- 訪問介護のモニタリングって何をするの?
- モニタリング訪問の頻度やタイミングが知りたい。
- モニタリング報告書(サービス状況報告書)に時間がかかってしまい疲弊している。
当サイトではこんな疑問や悩みを解決すべく、訪問介護のモニタリング実践ガイドを作成しました。
本記事ではモニタリングの基礎的な知識から報告書の書き方まで余すところなく解説しています。
報告書の文例も多数紹介していますので、こちらも参考にしてください。
※本記事は、厚生労働省の基準省令や解釈通知、ヘルパー会議室運営部の実体験および弊社関係事業所が実際に行っている運用方法を参考に作成しています。できる限り正確な記述に努めていますが、モニタリングおよび報告書等の運用方法(実施方法や記録の書き方等)は自治体によって異なる場合があるためご注意ください。本記事は、あくまで参考程度にお考えいただき、実際の運用にあたっては各自治体への確認をお願いいたします。
訪問介護のモニタリングとは
訪問介護のモニタリングとは、ケアプラン・訪問介護計画に沿って提供しているサービスが「現在の利用者の状態に適しているか?」評価することを指します。
サービス実施『前』と実施『後』を比べて、どのように変化したのかを評価し、利用者の現状を測ります。
このモニタリングにおいてサービス提供責任者に求められるのは
- 訪問介護計画の実施状況(計画に沿って実施されているか)
- サービスの提供状況
- 利用者の心身の変化や環境変化(家族状況の変化を含む)
- 利用者・家族の意欲や意向、満足度
- 援助目標の達成度
などを定期的に把握・確認することです。
そして、これらをもとに計画の見直しの必要性を判断し、利用者の現状と提供しているサービスに“ズレ”が生じているならば、ケアプラン・訪問介護計画書を適した内容に更新していきます。
モニタリングの実施方法
モニタリングというと、サービス提供責任者が利用者宅へ訪問し、直接ヒアリングする「モニタリング訪問」をイメージされる方が多いのではないでしょうか?
ですがモニタリングの実施方法は、モニタリング訪問だけではありません。
普段からサービスを提供しているヘルパーや実施記録(訪問記録)から間接的にサービス状況を把握することもモニタリングのひとつです。
むしろモニタリングを効果的に実施するためには、この間接的なモニタリングの方が重要だと言えるでしょう。
なぜならモニタリング訪問だけで利用者の状態を完全に把握することは不可能だからです。事前情報を把握せず訪問して「どうですか?」と聞いても、返ってくる答えは“うわべ”だけのものになってしまいます。
これではモニタリングの目的であるサービス評価を正しく行えません。
まずは日々の業務の中でヘルパーからの申し送りや記録をうまく活用し、情報を収集してください。そこから必要に応じて利用者宅へ訪問し、事前情報をもとにヒアリングしましょう。
モニタリング訪問の「頻度」は定められていない
モニタリング訪問は定期的に実施する必要がありますが、具体的な頻度は定められていません。
一般的に初回訪問から1ヵ月後に1回、その後は1ヵ月~3カ月に1回のペースで実施します。
ただし利用者をとりまく環境や心身の状態は、日々刻々と変化していくもの。
- 利用者の心身の状態や環境におおきな変化があった時
- 利用者からの苦情クレームがあった時
などの場合は、あまり頻度にしばられず適宜モニタリング訪問を実施しましょう。
また、さほど変化のない利用者であれば、訪問介護計画に定めた長期・短期目標の更新時期に合わせてもOKです。
要支援の方への総合事業(指定相当訪問型サービス)については、下記のように定めれているため注意してください。
- 「当該介護予防型訪問サービス計画に記載したサービスの提供を行う期間が終了するまでに、少なくとも1回は、当該介護予防型訪問サービス計画の実施状況の把握(モニタリング)を行うものとする。」(大阪府堺市HPより引用)
このように提供期間中に最低でも1回のモニタリングを義務づけられています。
モニタリング訪問の進め方3ステップ
モニタリング訪問は下記3つのステップで進めます。
- STEP1事前情報の収集
事前にヘルパーや提供記録から情報を収集します。そして事前情報を集約・整理し、モニタリング訪問へ向けて重点的に把握・確認するポイントを明確にしておきます。
- STEP2アポイントをとる
利用者あるいは家族へ連絡し、モニタリング訪問の日時を調整します。
なお、この際にはモニタリング訪問の趣旨をしっかり利用者・家族へ説明することが大切です。
一般の方からすれば「モニタリング」と言われても意味がわかりません。
例えば
- 「お世話になっております。ヘルパーステーション○○の△△です。●●様の所にヘルパーさんが訪問するようになって1ヵ月が過ぎましたので、このあたりで一度●●様のお宅にお邪魔させていただき直接お話を伺いたいのですがよろしいでしょうか?モニタリングと言いまして、初めにお渡しした訪問介護計画書で立てた目標がどのくらい達成されているのか、○○さんの体調や環境にお変わりがないか、○○さんがヘルパーさんにどれくらい満足してもらえているのか、を話していただき、評価することを義務付けられていまして、、、」
