サービス提供責任者の仕事は、訪問介護への「サービス申し込み」対応から始まります。
対応の仕方を間違えると、事業所の評判が悪くなるだけではなく、あらぬトラブルに発展する恐れもある超重要な業務のひとつ。
とはいえ新人のサービス提供責任者からすると
- 相手に何を確認すれば良いかわからず焦ってしまう…
- サービス申し込みを受けた後の流れってどうすれば良いの?
- サービス申し込みを断る時の注意点ってある?
このような不安や疑問を抱えている方は多いですよね。
そこで今回は訪問介護の「サービス申し込み対応ガイド」を作成しました。
本記事では
- 訪問介護のサービス申し込みはどこからくるのか?
- 申し込み“ 受付時 ”に確認すべき9項目
- 申し込み“ 受付後 ”に行うべきこと
を初心者にも分かりやすく解説しています。
本記事を読むことで、いざサービス申し込みがあったとき、焦らずスムーズな対応ができるでしょう。
また相談受付票のテンプレートを無料でダウンロードできますのでご活用ください。
訪問介護へのサービス申し込みはどこから依頼がくる?
介護保険の訪問介護へのサービス申し込み依頼は、ほとんどがケアマネからきます。利用者本人や、その家族から相談されるケースもありますが、これはかなり稀。
対して、障害福祉サービスの居宅介護・重度訪問介護などでは、障害者相談支援専門員(障害福祉版ケアマネ)からの依頼が多いものの、利用者本人・家族、病院の相談員などさまざまなルートから依頼があります。
サービス申し込みの手段は、双方どちらにせよ「電話」での相談依頼が大半です。
サービス申し込みの対応は「相談受付票」を活用する
サービス申し込みへの対応は「相談受付票」を活用してください。
相談受付票にそって確認していくことで、誰が受付をしても同じ対応ができるメリットがあります。
相談受付票のテンプレートを下記から無料ダウンロードできますので欲しい方はどうぞ。
訪問介護のサービス申し込み「受付時」にチェックすべき9項目
では、実際にサービス提供責任者は受付時になにを確認すべきか?についてです。
先ほど相談受付票にそって確認していくとお伝えしました。ですが、すべての項目を受付段階で聞きとる必要はありません。
受付時点では「サービスを受けるor断る」の判断材料となる項目を確認します。
具体的には下記9項目をチェックしましょう。
- 相談依頼者の氏名と連絡先
- 利用者の氏名・年齢・性別
- 介護度or障害支援区分
- 心身の状態(現疾患、既往歴、ADL)
- 希望するサービス内容
- 希望するサービス曜日・時間
- 利用者の住所
- ヘルパーの希望
- サービス開始希望日
①~⑨を確認する順番は前後してもOK。
相手との話の流れで9項目を聞ければ良いです。
① 相談依頼者の氏名と連絡先
誰からサービス申し込み依頼があったのか?そして、相手の連絡先を確認します。
当然ながらサービスを受けるor断る、どちらにせよ返答の連絡が必要です。
- 折り返しの連絡を入れようとしたが連絡先を聞きそびれた・・・
- 相談依頼してきたケアマネってなんて名前だっけ・・・
初心者のサービス提供責任者は、このような状況が発生しがちですので注意しておきましょう。
② 利用者の氏名・年齢・性別
利用者の氏名・年齢・性別を確認します。
これについては言うまでもありませんが、基本中の基本です。必ず確認しておきましょう。
③ 要介護度or障害支援区分
利用者が認定を受けているのかを確認します。
- 介護保険サービスの場合は「要介護1~5・要支援1,2」
- 障害福祉サービスの場合は「障害支援区分1~6」
相談依頼者がケアマネであれば認定を受けていると確実に分かりますが、利用者本人やその家族からの相談依頼だと、認定を受けていないことが意外と多いです。
もし認定を受けていない場合、高齢者であれば地域包括支援センターへ、障害者であれば基幹相談支援センターへ連絡し、つなぎましょう。
