加熱すること)
  • 野菜類は流水でよく洗浄する
  • 調理器具の殺菌(洗浄度の煮沸消毒など)
カンピロバクター 【概要】

鶏や牛、豚などの腸内に常在している菌で、この細菌が付着した生肉や加熱不十分な肉(特に鶏肉は高率で保有)を食べることで発症します。低温に強く4℃以下でも長期間生きており、少量の菌を摂取するだけでも発症します。
主な症状は下痢、腹痛、発熱、頭痛など。高齢者や抵抗力が弱っている方の場合、重症化することがあります。

【対策】

  • 食材の十分な加熱(特に鶏肉は中心まで火が通っていることを確認してから提供すること)
  • 調理器具の殺菌(洗浄後の煮沸消毒など)
サルモネラ菌 【概要】

鶏や牛、豚などの腸内に常在している菌で、これらの食肉や生卵や加熱不十分な卵の摂取が主な発症原因となります。その他、犬や猫などペットから食品に菌が付着することもあります。潜伏時間は、通常6時間から72時間程度で、激しい腹痛、下痢、発熱、頭痛、嘔吐などの症状が現れます。

【対策】

  • 卵を購入した後は冷蔵庫で保管する
  • 卵は新鮮なものを使用する
  • 卵料理の調理時は十分に加熱する(生で提供しない)
セレウス菌 【概要】

土の中や河川、ほこりなどの自然環境や農畜産物などに広く分布している細菌で、主な感染源は、穀類、豆類、香辛料になります。特に米飯や焼き飯、スパゲッティ、焼きそば、プリンなどが食中毒の原因となることが多いです。
セレウス菌による食中毒は、嘔吐型と下痢型の2つの症状に分けられますが、日本で発生しているほとんどが嘔吐毒によるものとされています。(嘔吐型は食後1~5時間後、下痢型は食後8~16時間後に症状が現れる)
なお、セレウス菌は熱に強いため加熱処理しても死滅しません。そのため菌を増やさないよう管理するのが予防のポイントとなります。

【対策】

  • 食品を室内で長時間放置せず、冷蔵庫で低温保存する
  • 調理した食品はすぐに食べる(翌日の再調理しての提供は避ける)
黄色ブドウ球菌 【概要】

黄色ブドウ球菌は自然界に広く分布しており、人の皮膚やのど、鼻の中にも高率で保菌しています。手指に傷があったり、化膿していたりする場合に、その手で調理した食品(にぎりめし、寿司、調理パン、菓子類など)を介して食中毒を引き起こします。
汚染された食品を食べると、30分~6時間(平均3時間)後に、激しい嘔気・嘔吐、腹痛、下痢をなどの症状が現れます。
黄色ブドウ球菌は、食べ物の中で増殖するときに毒素をつくります、この毒素は通常の加熱では分解されない性質を持ち、乾燥にも強いとされています。そのため菌をつけない・増やさないよう管理するのが予防のポイントです。

【対策】

  • 手に傷があるときは調理しない、または手袋を着用して行う
  • 食品を室内で長時間放置せず、冷蔵庫で低温保存する
ウェルシュ菌 【概要】

人間や動物の腸管、土地の中や水中など自然界に広く分布しています。酸素のないところで増殖し、熱に強い殻(芽胞)を作るのが特徴で、カレー、スープ、シチューなど一度に多くの量を調理する食品が主な食中毒の原因となります。
潜伏時間は6~18時間で、主に下痢や腹痛などの症状が現れます。

【対策】

  • カレー、シチューなどの加熱時には食品全体に熱が行き渡るようによくかき混ぜながら加熱する
  • 調理した食品はすぐに食べる(調理後から食べるまでの時間を短くする)
  • 前日調理をしない
  • 冷ますときは、鍋のまま放置せず容器に小分けするなどして速やかに冷却する
  • 作り置きしたものを提供する場合は、食べる前に十分に再加熱する
腸炎ビブリオ 【概要】

