インターホンを押しても利用者さんから返事ない…。
留守っぽいけど、こういう時はどうしたらいいの?
本人さんが家にいないのに掃除をしてほしいと言われた…。
こういう時は掃除をしてもいいの?
今回は、こんな疑問にお答えすべく、訪問介護の不在時対応における算定上の注意点や留守時の対応フローを紹介します。加えて、事業所として事前に取り決めておくべきことも4つ解説していますので、ヘルパーに限らず管理者やサ責の方々も参考にしてください。
利用者不在時のサービス提供は、訪問介護費の算定対象外
前提として、自宅において利用者不在時の訪問介護サービスの提供は、介護保険の対象となりません。
これは、訪問介護は単に掃除や調理などの作業を行うだけでなく、安否確認や健康チェックもあわせて行うものとされているからです。
したがって、例えばデイサービスの通所時や入院中など、どのような状況であっても利用者が自宅に不在である場合は、たとえヘルパーが作業を行ったとしても報酬算定できないということになります。
他にも、ヘルパーの訪問中に利用者から「ちょっと出かけてくるから、その間に掃除をしといて」と言われることがあるかと思います。
この場合も、同様の理由から利用者不在時のサービス提供時間は算定対象外となりますので、「利用者にサービス提供終了後に出かけるよう促す」あるいは「その時点でサービス提供を終了する」等の対応が必要です。
報酬算定しない場合であっても不在時訪問はすべきではない
利用者不在時のサービス提供は、あくまで訪問介護費の算定ができないだけであって、利用者からの依頼のもと無報酬(または自費サービス)で行うのであれば作業自体の実施は可能です。
とはいえ利用者不在の作業は、トラブルになる可能性が高く、無報酬(または自費サービス)であっても行うべきではないと考えます。何らかの事情で利用者不在時の作業が必要なのであれば、基本的に家族等へ対応してもらいましょう。
訪問介護の利用者不在時(応答がない場合)の対応フロー
これまで、前提知識として利用者不在時の報酬算定およりサービス提供の在り方について解説しました。
では、ヘルパーが訪問した時にインターホンを鳴らしても利用者から応答がない場合は、どのように対応すれば良いのでしょうか。
訪問時に利用者から応答がない場合の対応は、緊急事態も含めてあらゆる状況を想定しておくことが大切です。事業所ごとに取り決めがあると思いますが、ここでは対応フローの一例を通常時と緊急時に分けて紹介します。
通常対応
- STEP1ヘルパー⇒事業所へ連絡
- 訪問時にインターホンを鳴らしても応答がない場合は、事業所へ連絡し、利用者から応答がない旨を伝える。
- STEP2事業所⇒利用者などへ連絡
- ヘルパーから連絡を受けた事業所は、ヘルパーにその場で待機するよう伝え、利用者へ連絡する。
- 利用者に連絡がつながらない場合は、家族やケアマネ等へ連絡し、利用者から応答がない旨を伝える。
- STEP3事業所⇒ヘルパーへ指示
- ヘルパーに15分~20分程度の待機後、不在票(※)をポスト等へ投函するよう指示する。
- 指示を受けたヘルパーは、指示のあった規定時間を過ぎても利用者から応答がない場合は、不在票を残して帰宅する。
※不在票は、訪問日時・事業所名・ヘルパー氏名・待機時間・不在票に気づいたら事業所へ連絡をしてほしい旨などをメモ用紙等に記載したもの。
- STEP4経過記録の記入
- 事業所は、その利用者の支援経過記録等に不在キャンセルとなった旨、キャンセルとなった経過、家族やケアマネ等との連携過程などを記入する。
緊急対応(家の中で倒れている等のおそれがある場合)
- STEP1ヘルパー⇒事業所へ連絡
- 訪問時にインターホンを鳴らしても応答がない場合は、事業所へ連絡し、利用者から応答がなく家の中で倒れているかもしれない旨を伝える。
- STEP2事業所⇒関係者などへ連絡
- ヘルパーから連絡を受けた事業所は、ヘルパーにその場で待機するよう伝え、家族やケアマネ等へ利用者から応答がなく家の中で倒れているかもしれない旨を伝える。
