- 障害福祉サービスの支給決定ってなに?
- 支給量等を変更することはできる?
- 支給決定の変更や更新の手続きはどうすれば良い?
今回はこんな疑問にお答えすべく、障害福祉サービスの支給決定とはなにかを明らかにし、支給申請の手続きや変更・更新の手続きの方法、留意事項などを初心者にもわかりやすく解説します。支給決定についてサービス事業所が知っておくべきことをすべて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
本記事は、自立支援給付の介護給付のうち、居宅介護や重度訪問介護等の訪問系障害福祉サービスを提供している事業所向けになります。その他の介護給付や訓練等給付は取り扱っていません。
また、特定相談支援事業所による計画相談支援を利用していない(相談支援専門員がついていない)セルフプランの利用者がいる場合は、サービス事業所が市町村等とやりとりをすることが多いかと思いますので、とくに本記事の内容をしっかり理解しておきましょう。
障害福祉サービスの支給決定とは
障害福祉サービスの支給決定とは、障害者(または障害児の保護者)から申請された障害福祉サービスの利用について、市町村が公費(介護給付費等)で助成する旨を決定することです。
訪問系障害福祉サービスは介護給付に位置づけられており、障害者等が介護給付費の支給を受けるためには市町村に申請する必要があります。そして、障害支援区分の認定調査やサービス利用の意向に関する聴き取り等が行われ、介護給付費の支給に係る要否を判断されます。
なお介護給付費(居宅介護等の費用)は、市町村から障害者本人に対して個別に給付されるものですが、実際の運用では法定代理受領を利用してサービス事業所に支払われることとなります。
みなさんが普段よく目にする「障害福祉サービス受給者証」は、市町村等から支給決定を受けることで発行されます。
支給決定の対象者
- 身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者
- 知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上である者
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第5条に規定する精神障害者(※1)
- 難病等の対象者(※2)
- 児童福祉法第4条第2項に規定する障害児
※1)精神障害者には、発達障害者支援法第2条第2項に規定する発達障害者を含みます。また高次脳機能障害は、器質性精神障害として精神障害に分類されるものであり、精神障害者であることが確認された場合は給付の対象となります。
※ 2)令和6年4月より対象となる難病が、366疾病からMECP2重複症候群などが追加される等により369疾病に見直しが行われています。
ちなみに、身体障害者を除き、市町村が支給決定を行うに際して障害者手帳の有無は必須要件ではないとされています。
支給決定の実地主体
- 訪問系障害福祉サービスの申請者(障害者または障害児の保護者)の居住地市町村
※居住地を有しないまたは不明の場合は、現在地の市町村が行います。
居住地特例について
居住地特例とは、施設等所在地の支給決定事務や費用負担が過大とならないように、一定の施設等の入所・入居者については、「入所・入居する前の居住地の市町村を支給決定等および給付の実施主体とする」居住地原則の例外規定です。
居住地特例の対象になると、対象施設だけでなく、当該利用者が利用する通所サービスや補装具費等についても入所・入居する前の居住地市町村が実施主体となります。また。対象施設に継続して入所・入居する間(他の対象施設等に移る場合を含む。)も居住地特例は継続し、最初に施設等に入所・する前の居住地市町村が引き続き実施主体となります。
居住地特例の対象となる施設等の範囲 | |
法律上の取り扱い |
※⑦および⑧までの施設については、令和5年4月1日以後に入所・入居をすることにより、当該施設の所在する場所に居住地を変更したと認められる場合に居住地特例の対象となる |
運用上の取り扱い |
※刑事施設または少年院(以下「矯正施設」という。)収容前に居住地を有していないか又は明らかでない者については、矯正施設収容前におけるその者の所在地に当たる逮捕地の市町村を実施主体とする |
訪問系障害福祉サービスの種類と対象者
訪問系障害福祉サービスは、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援の5つに分けられ、それぞれに対象者となる要件が定められています。
