令和6年度の報酬改定で、訪問介護は何が変わったのでしょうか?
忙しくて調べる時間がありません…。
2024年4月1日に施行された令和6年度の介護報酬改定。
訪問介護においても厚生労働省より数多くの改定事項が示されました。ですが、日々の業務に追われて厚生労働省の資料を調べ、読み解く時間がない方も多いはず。
そこで、今回は、令和6年度の介護報酬改定のうち、訪問介護のみに絞って改定事項をまとめました。
訪問介護において何がどう変わったのかを詳しく紹介し、併せて事業所としてすべきことを解説していきます。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
- 訪問介護における令和6年度介護報酬改定の内容まとめ
- ①:人員配置基準における両立支援への配慮
- ②:管理者の責務及び兼務範囲の明確化等
- ③:いわゆるローカルルールについて
- ④:「書面掲示」規制の見直し
- ⑤:基本報酬の見直し
- ⑥:地域区分
- ⑦:訪問介護における特定事業所加算の見直し
- ⑧:業務継続計画未策定減算の新設
- ⑨:高齢者虐待防止措置未実施減算の新設
- ⑩:身体的拘束等の適正化の推進
- ⑪:認知症専門ケア加算の見直し
- ⑫:口腔連携強化加算の新設
- ⑬:介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の一本化
- ⑭:同一建物減算の見直し
- ⑮:特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化
- ⑯:特別地域加算の対象地域の見直し
- ⑰:テレワークの取扱い
- 令和6年4月以降に事業所がやるべきこと
- さいごに
訪問介護における令和6年度介護報酬改定の内容まとめ
訪問介護における令和6年度介護報酬改定の内容は、以下の17個です。
\ 17の改定内容 /
- 人員配置基準における両立支援への配慮
- 管理者の責務及び兼務範囲の明確化等
- いわゆるローカルルールについて
- 「書面掲示」規制の見直し
- 基本報酬の見直し
- 地域区分
- 訪問介護における特定事業所加算の見直し
- 業務継続計画未策定減算の新設
- 高齢者虐待防止措置未実施減算の新設
- 身体的拘束等の適正化の推進
- 認知症専門ケア加算の見直し
- 口腔連携強化加算の新設
- 介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の一本化
- 同一建物減算の見直し
- 特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化
- 特別地域加算の対象地域の見直し
- テレワークの取扱い
①:人員配置基準における両立支援への配慮
- 「常勤」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法等による育児・介護等の短時間勤務制度を利用する場合に加えて、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱うことを認める。
- 「常勤換算方法」の計算に当たり、職員が「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も1(常勤)と扱うことを認める。
②:管理者の責務及び兼務範囲の明確化等
- 提供する介護サービスの質を担保しつつ、介護サービス事業所を効率的に運営する観点から、管理者の責務について、利用者へのサービス提供の場面等で生じる事象を適時かつ適切に把握しながら、職員及び業務の一元的な管理・指揮命令を行うことである旨を明確化した上で、管理者が兼務できる事業所の範囲について、管理者がその責務を果たせる場合には、同一敷地内における他の事業所、施設等ではなくても差し支えない旨を明確化する。
解釈通知の変更内容
③:いわゆるローカルルールについて
- 都道府県及び市町村に対して、人員配置基準に係るいわゆるローカルルールについて、あくまでも厚生労働省令に従う範囲内で地域の実情に応じた内容とする必要があること、事業者から説明を求められた場合には当該地域における当該ルールの必要性を説明できるようにすること等を求める。
厚生労働省Q&A
④:「書面掲示」規制の見直し
- 運営基準省令上、事業所の運営規程の概要等の重要事項等については、原則として事業所内での「書面掲示」を求めている一方、備え付けの書面(紙ファイル等)又は電磁的記録の供覧により、書面による壁面等への掲示を代替できる規定になっているところ、「書面掲示」に加え、インターネット上で情報の閲覧が完結するよう、介護サービス事業者は、原則として重要事項等の情報をウェブサイト(法人のホームページ等又は情報公表システム上)に掲載・公表しなければならないこととする。
※令和7年度(令和7年4月1日)から義務となります。
⑤:基本報酬の見直し
サービス内容 | 算定項目 | 2024年4月以前 | 2024年4月以降 |
身体介護中心型 | (1)20分未満 | 167単位 | 163単位 |
(2)20分以上30分 | 250単位 | 244単位 | |
(3)30分以上1時間未満 | 396単位 | 387単位 | |
