近頃、腰に違和感があってヘルパー業務に支障が出るときがあります。
腰を痛めないためには何を気をつければ良いですか?
今回は、こんな悩みや疑問にお答えすべく「訪問介護の腰痛予防マニュアル」を作成しました。
利用者一人ひとり作業環境が異なる訪問介護では、施設介護とは違った腰痛への注意点がたくさんあります。
本マニュアルでは、腰痛の発生要因を紹介した上で、訪問介護ならではの腰痛予防対策をホームヘルパー側・事業所側の両面から解説します。
また最後に簡単にできる腰痛予防体操やストレッチングの方法も紹介していますので、ぜひ本マニュアルを日々の業務の参考にしてください。
本マニュアルは、厚生労働省の資料「職場における腰痛予防指針」を参考に作成しました。
なお、本マニュアルは事業所内で行う全体研修の資料としても活用できますので、各職員の方々への周知にお役立てください。
研修テーマ集:【研修資料つき】訪問介護のヘルパ-勉強会テーマ39案
訪問介護における腰痛予防の重要性
みなさんは、ぎっくり腰や椎間板ヘルニアといった言葉を耳にしたことがありますか?
おそらくほとんどの方が知っている、とてもポピュラーな病名ではないでしょうか。なんと、腰痛は「日本人の約8割以上が一生に一度は経験する」と言われています。
そんな身近な存在である腰痛ですが、肉体的にかなりの負担がかかる介護労働を行うホームヘルパーにおいて、非常に罹患しやすい病気と言えます。
腰痛は介護職で最も多い労働災害
厚生労働省が公表した令和4年度の労働災害状況によると、訪問介護を含めた社会福祉施設の労働災害は、腰痛などによる「動作の反動・無理な動作」が最も多い4475件と全体の35.0%を占め、次いで転倒( 34.3%)、墜落・転落(6.3%)、激突(5.1%)、交通事故(4.4%)の結果に。
一方で、同調査による飲食店の労働災害では、「動作の反動・無理な動作」が512件で全体の9.7%に留まっており、この結果から、いかに介護職が腰痛になりやすい職種かが分かります。
また、いったん罹患した腰痛は対策を講じなければ慢性化する可能性が増加し、業務への支障だけでなく個人の私生活にも大きな影響を及ぼしかねません。
こうした状況を防ぐためには、サービス内外において腰痛のリスクをできる限り取り除き、さまざまな工夫を凝らす必要があります。ホームヘルパー個々が気をつけるのはもちろんのこと、事業所としても環境の整備などの対策に取り組むことが重要です。
訪問介護で腰痛が発生する要因
適切な腰痛予防対策を実施するためには、なぜ腰痛が発生するのかを十分に理解しておく必要があります。
ここでは訪問介護において腰痛が起きる主な要因として、「動作要因」「環境要因」「個人的要因」「心理・社会的要因」の4つに分けてそれぞれを解説します。
腰痛はこれらの要因が複雑に影響しあって生じます。そのため、単一的な視点でとらえるのではなく、全体をとおしてさまざまな視点から腰痛要因を探ってリスクを評価することが大切です。
動作要因
重量物の取り扱いや人の抱え上げ作業 | 重いものを頻回に持ち上げたり、利用者を人力で抱きかかえたりすることにより腰部に負荷がかかります。特に人力による人の抱上げ作業は、物と違って持つところがなく繊細な動作となるためより大きな負荷が腰部にかかることになります。 |
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長時間の静的作業姿勢 | 立ち仕事や座り仕事などの静的な姿勢を長時間とると、腰の筋肉が緊張して血行が悪くなります。その結果、筋肉が疲労し、腰痛が発生しやすくなります。 |
不自然な姿勢 | ベッド上でのおむつ交換や更衣介助などの身体介護、掃除や調理などの生活援助場面において前屈(おじぎ姿勢、前かがみの姿勢)や中腰、ひねり、そり等の不自然な動作を強いられることがあるかと思います。この際に、不自然な動作が多発したり、不自然な動作をとり続けたりすると腰部への負荷が増大し腰痛につながります。 |
急激または不用意な動作 | 準備動作なく物を急に持ち上げたり、転倒しかけた利用者をとっさに支えたり、といった急激または不用意な動作をすると、予期しない負荷が腰部にかかるときに腰筋等の収縮が遅れるため、身体が大きく動揺して腰部に過負荷がかかります。 |
環境要因
寒冷な環境 | 身体が長い間寒冷にさらされると、寒冷反射による血管収縮が生じ、筋肉が緊張することで十分な血流が保たれず腰痛が生じやすくなります。暖房が行き届かない洗面所や廊下などの掃除や、冬場にお湯が使えない中での拭き掃除などは注意が必要です。 |