居宅介護
サービス内容 |
障害者等につき、居宅において入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助を行う。 |
対象者 |
障害支援区分が区分1以上(障害児にあってはこれに相当する支援の度合)である者。ただし、通院等介助(身体介護を伴う場合)を算定する場合にあっては、下記のいずれにも該当する者 ① 区分2以上に該当していること。 ② 障害支援区分の認定調査項目のうち、それぞれ(ア)から(オ)までに掲げる状態のいずれか一つ以上に認定されていること。
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重度訪問介護
サービス内容 |
重度の肢体不自由者又は重度の知的障害若しくは精神障害により行動上著しい困難を有する障害者であって、常時介護を要するものにつき、居宅において入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助並びに外出時における移動中の介護を総合的に行うとともに、病院、診療所、助産所、介護老人保健施設又は介護医療院に入院又は入所している障害者に対して、意思疎通の支援その他の必要な支援を行う。 |
対象者 |
障害支援区分が区分4以上(病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院又は助産所に入院又は入所中の障害者がコミュニケーション支援等のために利用する場合においても区分4以上)であって、次の(ア)又は(イ)のいずれかに該当する者
■重度訪問介護サービス費の加算対象者については、それぞれ以下の要件を満たす者
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同行援護
サービス内容 |
視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の当該障害者等が外出する際の必要な援助を行う。 |
対象者 |
同行援護アセスメント調査票による、調査項目中「視力障害」、「視野障害」及び「夜盲」のいずれかが1点以上であり、かつ、「移動障害」の点数が1点以上の者(障害支援区分の認定を必要としない)
■同行援護サービス費の加算対象者については、それぞれ下記の要件を満たす者
※ ①及び③又は、②及び③の要件を満たす者は、それぞれの加算を算定できる。 |
行動援護
サービス内容 |
知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を要するものにつき、当該障害者等が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護、外出時における移動中の介護、排せつ及び食事等の介護その他の当該障害者等が行動する際の必要な援助を行う。 |
対象者 |
障害支援区分が区分3以上であって、障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上(障害児にあってはこれに相当する支援の度合)である者 |
重度障害者等包括支援
サービス内容 |
常時介護を要する障害者等であって、意思疎通を図ることに著しい支障があるもののうち、四肢の麻痺及び寝たきりの状態にあるもの並びに知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有するものにつき、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、自立生活援助及び共同生活援助を包括的に提供する。 |
対象者 |
障害支援区分が区分6(障害児にあっては区分6に相当する支援の度合)に該当する者のうち、意思疎通に著しい困難を有する者であって、以下のいずれかに該当する者
■Ⅰ類型(状態像:筋ジストロフィー、ALS等)
■Ⅱ類型(状態像:重症心身障害者等)
■Ⅲ類型(状態像:強度行動障害等)
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障害福祉サービスの申請から支給決定までの流れ
障害福祉サービスの支給決定の流れは、上記イメージ図のとおり行われます。
本項では、介護給付のうち訪問系障害福祉サービスの支給決定の流れを、4つのプロセスに分け、それぞれを具体的に解説していきます。
※本項で解説するのは一部を除き障害者の場合に限ります。障害児の場合は別のプロセスをへて支給決定となりますので、詳しくは後術の『障害児の支給決定プロセス』も併せて確認してください。
