ヘルパーとして訪問している利用者さんと一緒に料理を作ってる。
これって見守り的援助の対象だよね?身体介護で算定しても良い?
具体的な例とか注意点があれば教えてほしい。
こんな疑問を感じている方は多いです。
訪問介護の「見守り的援助」は利用者が自立した生活を送る上で欠かせないサービスです。
とはいえ、見守り的援助には「どのような行為が当てはまるのか」解釈が難しいところ。
そこで、今回は訪問介護の見守り的援助について実用例や算定ポイントを初心者にも分かりやすく解説していきます。
本記事を読むことで見守り的援助の全てを理解することができます。
ぜひ参考にしてくださいね。
訪問介護の見守り的援助とは?単なる見守りはNGです。
訪問介護の見守り的援助は、利用者の「自立支援」や「ADL・IADL・QOL」向上の観点から安全を確保しつつ、常に介助できる状態で見守りを行うことを指します。
「見守り的援助」は利用者の身体に直接触れて行う介助ではないですが、身体介護として算定できます。
ざっくり言うと、自立のために「利用者とヘルパーが一緒に行う」的なイメージでOK。
ただし、単なる見守りや声掛けでは算定できませんの要注意!
見守り的援助の「実用例」
訪問介護のリアルな現場で「見守り的援助」がどのように利用されているのかを紹介しておきます。
「利用者Aに対してヘルパーが調理を行っていたが、以前のように自分でも調理を行えるようになりたいと意欲が向上してきた。そのため、利用者Aが主婦としての役割を取り戻すことを目的として調理動作をヘルパーと一緒に行うことになった。」
このように「利用者の自立のために、その手段としてヘルパーと一緒に行う」といったケースが多いです。
【厚生労働省の定める】見守り的援助の15項目
他にも、厚生労働省では下記の15項目を見守り的援助の例としてあげています。
【自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助】
- ベッド上からポータブルトイレ等(いす)へ利用者が移乗する際に、転倒等の防止のため付き添い、必要に応じて介助を行う。
- 認知症等の高齢者がリハビリパンツやパット交換を見守り・声かけを行うことにより、一人で出来るだけ交換し後始末が出来るように支援する。
- 認知症等の高齢者に対して、ヘルパーが声かけと誘導で食事・水分摂取を支援する。
- 入浴、更衣等の見守り(必要に応じて行う介助、転倒予防のための声かけ、気分の確認などを含む)
- 移動時、転倒しないように側について歩く(介護は必要時だけで、事故がないように常に見守る)
- ベッドの出入り時など自立を促すための声かけ(声かけや見守り中心で必要な時だけ介助)
- 本人が自ら適切な服薬ができるよう、服薬時において、直接介助は行わずに、側で見守り、服薬を促す。
- 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う掃除、整理整頓(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)
- ゴミの分別が分からない利用者と一緒に分別をしてゴミ出しのルールを理解してもらう又は思い出してもらうよう援助
- 認知症の高齢者の方と一緒に冷蔵庫のなかの整理等を行うことにより、生活歴の喚起を促す。
- 洗濯物を一緒に干したりたたんだりすることにより自立支援を促すとともに、転倒予防等のための見守り・声かけを行う。
- 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行うベッドでのシーツ交換、布団カバーの交換等
- 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う衣類の整理・被服の補修
- 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う調理、配膳、後片付け(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)
- 車イス等での移動介助を行って店に行き、本人が自ら品物を選べるよう援助
○上記のほか、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うもの等であって、利用者と訪問介護員等がともに日常生活に関する動作を行うことが、ADL・IADL・QOL向上の観点から、利用者の自立支援・重度化防止に資するものとしてケアプランに位置付けられたもの
見守り的援助を実施する上で注意したい6つのポイント
ここでは訪問介護の見守り的援助を実施する上で注意してほしいポイントを6つ紹介します。
リアルに役立つように厳選していますのでぜひご参考ください。
- 見守り的援助には適切な「アセスメント」が必須
- 利用者、家族への「同意」が必要
- 「ケアプランへの記載」は必須
- リスクを考えた「環境整備」が必要
- 利用者の「体調を考慮」して実施する
- 他の訪問介護事業所と「サービスを統一」して実施する
① 見守り的援助には適切な「アセスメント」が必須
ヘルパーが見守り的援助を実施する際は、利用者へのアセスメントを正しく行う必要があります。
- 利用者の「ニーズ」を把握する
- 利用者の「行為分析」をする
この2点を中心にアセスメントします。
行為分析は利用者の「できる行為」「できない行為」「介助すればできる行為」を見極めるために行います。
ニーズを把握したうえで、どの行為であればヘルパーと一緒に行うことで自立につながるのか?を検討することで見守り的援助を効果的に実施できるのです。
アセスメントの手法について下記で詳しく解説してますのでご参照ください。
>>【訪問介護のアセスメント】3つの目的と実施フローを5stepで解説
② 利用者、家族への「同意」が必要
見守り的援助の実施にあたり利用者・家族への説明と同意が必要となります。
ですが、見守り的援助は利用者・家族から拒否されることが多いです。
理由は利用者の「労力が増える」&「利用料が増える」ことが一番の要因です。
特に今まで生活援助でヘルパーを利用していた方からすると「損している」と感じます。
このような場合は、まず期間限定で始めてみて、体験の中で効果を「実感」してもらうと良いです。
例をあげてみましょう。
今までしてきた掃除を自分ひとりでできるようになりたい。
といったニーズを持っている利用者であれば下記のように伝えてみます。
○○さんの状態も落ち着いてきたので、ヘルパーと一緒に掃除をしてみませんか?