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床面の状態 | 滑りやすい床面でスリップしたり、段差等につまづいたり、または転倒すると瞬間的に腰部へ過負荷がかかり、腰痛が発生する場合があります。 |
作業環境 | 家具や物品の配置、室内面積などは利用者宅によってさまざまです。中には作業導線が狭すぎて物理的に不自然な姿勢で介助せざるを得ないケースもあり、こうした状況での作業は腰痛のリスクを高めます。また、施設介護とは異なりリフトを活用しているケースはほとんどなく、人力での抱え上げ作業が発生すること、加えて本来必要なケースでスライディングボード(シート)等が活用されていないなど福祉用具の未活用も腰痛の発生要因のひとつと言えます。 |
車の運転 | 車両を用いて訪問先まで移動する場合、長時間の運転になると車から受ける全身振動に長時間さらされることとなり腰痛のリスクを高めます。 |
勤務条件など | 訪問件数が多すぎる、休憩時間が確保されていない、業務に必要な教育・訓練を十分に受けていないなどの勤務条件は、強い精神的な緊張度を強いられ、後術の心理・社会的要因が生じます。 |
個人的要因
年齢・性別・体格・筋力等 | 年齢を重ねることで、全身の筋肉量は低下し、腰痛が発生しやすくなります。また、女性は体幹を支えるインナーマッスル(多裂筋や腹横筋、横隔膜、骨盤底筋など)が弱い傾向にあり作業負担が大きくなります。 |
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既往症および基礎疾患 | 腰椎椎間板ヘルニアや圧迫骨折等の腰痛の既往がある場合、腰痛が再発・悪化しやすくなります。 |
心理・社会的要因
以前は、これまで紹介をしてきた「動作要因」「環境要因」「個人要因」が腰痛の主な要因でしたが、近年は「心理・社会的要因」も関連していると注目されています。
心理・社会的要因は、例えば「仕事への満足感が得にくい」、「仕事に働きがいが見いだせない」、「上司や同僚からの支援不足」、「職場での人間関係や利用者との対人トラブル」などです。
また「こういう動作は腰痛になるのでは」と腰痛に対して心配しすぎるのも、かえって腰痛予防の妨げになる場合があります。加えて、腰痛による休業にともなう職場復帰への焦りや不安感、「職場に迷惑をかけている」という罪悪感などの心理状態も、腰痛の回復にとって好ましくないと考えられています。
訪問介護では生活援助にも腰痛リスクが潜んでいる
腰痛というと、多くの方は排せつ介助や移動・移乗介助などの身体介護が主な要因に思い浮かぶのではないでしょうか。しかし、施設介護にはない訪問介護特有の掃除や洗濯、調理といった生活援助にも腰痛リスクが潜んでおり、必ずしも身体介護と比べて作業負担が小さいとは限りません。
生活援助の方が身体介護よりも提供回数が多いケースもたくさんありますので、訪問介護においては、むしろ生活援助こそ腰痛予防に気を配らなければならないと言えます。
仕事として行う家事は、身体的・精神的に大きな負担がかかる
他人のお宅で仕事として行う家事は、自分の家で行う家事と同じ作業負担ではありません。
訪問先ごとの家事の仕方に合わせた実施、必要な使用物品がそろっていない…、タバコの煙が充満する中での作業など。さらに、限られた時間内で、手を抜くことなく丁寧に行わなければならない緊張感もあるでしょう。
こうした作業環境で実施する生活援助は、長時間かつ頻回に出現する不良姿勢により身体的負担が増加し、加えて精神的にも大きな負担がかかることになります。
家事場面ごとのリスク要因
掃除 |
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洗濯 |
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調理 |
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買い物 |
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生活援助共通 |
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訪問介護の腰痛予防対策
これまで腰痛がなぜ発生するのか、その要因を詳しく解説してきました。
では、訪問介護において腰痛を予防するためにどのような策を講じる必要があるのでしょうか?