①申請
障害者等の居住する市町村に対して、利用を希望する障害福祉サービスの種類(居宅介護や重度訪問介護等)ごとに支給申請を行います。
ちなみに大阪市のように行政区(大阪市の場合は24区)が設けられている場合は、障害者の居住区の保健福祉センター等に支給申請を行います。
申請者
障害者の場合は障害者本人が申請者、障害児の場合は保護者が申請者となります。
ただし、本人から支給申請の代行の依頼を受けたものであれば、誰であっても代行することができます。代行申請する場合に委任状を求めるか、窓口でどのような対応をするか等については、基本的に市町村の判断とされていますので各市町村の取り扱いに従いましょう。
また障害者本人が、第三者に対して支給申請に係る代理権を授与した場合は、本人の「代理人」として支給申請することも可能です。 (知的障害者、精神障害者などで判断能力を欠く常況にある者であって、成年後見人が選任されている者については、成年後見人が障害者本人に代わって支給申請を行うことになります)
申請書類
市町村への支給申請にあっては、次の①の支給申請書に加えて②の添付書類を提出しなければなりません。
①支給申請書 | ■記載事項(省令に定める必須記載事項のみ)
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②添付書類 |
※介護給付にうち療養介護や訓練等給付のうち共同生活援助、就労移行支援、就労継続支援については別に添付書類が必要になりますが省略しています。 |
②障害支援区分認定
障害支援区分は、市町村がサービスの種類や支給量などを決定するための判断材料のひとつとして設けられており、障害特性や心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを示す指標です。(「非該当」「区分1・2・3・4・5・6」の6段階に区分される)
市町村の認定調査員が、申請のあった本人および保護者等と面接をし、3障害および難病等対象者共通の調査項目等について認定調査を行います。そして認定調査の結果や医師の意見書を踏まえたコンピュータ判定(1次判定)と市町村審査会での審査判定(2次判定)をへて、市町村により障害支援区分の認定が行われます。
※訪問系障害福祉サービスのうち同行援護については、障害支援区分3以上の加算の支給決定が不要と見込まれる場合は障害支援区分の認定が行われません。
⇒障害支援区分とは|概要や対象サービス一覧などをわかりやすく解説
③サービス等利用計画案の作成・提出
市町村から障害福祉サービスの支給申請を行う障害者等に対して、サービス等利用計画案の提出を依頼されますので、提出を求められた障害者等は、指定特定相談支援事業者と計画相談支援の利用契約を結び、当該指定特定相談支援事業者が作成したサービス等利用計画案を提出します。
なお、身近な地域に指定特定相談支援事業者がない場合または指定特定相談支援事業者以外のサービス等利用計画案の提出を希望する場合には、指定特定相談支援事業者が作成する計画案に代えて当該事業者以外の者が作成するサービス等利用計画案(セルフプラン)を提出することも可能です。
④支給決定
市町村が障害支援区分または障害の種類および程度、障害者等の介護を行う者の状況、介護給付費等の受給状況、サービス等利用計画案その他の事項等を勘案して、支給の要否を決定します。
また支給決定が行われる場合は、支給決定の有効期間および障害福祉サービスの種類ごとに月単位で介護給付費を支給する障害福祉サービスの量(支給量)を定め、併せて事業者の報酬算定に必要な事項等について決定されます。
支給決定事項
障害福祉サービスの種類(区分) |
※上記以外の介護給付費および訓練等給付費等について省略しています。 |
支給量 | ■サービスの種別ごとに次の単位(単位期間は1ヵ月)
※上記以外の介護給付費および訓練等給付費等について省略しています。 |
■支給量の定め方
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支給決定の有効期間 |
※居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援の場合 |
その他、支給決定に併せて決定等する事項 | 報酬の算定上あらかじめ市町村において決定、確認等が必要な事項(各種加算等)、その他必要な事項 |
ちなみに、訪問系障害福祉サービスの場合は、障害支援区分の認定有効期間は3年以内、支給決定期間の有効期間は1年以内が基本となります。
市町村からの通知
