障害福祉サービスの法定代理受領ってなんですか?
調べても難しく理解ができないので、わかりやすく教えてほしい…。
あと、利用者に代理受領通知書って絶対に渡さないといけないですか?
今回は、こんな疑問に答えます。
当サイト「ヘルパー会議室」では、介護保険の訪問介護や訪問系障害福祉サービスの居宅介護、重度訪問介護などに関するさまざまな情報を発信しています。
その中でよく質問をもらうのが、今回取り上げる「法定代理受領」についてです。基準省令や各自治体のガイドライン等でも触れられている重要なものですが、難しい言葉が使われていてイマイチ理解できませんよね。
でも、実は法定代理受領ってみなさんにとって身近なものなんですよ。
とても便利な仕組みなので、法定代理受領がなかったら多くの人が困ります。
そこで今回は、訪問系障害福祉サービスの法定代理受領とはなにか?を初心者にもわかりやすく解説し、加えて運用上の注意点をみなさんに示します。
また本記事の後半では、代理受領通知書の書き方や様式も紹介していますので、ぜひ最後まで読んで日々の業務にご活用ください。
障害福祉サービスにおける法定代理受領の仕組み
障害福祉サービスの法定代理受領とは、「サービス事業所が利用者の代わりに市町村へ介護給付費等の請求を行い、その支払いを受ける仕組み」です。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、みなさんが普段の業務で行っている、
- 利用者にサービスを提供する
- サービス提供にかかった費用のうち9割(上限負担額を超えた場合は超過分、または10割)を国保連を介して市町村へ請求する(市町村から委託を受けた国保連に請求明細書を送る)
- サービス提供にかかった費用のうち1割(上限負担額まで、または0円)を利用者へ請求する
- 市町村および利用者からそれぞれ支払いを受ける
のサービス提供~請求にかかる一連の流れが、法定代理受領を用いた方式となります。
えっ、いつもの仕事じゃないですか・・・!
そうです!みなさんからすれば当たり前すぎて混乱しますよね。
実際、ほぼすべての利用者が法定代理受領を使って障害福祉サービスを利用しています。
ですが、この法定代理受領による介護給付費等の請求・支払いの方式は、“通常のやり方ではない”のです。
「法定代理受領方式」と「償還払い方式」
介護給付費等の請求・支払いには、「法定代理受領方式」と「償還払い方式」があります。
そして、障害者総合支援法第29条1項に規定されているとおり、障害福祉サービスに要した費用(介護給付費等)は障害者本人(利用者)に対して支給されるものであり、法的には償還払い方式を基本としています。
償還払い方式とは、上記イメージ図のとおり利用者がサービスにかかった費用の全額をいったんサービス事業所に支払い、その後、市町村から給付費を受け取る仕組みです。
しかし、償還払い方式だと利用者自ら市町村に請求(申請)しなければなりませんし、一時的な自費での立て替えも必要です。これでは利用者にとって大きな負担となってしまいます。
そこで、こうした負担を軽減する仕組みとして、利便性や事務処理の合理性の観点から、以下の図のとおりサービス事業所が利用者の代わりに市町村へ請求して支払いを受ける「法定代理受領方式」が認められているのです。
法定代理受領により介護給付費等が市町村からサービス事業者に支払われることをもって、障害者本人(利用者)に対して介護給付費等の支給があったものとみなされます。
ちなみに法定代理受領は、障害福祉サービスに限らず、介護保険サービスや公立保育所などでも認められている広く一般的な方式です。
例えば、介護保険の保険給付も法的には償還払い方式を原則としていますが、保険者(市町村)へ居宅サービス計画作成依頼届出書を提出することなどにより、法定代理受領方式を用いて訪問介護サービス等を利用することができます。
障害福祉サービス事業者は「代理受領通知書」の交付義務がある
障害福祉サービス事業者は、基準省令第23条に定められているとおり、法定代理受領により市町村から介護給付費の支払いを受けた場合、その額を利用者に通知しなければなりません。
この通知には「法定代理受領通知書」などの書面を用いて利用者へ交付し、お知らせします。
また、代理受領通知書は領収書ではありませんので、利用者負担が発生する方の場合は、領収書と代理受領通知書をそれぞれ発行・交付することになります。
なお、利用者への代理受領通知書の交付は、市町村から介護給付費の支払いを受けた「後」に行ってください。例えば、8月提供分であれば10月中頃~下旬ごろに介護給付費が支払われますので、受領後に各利用者へ代理受領通知書を郵送するなり、直接手渡すなりして交付しましょう。