河口部や沿岸部など海に生息する細菌です。魚介類の刺身や寿司、魚介類加工品を食べたり、漬物や塩辛など手指や調理器具を介して二次汚染された食品を食べたりすることで食中毒を引き起こします。
腸炎ビブリオは非常に増殖が速く、37℃前後であれば10分で倍増するとされています。ただし、4℃以下の低温ではあまり増殖せず、また加熱や真水に弱いのが特徴です。

【対策】

  • 魚介類は真水でよく洗う
  • 調理後はできるだけ速やかに食べる(長時間室温に放置しない)
  • 短時間であっても食品を室内で放置せず、冷蔵庫で低温保存する
  • 食材の十分な加熱
  • 魚介類を扱った手指や調理器具はよく洗う
ノロウィルス 【概要】

ノロウイルスは1年を通して発生しますが、特に冬場に流行する食中毒です。
潜伏期間は通常1~2日程度で、主に嘔吐、下痢、腹痛などの症状が現れます。またノロウィルスは感染力が強く、少しのウィルスでも感染し、高齢者や抵抗力の弱っている方の場合、重症化することがあります。
カキやアサリ等の二枚貝を加熱不十分または生で食べることで感染するケースや、ウィルスに触れた調理従事者を介した食品を食べることで二次感染するケース、感染者の糞便やおう吐物を介して二次感染するケースなど感染原因はさまざまです。
そのため予防には、ウィルスを調理場に持ち込まないことに加えて、ウィルスを拡げない・やっつける・つけないことがポイントになります。

【対策】

  • 二枚貝を生で提供しない
  • 食品の十分な加熱(85~90℃で、90秒間以上が目安)
  • 嘔吐や下痢などの症状がある場合は、調理作業を控える
  • トイレの後、調理前の入念な手指の洗浄
  • 便や嘔吐物などを処理をする場合は、使い捨てのマスクやガウン、手袋を着用し、ペーパータオルなどですみやかに拭き取り、次亜塩素酸ナトリウムで消毒した後に水拭きする
  • 便や嘔吐物が付着した衣類や物品は、他のものと分けて洗浄し、次亜塩素酸ナトリウムで消毒する
  • 汚染された調理器具等は、洗剤で十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウムで消毒する
  • 不顕性感染(感染者本人に自覚がない)場合もあるため、感染しているかもしれないということを念頭において手洗いを徹底する

 

※ノロウィルスの対応などについては以下、厚生労働省資料を参考にしてください。
参考:ノロウイルスに関するQ&A

 

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作業セクションごとの衛生管理のポイント

実際の訪問介護現場では、単に食事を作って提供するだけではなく、食材の選定から余った食材の保存に至るまでヘルパーが実施するケースもあり、さまざまな視点から衛生管理を行う必要があります。

つまり、訪問介護における食中毒対策は、買い物代行にて食材を選ぶときから始まっているということです。

以下に実現場に沿った各作業セクションごとの衛生管理のポイントを紹介します。

 

セクション①:買い物

  • 新鮮で清潔な食材を選ぶ。
  • 消費期限を確認する。
  • 生の肉類・魚介類は、その他の品より後に選定し、できる限り鮮度を保つようにする。
  • 生の肉類・魚介類は、その他の品と分けてそれぞれビニール袋に包み、持ち帰る。
  • 買い物から帰宅後は、購入品を利用者と確認後、すみやかに冷蔵庫・冷凍庫へしまう。(購入品を利用者へ確認してもらう際に、食品を床に置かないこと)

セクション②:調理

  • 調理の前にアクセサリーや時計等を外し、入念に手を洗う。
  • 調理前にまな板や包丁を洗浄から開始する。
  • 野菜は流水で洗い、汚れや土などを取り除き、水気を切る。
  • 魚介類は細菌を死滅させるため流水でしっかり洗ってから処理する。(魚介類を汚染する腸炎ビブリオなどの食中毒菌は塩分のない環境では増えないため)
  • 肉類、魚介類、卵などは中心部までしっかり加熱調理する。
  • 肉類、魚介類などの生ものを扱った手やまな板・包丁は、次の作業に移る前に一度洗浄する。(まな板や包丁は肉類・魚介類用のものと野菜など用のものとで使い分けると効果的)
  • 肉類・魚介類と野菜類を調理に用いる場合は、野菜類を先に切り、肉類・魚介類は最後に切る。
  • 冷凍食品は、解凍することで雑菌が繁殖するリスクが増えるため時間のかかる自然解凍は避ける。(使う分のみ電子レンジ等で解凍し、再冷凍しないこと)
  • 使用した調理器具は流水や洗剤を使用して十分に汚れを取り、乾燥させる。まな板や包丁、ふきんなどは定期的に煮沸または次亜塩素酸ナトリウムにより消毒し、しっかりと乾燥させる。

