訪問介護の外出介助には範囲があると聞いたのですが、どこまでOKなの?
あと外出介助をするときの注意点とかも教えてほしい。
ヘルパー会議室では、こんな悩みを解決すべく「訪問介護の外出介助マニュアル」を作成しました。
本マニュアルは訪問介護における外出介助の算定範囲や、ヘルパーが押させえておくべき外出介助の基本をまとめた入門書です。
訪問介護事業所に整備しておくマニュアルや研修資料としても使えますので、ヘルパーに限らず管理者やサービス提供責任者の方々もぜひご活用ください。
ちなみに通院介助については注意点がとても多いため別途マニュアルを作成しています。
【訪問介護の通院介助マニュアル】サービス手順や算定方法を解説を参考にしてください。
訪問介護の外出介助とは
訪問介護の外出介助とは、利用者が日常生活上で必要な外出にかかる移動等の介助を提供するサービスです。
具体的には老計第10号によると、目的地に行くための準備や居宅から目的地間の移動介助、公共交通機関への乗降介助、目的地内での移動・手続きの援助などとされており、これらを利用者の状態・状況に応じて提供していきます。
参考:老計第10号とは?
本来、訪問介護は、介護保険法第8条により「居宅で行われるもの」と定義されているため、利用者の居宅以外で行われるものは認められません。
しかし、外出介助に限っては居宅を始終点とした一連のサービス行為とみなされるため訪問介護費の給付対象になるとされています。
外出介助の必要性
加齢や障害により一人での外出が難しくなる方は少なくありません。
それは同時に、通院や生活品の購入、あるいは役所への手続きなど外出の手助けを必要とするニーズも高まることを意味しており、外出介助は、利用者が安心して日常生活を営むうえで欠かせないサービスとなります。
また、閉じこもりがちな方にとっては、外の空気に触れることで気分転換になったり、他人とのふれあいや自分の目で商品を選ぶという楽しみを感じられる貴重な機会にもなるでしょう。
ですので、利用者のQOL(生活の質)を高める観点からも、定期的な外出の頻度を保つことは非常に重要であると言えます。
訪問介護の外出介助における範囲
訪問介護の外出介助は、どのような用途であっても外出できるわけではありません。
訪問介護はあくまで介護保険法にもとづく社会サービスです。そのため外出介助として認められる目的地の範囲が定められており注意が必要です。
ここでは訪問介護の外出介助の範囲を「算定できる目的地」と「算定できない目的地」に分けて紹介します。
※なお本項で紹介するものは例であり自治体によって解釈が異なる場合があります。実際の運用にあたっては各自治体への確認をお願いします。
外出介助として「算定できる」目的地および支援の範囲
- スーパー等への日常必需品の買い物同行
- 医療機関への通院(院内介助の算定は原則不可)
- 官公署への手続き(国、都道府県、市町村等の行政機関等)
- 選挙の投票
- デイサービスや介護保険施設等への見学
- 郵便局、銀行への預貯金の引き出し
- 散歩(見守り的援助としてケアプランに位置付けられているもの)
参考:銀行へ同行時の注意点
ちなみに「利用者家族のお見舞い」も、頻回ではなく、日常生活上必要だと認められた場合に算定可能としている自治体が多いです。(知人のお見舞いは基本認められません)
外出介助として「算定できない」目的地および支援の範囲
- 病院⇔病院への転院の付き添い
- 理容、美容院への付き添い
- 冠婚葬祭、お墓参りの付き添い
- 友人宅への付き添い
- 趣味・娯楽(カラオケ、パチンコなど)のための外出
- 外食の付き添い
- 日用必需品以外の買い物同行
- 気晴らしのためなどの単なる散歩
- リハビリを目的とした歩行訓練
参考:買い物同行の範囲
これらは基本的に認められないため、介護保険外の自費サービス等の活用を検討してください。ただし、美容院への付き添いなどは必要性が認められれば自治体によって算定できる場合がありますので確認してみましょう。
訪問介護の外出介助7つの基本
訪問介護の外出介助は、以下7つの基本原則にもとづき実施します。