(4)1時間以上 | 579単位に30分増すごとに84単位を加算 | 567単位に30分を増すごとに82単位を加算 | |
(2)~(4)に引き続き生活援助を行った場合 | 所要時間が20分から起算して25分を増すごとに+67単位(※201単位を限度) | 所要時間が20分から起算して25分を増すごとに+65単位(※195単位を限度) | |
生活援助中心型 | 20分以上45分未満 | 183単位 | 179単位 |
45分以上 | 225単位 | 220単位 | |
通院等乗降介助 | 1回につき(片道) | 99単位 | 97単位 |
⇒【令和6年度改定対応】訪問介護の「単位数」一覧|基本報酬・加算・減算をまとめて紹介
⑥:地域区分
- 令和6年度以降の級地の設定に当たっては、現行の級地を適用することを基本としつつ、公平性を欠く状況にあると考えられる自治体については特例を設け、自治体に対して行った意向調査の結果を踏まえ、級地に反映する。また、平成27年度介護報酬改定時に設けられた経過措置については令和5年度末までがその期限となっているが、令和8年度末までの延長を認める。
※令和6年度~令和8年度までの間の地域区分の適用地域については以下を参考にしてください。
⇒【令和6年度改定対応】訪問介護の地域区分・地域単価一覧まとめ
⑦:訪問介護における特定事業所加算の見直し
訪問介護における特定事業所加算について、看取り期の利用者など重度者へのサービス提供や中山間地域等で継続的なサービス提供を行っている事業所を適切に評価する観点等から以下の見直しを行う。
- ア:看取り期における対応を適切に評価する観点から、重度者対応要件として、「看取り期にある者」に関する要件を新たに追加する。
- イ:中山間地域等において、地域資源等の状況により、やむを得ず移動距離等を要し、事業運営が非効率にならざるを得ない場合があることから、利用者へ継続的なサービスを行っていることについて新たに評価を行う。
- ウ:重度要介護者等への対応における現行要件について、実態を踏まえ一部の現行区分について見直し等を行う
単位数
2024年4月以前 | ⇒ | 2024年4月以降 | |||
特定事業所加算(Ⅰ) | 所定単位数の20%を加算 | 特定事業所加算(Ⅰ) | 所定単位数の20%を加算 | ー | |
特定事業所加算(Ⅱ) | 所定単位数の10%を加算 | 特定事業所加算(Ⅱ) | 所定単位数の10%を加算 | ー | |
特定事業所加算(Ⅲ) | 所定単位数の10%を加算 | 特定事業所加算(Ⅲ) | 所定単位数の10%を加算 | ー | |
特定事業所加算(Ⅳ) | 所定単位数の5%を加算 | 特定事業所加算(Ⅳ) | 所定単位数の5%を加算 | 廃止 | |
特定事業所加算(Ⅴ) | 所定単位数の3%を加算 | 特定事業所加算(Ⅳ) | 所定単位数の3%を加算 | 変更 | |
ー | 特定事業所加算(Ⅴ) | 所定単位数の3%を加算 | 新設 |
算定要件等
※厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」より抜粋
⑧:業務継続計画未策定減算の新設
- 感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画の策定の徹底を求める観点から、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合、基本報酬を減算する。
算定要件・単位数
項目 | 算定要件 | 単位数 |
業務継続計画未策定減算 | 以下の基準に適合していない場合
|
所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算(1%) |
※業務継続計画未策定減算は、令和7年度(令和7年4月1日)から適用されます。
厚生労働省Q&A
質問 | 回答 | |
問164 | 業務継続計画未策定減算はどのような場合に適用となるのか。 |
|
問166 | 行政機関による運営指導等で業務継続計画の未策定など不適切な運営が確認された場合、「事実が生じた時点」まで遡及して当該減算を適用するのか。 |
|
QAに示されているとおり、業務継続計画未策定減算は、BCPの周知や研修、訓練を実施していなくても減算対象となりません。ただし、減算対象にならないだけであって、これらは基準省令により義務付けられているものですから実施しておいてください。
また、減算要件に「業務継続計画に従い必要な措置を講ずること」とされていることから、BCPの発動基準に適合した状況が発生した場合、正しくBCPが実行されているか否かを確認されることになるはずです。ですので、その証明として記録を残しておくことが重要になります。
加えて、業務継続計画は、「感染症発生時」と「自然災害発生時」の2つを作成する必要があり、一方のBCPしか策定されていない場合は、令和7年度以降減算対象となりますので注意しておきましょう。(双方を一体的にまとめて作成することは可)
⑨:高齢者虐待防止措置未実施減算の新設
- 利用者の人権の擁護、虐待の防止等をより推進する観点から、全ての介護サービス事業者(居宅療養管理指導及び特定福祉用具販売を除く。)について、虐待の発生又はその再発を防止するための措置(虐待の発生又はその再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること)が講じられていない場合に、基本報酬を減算する。