本項では「ホームヘルパーが実施すべきこと」と「事業所として実施すべきこと」に分けて、訪問介護の腰痛予防対策を紹介していきます。
ホームヘルパーが実施すべき腰痛予防対策
ホームヘルパーが実施すべき腰痛予防対策は以下の5つです。
- 適切な姿勢で重い物を持ち上げる
- 掃除機をかけるときの工夫
- 適切な身体介護技術を身につける
- 冷え対策
- 心身のメンテナンス
対策①:適切な姿勢で重い物を持ち上げる
重い物を持ち上げるときは、上記図「好ましい姿勢」を参考に、できるだけ身体を対象物に近づけて重心を低くする姿勢をとります。次に片足を少し前に出してしゃがむように抱え、膝を伸ばすように持ち上げましょう。
それにより、腰ではなく脚・膝の力で持ち上げることができますので、不良姿勢を回避しやすくなり、腰の負担が軽減されます。
逆に、上記図「好ましくない姿勢」のように、両膝を伸ばしたまま上体を下方に曲げる前屈姿勢で持ち上げてしまうと、腰に過度な負担がかかりますので注意してください。
対策②:掃除機をかけるときの工夫
掃除機をかけるときは、上記図「×」の中腰や前かがみの姿勢となるため腰に負担がかかります。
このような姿勢が頻回にある場合は、こまめに姿勢を変え、できる限り上記図「〇」の直立に近い姿勢で行ったり、手を膝にあてたりして自分の身体を支えると腰の負担を軽減できます。
また、室内状況によっては掃除スペースがかなり狭く、しゃがんで掃除機をかけなければならない場面もあるかと思います。この際には、手すりや机などをもって支える、あるいは膝立ち位(膝を床面につける)の姿勢で行うようにしましょう。
その他、掃除機の管が短い場合は、立って掃除機をかけると深い前かがみの姿勢となりますので、管を伸ばしてから掃除するなど、必ず自分の身体に合わて調整するようにしてください。
対策③:適切な身体介護技術を身につける
排せつ介助や入浴介助、移動・移乗介助などの身体介護では、先の「動作要因」のとおり、何かしらの場面で腰への負担が生じます。しかし、適切な身体介護技術や知識を身につけて実践すれば、負担を最小限にすることは可能です。
例えば、
×ベッドの高さを調整せずにオムツ交換や清拭を行っている
×アセスメント不足から過度な介助量になっている
×力任せの介助になっている
×福祉用具が設置されているが正しい使い方を知らない
など技術・知識が足りていないことからホームヘルパー自身に不要な負担がかかっている場合もあります。
そのため、適切な自立支援介護の実践方法やボディメカニクスを活用した移乗・移動介助の方法を学んだり、サービス提供責任者による同行訪問にて、その利用者に適した介助方法や福祉用具の活用方法をレクチャーしてもらうなどを行って技術・知識の習得に努めましょう。
以下、ヘルパー会議室のコラムをピックアップしましたので参考にしてください。
対策④:冷え対策
先の環境要因で述べたとおり、「冷え」は腰痛のリスクを高めます。しかし、実際の訪問介護現場では、暖房のきいていない部屋での作業や冬場でもお湯が使えないなどのケースは少なくありません。
このようなケースでは、あらかじめ冷え対策を実施した上でサービス提供に臨む必要があります。
例えば、冷たい水を使う際は、ゴム手袋を着用する、貼るカイロ等を使用する、足を冷やさないように厚手の靴下を着用したりスリッパを持参したりする、などの対策を行うと良いでしょう。
対策⑤:心身のメンテナンス
腰痛の予防には、作業負担の軽減や作業環境の改善がとても重要です。
しかし一方で、日常的な睡眠不足や休養不足は疲労がたまって余計に負担を増大させてしまいますので、日頃から心身の疲労回復に心がけることも大切になります。
具体的には
- 訪問と訪問の合間や作業の合間に休憩・休息をとる
- 作業開始前後や帰宅後に腰痛予防体操やストレッチングを行う
- 帰宅後にゆっくり入浴して十分に睡眠時間を確保する
- 休日は仕事から離れて好きなことをするなどストレスを発散する
などに取り組むと良いでしょう。
また、対人援助職であるホームヘルパーは、利用者との対人ストレスにも注意しておかなければなりません。
人間は誰しも『気の合う人と合わない人』がいます。担当している利用者とどうしても相性が合わず、ストレスになっている場合は管理者やサービス提供責任者に相談しましょう。
担当を変更してもらうのもひとつの方法ですし、なによりストレスを溜め込まず感情を吐き出すようにしてください。