支給申請に対して、支給または却下を決定した場合、市町村から通知書が発行されます。(支給が決定された場合は「支給決定通知書」、却下された場合は「支給申請却下通知書」)
利用者負担上限月額の認定
支給決定に際して、市町村が利用者負担上限月額を認定し、支給決定内容と併せて通知を行います。
受給者証の交付
支給決定が行われると、市町村から障害者または障害児の保護者に対して「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。障害福祉サービス受給者証は、支給決定を受けていることや支給決定の内容を証する証票で、次の事項が記載されています。
記載事項 |
|
⇒障害福祉サービス受給者証とは?(※現在作成中です)
障害福祉サービス受給者証をサービス事業所に提示することで、障害者等(利用者)は法定代理受領により現物給付として障害福祉サービスを利用することができます。ですので、サービス事業所としては利用契約時などに障害者等(利用者)から必ず障害福祉サービス受給者証を提示してもらい、必要事項を記入後にコピーをとって保管しておきましょう。
障害児の支給決定プロセス
先に述べた支給申請~決定の過程で行われる障害支援区分の認定は「障害者(※1)」を対象としており、18歳未満の「障害児」には障害支援区分が設けられていません。
これは、障害児は発達途上にあり、時間の経過とともに障害状態が変化することや、乳児期に通常必要となる育児上のケアとの区別が必要なことなど検討課題が多く、現段階では直ちに使用可能な指標が存在しないためです。
このため、支給決定のプロセスも障害者のものとは異なり、上記図のとおり、必要に応じて児童相談所等から意見聴取したり、サービスごとの調査票等にもとづき調査が行われます。
(※1)児童福祉法附則第63条の2および第63条の3の規定にもとづき15歳以上18歳未満の児童が障害者のみを対象とするサービスを利用する場合および精神保健福祉センターの意見等にもとづき精神障害者である児童が障害者のみを対象とするサービスを利用する場合を含みます。
居宅介護・短期入所の場合
居宅介護と短期入所の場合は、障害の種類や程度の把握のために、「5領域11項目(※1)」の調査を行い支給の要否および支給量を決定します。
(※1)5領域11項目 | |
5領域 | 11項目 |
①食事 | 食事 |
②排せつ | 排せつ |
③入浴 | 入浴 |
④移動 | 移動 |
⑤行動障害および精神症状 | (1)強いこだわり、多動、パニック等の不安定な行動や、危険の認識に欠ける行動。 |
(2)睡眠障害や食事・排せつに係る不適応行動(多飲水や過飲水を含む)。 | |
(3)自分を叩いたり傷つけたり他人を叩いたり蹴ったり、器物を壊したりする行為。 | |
(4)気分が憂鬱で悲観的になったり、時には思考力が低下する。 | |
(5)再三の手洗いや繰り返しの確認のため日常動作に時間がかかる。 | |
(6)他者と交流することの不安や緊張、感覚の過敏さ等のため外出や集団参加ができない。また、自室に閉じこもって何もしないでいる。 | |
(7)学習障害のため、読み書きが困難。 |
※通常の発達において必要とされる介助等は除く。
また、NICU等での集中治療を経て退院した直後である場合をはじめ、5領域11項目の調査だけでは支給の要否や支給量の決定が難しい乳幼児期の医療的ケア児については、5領域11項目の調査に加えて医療的ケアの判定スコア(※2)の調査における医師の判断を踏まえて支給の要否および支給量を決定します。(ただし、支給決定を行う保護者が判定スコアの調査を望まない場合は、省略できます)
(※2)医療的ケアの判定スコア | |
項目 | 細項目 |
① 人工呼吸器(鼻マスク式補助換気法、ハイフローセラピー、間歇的陽圧吸入法、排痰補助装置及び高頻度胸壁振動装置を含む)の管理 | ー |
②気管切開の管理 | ー |
③鼻咽頭エアウェイの管理 | ー |
④酸素療法 | ー |
⑤ 吸引(口鼻腔又は気管内吸引に限る) | ー |
⑥ネブライザーの管理 | ー |
⑦経管栄養 | (1)経鼻胃管、胃瘻、経鼻腸管、経胃瘻腸管、腸瘻または食道瘻 |
(2)持続経管注入ポンプ使用 | |
⑧ 中心静脈カテーテルの管理(中心静脈栄養、肺高血圧症治療薬、麻薬等) | ー |
⑨皮下注射 | (1)皮下注射(インスリン、麻薬等の注射を含む) |
(2)持続皮下注射ポンプの使用 | |
⑩ 血糖測定(持続血糖測定による血糖測定を含む) | ー |
⑪ 継続的な透析(血液透析、腹膜透析等) | ー |
⑫導尿 | (1)間欠的導尿 |
