今度、利用者さんのお宅ではじめて洗濯をすることになった初心者ヘルパーです。
訪問介護の洗濯って自分の家と同じようにしても良いのでしょうか?
ヘルパー会議室では、こんな疑問にお答えすべく訪問介護の洗濯マニュアルを作成しました。
洗濯なんて誰でもできる簡単なお仕事。そう思っている方は多いのではないでしょうか?
しかし、洗濯を侮ってはいけません。実は、訪問介護の業務として行う洗濯は注意すべき点がとても多く、事前に正しい知識を身につけておくことが必要です。
本マニュアルでは、訪問介護における洗濯の基礎知識や注意点を説明した上で、洗濯業務の一連の手順をわかりやすく解説しています。
初心者ヘルパーの方々は、ぜひ本マニュアルを参考にし、日々の業務にご活用ください。
本マニュアルは、介護情報公表制度で求めれている生活援助マニュアルの一部として、または事業所内で行う研修の資料としても使えます。
研修テーマ集:【研修資料つき】訪問介護のヘルパ-勉強会テーマ38案
訪問介護の洗濯とは
訪問介護における洗濯とは、洗濯機または手洗いによる洗濯、洗濯物の乾燥(物干し)、洗濯物の取り入れ収納、アイロンがけなどを支援する生活援助サービスです。
洗濯は、利用者が快適なくらしを営む上で欠かせない要素であり、生活環境を整えることを目的として幅広く活用されています。
また掃除の仕方や調理の味付けと同じように、利用者なりのルールやこだわりが表れやすいのが洗濯の特徴です。
洗濯物の干し方やたたみ方、柔軟剤を使うか使わないか、などなど。ヘルパーには、こうした各訪問先ごとのルールやこだわりに配慮したサービス提供を求められます。
訪問介護の洗濯の時間は「15分」が目安
訪問介護の洗濯は、1回のサービス提供ですべてを完了するのではなく、1回目の訪問で「洗濯機を回す⇒洗濯物を干す」、2回目の訪問で「洗濯物を取り込む⇒洗濯物をたたみ、収納する」というように工程を分けて実施します。
そして、いずれの工程においても訪問介護の洗濯にかけられる時間の目安は、約15分。
また訪問介護では、通常、洗濯のみを目的として訪問することはありません。掃除や買い物代行などの生活援助、排せつや入浴などの身体介護と組み合わせて実施するケースがほとんどです。
ですから、訪問したらまず洗濯機を回す⇒その間に買い物や掃除を済ませる⇒洗濯機が止まったら干す、といった具合に段取り良くサービスを進めていくことが大切になります。
訪問介護では同居家族の洗濯はできない
訪問介護は介護保険法にもとづく社会サービスであり、ヘルパーのできること・できないことが定められています。洗濯の場面で言えば、同居家族のものを洗濯することは原則できません。
よくある事例として、ヘルパーが洗濯しようとすると同居家族の衣類が洗濯機内に紛れ込んでいるパターンがあげられます。この場合、利用者のものと一緒に洗濯してしまわないよう同居家族の衣類を洗濯機から出す、などの対応が必要です。
同居家族がいるケースでは、たいてい洗濯機を共有しているかと思いますので、十分注意してサービス提供にあたりましょう。
訪問介護における洗濯の注意点5選
冒頭でも触れたとおり、訪問介護の業務として行う洗濯は、気をつけなければならない点が多いサービスです。
ここではヘルパーが押さえておくべき主な注意点を5つ紹介します。
\ 5つの注意点 /
- 洗濯をする前に天候を確認する
- 洗濯をする前に洗濯機の中を確認する
- 洗濯機の種類と使い方を事前に把握しておく
- できることは利用者自ら行ってもらう
- 洗濯表示を把握する
注意点①:洗濯をする前に天候を確認する
洗濯をする前に、その日の天候を必ず確認してください。
雨の予報であれば外には干さず部屋干しに、毎日サービス訪問を行うようなケースであれば次回に持ち越すなど臨機応変に対応します。
またケースによっては、ヘルパーが洗濯物を干すまで行い、乾いたら利用者が1人で取り込む、といった場合もあるかと思います。この場合、例えばヘルパーが干すときには晴れていたが後から雨が降りだした、などがあると利用者を転倒させてしまうかもしれません。
そのため、その日の天候だけでなく普段から週間の天気を確認するクセをつけておくと良いでしょう。
サービス回数の多いケースであって、洗濯を次回に持ち越すのであれば次のヘルパーへの伝達を忘れないようにしてください。サービス実施記録や連絡ノートなどにその旨を記載しておき、きちんと情報共有を図りましょう。
注意点②:洗濯をする前に洗濯機の中を確認する
洗濯機を動かす前に、洗濯機の中を必ず確認してください。
リハパンやパッドが紛れ込んでいないか、ズボンにティッシュなどが入っていないかをチェックしましょう。
そのまま洗濯をすると、洗濯機が故障してしまったり洗濯物が紙くずだらけになってしまいます。