▶【ホームヘルパーが実践すべきメンタルケア】訪問介護職向けのポイント5選
事業所として実施すべき腰痛予防対策
事業所として実施すべき腰痛予防対策は以下の4つです。
- 作業方法・環境の整備
- 作業方法の指導
- ホームヘルパーの健康管理
- 相談しやすい環境の構築
対策①:作業方法・環境の整備
ホームヘルパーの腰痛を予防するために、事業所が取り組むべき作業環境の整備は、「腰痛リスクの評価」「適切なサービス提供方法の選定」「福祉用具の活用等によるリスク低減」「サービス提供方法の標準化」がポイントです。
腰痛リスクの評価
訪問介護サービス導入時の初回サービス担当者会議やアセスメント時に、腰痛を発生させる直接的または間接的なリスクを見つけ出します。
利用者の身体状況や生活環境、室内の状況等を把握し、加えて、実際に提供するサービスが介助者にとってどの程度の負担になるのかを重量負荷、作業姿勢、作業頻度、作業時間の観点から評価しましょう。
リスクアセスメントにあたっては、厚生労働省が「腰痛予防チェックリスト」を提供していますので、以下からダウンロードしてご活用ください。
適切なサービス提供方法の選定
先の腰痛リスクの評価にもとづき、適切なサービス提供方法を選定します。
例えば、自分で寝返りをうてる方や立ち上がりができる方に、体位交換や立位の全介助は必要ありませんので、一部または見守り介助に留めます。
身体介護に限らず生活援助においても、手足が動き認知面に問題がないなら、身の回りの片づけを利用者自ら行ってもらう、あるいはヘルパーと一緒に行う、など本人の残存機能を活かした介助方法を検討しましょう。
これらは自立支援介護の実践であるとともに、ヘルパーの作業負担の軽減にもつながります。
また、高負荷の家事作業が1回のサービス提供の中で連続して続く場合や、受動喫煙によりタバコの煙が充満している作業環境の場合は、日を分けて提供するなどを提案したり、訪問中は喫煙を控えてもらうよう理解を求めたり、などで対応してください。
福祉用具の活用等によるリスク低減
人力による抱え上げ介助が発生するケースでは、本来リフトなどの福祉機器の活用が望ましいですが、在宅での導入は難しいことも多いかと思います。
このような場合に訪問介護では、ホームヘルパー2人による介助を検討します。
また、ベッド上での上方移動や車いすへの移乗介助であれば、スライディングシートやスライディングボードを活用すると腰への負担を軽減できます。
スライディングボート等は、介護保険でレンタルすることも可能ですので、ケアマネジャーと相談しながら福祉用具をうまく活用しましょう。
サービス提供方法の標準化
訪問介護は、一人の利用者に対して日替わり週替わりで複数のホームヘルパーが関わることになります。
そこで重要になるのがサービス提供方法の標準化です。
注意点としては、ホームヘルパーそれぞれに体格や器用不器用など特性・特徴があり、これらを勘案した上で作業手順・方法の標準化を図る必要があります。
どのホームヘルパーが訪問しても同じ介助手順・方法で行えるように、サービス指示書(手順書)を作成して、各職員に周知しましょう。
対策②:作業方法の指導
作業方法・環境の整備を経た後は、検討した介助手順・方法をホームヘルパーが実際に行えるよう指導します。
作業方法の指導に際しては、サービス提供責任者が同行訪問する、OJT(On the Job Training)による指導が良いでしょう。先に作成したサービス指示書(手順書)をもとに、ホームヘルパーが一人立ちできるまで手取り足取り教育していきます。
また、利用者の身体状況や生活環境は日々変化していくものです。そのため、ホームヘルパーが一人立ちした後も定期的に情報収集を行い、変化があった場合は改めて同行訪問を実施するようにしてください。
事業所内で、スライディングシートやスライディングボードの使い方を学ぶ研修をするのも大切です。
対策③:ホームヘルパーの業務管理
先の「環境要因」で説明した勤務条件のとおり、休憩時間を確保できないほど訪問件数が多いスケジューリングは、適切な業務管理と言えません。
もちろん、他のホームヘルパーに欠員があったなどで一時的に訪問件数が増加することありえますが、基本的には訪問前後の移動時間を勘案した上で、きちんと休憩時間をとれるシフトに調整しましょう。
また、特定のホームヘルパーに高負担のケースが集中しすぎないように調整することも重要です。