セクション③:食事の配下膳

  • 調理した食事を配膳する前に入念に手を洗う。
  • 清潔な食器を選定し、清潔な手で盛り付け、配膳する。
  • 食べる前に利用者に手を洗ってもらう。
  • 配膳した食事を長時間室温に放置しない。
  • 下膳した食器類は洗浄し、しっかり乾燥させる。
  • 台所の使用後は、水回り等を掃除し、常に清潔を保つようにする。
  • 生ごみは三角コーナー等に溜めておかず、その都度きちんと処理する。

セクション④:食材・食品の保存

  • 冷蔵庫・冷凍庫の機能低下がなく、適切な温度が保たれているか確認しておく。(冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下を維持すること)
  • 冷蔵庫・冷凍庫内は詰め込み過ぎないよう(7割程度)にし、傷んだ食材や期限切れの食品がないかを逐一確認する。
  • 傷んだ食材や期限切れの食品があった場合は、利用者と相談のもと廃棄する。
  • 作り置きする場合は、鍋ごと冷蔵庫に入れるのではなく、清潔なタッパー、ジップロック等に小分け保存し、保存した日付等が分かるようにメモ書きしておく。(あまった食材を冷凍する場合も、1回分に小分けして冷凍すること)
  • 作り置きした物を提供する場合は、十分に加熱し温めなおしてから提供する。

訪問介護の調理マニュアル

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訪問介護で感染症および食中毒が発生した場合の対応方法

訪問介護事業所の職員または利用者に感染症や食中毒が発生した、あるいは疑われる状況が生じた場合には、以下5つのタスクを実行します。

 

  1. 発生状況の把握
  2. 感染拡大防止に留意したケアの実施
  3. 関係機関への報告・連携
  4. 行政、保健所への報告・相談

 

 

発生状況の把握

ヘルパーは、サービス提供時に利用者の感染症や食中毒を疑ったときは、速やかに管理者に報告するとともに、主治医への相談または医療機関への受診を促します。

受診の結果、感染症や食中毒と判明した場合、管理者は、サービス提供にあたったヘルパーの症状の有無など健康状態を確認・把握し、加えて、その他の利用者の健康状態についても確認・把握を行ってください。

 

感染拡大防止に留意したケアの実施

管理者は、感染拡大を防止するためにスタンダード・プリコーション(標準予防策)を徹底するようヘルパーへ指示するとともに、流行している感染症に応じた感染経路別対策を指示します。

各ケアの実施における留意点は以下のとおりです。

利用者の健康状態や感染症の種類によって対策は異なりますので、先の感染経路別対策などを参考に状況に応じて対応にあたってください。

食事介助
  • 対面での介助は避け、利用者の左右いずれかに位置して介助を実施する。(飛沫予防)
  • 食事前に利用者に手洗いを行ってもらう。
排泄介助
  • ポータブルトイレ使用の場合は、使用後に次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)等にて消毒する。
入浴介助
  • 原則、感染者に対しては入浴を中止し、清拭にて対応する。
  • 感染疑い者に対しても清拭対応が望ましい。入浴する場合はスタンダード・プリコーションを徹底の上、その日の最終ケアに回すなどにて対応する。
外出介助
  • 原則として中止し、ヘルパーによる代行に変更して対応する。通院等どうしても外出の介助が必要な場合は、利用者にマスクを着用してもらい、帰宅後に手洗い、うがい等を行ってもらう。
医療的ケア
  • 喀痰吸引を実施する場合は飛沫予防策、経管栄養を実施する場合は接触予防策を行う。
環境整備
  • 訪問時に窓を開けて空気を入れ換える等、十分な換気を行う。
  • 事業所内・利用者宅内を消毒用エタノールまたは次亜塩素酸ナトリウムで消毒を行う。