(2)持続的導尿(尿道留置カテ-テル、膀胱瘻、腎瘻または尿路ストーマ) | |
⑬排便管理 | (1)消化管ストーマの使用 |
(2)摘便または洗腸 | |
(3)浣腸 | |
⑭ 痙攣時における座薬挿入、吸引、酸素投与又は迷走神経刺激装置の作動等の処置 | ー |
※「⑬ 排便管理」における「⑶ 浣腸」は、市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器(挿入部の長さがおおむね5cm以上6cm以下のものであって、グリセリンの濃度が50%程度であり、かつ、容量が成人を対象とする場合にあってはおおむね40g以下、6歳以上12歳未満の小児を対象とする場合にあってはおおむね20g以下、1歳以上6歳未満の幼児を対象とする場合にあってはおおむね10g以下、0歳の乳児を対象とする場合にあってはおおむね5g以下のもの)を用いて浣腸を施す場合を除く。
行動援護の場合
行動援護の場合は、「重度訪問介護、行動援護および重度障害者等包括支援の判定基準票(※3)」の12項目の調査等を行い、障害者の場合と同様に10点以上が対象となります。(てんかん発作について医師意見書は不要です)
(※3)重度訪問介護、行動援護および重度障害者等包括支援の判定基準票12項目 | |
行動関連項目 | ①コミュニケーション |
②説明の理解 | |
③大声・奇声を出す | |
④異食行動 | |
⑤多動・行動停止 | |
⑥不安定な行動 | |
⑦自らを傷つける行為 | |
⑧他人を傷つける行為 | |
⑨不適切な行為 | |
⑩突発的な行動 | |
⑪過食・反すう等 | |
⑫てんかん |
同行援護の場合
同行援護の場合は、同行援護アセスメント調査票(※4)により調査を行い、障害者の場合と同様に「視力障害」「視野障害」「夜盲」のいずれかが1点以上で、かつ、「移動障害」の点数が1点以上が対象となります。
また、障害支援区分3以上の支援の度合いに相当することが見込まれる場合は、先の5領域11項目の調査を行った上で障害支援区分3以上加算の要否を決定します。
(※4)同行援護アセスメント調査票項目 | |
項目 | |
視力障害 | 視力 |
視野障害 | 視野 |
夜盲 | 網膜色素変性症等による夜盲等 |
移動障害 | 盲人安全つえ(又は盲導犬)の使用による単独歩行 |
重度障害者等包括支援の場合
重度障害者等包括支援の場合は、障害者の認定調査項目80項目の調査と四肢すべての麻痺等の有無の調査を行い、市町村審査会に重度障害者等包括支援の対象とすることが適当であるか否かの意見を聴取した上で、支給の要否を決定します。
また、乳幼児期の医療的ケア児については、先の5領域11項目の調査および医療的ケアの判定スコアの調査における医師の判断を踏まえて支給の要否および支給量を決定します。(ただし、支給決定を行う保護者が判定スコアの調査を望まない場合は、省略できます)
重度訪問介護の場合
重度訪問介護の場合は、原則として障害児は対象となりません。
ただし、15歳以上の障害児であって、児童福祉法附則第63条の3の規定により児童相談所長が重度訪問介護を利用することが適当であると認め、市町村長に通知した場合は、障害者とみなすことができ、障害者の支給決定プロセスに沿って要否を決定することになります。
市町村の支給決定基準を確認しよう
適正かつ公平な支給決定を行うために、市町村は「支給決定基準」をあらかじめ定めておくこととされています。
支給決定基準とは、個々の利用者の心身の状況や介護者の状況等に応じた支給量を定める基準のことです。例えば居宅介護であれば、障害支援区分1:月〇〇時間、区分2:月○○時間などと市町村ごとに定められています。
規則や要綱、要領など形式はさまざまですが、支給決定に際してとても重要なものになりますので、障害者等(利用者)の居住地市町村が定める支給決定基準を確認しておきましょう。
※参考までに大阪市、大阪府羽曳野市、茨城県水戸市、三重県松阪市の支給決定基準を貼っておきます。
各市町村のホームページ内にある検索窓に「支給決定基準」や「支給決定」、「要網」などと入力して検索してみてくださいね。セルフプランの利用者がいる場合は必ず確認しておきましょう。
訪問系障害福祉サービスの支給決定に係る留意事項
訪問系障害福祉サービスの支給決定に際して、留意しておかなければならない点がいくつかあります。
本項では、サービス事業所が押さえておくべき留意事項を5つ紹介します。
①居宅介護について