算定要件・単位数
項目 | 算定要件 | 単位数 |
高齢者虐待防止措置未実施減算 | 虐待の発生またはその再発を防止するための以下の措置が講じられていない場合
|
所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算(1%) |
厚生労働省Q&A
質問 | 回答 | |
問167 | 高齢者虐待が発生していない場合においても、虐待の発生又はその再発を防止するための全ての措置(委員会の開催、指針の整備、研修の定期的な実施、担当者を置くこと)がなされていなければ減算の適用となるのか。 |
|
問168 | 運営指導等で行政機関が把握した高齢者虐待防止措置が講じられていない事実が、発見した日の属する月より過去の場合、遡及して当該減算を適用するのか。 |
|
問169 | 高齢者虐待防止措置未実施減算については、虐待の発生又はその再発を防止するための全ての措置(委員会の開催、指針の整備、研修の定期的な実施、担当者を置くこと)がなされていない事実が生じた場合、「速やかに改善計画を都道府県知事に提出した後、事実が生じた月から三月後に改善計画に基づく改善状況を都道府県知事に報告することとし、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までの間について、入居者全員について所定単位数から減算することとする。」こととされているが、施設・事業所から改善計画が提出されない限り、減算の措置を行うことはできないのか。 |
|
⑩:身体的拘束等の適正化の推進
- 訪問系サービス、通所系サービス、福祉用具貸与、特定福祉用具販売及び居宅介護支援について、利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならないこととし、身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録することを義務付ける。
解釈通知の変更内容
2024年4月以前 | 2024年4月以降 | |
3運営に関する基準(13)指定訪問介護の基本的取扱方針及び具体的取扱方針 | ー | ③ 指定訪問介護の提供に当たっては、当該利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならず、緊急やむを得ない場合に身体的拘束等を行う場合にあっても、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならないこととしたものである。 また、緊急やむを得ない理由については、切迫性、非代替性及び一時性の3つの要件を満たすことについて、組織等としてこれらの要件の確認等の手続きを極めて慎重に行うこととし、その具体的な内容について記録しておくことが必要である。 なお、居宅基準第39条第2項の規定に基づき、当該記録は、2年間保存しなければならない。 |
記録の保管期間は、基準省令上は2年間ですが、自治体によっては条例により5年間としている場合が多いため確認しておきましょう。
ちなみに、訪問介護については身体拘束廃止未実施減算は適用されませんが、訪問系障害福祉サービスについては令和5年度より適用が開始されています。
⑪:認知症専門ケア加算の見直し
- 訪問系サービスにおける認知症専門ケア加算について、認知症高齢者の重症化の緩和や日常生活自立度Ⅱの者に対して適切に認知症の専門的ケアを行うことを評価する観点から、利用者の受入れに関する要件を見直す。
算定要件・単位数
項目 | 算定要件 | 単位数 |
認知症専門ケア加算(Ⅰ) |
|
3単位/日
※定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護(Ⅱ)については、90単位/月 |
認知症専門ケア加算(Ⅱ) |
|
4単位/日
※定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護(Ⅱ)については、120単位/月 |
⑫:口腔連携強化加算の新設
- 訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護及び定期巡回・随時対応型訪問介護看護において、職員による利用者の口腔の状態の確認によって、歯科専門職による適切な口腔管理の実施につなげる観点から、事業所と歯科専門職の連携の下、介護職員等による口腔衛生状態及び口腔機能の評価の実施並びに利用者の同意の下の歯科医療機関及び介護支援専門員への情報提供を評価する新たな加算を設ける。
算定要件・単位数
項目 | 算定要件 | 単位数 |
口腔連携強化加算 |
|
50単位/回 ※1月に1回に限り算定可能 |
報酬告示の留意事項通知
⑬:介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の一本化
- 介護現場で働く方々にとって、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう加算率の引上げを行う。