\ 外出介助7の基本 /
- 声かけ
- 目的地の情報収集
- 自立支援の視点
- 持ち物確認の徹底
- 事故の防止
- 行動を急かさない
- 雨天時、体調不良時の取り決め
基本①:声かけ
声かけは、外出介助に限らずすべての介助の基本です。
これから外出する旨を伝え、同意を得てから実施します。またこの際には、外出先や外出の目的なども理解できるように伝えると良いでしょう。
例えば「これから○○スーパーに夕食の食材を一緒に買いに行きませんか?」や「お薬が切れていますので、○○病院に行きましょう。今日は○○先生が検査すると仰っていましたよ」などといった具体にです。
加えて、開始時だけでなく外出中も、「段差がありますので、すこし車いすを傾けますね」、「お疲れではないですか」などと気分確認も含めて声をかけながら外出介助を進めましょう。
基本②:目的地の情報収集
利用者によって外出介助の目的地はさまざまですが、いずれにしても外出先の建物内の構造をあらかじめ把握しておくことがとても重要です。
高齢になると短い移動であっても疲労を感じたり、トイレが近くなったりします。ですので、その建物内に座って休めるベンチなどがあるか、またある場合はどこに設置されているのか、そしてトイレはどこにあるのかなどを事前に確認しておきましょう。
また車いすで外出する場合は、建物内外を問わず「道幅」にも気を配らなければなりません。
一般的な車いすであれば約80cmの幅があれば問題なく通過できますので、極端に狭い箇所がないかチェックしておいてください。
基本③:自立支援の視点
介護保険の基本理念は、自立支援。利用者自らできることを減らさず、可能であれば増やしていけるよう支援するのがヘルパーに求められる役割です。
自立支援を適切に実践するためには、利用者の身体機能をアセスメントし「できる行為」と「できない行為」を明らかにする必要があります。
例えば買い物同行であれば、以下8動作の連続で成り立ちます。
- 買うものを決める
- 買い物をする店を決める
- 持ち物を準備する
- 目的地まで移動する
- 買うものを選ぶ
- お金を支払って購入する
- 自宅へ帰る
- 買った物を片付ける
これらの動作に対して利用者の現有能力を照らし合わせ、その方の「できる行為」と「できない行為」を把握します。そして、できる行為は利用者自ら行ってもらい、できない行為はヘルパーが介助する、というように自立支援を展開していきます。
例えば
- 移動の介助のみヘルパーが行い、商品を選んだり金銭を支払ったりは利用者自ら行う
- ヘルパーと一緒に買った物を所定の位置へ片付ける
- 外出する前に買うものをヘルパーと一緒に考えて買い物リストを作成する
といったように。
認知症があっても、身体機能が低下していても、すべての機能が失われているわけではなく、何かしらの機能は残っているはずです。利用者のできないことばかりではなく、できることにも目を向けて自立につながる支援を実践していきましょう。
基本④:持ち物確認の徹底
目的地に到着してから「○○を持ってくるのを忘れた…」といったことは良くある話です。
こうなってしまっては一度家に取りに帰らなければならず、大きなタイムロスが発生してしまいます。
通院であれば診察券や医療証、お薬手帳、財布など必要な持ち物をきちんと確認してから家を出ましょう。
また、自立支援の観点から利用者自ら持ち物を準備するケースもあるかと思いますが、こうした場合であっても「忘れ物はありませんか」などと声をかけ、確認を促すようにしてください。
基本⑤:事故の防止
外出介助では、外に出るわけですから屋内での介助に比べて事故の発生リスクが高まります。
例えば、段差につまづいて転倒したり、車いす介助の操作不備により転倒させてしまったり、あるいは道中を行きかう人にぶつかってケガをさせてしまう可能性もあるでしょう。
また、認知機能の低下や視力低下により信号を正しく認識できない方もいます。こうしたケースでは、信号を無視して交通事故にみまわれるといったリスクも懸念されますので、適切な誘導が必要です。