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談・権利擁護・介護予防ケアマネジメントなどを行う機関を指します。(全国の市町村に設置)
基幹相談支援センターは障害者やその家族へトータル的なサポートを行う相談窓口となる機関です。(全国の市町村へ設置)
ざっくり言うと「地域包括支援センター」の障害福祉版が「基幹相談支援センター」だと理解しておけばOKです。
④ 心身の状態
利用者の心身の状態、主に現疾患や既往歴、ADLなどを確認します。
例えば「体が大きい」「認知症による見当識障害がある」「感染症がある」「脳梗塞の後遺症で片マヒがある」など利用者によって身体状況はさまざま。
受付時に確認しておくことで、ヘルパーが対応できるケースか否かの判断材料となるため必須です。
⑤ 希望するサービス内容
利用者がどのようなサービスを希望しているのかを確認します。
主に
- 身体介護なのか(排泄・入浴・食事・外出・専門的調理など)
- 生活援助なのか(掃除・買い物・調理・洗濯など)
- 医療行為はあるか(喀痰吸引、経管栄養など)
を確認しておくと良いでしょう。
これも先述した「③身体状況」と同様に、ヘルパーが対応できるケースか否かの判断材料となるため必須です。
⑥ 希望するサービス曜日・時間
利用者が希望するサービス曜日と時間を確認します。
サービス曜日・時間はスケジュール調整をする上で欠かせない情報です。
またこの際、単に曜日・時間を聞くだけではなく「その曜日・時間を希望する背景」や「その曜日・時間以外の選択肢はないか?」を確認しておくと良いでしょう。
例えば
- 1.デイサービスが月・水・金なので、訪問介護は火・木に来てほしい
- 2.月・金のAM〇時とPM〇時にデイサービスの送りだしと迎え入れを訪問介護にしてほしい
- 3.生活リズムを整えるため、午前〇時に訪問介護に来てほしい
- 4.訪問リハが午前〇時に来るので、訪問介護は午後〇時からにしてほしい
- 5.特に希望はないので訪問介護にあわせる
など利用者によって、そのサービス曜日・時間を希望する背景はさまざま。
背景を確認できたら「どの程度なら時間の前後は可能か?」「他の曜日は可能か?」などを聞きます。
例えば、1であれば時間指定がないので訪問介護の都合に合わせてもらえるかもしれませんし、2であればデイサービスとの調整で、多少の時間前後は可能かもしれません。
このように「曜日・時間の選択肢を増やす」ことを意識しておくと、スケジュール調整がしやすくなります。
⑦ 利用者の住所
利用者の住所を確認します。
その住所は「訪問が可能な範囲なのか」、そして「スケジュール調整が可能かどうか」の判断材料となるため必ず聞いておきましょう。
ただし受付の段階では、個人情報保護の観点から「〇丁目」までの情報でOKです。
⑧ ヘルパーの希望
利用者がどのようなヘルパーを希望しているのかを確認します。
良くあるのが「男性限定」or「女性限定」といったヘルパーの希望。
例えば
- 体が大きい利用者なので男性ヘルパーに来てほしい
- 女性の利用者なので女性ヘルパーの方が安心できる
- 同性のヘルパーは苦手なので異性にしてほしい
など利用者によって男女ヘルパーの希望理由はさまざまです。
他にも性別だけではなく「話をゆっくり聞いてくれるヘルパーが良い」などのヘルパーと利用者の相性を考えて依頼してくるケアマネもいます。
相性については実際に利用者に会わないと分からない要素が大きいですが、男女ヘルパーの希望は、スケジュール調整をする上で必須となるため必ず確認しておきましょう。
⑨ サービス開始希望日
利用者がいつからサービスを開始したいのかを確認します。
例えば
- 今は入院中で、退院が〇日なので〇日からサービス開始したい
- 今まで介護をしていた家族が倒れてしまったので、すぐにでもサービス開始したい
- 急ぎではないので訪問介護の都合に合わせる
など利用者の置かれている状況はさまざま。