- 家族等が合い鍵を持っている場合は、来訪してもらえるか確認する。
- 家族等の来訪が難しい、または家族がいない場合は、物件の大家や管理会社へ連絡し、あわせて110番通報する。
- STEP3関係者と一緒に入室する
- 家族が合い鍵を持っている場合であって家族が来訪できる場合は、家族の到着を待ち、一緒に入室する。(利用者の状況に応じて救急搬送など必要な対応を行う)
- 物件の大家や管理会社、警察などの到着を待ち、警察の指示のもと鍵を開けて一緒に入室する。(利用者の状況に応じて救急搬送など必要な対応を行う)
- STEP4経過記録の記入
- 事業所は、STEP1~3の経過を記録する。(ケアマネが同席していない場合は、経過をケアマネへ報告する)
不在時対応について事前に取り決めておくべき4つのこと
ヘルパーの訪問時に利用者から応答がない場合に、適切な対応をするためには、利用者・家族と事業所間で事前の取り決めを行う必要があります。
主に取り決めておくべき事項は以下の4つです。
これらを事前訪問時や契約時にケアマネも含めて話し合っておきましょう。
- 連絡先の入手と説明
- キャンセル料の有無、発生の基準・料金の説明
- 訪問予定カレンダーの準備
- 鍵預かりの有無(またはキーボックス活用の有無)
①連絡先の入手と説明
ヘルパーの訪問時に利用者から応答がない場合に、どういったスキームで対応するのかを先の「訪問介護の利用者不在時(応答がない場合)の対応フロー」を参考に話し合います。
そして、スキーム構築にあたり必要な連絡先(家族や知人、物件の大家・管理会社)を入手しておきます。
②キャンセル料の有無、発生の基準・料金の説明
予定していたサービスが不在キャンセルとなった場合は、キャンセル料金を利用者から徴収できます。
キャンセル料を徴収するか否かは事業所の考え方次第ですが、徴収するのであれば、その旨とキャンセル料が発生する基準・料金を利用者・家族などへ説明しておきましょう。
キャンセル料の金額設定および基準設定については、以下のコラムで解説していますので、こちらを参考にしてください。
⇒訪問介護のキャンセル料はいくら?請求時の注意点と料金設定の方法を解説
③訪問予定カレンダーの準備
ヘルパーがいつ訪問するのかを忘れる恐れがある利用者の場合は、訪問予定日時を記したカレンダーを渡しておくと良いでしょう。予定表を渡したからといって完全に不在キャンセルを防ぐことはできませんが、多少の予防効果は期待できます。
※当サイト「ヘルパー会議室」では週間・月間カレンダーのひな形を無料提供しています。必要な方は以下からダウンロードしてご活用ください。
④鍵預かりの有無(またはキーボックス活用の有無)
身体機能や認知機能の低下により自力で開錠することが難しい利用者や、急変等の緊急事態が想定される利用者の場合は、「事業所で合い鍵を預かる」または「キーボックスの活用」を検討します。
複数の訪問介護事業所や他職種が関わるケースでは、合い鍵をたくさん作る必要があり負担になりますので、キーボックスを活用すると良いでしょう。
なお、事業所で鍵を預かる場合は、利用者や家族と「鍵預かり書」を取り交わしてください。加えて、事業所内で保管した鍵をいつ誰が持ち出したのかが分かる「持ち出し管理表」などを作成し、きちんと管理しましょう。
※当サイト「ヘルパー会議室」では鍵預かり書と持ち出し管理表のひな形を無料提供しています。必要な方は以下からダウンロードしてご活用ください。
さいごに
今回は、訪問介護の不在時対応について、報酬算定の可否と留守時の対応フローを解説しました。
繰り返しになりますが、訪問介護は利用者不在時のサービス提供を行うことはできません。また、訪問時に利用者から応答がない場合は、緊急時も想定したスキームをあらじめ構築した上で対応にあたってください。
当サイト「ヘルパー会議室」では、ホームヘルパー・サービス提供責任者の初心者向けに業務マニュアルを無料で公開しています。
この機会にあわせてチェックしておきましょう。