 

 認知症の利用者への対応

  • 感染症の流行による環境の変化で不穏になる方の場合は、急なヘルパーの変更はせず、できる限り普段から訪問しているなじみのヘルパーがケアにあたる。
  • 感染症の流行を理解できず、マスクの着用等を拒否する場合であっても、マスクの着用を声かけし、その上で健康管理やこまめな室内消毒(手すりや机、とって等)を行う。

訪問介護の認知症ケア対応マニュアル

 

障害者への対応

  • 感染症の流行により精神障害者など気分の落ち込みやうつ状態にある方には、SNSや電話等にて密にコミュニケーションをとるようにする。
  • 重症心身障害等、医療的ケアが必要な方は感染症による重症化リスクが高いことから、より入念な感染対策を実施のもとケアにあたる。
  • 知的障害等により感染症の流行や状況が理解できない方の場合は、障害特性に応じて工夫し、理解を促す。(分かりやすく文字で書いて説明する、絵を用いて説明する等)

障害種別ごとの特性と支援のポイント

 

関係機関への報告・連携

管理者やサービス提供責任者から、担当ケアマネジャー、主治医・医療機関等に感染状況を報告し、その利用者にかかわる関係者で情報を共有します。

担当ケアマネジャーには、サービス休止の有無やサービス時間短縮・変更の有無を含めて相談し、主治医・医療機関等にはケアに際しての助言をもらうようにしましょう。

その他、感染流行時には、感染症または感染疑いにより出勤できない職員が多数発生し、サービス提供の継続が難しくなる状況も想定されます。

ですので、こうした状況においては、他の訪問介護事業所や訪問系障害福祉サービス事業所へ応援要請するなどの対応が必要です。日頃から他事業所との関係を築くとともに、有事の際の情報共有も適宜行いましょう。

 

行政・保健所への報告・相談

事業所の職員および利用者に感染者が出た場合は、管理者から速やかに市町村等の担当課に報告し、あわせて保健所にも相談します。

市町村へ報告すべき事案については、厚生労働省通知「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」に示されており、以下のとおりです。

[報告が必要な場合]

  1. 同一の感染症等による、またはそれらが疑わる死亡者・重篤患者が、1週間以内に2名以上発生した場合
  2. 同一の感染症等の患者、またはそれらが疑われる者が10名以上または全利用者の半数以上発生した場合
  3. 上記以外の場合であっても、通常の発生動向を上回る感染症等の発生が疑われ、特に管理者が報告を必要と認めた場合

[報告する内容]

  1. 感染症等が疑われる利用者の人数
  2. 感染症等が疑われる症状
  3. 上記利用者への対応や事業所における対応状況

[報告様式]

各市町村等指定の様式がある場合は、それに従って報告する。

※なお、上記の対象となる社会福祉施設等には、訪問介護や訪問系障害福祉サービス(居宅介護や重度訪問介護など)のみを提供している事業所は含まれません。しかし、厚生労働省は「その他の事業所についても参考にされたい」と示していることから、訪問介護事業者および訪問系障害福祉サービス事業者であっても、上記事案が発生した場合は市町村等へ報告し、保健所にも相談してください。

※新型コロナウィルスについては、感染者が発生した場合、地域の実情に応じて別途市町村等への報告が必要な場合があります。

 

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さいごに

訪問介護の感染症・食中毒予防およびまん延防止対策マニュアルは以上となります。

訪問介護や訪問系障害福祉サービスにおける感染症・食中毒に関する基本的な内容は、すべて本マニュアルにて網羅しているかと思いますので、ぜひ研修資料等にご活用ください。

また事業所にて整備するマニュアルに使う場合は、自分の事業所に合わせて適宜変更を加えてください。

また当サイト「ヘルパー会議室」では、ホームヘルパー・サービス提供責任者の初心者向けに業務マニュアルを無料で公開しています。

この機会にあわせてチェックしておきましょう。

【全てわかる】ホームヘルパーの完全業務マニュアル

サービス提供責任者の完全業務マニュアル【必須知識がすべて分かる】

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