- 介護職員等の確保に向けて、介護職員の処遇改善のための措置ができるだけ多くの事業所に活用されるよう推進する観点から、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算について、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化を行う。
※新加算の「介護職員等処遇改善加算」は令和6年6月~になります。
算定要件
- 一本化後の新加算全体について、職種に着目した配分ルールは設けず、事業所内で柔軟な配分を認める。
- 新加算のいずれの区分を取得している事業所においても、新加算Ⅳの加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てることを要件とする。
※それまでベースアップ等支援加算を取得していない事業所が、一本化後の新加算を新たに取得する場合には、収入として新たに増加するベースアップ等支援加算相当分の加算額については、その2/3以上を月額賃金の改善として新たに配分することを求める。
詳しい算定要件および事務手続きについては以下の厚生労働省ホームページを確認してください。
2024年4月~2024年5月
算定項目 | 算定内容 | |
介護職員処遇改善加算Ⅰ | 1月につき+所定単位×137/1000(13.7%) | |
介護職員処遇改善加算Ⅱ | 1月につき+所定単位×100/1000(10%) | |
介護職員処遇改善加算Ⅲ | 1月につき+所定単位×55/1000(5.5%) | |
介護職員等特定処遇改善加算Ⅰ | 1月につき+所定単位×63/1000(6.3%) | |
介護職員等特定処遇改善加算Ⅱ | 1月につき+所定単位×42/1000(4.2%) | |
介護職員等ベースアップ等支援加算 | 1月につき+所定単位×24/1000(2.4%) |
※所定単位とは、基本サービス費に各種加算減算を加えた総単位数のこと。(介護職員処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算、介護職員等特定処遇改善加算を除く)
※処遇改善加算は、支給限度額管理の対象外の算定項目です。
2024年6月以降
算定項目 | 算定内容 | |
介護職員等処遇改善加算Ⅰ | 1月につき+所定単位×245/1000(24.5%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅱ | 1月につき+所定単位×224/1000(22.4%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅲ | 1月につき+所定単位×182/1000(18.2%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅳ | 1月につき+所定単位×145/1000(14.5%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(1) | 1月につき+所定単位×221/1000(22.1%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(2) | 1月につき+所定単位×208/1000(20.8%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(3) | 1月につき+所定単位×200/1000(20%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(4) | 1月につき+所定単位×187/1000(18.7%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(5) | 1月につき+所定単位×184/1000(18.4%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(6) | 1月につき+所定単位×163/1000(16.3%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(7) | 1月につき+所定単位×163/1000(16.3%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(8) | 1月につき+所定単位×158/1000(15.8%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(9) | 1月につき+所定単位×142/1000(14.2%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(10) | 1月につき+所定単位×139/1000(13.9%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(11) | 1月につき+所定単位×121/1000(12.1%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(12) | 1月につき+所定単位×118/1000(11.8%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(13) | 1月につき+所定単位×100/1000(10%) | |