というように、できるかぎり利用者にわかりやすい平易な言葉で説明し、理解を促しましょう。
また訪問の日時については、基本的にヘルパーが訪問している時間帯を避けて調整してください。サービス提供の妨げになりますし、苦情などがあった場合にヘルパーの手前では話しにくくなってしまいます。
- STEP3利用者宅へ訪問してヒアリング
利用者宅へ訪問し、事前に整理した情報を中心に確認、ヒアリングを行います。 ヒアリング時には、YES・NOで答えられる“閉じた”質問だけではなく、利用者や家族が自ら考えて答える“開いた”質問をあわせて活用しましょう。
例えば、サービスの満足度についてヒアリングするとします。
この際「ヘルパーさんのお仕事に満足していますか?」といった閉じた質問だけでは、満足しているか否かしか把握できず、なぜ満足or不満なのか?まで引き出すことができません。
ですので「ヘルパーさんにもっと行ってほしいことや、やめてほしいことはありますか?」といった開いた質問を投げかけることで「あのヘルパーさんはいつも元気で気が利くから、楽しんで一緒に料理をしています。これからも続けていきたい…」、「あのヘルパーさんの掃除がいつも雑なのでもう少し丁寧にしてほしい…」と、利用者がサービスに対してどのように感じているか真意を引き出すことができ、満足度に関する評価を適切に行えます。
他にも、援助目標に『自らできる家事を継続して行える』と位置付けている利用者の目標評価についてヒアリングするとしましょう。
この際、「掃除や洗濯は変わらず自ら行えていますか?」といった閉じた質問だけでは、先ほどと同じように家事を続けているか否かしかわかりません。
そのため、「家事面で以前と比べて大変になってきたことはありませんか?」「無理をしていませんか?」「逆にこれから挑戦してみたい家事はありますか?」といった具合に開いた質問を用いることで、援助目標を現状維持とするのか、それとも新たな目標を設定するのかを正しく評価できます。
結局のところ、サービスの評価を適切に行うために必要なのは情報の「厚み」です。それは利用者や家族の表面化された情報を深掘ってヒアリングしていくことでしか得られません。閉じた質問と開いた質問をうまく組み合わせてモニタリング訪問に臨みましょう。
訪問介護のモニタリングシート(報告書)とは?
これまで解説してきたモニタリングの結果は、モニタリングシート(報告書)に記録し、保管します。
一般的なモニタリング報告書の項目は下記のとおりです。
- 計画の実施状況
- 計画に位置づけた援助目標の達成度
- 心身および生活状況の変化
- 利用者・家族の満足度や新たなニーズ、希望等
- 計画の見直しの必要性
- その他の特記事項
事業所の書式によって多少の違いはあると思いますが、大体はこんな感じです。
なお、訪問介護計画書に「評価欄」が設けられている様式を使っている事業所も多いかと思います。この場合、援助目標の達成度を評価した際には、計画書の評価欄に記入しましょう。
モニタリングシート(報告書)をケアマネに渡すタイミング
モニタリングシートは、作成後にケアマネへ提出します。ケアマネには、サービス提供票(実績)を月初に提出することになりますので、このタイミングに合わせてモニタリングシート(報告書)も提出すると良いでしょう
※サービス提供票って何?と思われた方は下記を参考にしてください。
参考:【図解】訪問介護の介護保険請求マニュアル【専門家が0から解説】
モニタリング関係書類の作成時期と運用方法
また、その他にケアマネへの提出書類として、サービス実施状況報告書というものがあります。これは、その月のサービスキャンセルや日時変更等、心身および生活状況変化、服薬状況・口腔機能等、ケアマネへの相談事項、苦情などについて記載する書類で、基本的に毎月作成してケアマネへ提出します。
事業所や自治体の取り扱いによってさまざまですが、
- 実施状況報告書を毎月、モニタリングシート(報告書)を3ヵ月程度ごとに作成し提出する
- モニタリングシート(報告書)と実施状況報告書を兼ねる様式を用いて、毎月作成し提出する
のいずれかの方法で運用するのが一般的です。(※これら書類の提出および提出頻度は、指定基準において規定されているものではありません。あくまで一般的な運用方法として解説しています。)
総合事業(指定相当訪問型サービス)の場合は、訪問介護とは異なり、ケアマネに対して月に1回はサービス提供状況を報告し、加えて、モニタリングの結果(訪問型サービス計画に記載したサービス提供を行う期間が終了するまでに、少なくとも1回)を報告しなければならないと定められています。
【文例あり】モニタリング報告書(兼サービス実施状況報告書)の書き方・記入例
