訪問介護で働き始めて間もないヘルパーです。
利用者さんから買い物を頼まれたとき、「これって買っていいんだっけ?」といつも迷ってしまいます…。
今回はこんな悩みにお答えすべく、介護保険サービスにおける訪問介護の買い物代行で、ヘルパーが「買っていいもの・買ってはいけないもの」を具体的に解説します。
また、本記事の後半では、ヘルパー会議室に寄せられた買い物代行に関する“よくある質問”にまとめて回答していますので、ぜひ初心者ヘルパーの方々は参考にしてください。
なお、本記事の内容はヘルパー会議室運営部による調査にもとづく独自の解釈であり、算定の可否は自治体によって異なることにご留意ください。
加えて利用者個々の生活実態や世帯状況等によっても可否は変わりますので、実際の運用にあたってはケアマネとの相談および各市町村等への確認をお願いします。
※買い物代行の支援内容や実施方法の基本を知りたい方は、以下のコラムを参考にしてください。
訪問介護の生活援助は制限つきサービス
訪問介護の買い物代行は、掃除や調理などの家事支援と同じ「生活援助」という区分に位置付けられており、介護保険制度上の制限が設けられているサービスです。
具体的には、上記図の厚生労働省通知「老振第76号」が示すとおり、『直接本人の援助に該当しない行為』や『日常生活の援助に該当しない行為』は、保険給付として不適切とされています。
したがって、買い物代行においては、利用者本人が日常生活を送る上で必要最低限な範囲に限られ、この範囲外の提供は原則できません。(仮に、ヘルパーが範囲外のサービスを提供したとしても介護給付費の算定はできず、無報酬になります。)
買い物代行でヘルパーが買っていいもの・買ってはいけないもの
では、訪問介護サービスにおいて、ヘルパーはなにを購入できて、なにを購入できないのでしょうか?
ここでは、具体的な品目を交えながら、ヘルパーが買っていいもの・買ってはいけないものを紹介します。
※冒頭でお伝えしたとおり、算定の可否は利用者の生活実態・状況を踏まえて自治体が個々に判断するものです。そのため自治体によって可否の範囲が異なる場合があり、またA市ではOKでもB市ではNGということも往々にしてありますので、本項はあくまで目安として参考にしていただき、市町村等への確認を必ず行ってください。
買っていいもの
- 食料品(肉類、魚介類、野菜、果物などの生鮮食品や加工食品、そうざい等の食品類や味噌、醤油、砂糖、みりん、料理酒、塩、油などの調味料類、飲料など)
- 台所用品(食器洗剤や洗用スポンジ、皿・お椀・お箸・スプーン等の食器類、まな板・鍋・おたま等調理器具、ラップなど)
- 日常で使用する消耗品(風呂洗剤、洗用タオル、トイレ用洗剤、掃除道具、歯ブラシ、歯磨き粉、電池、電球、ティッシュ、トイレットペーパーなど)
- 日常で着る被服類(下着やパジャマ、タオル、バスタオルなど)
買ってはいけないもの
- 利用者以外のものの購入
- 娯楽品や趣味趣向品(たばこ、酒、雑誌、小説など)
- 贈答品(お中元、お歳暮など)
- 金券
- 家具
- 外用の被服
- ペットの餌
ちなみに買ってはいけないものであっても、保険請求せず無報酬で行う、または介護保険外の自費サービスで行うのであれば問題はありません。
訪問介護の買い物代行でよくある質問
つづいて、ヘルパー会議室に寄せらた問い合わせの中で、よくある質問に回答していきます。(※注:回答には運営部による独自解釈が含まれています。)
Q1:市販薬の購入はできる?
介護保険制度上、市販薬の購入に対する明確な規定はないため、ヘルパーが購入すること自体を制限されるものではありません。ただし、ほとんどの利用者は処方薬を服用していることを踏まえ、市販薬との飲み合わせにより病状の悪化を招くおそれもあることから、基本的には避けるべきと考えます。また、どうしても常備薬等の購入が必要なのであれば、ケアマネを含めてかかりつけ医などと十分に相談した上で判断してください。
Q2:仏花の購入はできる?
仏花や樒は、日常生活に必要なものではないと判断される可能性が高く、買い物代行による購入は難しいと考えられます。なお神棚にそなえる榊などの購入も同様です。
Q3:ポイントカードを預かることはできる?
スーパー等のポイントカードを預かって買い物代行時にポイントを付与する、あるいはポイントを使用する行為は制限されるものではないと考えられ、基本的には問題ないでしょう。(利用者と相談のもとポイントを使用した場合は、ポイント残高などを記録に残しておくこと)
ただし、ポイントを現金化できるカードにおいて、換金する等の行為は銀行口座から出金する行為と同等であると考えられるため、できないと思われます。
Q4:クレジットカードで支払いはできる?
クレジットカードは口座情報に紐づくものであり、約款(利用規約)上、本人以外の利用を禁止されています。したがって、ヘルパーが利用者のクレジットカードを預かって使用する等の行為はできません。
ただし、商品券やプリペイドカード、その他、現金をチャージするタイプのカードであれば、現金と同様の扱いと捉えることができ、買い物代行で使用しても問題はないと考えます。
Q5:公共料金等の支払い代行はできる?
電気・ガス・水道などの公共料金の支払い代行は、可能です。また、日常生活で必要な食品や日用品等であれば、通販で購入した品物の支払い代行も可能であると考えます。
Q6:通帳やキャッシュカードを預かることはできる?
できません。金銭トラブルのもとですので、絶対に預からないようにしてください。
Q7:銀行へ振込や引き出しの代行はできる?
Q6で説明したとおり、そもそも利用者の通帳やキャッシュカードを預かれませんので、ヘルパーが単独で銀行へ出向いて振込や出金などの行為を代行することはできません。振込や出金が必要な場合は、外出介助にて同行する、または家族等へ依頼してください。
Q8:出納帳はつけなければいけない?
本人自ら金銭管理を行っているのであれば、金銭出納帳をつける必要はありません。
ただし、後見人や社会福祉協議会、家族の第三者が利用者の金銭管理をしている場合であって、買い物代行用の現金を利用者から見えない場所に置いておき、ヘルパーが買い物の都度現金の出し入れを行う等のケースにおいては、金銭出納帳をつけるべきだと考えます。
Q9:複数の店舗を回って買い物することはできる?(あっちのスーパーの方が魚が美味しいから)
買い物代行に出向く店舗の範囲は、原則として利用者の生活圏域内にある店舗であり、かつ必要な日用品等が購入できる店舗のみに限られます。
ですので、「こっちのスーパーは魚がおいしいからこっちで鯖を買って、あってのスーパーは肉が安いからあっちで牛バラを買って」などと利用者の好み等を理由に複数の店舗を回ることはできません。ただし、ひとつの店舗で日常生活上必要な品物が揃わないなどの場合は、複数の店舗を跨いで買い物をすることは可能です。
さいごに
今回は、訪問介護の買い物代行で、ヘルパーが買っていいいもの・買ってはいけないものを解説しました。
実際の訪問介護現場では、利用者から依頼されて、咄嗟に判断して答えるのが難しい場面もあるかと思います。
そんなときには即答せず、いったん持ち帰って本記事や市町村等の意見を参考にしつつ判断するようにしてくださいね。
また、当サイト「ヘルパー会議室」では、ホームヘルパー・サービス提供責任者の初心者向けに業務マニュアルを無料で公開しています。
この機会にあわせてチェックしておきましょう。