希望開始日もスケジュール調整に欠かせない情報となるため必ず確認しておきましょう。
訪問介護のサービス申し込み「受付後」に行うべきこと
ここからは、先ほどの9項目を確認した「後」、サービス提供責任者はなにをするのか?について解説します。
サービス申し込みを「受けるor断る」の判断
まず、依頼されたサービスに対応できるヘルパーはいるか?そしてスケジュール調整は可能か?を管理者と共に検討します。
ただし、訪問介護は省令により「正当な理由なくサービスの申し込みの受け入れを拒否できない」ため要注意。
正当な理由とは
- ヘルパーの人員不足により対応できない場合
- 利用者の住所が、事業所の実施地域外である場合
- その他、利用者に対して適切なサービスを提供することが難しい場合
などがあげられます。
例えば「要介護度が低いから」や「介護報酬が安いから」といった理由での拒否はできません。
これらを考慮した上でサービス申し込みを「受けるor断る」の判断を行いましょう。
サービス申し込みを「受けるor断る」の返答
次に、依頼者へサービス申し込みを「受けるor断る」の返答をします。
基本的には依頼があった当日中、遅くとも翌日には返答してください。
依頼者がケアマネである場合、返答が遅いと仕事が進みません。すぐにでもサービスを開始したい利用者なら尚のこと、早く受け入れ先の訪問介護を探さなければならないため“超速”で返答が基本です。
サービス申し込みを「受ける」場合の流れ
サービス申し込みの調整ができ「受ける」ことになった場合の流れは下記のとおりです。
- STEP1追加情報の収集
サービス申し込みの受付時点で、確認できていない情報を収集します。
例えば
- 利用者の負担割合(介護保険の場合)
- 利用者の上限負担額(障害福祉の場合)
- 住所の詳細
- 主治医、医療機関
- より詳しいアセスメント情報
などを確認し、相談受付票に追記します。
依頼者がケアマネである場合は、利用者の基本情報が記載されているフェースシートをもらうと良いでしょう。
また、なぜ負担割合を確認する必要があるのか?というと、契約時に利用者負担額を説明しなければならないためです。1割~3割、あるいは生活保護世帯なのかを把握しておかねば見積もりを作成できません。この時点で必ず確認しておきましょう。
- STEP2事前訪問
次にサービス開始前にケアマネと共に事前訪問を行います。
事前訪問が利用者との初の顔合わせとなるわけですが、たいていはこの場でアセスメント、初回のサービス担当者会議、契約の3つを実施することになるかと思います。
それぞれを下記で詳しく解説していますので参考にしてください。
- STEP3訪問介護計画書の作成
- STEP4サービス開始
作成した訪問介護計画書にもとづき、サービスの提供を開始します。
サービス申し込みを「断る」場合の流れ
サービス申し込みの調整ができず「断る」場合は『断った理由』を相談受付票に記入します。
先述のとおり訪問介護は正当な理由がなければサービス申し込みを拒否できません。
そのため、例えば
- 利用者の希望するサービス曜日・時間に対して調整可能なヘルパー人員がいないため
- 利用者の居住地が、当事業所のサービス実施地域外であるため
- 利用者の希望するサービス内容である喀痰吸引を、当事業所では提供することができないため
などのように記入しておきましょう。
サービス申し込みを断ったことで、依頼者とトラブルに発展するケースは意外と多いです。
この際、相談受付票に断った理由を記録しておくことで、正当な理由で拒否したと証明できる書類となるのです。
さいごに
今回は訪問介護のサービス申し込み対応について解説しました。
サービス提供責任者の仕事は、サービス申し込み対応だけではなく多岐にわたるため、幅広い知識が必要です。
当サイトではサービス提供責任者の「初心者向け業務マニュアル」を無料で公開しています。
この機会にあわせてチェックしておきましょう!