介護職員等処遇改善加算Ⅴ(14) | 1月につき+所定単位×76/1000(7.6%) |
※上記のうち、介護職員処遇改善加算Ⅴについては、令和7年3月31日まで算定可能。
※所定単位とは、基本サービス費に各種加算減算を加えた総単位数のこと。(介護職員等処遇改善加算を除く)
※介護職員処遇改善加算は、支給限度額管理の対象外の算定項目です。
⑭:同一建物減算の見直し
- 訪問介護において、同一建物等居住者へのサービス提供割合が多くなるにつれて、訪問件数は増加し、移動時間や移動距離は短くなっている実態を踏まえ、同一建物減算について、事業所の利用者のうち、一定割合以上が同一建物等に居住する者への提供である場合に、報酬の適正化を行う新たな区分を設け、更に見直しを行う。
算定要件・単位数
2024年4月以前 | ⇒ | 2024年4月以降 | ||
①10%減算 | 事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内に所在する建物に居住する者(②に該当する場合を除く) | ①10%減算 | 事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内に所在する建物に居住する者(②及び④に該当する場合を除く) | |
②15%減算 | 上記の建物のうち、当該建物に居住する利用者の人数が1月あたり50人以上の場合 | ②15%減算 | 上記の建物のうち、当該建物に居住する利用者の人数が1月あたり50人以上の場合 | |
③10%減算 | 上記①以外の範囲に所在する建物に居住する者(当該建物に居住する利用者の人数が1月あたり20人以上の場合) | ③10%減算 | 上記①以外の範囲に所在する建物に居住する者(当該建物に居住する利用者の人数が1月あたり20人以上の場合) | |
ー | ④12%減算(新設) | 正当な理由なく、事業所において、前6月間に提供した訪問介護サービスの提供総数のうち、事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内に所在する建物に居住する者(②に該当する場合を除く)に提供されたものの占める割合が100分の90以上である場合 |
報酬告示の留意事項通知(12%減算に関する部分)
通知内容 | ||
⒃ 指定訪問介護事業所と同一の敷地内若しくは隣接する敷地内の建物若しくは指定訪問介護事業所と同一の建物(以下「同一敷地内建物等」とい う。)等に居住する利用者に対する取扱い |
⑥ 指定訪問介護の提供総数のうち、同一敷地内建物等に居住する利用者(指定訪問介護事業所における1月当たりの利用者が同一敷地内建物等に50 人以上居住する建物に居住する利用者を除く。以下同じ。)に提供されたものの占める割合が100分の90以上である場合について
|
今般新設された12%減算については、4月1日からいきなり適用されるわけではありません。
上記、留意事項通知のとおり前期・後期のそれぞれの判定期間において90%以上である場合に、都道府県等へ必要書類を提出⇒減算適用開始の流れです。
令和6年度のスケジュールとしては
- 前期の判定期間:4月1日~9月30日
- 前期の適用期間:11月1日~3月31日
- 後期の判定期間:10月1日~2月末日
- 後期の適用期間:令和7年度の4月1日~9月30日
となっていますので、現時点で12%減算に該当する事業所は、4/1~9/30の判定期間に90%以上であれば都道府県等に書類を提出、11/1~12%減算が適用されることになります。
⑮:特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化
- 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法において、「過疎地域」とみなして同法の規定を適用することとされている地域等が、特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の算定対象地域に含まれることを明確化する。
算定要件・単位数
⑯:特別地域加算の対象地域の見直し
⑰:テレワークの取扱い
- 人員配置基準等で具体的な必要数を定めて配置を求めている職種のテレワークに関して、個人情報を適切に管理していること、利用者の処遇に支障が生じないこと等を前提に、取扱いの明確化を行い、職種や業務ごとに具体的な考え方を示す。
※テレワークの取り扱いについては、厚生労働省より別途通知が出ていますので、以下を確認してください。
⇒介護サービス事業所・施設等における情報通信機器を活用した業務の実施に関する留意事項について
令和6年4月以降に事業所がやるべきこと
令和6年度の報酬改定に、訪問介護事業所がすべきことを紹介します。
\ 17の改定内容 /
- 運営規程の変更
- 重要事項説明書の変更
- 処遇改善計画書等の提出
- 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表等の提出
- 業務継続に向けた取組の実施
- 感染症の予防及びまん延の防止のための措置の実施
- 虐待の防止のための措置の実施