1回あたりの標準利用可能時間 | 居宅介護は、身体介護や家事援助などの支援を短時間に集中して行う業務形態を想定していることから、サービス1回あたりの標準利用可能時間数は目安として「身体介護3時間まで、家事援助1.5時間まで」とされています。
ただし、標準利用可能時間数を一律に適用するのではなく、必要な場合は、標準利用可能時間数を超える時間数を設定するなど、一人ひとりの事情を踏まえた支給決定をすることが必要であるとされています。このため市町村により設定時間等は異なりますので、先に紹介した市町村ごとに定める支給決定基準を確認してください。 また障害福祉サービス受給者証にサービス1回あたりの利用可能時間数を記載することとされていますので、各利用者の受給者証を確認しておきましょう。(市町村等によっては記載が省略されている場合もあります) |
通院等介助等の支給決定 | 病院等への通院等の介助を実施する場合は、サービス内容や形態により算定方法が異なります。このため、あらかじめどのような形態でサービスを提供するのかを想定し、市町村の支給決定時に算定方法に応じた支給量を決めてもらう必要があります。 |
同行援護、行動援護との併給 | 同行援護や行動援護の対象者となる要件を満たしていれば併給は可能です。 |
②重度訪問介護について
1回あたりの支給決定時間 | 重度訪問介護は、同一箇所に長時間滞在し、身体介護、家事援助、日常生活に生じる様々な介護の事態に対応するための見守り等の支援および外出介護等のサービス提供を行うという業務形態を踏まえ、1日につき3時間を超える支給決定が基本とされています。
なお、短時間集中的な身体介護を中心とするサービスを1日に複数回行う場合の支給決定については、原則として、重度訪問介護ではなく、居宅介護として支給決定となります。 |
居宅介護との併給 | 重度訪問介護は、身体介護や家事援助等の援助が断続的に行われることを総合的に評価して設定していることから、基本的には併給はできません。
ですが、これは同一の事業者が重度訪問介護サービス費に加えて、身体介護及び家事援助等の居宅介護サービス費を算定することはできないということであり、当該利用者にサービスを提供している事業所が利用者の希望する時間帯にサービスを提供することが困難である場合であって、他の事業者が身体介護等を提供する場合は、併用できる可能性があります。 |
③重度障害者等包括支援について
他サービスとの併給 | 重度障害者等包括支援は、障害福祉サービスを包括的に提供するものですので、他の障害福祉サービスとの併給はできません。 |
④共同生活援助(グループホーム)との併給について
指定障害福祉サービス基準附則第18条の2第1項および第2項の適用を受ける入居者については、以下表のとおり供託介護および重度訪問介護を利用することができます。
指定障害福祉サービス基準附則第18条の2第1項の適用を受ける入居者 | 指定障害福祉サービス基準附則第18条の2第2項の適用を受ける入居者 | |
居宅介護 | 〇 | 〇 (身体介護中心型のみ) |
重度訪問介護 | 〇 | × |
※令和9年3月31までに限る
上記を除く、共同生活援助を行う住居に入居する方(体験的な利用を行う方を含む)は、入居中に居宅介護および重度訪問介護を利用することはできません。
ただし、入居者が一時帰宅する場合であって市町村が特に必要と認める場合においては、共同生活援助を行う住居の利用に係る報酬がまったく算定されない期間中に限り、居宅介護または重度訪問介護について支給決定を行うことは可能であるとされています。(障害支援区分等が利用要件に該当している場合に限ります)
また、共同生活援助を行う住居の入居者が慢性の疾病等を有する障害者であって、医師の指示により、定期的に通院を必要とする者である場合に限り、居宅介護における通院等介助や通院等乗降介助を利用することができます。
⑤介護保険との適用関係
障害福祉サービス(自立支援給付)と介護保険給付の適用関係については、給付調整規定にもとづき、介護保険給付が優先されます。このため、訪問系障害福祉サービスを利用している介護保険の被保険者である65歳以上の障害者が、要介護状態または要支援状態となった場合(40歳以上65歳未満の者の場合は、その要介護状態または要支援状態の原因である特定疾病によって生じた場合)には、要介護認定等を受け、介護保険サービスに切り替えることとなります。
ただし、障害福祉サービス固有のサービスや介護保険サービスのみでは十分なサービスを確保することができない場合等においては、障害福祉サービス固有サービスの継続利用または両サービスの併用が可能です。
⇒障害福祉サービスと介護保険サービスの適用関係|併用・併給はできる?
