最近、ある利用者さんのサービスでドタキャンが続いています。
この場合にキャンセル料は請求できますか?
請求するときに気をつけることや料金の決め方を教えてほしい…。
今回はこんな疑問にお答えます。
訪問介護では、ヘルパーの訪問を忘れて外出してしまう、などの理由からサービス当日にキャンセルになることが珍しくありません。また悪質な利用者であれば、ヘルパーを使いたいときだけ使う、とキャンセルしまくるケースもあるでしょう。
こんなとき、事業所としてはヘルパーを待機させているわけですから手当を支給しなければならず、悩みどころですよね。
そこで本記事では、そもそも訪問介護においてキャンセル料金を請求しても良いのか?を解説した上で請求時の注意点を4つ説明します。
さらに本記事の後半で、金額設定の目安となるパターンを2つ紹介しますので、ぜひ最後まで読み日々の事業運営の参考にしてください。
キャンセル料の取り扱いを誤ると実地指導時に指導対象となる場合があるため要注意です!
訪問介護はキャンセル料を請求できる?根拠は?
結論、訪問介護ではキャンセル料を請求できます。
ヘルパーの訪問予定日に急なキャンセルがあったなどの場合、利用者へキャンセル料を請求しても何ら問題ありません。とはいえ、請求する・しないは自由ですので、事業所によってはキャンセル料をとっていないところも多くあります。
なお、訪問介護のキャンセル料について介護保険法等に明確な規定はありませんが、請求が可能な根拠をしいてあげるならば、厚生労働省が運営する介護サービス情報公表システムにキャンセル料の項目があること、加えて各自治体が提供している重要事項説明書のひな形にキャンセル料の記載があることの2つです。
もしキャンセル料を請求してはいけないなら、これらが間違っていることになります。したがって訪問介護においてキャンセル料は、基本的に請求しても問題ないと考えて差し支えないでしょう。
異常に高額なキャンセル料は指導対象
事業所で規定しているキャンセル料が異常に高額である場合は、利用者保護の観点から指導対象となる可能性があります。
異常に高額がどのくらいを指すのかは難しいところですが、基本的には提供予定のサービスの10割分を上限値の目安とするのが良いでしょう。
例えば、生活援助3(225単位)を予定していたなら2,250円を超えないように設定するということ。
ただ、これでも利用者からすれば高額となるため、適正と言えるかというと疑問です。一般的な料金設定の目安や方法については、後で詳しく解説しますのでそちらを参考にしてください。
総合事業の場合は、原則キャンセル料の請求はできない
総合事業は、旧介護予防訪問介護が移管された要支援の方への訪問サービスです。実地主体が市町村であるため自治体によって異なることもありますが、原則、総合事業の場合はキャンセル料を請求できません。
なぜなら、総合事業(旧介護予防訪問介護相当サービス)は、月ごとの定額制となっておりキャンセルがあったとしても事業所への収入に影響がないからです。
ですから、事業経営上のマイナスがなく、多くの市町村で「介護報酬上は定額どおりの算定がなされることを踏まえると、キャンセル料を設定することは想定しがたい」とされています。
訪問介護でキャンセル料を請求する際の4つの注意点
訪問介護でキャンセル料を請求する際には以下の4つの注意してください。
これらに不備があった場合、実地指導時に指導対象となる可能性がありますので、必ず押さえておきましょう。
- 重要事項説明書にキャンセル料について記載しておく
- 運営規定にキャンセル料について定めておく
- 請求書、領収書を発行する
- 支援経過記録に残しておく
重要事項説明書にキャンセル料について記載しておく
訪問介護は、指定基準第8条によりサービスの開始前にサービスに係る重要事項について重要事項説明書等を用いて利用者へ説明し、同意を得なければならないと定められています。
そのためキャンセル料についても重要事項説明書に記載しておき、あらかじめ利用者や家族へ説明し同意を得ておかなければなりません。
仮に重要事項説明書に記載がないのにもかかわらず、キャンセル料を徴収していた場合は基準違反となります。
またキャンセル料について記載するにあたっては、どのような条件下で発生するのかもあわせて明記するようにしましょう。
条件設定の方法については後で詳しく解説していますので、そちらを参考にしてください。
参考:【トーク例つき】訪問介護の『契約の流れ』をひな形にそって解説
運営規定にキャンセル料について定めておく