- 身体的拘束を行う場合の記録の整備
- その他
運営規程の変更
運営規程は、訪問介護事業所の法律にようなもので、以下の項目を記載することとされています。
- 一 事業の目的及び運営の方針
- 二 従業者の職種、員数及び職務の内容
- 三 営業日及び営業時間
- 四 指定訪問介護の内容及び利用料その他の費用の額
- 五 通常の事業の実施地域
- 六 緊急時等における対応方法
- 七 虐待の防止のための措置に関する事項
- 八 その他運営に関する重要事項
このうち、令和6年度より虐待防止措置において義務化されている内容がありますので、これらを「虐待の防止のために措置に関する事項」に追記してください。
従前より虐待防止措置に関する事項には、虐待の防止に係る、組織内の体制(責任者の選定、従業者への研修方法や研修計画等)や虐待または虐待が疑われる事案が発生した場合の対応方法等を指す内容を記載することとされており、令和6年度以降は以下の内容を追記しておきましょう。
- 虐待防止担当者の設置
- 虐待防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、その結果について従業者に周知徹底を図る
- 虐待防止のための指針の整備
- 従業者に対して、虐待を防止するための定期的な研修(年1回以上)の実施
その他については、自治体の取り扱いにもよるかと思いますが、令和6年度より義務化となった事項を追記しておくと良いでしょう。
業務継続計画の策定について
- 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定訪問介護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定し、当該業務継続計画に従って必要な措置を講じる
- 従業者に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的(それぞれ年1回以上)に実施する
- 定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行う
衛生管理等について
- 感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会をおおむね6月に1回以上開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底する
- 感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備
- 従業者に対し、感染症の予防及びまん延防止のための研修及び訓練を定期的(それぞれ年1回以上)に実施する
身体拘束等の適正化について
- 利用者または他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行なわない
- 身体的拘束等を行う場合には、その態様および時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録する
- 身体拘束等に係る記録は2年間保管(都道府県等によっては5年)すること
運営規程を変更した場合に、自治体への届け出は必要か?については、自治体によるため確認をお願いします。ただ、令和6年度の改定に係る部分のみの変更であれば、届け出は不要としている自治体が多いです。
重要事項説明書の変更
重要事項説明書は、先の運営規程と相違がないように作成しなければなりません。
ですので、運営規程に追記した内容は重要事項説明書にも追記してください。(虐待防止措置については必須)その他、訪問介護費や加算・減算等に変更が加えられていますので、料金表や加算・減算の単位数および算定要件等の追記・修正を行いましょう。
※令和6年度版の重要事項説明書のひな形を作成していますので、以下を参考にしてください。
⇒令和6年度対応版の「重要事項説明書」ひな形ダウンロードはこちら
※既存の利用者に対しては、重要事項説明書の変更となった個所を明記した別紙同意書を作成し、説明後に交付する必要があります。以下のひな形を参考にしてください。
⇒「令和6年度報酬改定に伴う重要事項説明書の変更に係る同意書」ひな形ダウンロードはこちら
厚生労働省Q&Aより「本来、改定に伴う重要事項(料金等)の変更については、変更前に説明していただくことが望ましいが、4月施行の見直し事項については、やむを得ない事情により3月中の説明が難しい場合、4月1日以降速やかに、利用者又はその家族に対して丁寧な説明を行い、同意を得ることとしても差し支えない。」とのこと。
処遇改善計画書等の提出
処遇改善加算を取得している事業所がほとんどかと思いますので、処遇改善計画書等を提出しましょう。
都道府県等のホームページに提出スケジュール等が示されていますので確認してください。(4月15日まで)
介護給付費算定に係る体制等状況一覧表等の提出
令和6年度の報酬改定に伴い、都道府県等に「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」および「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表」の提出が必要です。