またボタンがとれかけている、あるいは縫い目がほころんでいる、など衣類の状態もあわせて確認してください。傷んだ衣類を洗濯機に回すと状態がさらに悪化し、利用者から「ヘルパーの洗濯の仕方が悪いから大事な服が傷んだ」とあらぬ誤解を招く可能性があります。
注意点③:洗濯機の種類と使い方を把握しておく
洗濯機の種類は、主に「全自動タイプ」と「二槽式タイプ」に分けられます。
普段、みなさんが使用している全自動洗濯機であれば操作に戸惑うことはありませんが、問題なのは二槽式タイプの洗濯機です。
全自動洗濯機が一般家庭に普及するまでは二槽式洗濯機が主流だった背景もあり、訪問介護の利用者宅にはまだまだ二槽式洗濯機を使用している家庭があります。そのため、ヘルパーは二槽式洗濯機の使い方も知っておかなければなりません。
以下に、それぞれの概要と使い方を簡単にまとめました。
全自動タイプ洗濯機
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全自動洗濯機は、洗濯物と洗剤を入れ、スタートボタンを押せば自動で洗浄・すすぎ・脱水までを行います。 |
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二槽式タイプ洗濯機 | 二槽式洗濯機は、洗濯槽と脱水槽が分かれており、洗濯・すすぎは洗濯槽に入れ、脱水は脱水槽に入れて行います。
メーカーによって使い方は異なりますが、大抵の場合つまみが3つあり、それぞれ洗浄・脱水のタイマー指定や排水する際に使用します。
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注意点④:できることは利用者自ら行ってもらう
介護保険の基本理念は、「自立支援」。
利用者自らできることを減らさず、可能であれば増やしていけるよう支援するのがヘルパーの役割です。
洗濯という行為のすべてをヘルパーが代行してしまっては、利用者の残存機能は失われ、さらには自らの生活を主体的に生きる意欲も奪ってしまいます。
そのため、ヘルパーは単に洗濯を代行するのではなく利用者のできることを見つけ、本人自ら行ってもらうよう促したり、ヘルパーと一緒に行ったりといった自立支援の視点を持っておかなければなりません。
とくに洗濯は自立支援を展開しやすいと言え、例えば「取り込んだ洗濯物をヘルパーと一緒にたたむ」など比較的簡単なことから実践してみると良いでしょう。
ただし、自立支援を適切に実践するためには利用者を適切に評価するアセスメント能力が必要です。
以下ヘルパー会議室のコラムで詳しく解説していますので、こちらもあわせて参考にしてください。
参考:訪問介護の「自立支援」実践ガイド【考え方と展開方法を4ステップで解説】
注意点⑤:洗濯表示を把握する
洗濯表示とは、衣類の裏側や縫い代などのタグについている簡易的な衣類の取扱説明書のようなものです。
この記号から洗浄の仕方や干し方など、適切な洗濯方法を読み取ることができますので、どの記号がなにを意味しているのかをきちんと理解しておきましょう。
なお洗濯表示記号は、平成28年12月1日から変更が加えられています。そのため変更後だけでなく、変更前の記号についてもあわせて把握するようにしてください。
※クリックすると拡大します。
\ 平成28年12月以降 /
\ 平成28年12月以前 /
消費者庁「新しい洗濯表示」より引用
(※ヘルパー会議室により一部改変)
【4ステップ】訪問介護における洗濯の手順とポイント
では、ここからは訪問介護のおける洗濯の手順を「準備」「洗う」「干す」「たたむ・収納する」の4ステップに分けて具体的に解説していきます。
※先のとおり、訪問介護は利用者なりのこだわりやルールを尊重しながら進めるものです。これから説明する手順やポイントはあくまで基本であり、実際の提供にあたっては訪問先に合わせて柔軟に対応してください。
ステップ①:準備
- 洗濯表示を確認、記号に従って洗濯機で洗えるものなのかどうか、ネットを使用するかどうかなど洗濯物を分別する。
- 洗濯機の中にリハパンやパッドが入っていないか、ズボンのポケットにティッシュなどが入っていないか、同居家族のものが入っていないか、を確認する。
- 衣類の状態を確認し、ボタンが取れかけているなどがあれば利用者へ伝える。
- 便が付着しているなど汚れがひどいものは、手洗いをしてから洗濯機へ入れる。
- 赤や青など濃い色のものは全般的に色落ちしやすく、淡い色のものと一緒に洗うと色移りするため、ネットなどを活用する。
- 洗剤、柔軟剤等があるかを確認する。
ステップ②:洗う
- 洗濯物の分別後、洗濯機のタイプに応じて操作し、洗浄を開始する。
- 洗剤は、全自動タイプであれば洗剤投入口から、二槽式タイプであれば給水がある程度完了してから投入する。(洗剤が直接衣類に付着すると変色する可能性があるため)