先の重要事項説明書は、指定時に作成している運営規定にもとづき作成するものです。そのため、あらかじめ運営規定にもキャンセル料について定めておき、重要事項説明書と相違がないようにしておく必要があります。
良くある実地指導時の指摘事例として「重要事項説明書にキャンセル料について記載さているが、運営規定に定められていない」といったケースがあげられます。
実際、私の事業所に実地指導が入った際にも恥ずかしながら指摘を受けたことがありますので、必ず双方の書類に相違がないかを確認してください。
もし相違があれば、重要事項説明書からキャンセルについての記載を削除してキャンセル料を徴収しないとする、あるいは運営規定の変更を自治体へ届け出るようにしましょう。
請求書、領収書を発行する
キャンセル料を請求・徴収するにあたっては、利用者へ請求書・領収書を発行し、控えを保管してください。
請求書・領収書の控えは実地指導時に確認されますので、必ず整備しておきましょう。
なお、キャンセル料の請求書・領収書は、通常のサービス利用料に関するものとまとめても問題はありませんが、生活保護受給者など利用料が発生しない利用者については別途作成、発行する必要があります。
支援経過記録に残しておく
キャンセル料の請求に際しては、利用者やその家族とトラブルに発展してしまうことがあります。
例えば、「利用料の支払いを別居の家族が行うケース」や「悪意をもって居留守によるキャンセルを多発するケース」などの場合です。
前者は、家族からすれば請求書からキャンセルを認識したために、ヘルパーが本当に訪問したのか疑わしいと苦情につながったり、後者は、ヘルパーが来ていないと嘘をつき、キャンセル料の支払いを拒否されトラブルに発展したり。
こうしたケースで大切なのが、きちんとヘルパーが訪問したことの根拠となる記録を残しておくことです。
例えば、ヘルパー訪問時に不在だったのであれば、「いつ訪問しどのくらいの時間待機していたのか」をメモに残すこと、そしてその旨を支援経過記録に記載しておきましょう。
それにより、思わぬトラブルに発展した場合でも事業所側の正当性を証明することができます。
訪問介護のキャンセル料はいくらにすべき?料金設定の方法2パターン
訪問介護のキャンセル料をいくらにすべきかについては、登録ヘルパーの時給の半額程度(500円~1000円)を一律に徴収する方法、あるいは提供予定のサービス内容に応じて100%・80%・60%等とを徴収率を定める方法のいずれかが一般的です。
その上で、前日までのキャンセル連絡や体調の急変など事情がある場合は不要とし、当日に限ってはキャンセル料金がかかる、と条件付けしておくと良いでしょう。
以下は、一般的な事業所の設定例です。キャンセル料を決める際の参考にしてください。
- キャンセル料を一律に設定するパターン
- キャンセル料をサービス内容別に設定するパターン
①:キャンセル料を一律に設定するパターン
サービスの利用をキャンセルされる場合、キャンセルの連絡をいただいた時間に応じて、下記キャンセル料を請求いたします。 | |
前日の18時までのご連絡 | キャンセル料は不要 |
前日の18時までご連絡がない場合 | キャンセル料800円(税込) |
※ただし急な体調の急変や急な入院等、やむを得ない事情がある場合はキャンセル料は請求いたしません。
キャンセル料を一律に設定するパターンでは、上記のように重要事項説明書に記載します。料金は、ヘルパーの待機費用として先のとおり500円~1000円程度を目安に設定しましょう。
②:キャンセル料をサービス内容別に設定するパターン
サービスの利用をキャンセルされる場合、キャンセルの連絡をいただいた時間に応じて、下記キャンセル料を請求いたします。 | |
24時間前までのご連絡の場合 | キャンセル料は不要 |
12時間前までのご連絡の場合 | 1提供当たりの利用者負担額の50%を請求 |
12時間前までにご連絡のない場 | 1提供当たりの利用者負担額の100%を請求 |
※ただし急な体調の急変や急な入院等、やむを得ない事情がある場合はキャンセル料は請求いたしません。
キャンセル料をサービス内容別に設定するパターンでは、上記のように重要事項説明書に記載します。自治体が提供している重要事項説明書ではたいていこのように記載されています。なお徴収率については、事業所各々で自由に設定してください。
さいごに
今回は訪問介護のキャンセル料について解説しました。
キャンセル料を徴収する際には、本記事で紹介した注意点をしっかり守った上で行うようにしてくださいね。
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