ここでは、モニタリング報告書兼サービス実施状況報告書の「サービス状況の詳細(特記事項)」に、なにをどのように書くべきか文例を交えて書き方を解説します。
「サービス状況の詳細(特記事項)」に書くべき3つの内容
「サービス状況の詳細(特記事項)」には基本的に下記3点を記入します。
- 冒頭は「キャンセル」や「日時変更」の有無を書く
- 心身状態・環境変化の詳細
- 目標達成度の詳細
内容① 文章の冒頭は「キャンセル」や「日時変更」の有無を書く
まず文章の冒頭は、「キャンセル」や「サービス日時の変更」があったかどうかを記入します。
これは自治体によって義務付けている所もありますので必ず記入してください。
【文例】
- 『〇日は○○病院に受診、〇日は自宅に長女様が来るとのことでキャンセルされています。』
内容② 心身状態・環境変化の詳細を書く
その月の利用者の心身状態・環境変化の詳細を記入します。なお、平成30年度の介護報酬改定により「服薬状況」や「口腔機能」についてもサ責からケアマネへ報告すべきとされていますので、それらに変化があれば記載してください。
『良い変化』の文例
【文例①】
- 『先月に比べて、居室内での歩行状態が安定してきているご様子です。トイレまでの歩行も何とかご自身でされているとのことでした。』
【文例②】
- 『今月の中頃に古くからの友人と久々に会ったようで「楽しかった~やっぱり友達は良いね。今度お茶に行く約束もした」と仰っており、活き活きとされているご様子でした。』
『悪い変化』の文例
【文例①】
- 『以前に比べ、何度も同じ話をしたりと認知機能の低下が見られます。』
【文例②】
- 『近頃、家族様の体調がすぐれない様子で本人様も心配しておられます。家族様とお話ししたところ、介護負担が増えているとの事でストレスに感じているご様子でした。』
『状態変化がない場合』の文例
【文例①】
- 『特段の大きな変化なく落ち着かれています。』
【文例②】
- 『日によって体調ムラはあるもののご自身のペースで過ごされています。』
「状態変化が無い人なんていないっ!」と怒られそうですが、大きな変化なく生活してる人は普通に多いです。とはいえ「特変なし」と書くわけにはいきませんので、そんな時はこの便利な文言を使ってください。
内容③ 目標の達成度を書く
ケアプランにもとづいた訪問介護計画の目標に対して、実際のサービスがどの程度達成できたのかを記入します。
【文例①】 目標「一人で調理が出来る」サービス内容「共に行う調理(調理補助)」
- 『サービス中は積極的に調理をしてくださっています。「具材を切る、味付けをする」などの行為はほとんどご自身でされています。ただ長時間の立位は難しいため、椅子に座ったり休憩をはさみながら進めている状況です。』
【文例②】目標「ヘルパーの一部介助により浴槽をまたぎ、湯船につかることができる」サービス内容「入浴介助」
- 『入浴介助の際には、転倒に注意しつつヘルパーの一部介助にて浴槽をまたぎ、湯船につかることができています。ただ、まだ立位動作やまたぎ動作などが不安定であることからヘルパーによる一部介助が必要だと思われます。』
ヘルパー会議室より、サービス提供責任者の初心者業務マニュアル『サ責白本』を販売しておりますので良ければご購入をご検討ください。
本書にて、当ページでは紹介していないモニタリング関係書類の記入例や完成例を紹介しています。ぜひご活用ください!
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訪問系障害福祉サービスのモニタリングは?
介護保険だけではなく障害福祉サービスも一体的に提供している事業所は多いですよね。
訪問系障害福祉サービス(居宅介護、重度訪問介護)のモニタリングについては基本的に介護保険と同じ扱いと考えてOKです。
根拠省令は下記のとおり。
【第26条】
「サービス提供責任者は、居宅介護計画作成後においても、当該居宅介護計画の実施状況の把握を行い、必要に応じて当該居宅介護計画の変更を行うものとする。」
(厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」より引用)
ちなみに、令和6年度の報酬改定により省令の解釈通知に「モニタリングに際しても相談支援事業者との相互連携を図ることが求められるものであり、モニタリング結果を相互に交付すること、サービス担当者会議に出席する等の方法により連携強化を図るものとする。」とされましたので、モニタリングを作成したら相談支援専門員に交付しておきましょう。
最後に
今回は訪問介護のモニタリングについて徹底解説しました。
忙しいサービス提供責任者にとってモニタリングは本当に大変です。
ぜひ本記事を参考にしていただいて業務の効率化を図ってもらえたらと思います。
また当サイトではサービス提供責任者の『初心者向けマニュアル』を無料で公開しています。
良かったら下記から参考にしてみてください!
※そのほかの帳票一覧を知りたい方は下記をどうぞ。