- STEP1洗剤液を作る
ゴム手袋を装着し、洗面器などの桶に40度以下のぬるま湯、洗剤を投入して洗剤液を作ります。
- STEP2押し洗い
汚れている面を表にした衣類を桶に入れ、20回程度やさしく押し洗いします。
基本もんだり、こすったりしないでください。
- STEP3すすぎ
数回ぬるま湯を交換し、泡が出なくなるまですすぎます。
- STEP4脱水
ぬるま湯を捨て、しぼらず押して脱水します。
その後、乾いたバスタオルの上に衣類を広げ、挟み、バスタオルの上から軽く叩いて水気をとります。
- STEP5日陰に干す
形を整えて日陰に干します。日焼けしないようできるだけ陰干し、あるいは服を裏返して干すようにしましょう。
※線や麻など丈夫な素材であって便が付着しているなどの場合は、汚れている個所をもみ洗いしてください。
ステップ③:干す
- 洗濯表示の記号から、つり干しなのか日陰干しなのか平干しなのか、などを確認する。
- 洗濯物のシワを、振りさばいたり、手のひらで“パンパン”と叩いたりして伸ばしてから干す。
- 物干し竿に直接干す場合は、干す前にきれいな雑巾でホコリなどを拭きとる。
- シャツ類をハンガーにかけて干す場合は、無理やり刺し込まず、襟元を伸ばさないよう下から挿入する。
- 風で飛ばされないよう洗濯ばさみでとめる。
つり干し | つり干しは、最も基本的な干し方でハンガーに衣類をつって干す方法です。 |
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平干し | 平干しは、その名のとおり平に干す方法で、ニットやカットソーなど、つり干しすると伸びたり型くずれしたりするデリケートな衣類に使います。
平干し専用のハンガーや台を使用するのがベストですが、ない場合はピンチハンガーの天面に置く、またはバスタオル等を敷いたテーブルに置く、などでも代用が可能です。 |
竿干し | 竿干しは、衣類を二つ折りにして竿に干す方法で、ニットやトレーナー、スウェットなどハンガーで干しにくい厚手の衣類に使います。 |
筒干し | 筒干しは、ピンチハンガーなどに筒状に干す方法で、ジーンズやスカートなど厚手の衣類を裏返して干します。
筒状に干すことで風通しが良くなり、乾きやすくなります。 |
M字干し | M字干しは、2本の物干し竿を使ってM字になるように干す方法です。
毛布やシーツ、マットなど厚手の大物類に使います。 |
じゃばら干し | じゃばら干しは、ピンチハンガーなどにじゃばらになるように干す方法です。
バスタオルやシーツ、枕カバーなど薄手の大物類に使います。 |
ステップ④:たたむ・収納する
- 乾いた衣類を取り込み、ハンガーや洗濯ばさみを片付ける
- 取り込んだ衣類をたたみ、所定の位置へ収納する
\ シャツ /
①ボタンをとめ、しわを伸ばして置く
②後ろ向きにし、両端を内側に折り、袖を折り返す
③裾側から折りたたむ
\ ズボン /
①しわを伸ばして置く
②両足が重なるように、股の縫い目にそって縦に1~2回折りたたむ
※センタープレスのあるズボンの場合は、センタプレスに沿って折りたたんでください。
\ 靴下 /
①両足をきれいにそろえ、重ねておく
②かかとから足首にかけて折りたたむ
③ゴムの履き口へ向かって折り込む
訪問介護の洗濯でよくある質問
訪問介護の洗濯でよるある質問をまとめました。
適宜、追記していきます。
訪問介護でクリーニングの受け取りはできる?
クリーニングについては、自治体によって可否が異なります。そのクリーニングが、日常生活の範囲を超えるサービスに該当するかどうかが争点となりますので自治体へ確認してみましょう。
参考:訪問介護でクリーニングは行える?|社会保障の観点からみる支援の姿
訪問介護でコインランドリーは利用できる?待ち時間の算定は?
コインランドリーの使用については、自宅に洗濯機がない場合などのケースにおいて対応が可能です。
待ち時間を算定できるか否かは、一般的に算定できないと考えられます。ただし、自治体により可否が異なる可能性があるため自治体への確認を行ってください。
参考:ヘルパーはコインランドリーを上手く活用しよう!注意点も解説します。
さいごに
訪問介護の洗濯マニュアルは以上となります。
訪問介護における洗濯の注意点や方法の基本は、すべて本マニュアルに盛り込んでいるはずですので、新人ヘルパーの方々は、ぜひ繰り返し読み参考にしてくださいね。
当サイト「ヘルパー会議室」では、ホームヘルパー・サービス提供責任者の初心者向けに業務マニュアルを無料で公開しています。
この機会にあわせてチェックしておきましょう。
⇒サービス提供責任者の完全業務マニュアル【必須知識がすべて分かる】