運営指導(実地指導)時に、代理受領通知書を利用者へ交付しているかどうかを確認されますので、原本の写しを保管しておいてください。
ちなみに介護保険の訪問介護では代理受領通知書を交付する必要はありません。
「代理受領通知書を渡さない」は絶対NG
代理受領通知書とは、本来、利用者が市町村から支給されるはずの介護給付費を、サービス事業者が代わりに受けたことをお知らせする文書です。
したがって、先述した法定代理受領にあたる利用者すべてに交付しなければならず、上限負担月額0円の方であっても対象となります。負担額が発生しない利用者だから代理受領通知書を渡さない、ということがあっては絶対にいけません。
障害福祉サービスの場合、自己負担のかからない利用者が多いため、代理受領通知書を渡しても「いらないから捨てといて」と受け取りを拒否してくる方もいるかと思います。
自己負担がかからない利用者からすれば、不要なものに感じるのは理解できますが、それでもサービス事業者側としては法定代理受領の趣旨をきちんと説明した上で交付する必要があります。
代理受領通知書を渡していない事業所は結構いるかと思いますが、各自治体が公表している運営指導の指摘事項によく挙げられていますので絶対渡してくださいね。
代理受領通知書の様式
代理受領通知書は、介護給付費の額および内訳を明示したものであればどのような様式でも構いません。
たいていの場合、市町村のホームページにて様式が公開されていますので、そちらを使用しましょう。
市町村による提供がない場合は、当サイトでも代理受領通知書のひな形を無料提供していますので、以下からダウンロードして活用してください。
代理受領通知書の書き方
代理受領通知書の書き方を3例紹介します。
【例①】サービス種別:居宅介護、費用:150,000円、利用者負担額:9,300円の場合
【例②】サービス種別:居宅介護、費用:40,000円、利用者負担額:4,000円の場合
【例③】サービス種別:居宅介護、費用:200,300円、利用者負担額:0円の場合
印鑑は必要?
法定代理受領通知書は、利用者と取り交わす書類ではなく通知する文書ですので、利用者から押印をもらうなど確認を受ける必要はありません。よって利用者印などは不要です。
日付はいつ?
受領日は、市町村からサービス事業者に介護給付費が支払われた日付を記入してください。交付日(作成日)は受領日以降を設定します。
法定代理受領方式を利用しない場合は「サービス提供証明書」の発行が必要
サービス事業者が介護給付費の代理受領を行わない場合(利用者が償還払いを希望する場合)は、基準省令第23条第2項のとおり「サービス提供証明書」を発行しなければなりません。
サービス提供証明書ってなんですか?聞いたこともありません…
ですよね。ほぼすべての利用者が法定代理受領方式を使っていますので、実際のところサービス提供証明書を発行する機会は少ないと言えます。10年以上障害福祉サービスに携わってきた私も、このサービス提供証明書を発行したことは一度もありません。
強いてあげるならば、利用者が「特例介護給付費」等の支給を受ける場合です。
特例介護給付費等の支給決定前に障害福祉サービスを利用した費用は、法定代理受領の対象となりませんので、サービス提供証明書を発行する必要があります。
サービス提供証明書とは、簡単に言うと利用者が市町村へ介護給付費の請求をする際に提出する「利用明細書」のような書類です。このサービス提供証明書と領収書を居住地の市町村へ提出・申請することで、介護給付費の償還払いを受けられます。
サービス提供証明書の書式
サービス提供証明書の書式は、サービス事業者が国保連へ提出する介護給付費請求・明細書と似たような項目となっており、市町村のホームページまたは窓口で入手できます。
サービス提供証明書がなければ、利用者は市町村から介護給付費の償還払いを受けられません。もし法定代理受領を行わない既存の利用者がいるのであれば、その月のサービス提供終了後に必ずサービス提供証明書を発行してください。
サービス提供証明書を発行した場合は、写しを保管しておきましょう。
さいごに
今回は、訪問系障害福祉サービスの法定代理受領について解説しました。
少しは法定代理受領を身近に感じてもらえたでしょうか?繰り返しになりますが、障害福祉サービスの利用者のほぼすべて(全員と言ってもいいぐらい)が法定代理受領を使ってサービスを受けており、サービス事業者としては法定代理受領通知書を必ず交付しなければなりません。
これは基準省令で定められた事業者の義務ですので、くれぐれも基準違反とならないよう注意して事業運営にあたってください。
また当サイト「ヘルパー会議室」では、サービス提供責任者の初心者向けに業務マニュアルを無料で公開しています。ぜひ、この機会にあわせてチェックしてみてください!