外出介助にあたるヘルパーは、事故が発生するかもしれないことを念頭におき、常に細心の注意を払って道中の段差・障害物などの確認や適切な介助、誘導を心がけておきましょう。
基本⑥:行動を急かさない
訪問介護は限られた時間の中でサービスを提供するため、外出先で時間が押すと焦ってしまいがち。
とくに通院の介助は時間が読めないことが多く、「次の訪問先に遅れてしまう」とヒヤヒヤすることもあるのではないでしょうか。
しかし、先のとおり外出中は事故の発生リスクが高く、利用者を急かすと思わぬ事故を誘発します。
決して慌てさせず、利用者のペースに合わせて外出介助を進めましょう。
もしサービス予定時間を超過することがあるのなら、サービス提供責任者へ連絡を入れて次の訪問先を調整するようにしてください。
基本⑦:雨天時、体調不良時の取り決め
雨が降っていようが、体調が悪かろうが「どうしても外出したい」といった利用者もいるかもしれません。
しかし基本的には、雨天時や体調不良時の外出は控えるべきだと言えます。
ですので、このような場合はあらかじめ代案を定めておくのが基本です。
買い物同行を予定していたのであれば、雨天時や体調不良時はヘルパーによる代行に変更するとケアプランおよび訪問介護計画に定めておきます。
また通院の場合であっても、別日に振り替えたり、薬処方の受け取りのみに切り替えたり、などの対応が望ましいでしょう。(薬処方のみは医師の了解が必要です)
訪問介護の外出介助でよくある質問
訪問介護の外出介助にまつわるよくある質問をまとめました。
外出介助で「建物内のみ」の介助はできる?
外出介助の算定対象となるのは「居宅において行う目的地(医療機関など)に行くための準備を含む一連のサービス行為」とみなされる場合に限ります。
ですので利用者の居宅を始点・終点にする必要があり、例えば「目的地に集合して建物内のみ介助を行う」、「駅やバス停に集合して外出介助を行う」といった場合は算定対象となりません。
外出介助で「銭湯」に行くことはできる?
銭湯への外出介助は、自治体によって可否が異なります。
例えば、自宅内にお風呂がない、あるいは使用できない場合であって、デイサービス等による入浴が難しく、かつ同性ヘルパーによる介助であれば可能としている自治体もあります。
外出介助で「散歩」に行くことはできる?
気晴らしを目的とした単なる散歩やリハビリを目的とした歩行訓練は、原則として認められません。
ただし、自立支援のための見守り的援助としてケアプランに位置付けられた散歩であれば、自治体によっては認められる場合があります。
外出介助時の交通費はだれが負担するの?
厚生労働省によれば、バスや電車等の交通機関の利用にかかる料金については、外出する利用者と交通機関との間で支払いが行われるべきものであり、訪問介護事業所が肩代わりすることは、指定基準第20条の観点から、不適当とされています。
したがって外出介助時の交通機関の料金は、基本的にヘルパーの分も含めてすべて利用者が負担します。
遠距離にある病院等ヘの通院外出介助の申込であることをもってサービス提供を拒否することは、正当な拒否事由に当たる?
指定基準第9条で、訪問介護は正当な理由なくサービス提供を拒否してはならないこととされており、この正当な理由には「①ヘルパー人員の不足により利用申込に応じきれない場合」、「②利用申込者の居住地が通常の事業の実施地域外にある場合」、「③その他利用申込者に対し自ら適切な指定訪問介護を提供することが困難な場合」が該当します。
そのため、「目的地が遠距離である」ことは提供拒否の正当な理由にはなりません。したがって、単に遠距離にある病院等ヘの通院外出介助であることを理由としてサービス提供を拒否した場合、基準違反となりますので注意してください。
※運営基準等に係るQ&Aについて(平成13年3月28日)を参照
さいごに
訪問介護の外出介助マニュアルは以上となります。
本マニュアルで外出介助の基本はすべて網羅しているはずですので、繰り返し読み、適切なサービス提供に努めましょう。
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