どうしても特定のホームヘルパーのみしか受け入れない利用者の場合は、サービス提供責任者と交互に訪問する、あるいは他事業所に一部移管するなどを検討してください。
対策④:相談しやすい環境の構築
先の「心理・社会的要因」のとおり、ストレスも腰痛に大きく関わる要因となります。
しかし、利用者宅と自宅を直行直帰するホームヘルパーは、孤独を感じやすく、業務上の悩みや不安を相談しにくい職種です。
そのため、心理・社会的要因の対策として事業所側は、ホームヘルパーに「気軽に相談しても良いんだ」と思ってもらえる環境を構築する必要があります。
なにもアクションを起こさず待っているだけでホームヘルパーから相談をしてくれることは基本ありません。サービス提供責任者や管理者自らホームヘルパーへ積極的にコミュニケーションを図る姿勢が重要です。
定期的に面談の機会を設けたり、電話連絡にてサービス状況を聞いたり、ホームヘルパーが事業所に立ち寄った場面で悩みや不安はないか尋ねたり、といった積み重ねがホームヘルパーにとって相談しやすい環境の構築につながります。
ヘルパーさんが事業所に寄ったときには、お茶やお菓子でも出して話を聞いてあげてくださいね。労いの気持ちで接することが大切ですよ。
腰痛予防体操、ストレッチングを取り入れよう
訪問介護では、利用者宅の環境面の改善はなかなかに難しく、できる対策に限界があります。
施設介護のように福祉機器を導入するのも容易ではありませんし、各家庭の事情もそれぞれ異なります。
ですので、ホームヘルパー個人として、事業所として、できうる限りの腰痛予防対策を実施するとともに、足腰や背中の筋肉をケアする腰痛予防体操やストレッチングを積極的に取り入れると良いでしょう。
ここでは、場所を問わず簡単にできる腰痛予防体操とストレッチングの手順、方法を紹介します。
腰痛予防体操
腰痛予防体操のひとつとしておすすめしたいのが、厚生労働省が推奨している東京大学特任教授の松平浩氏が考案した「これだけ体操」です。
腰痛予防体操の方法は下記のとおり。
- :リラックスした状態で足を肩幅よりも少し広めに平行に開く
- :両手を骨盤後面にあてる(腰に手をあてないよう注意)
- :息を吐きながら3秒間骨盤を前に押し込みつつ、胸を開き上体をゆっくり反らす
- :3秒間キープしたらゆっくり姿勢をもとに戻す
- :③を1~2回行う
※「これだけ体操」は、ベッド上でのオムツ交換や移動介助、掃除など前屈みで作業した後、重い物を持ち上げた後、デスクワーク等で長時間座り続けた後、などに行ってください。
腰の痛みが、臀部や足先にかけて出現した場合は神経を傷つけている可能性があります。こういった症状が出た場合は、「これだけ体操」を中止して整形外科に受診してください。
ストレッチング
ストレッチングは疲労回復やけがの予防、リラクゼーション効果があるとされており、腰痛予防にも非常に効果的かつ安全だと考えられています。
主なストレッチングの方法を3パータン紹介します。
それぞれ1日1種目30秒×2~3セットを目安に、「作業の開始前後」と「入浴後」など、毎日できるときにこまめに行ってください。特に入浴後は、お湯の影響で体内の血管が拡張し、全身の血流が流れやすくなっているためストレッチの効果が表れやすいとされています。
パターン1:下腿のストレッチング①
片手で手すりや机などを支持物にして、片足で立ちます。反対側の手で足の甲を持ち、大腿の前面筋(大腿四頭筋など)をゆっくり伸ばします。
パターン2:下腿のストレッチング②
手すりや机などを支持物にして、立位で片足を大きく前に出し、反対側の下腿をゆっくり伸ばします。このとき、後ろ側の足の踵が浮かない程度にするとストレッチ効果が高くなります。
パターン3:上半身のストレッチング
手すりや、机を両手で持ち、体幹をゆっくり前屈します。このとき、しっかりと体幹を伸展させることで、より肩甲骨や脊柱の可動域が広がるため効果的です。
さいごに
訪問介護の腰痛予防対策マニュアルは以上となります。
本マニュアル内では訪問介護で腰痛が発生する要因や予防対策の方法などを解説しました。腰痛予防に関する基本的な項目はすべて網羅していますので、繰り返し読んで業務の参考にしてください。
当サイト「ヘルパー会議室」では、ホームヘルパー・サービス提供責任者の初心者向けに業務マニュアルを無料で公開しています。
この機会にあわせてチェックしておきましょう。