例えば、拭き掃除なら私がバケツに水を組むので○○さんはできる範囲で拭き掃除をしてみる。私も横について手伝いますので…
ただ介護サービスの決まりで、この場合見守り的援助と言いまして料金が少し高くなります。ざっと計算すると○○円高くなる感じですね。いかがでしょう?
う~ん・・・料金が高くなるのはちょっと・・・
と料金が高くなることを渋っている様子であれば下記のように伝えます。
そうですよね。料金が高くなるので私も無理にはすすめません。
では、とりあえず3カ月だけでもやってみるってのはどうですか?3カ月やってみて効果が無かったら元に戻しても良いですし。
というのも、もし今の状態で一人で掃除をするとなると転倒してしまうのでは?と恐れてます。骨折でもしたら、今の生活すらできなくなってしまうし、せっかく安定してきたのにもったいないなと感じてしまいます・・・
こんな感じで進めてみるのも良いかと思います。
ポイントは下記のとおり。
- 「3カ月」と期間を決めておくとOKがもらいやすい
- 「嫌なら止めれる」と安心して始めやすい
- 「転倒が怖い」⇒見守り的援助を行わないと発生するデメリットを伝える
その利用者にあった方法で進めてみてくださいね。
ちなみに見守り的援助は開始してしまえば継続してくれるパターンの方が多いです。
③「ケアプランへの記載」は必須
訪問介護はケアプランに基づいてサービス提供を行います。
そのため、ケアマネに見守り的援助の必要性を認めてもらった上でケアプランに記載してもらう必要があります。
ただし見守り的援助はケアマネから敬遠されることが多いです。
理由としては下記のとおり。
- 単位数が上がる
- 「ヘルパーは何もしていない、利用者にさせているだけ」と勘違いしている
- 見守り的援助を「金儲け」の手段だと悪く捉えている
すべてのケアマネが該当するわけではないですが、少なからず上記の理由から敬遠されるケースはあります。
このような場合は、単に「金儲け」のために提案しているわけではなく、プロとしてアセスメントした結果、見守り的援助が利用者の自立にとって必要な支援であることを説明しましょう。
普通のケアマネであれば「利用者にとって良いこと」であれば話を聞いてくれるはずです。
④ リスクを考えた「環境整備」が必要
見守り的援助では利用者にとって様々なリスクが発生します。
- 一緒に掃除をしている際に「転倒」する
- 一緒に調理をしている際に「包丁で指を切る」「火傷する」
などのリスクを考えた上で、リスクマネジメントの観点から環境整備をする必要があります。
⑤ 利用者の「体調を考慮」して実施する
利用者の体調は日によってムラがあります。日によっては何度声掛けをしても拒否されるパターンもあるでしょう。
利用者には無理をさせない範囲で日によって「共に行う」ではなく「代行」に変更することも必要です。
このような事態は当然発生しますので、あらかじめ訪問介護計画に落とし込んでおきましょう。
⑥ 他の訪問介護事業所と「サービスを統一」して実施する
利用者によっては2~3事業所の訪問介護が関わっているケースもあります。
このような場合、注意しておきたいのは下記の2つ。
- 訪問介護Aは見守り的援助を行っているけど訪問介護Bは行っていない
- 訪問介護Aと訪問介護Bの見守り的援助で行う内容・範囲が違う
上記の状態だと利用者は混乱しますし、見守り的援助の効果が得られない可能性があります。
見守り的援助を行うのであれば利用者にかかわる全事業所で共有しておくようにしましょう。
見守り的援助に「取り入れやすいサービスは○○」
結論、見守り的援助に取り入れやすいサービスは「掃除・整理整頓」です。
理由は掃除・整理整頓はサービスの頻度が多く、かつ高い能力を必要としないからです。
例えば、無気力な利用者でも「まずは身の回りの整理整頓をヘルパーと一緒に」といったようにスムーズに介入できます。
下記は「エム・アール・アイ リサーチアソシエイツ株式会社」が、見守り的援助について全国の訪問介護に調査した15項目の内訳です。(平成31年)
「訪問介護におけるサービス提供状況に関する調査報告」より参照
上記のとおり⑧「共に行う掃除・整理整頓」は40.1%と全国的にみても高い頻度になっています。
このことからも、やはり見守り的援助には「掃除・整理整頓」が取り入れやすいと言えますね。
まとめ
今回は訪問介護の見守り的援助について解説しました。
見守り的援助は利用者が自立した生活を送る上で欠かせないサービスです。
ぜひ本記事を参考に、有効活用してもらえたらと思います。
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