都道府県等は、この書類にもとづき事業所異動連絡票を国保連に提出することとなります。ですから、不備があると請求時に返戻や報酬返還等が生じる可能性がありますので、間違いのないよう作成してください。
特に、「高齢者虐待防止措置実施の有無」の欄について、未記入の場合「減算型」が適用されてしまうため注意しておきましょう。なお、介護給付費算定に係る体制等状況一覧表等の提出期限は4月1日です。(都道府県等によっては15日としている場合もあるため確認してください。大阪市は15日です。)
業務継続に向けた取組の実施
令和6年度よりBCP(業務継続計画)の策定及び研修・訓練の実施が義務化されました。
取り組み内容としては、先の運営規程に追記する事項で説明したとおりです。
- 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定訪問介護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定し、当該業務継続計画に従って必要な措置を講じること
- 従業者に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的(それぞれ年1回以上)に実施すること
- 定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うこと
以下の書類を整備しておきましょう。
- 業務継続計画(感染症・災害発生時)
- 業務継続計画に定めた発動基準に適合する事案が発生した場合に、適切に業務継続計画に定めた対応・対策等が実施されているとわかる書類(経過記録等)
- 研修・訓練計画
- 研修・訓練の実施記録
など
感染症の予防及びまん延の防止のための措置の実施
令和6年度より感染症の予防及びまん延の防止のための措置の実施が義務化されました。
取り組み内容としては、先の運営規程に追記する事項で説明したとおりです。
- 感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会をおおむね6月に1回以上開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底すること
- 感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備すること
- 従業者に対し、感染症の予防及びまん延防止のための研修及び訓練を定期的(それぞれ年1回以上)に実施すること
以下の書類を整備しておきましょう。
- 委員会の名簿
- 委員会の開催記録
- 感染症・食中毒の予防およびまん延防止のための指針
- 感染症・食中毒の予防およびまん延防止のための研修・訓練の実施記録
など
虐待の防止のための措置の実施
令和6年度より虐待の防止のための措置の実施が義務化されました。
取り組み内容としては、先の運営規程に追記する事項で説明したとおりです。
- 虐待防止担当者の設置すること
- 虐待防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、その結果について従業者に周知徹底を図ること
- 虐待防止のための指針の整備すること
- 従業者に対して、虐待を防止するための定期的な研修(年1回以上)の実施すること
以下の書類を整備しておきましょう。
- 委員会の開催記録
- 虐待防止の指針
- 研修計画、研修実施記録
- 担当者を設置したことがわかる文書
など
※担当者を配置したことがわかる文書とは、例えば「職務分担表」を別途作成する等が考えられます。その他、指針や委員会名簿等に役職や氏名、役割等を記載しておき、担当者である旨を明記しておくと良いでしょう。
身体的拘束を行う場合の記録の整備
身体的拘束等の更なる適正化を図る観点から、基準省令第23条「指定訪問介護の具体的取扱方針」に身体拘束等についての規定が加えられました。
取り組み内容としては、先の運営規程に追記する事項で説明したとおりです。
- 利用者または他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行なわないこと
- 身体的拘束等を行う場合には、その態様および時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録すること
- 身体拘束等に係る記録は2年間保管(都道府県等によっては5年)すること
事業所内で身体拘束等を行わない場合であっても、記録の様式は整備しておきましょう。
また、身体拘束等を行う場合は、上記のとおり記録を作成するとともに、「緊急やむを得ない理由については、切迫性・非代替性・一時性の3つの要件を満たすことを組織として慎重に確認等の手続きを行ったことがわかるように記載してください。
その他
特定事業所加算や同一建物減算など、今般の報酬改定で算定要件および加算・減算割合に変更があったものについて、自事業所が適合しているか否かをきちんと確認してください。
また、先のとおり同一建物減算のうち12%減算は、すぐに適用開始ではありませんので、該当する事業所については判定期間や適用期間等を把握しておきましょう。
さいごに
今回は、訪問介護における令和6年介護報酬改定の内容について徹底解説しました。
かなり長文になってしまいましたが、繰り返し読み、適正な事業所運営に努めましょう。