支給決定の「変更」申請手続き
支給決定を受けた障害者等(利用者)は、現に受けている障害福祉サービスの支給決定の内容を変更したい場合は、市町村に対して変更の申請を行うことができます。
変更申請ができる内容
変更申請ができるのは「支給量」です。
障害福祉サービスの種類は、支給決定を障害福祉サービスの種類ごとに行うことから変更の対象となりません。利用するサービスの種類を変える場合は、新たに利用するサービスについては新たな支給決定により行われます。(大抵は、変更手続と一体的な手続で行われます)
変更申請書を提出する
市町村に対して、次の事項を記載した変更申請書を提出します。
変更申請書 |
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変更決定の手続き
変更申請の提出後、市町村により必要に応じて障害者等への面談調査や障害支援区分の変更認定が行われます。
居宅介護等の訪問系サービスの場合、時間数が足りず変更申請を行うことが結構あります。この際、居宅介護等は障害支援区分が支給量に密接に関連することから、障害支援区分の変更も併せて行うことがあるのです。
変更の決定
支給決定時と同様に、市町村がサービス等利用計画案その他の勘案事項を勘案し、当該市町村の支給決定基準等に照らして変更の要否または変更後の支給量を決定します。
その後、市町村から障害福祉サービス受給者証の提出を求められます(変更申請時に提出する場合もある)ので、提出し、変更後の支給量(障害支援区分の変更の認定を行った場合は変更後の障害支援区分および有効期間)が記載された受給者証が障害者(利用者)に返却されます。
障害福祉サービス受給者証は、市町村により交付済みの受給者証に追加記入される場合もあれば、新規に交付される場合もあります。
氏名、居住地が変わった場合の変更の届出
障害福祉サービス受給者証の交付を受けた障害者(利用者)が、氏名や次の主務省令で定める事項に変更があった場合は、障害福祉サービス受給者証に届出書を添えて市町村に届け出が必要です。
主務省令で定める事項 |
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市町村の区域を超えて居住地を変更(転入・転出)した場合
支給決定を受けた障害者等(利用者)が市町村の区域を越えて居住地変更(転出・転入)した場合は、支給決定の実施主体が転入先の市町村に変更となります。(※居住地特例の適用対象となる特定施設(運用によるものを含む)への入所に伴う者を除く)
これに伴い、転出元・転入先の市町村においてさまざまな事務処理が必要となりますので、転出の予定が決まった場合は、速やかに支給決定を行った市町村にその旨を連絡することが必要です。
以降は、各市町村のアナウンスに従って手続きを進めることとなりますが、市町村の区域を超えて居住地を変更(転入・転出)した場合は、転出元・転入先の市町村において次の事務処理が行われます。
転出元市町村における転出時の事務 |
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転入先市町村における転入時の事務 |
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障害支援区分については、基本的に転入先の市町村で新たに区分認定調査等を受ける必要はなく、転出元の市町村で認定を受けた障害支援区分および有効期間を引き継ぐことができます。
支給決定の「更新」申請手続き
障害福祉サービス受給者証に記載されている支給決定の有効期間が終了した場合であって、障害者等(利用者)が障害福祉サービスの利用継続を希望する場合は、市町村に対して支給決定の更新申請を行います。
障害支援区分との関係
訪問系障害福祉サービス(介護給付費)に係る支給決定は、先のとおり障害支援区分の認定が必要になります。このため、支給決定の更新にあたっては、障害支援区分の有効期間の範囲内で行うか、あらためて障害支援区分の認定が行われることとなります。
障害支援区分の認定を要しない場合 | 例えば、障害支援区分の有効期間が3年で、居宅介護の支給決定を1年の有効期間で行っている場合など、認定されている障害支援区分の有効期間の範囲内で支給決定の更新をすることができるときは、障害支援区分の有効期間の範囲内かつ当該障害福祉サービスに係る支給決定の有効期間(最長期間)の範囲内で支給決定の更新を行います。 |
障害支援区分の認定の更新を行う場合 | 障害支援区分の有効期間と同期間で支給決定を行っている場合など、障害支援区分の有効期間と支給決定の有効期間の終期が同じ場合は、支給決定の更新に際して改めて障害支援区分の認定が必要であるため、当初の支給決定手続と同様の手続により障害支援区分の認定が行われます。
また、障害支援区分の更新認定を要する場合は、通常、障害支援区分の有効期間の終期と支給決定の有効期間の終期が一致しますが、障害支援区分の有効期間の範囲内で支給決定をし、または更新した結果、障害支援区分の有効期間の残存期間があり、当該残存期間が支給決定の更新を行おうとする有効期間よりも著しく短い場合(3ヵ月以下を目安)は、障害支援区分の更新認定をできるとされています。 |
更新の手続きは支給決定の有効期間内に完了する
支給決定の更新は、通常の支給決定として行うものですが、支給決定を受けた障害者等(利用者)のサービス利用に支障が生じないように、更新前の支給決定の有効期間が満了するまでに更新手続きを終える必要があります。
制度上は、支給決定の有効期間の満了する日の何日前まで等の定めはありませんが、各市町村から支給決定の有効期間の満了する日の何日前~何日前までの間に更新申請を行うよう周知されますので、忘れずに更新申請を行うようにしましょう。
セルフプランの場合は特に、「支給決定の有効期間が切れていて更新を忘れていた」ってことがありますので注意してくださいね。
さいごに
今回は、主に訪問系障害福祉サービスの支給決定について解説しました。
訪問系障害福祉サービスの従業者が知っておくべき基本的な内容はすべて網羅できているかと思いますので、繰り返し読み学んでくださいね。