訪問介護の買い物同行は、外出介助の一部として一般的に多くの自治体で認められているサービスです。
しかし、どこまで出かけて良いのか?なにを買ってはいけないのか?など支援範囲の解釈が難しく、疑問に思われている方が多いはず。
そこで今回は、厚生労働省通知や各自治体ガイドラインを参考に、訪問介護の買い物同行を解き明かします。
そもそも訪問介護の買い物同行とはどういったサービスなのか、そして算定の範囲や注意点などをわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
訪問介護の買い物同行とは
訪問介護の買い物同行とは、身体機能の低下などにより一人での外出が難しくなった利用者に対して、日常生活上で必要な買い物にヘルパーが付き添い、見守りや介助を提供する身体介護サービスです。
買い物「同行」と「代行」の違いは自立支援
訪問介護には、ヘルパーが単独でスーパー等に出向き、利用者の代わりに日用品などを購入する買い物“代行”というサービスがあります。
この買い物「代行」と「同行」の大きな違いは、自立支援の観点があるか否かです。
- 生活必需品を入手して生活基盤・環境の整備が目的
- 生活必需品の入手+自立支援が目的
もちろん買い物代行においても、購入するものを利用者自ら考える、など自立支援の観点から支援を行う必要はありますが、もっとも重要なのは生活する上で必要な日用品などを入手できること。すなわち、生活基盤や環境の整備を目的としたサービスです。
一方で、買い物同行は、厚生労働省通知「老計第10号」の『1-3-3通院・外出介助』または『1-6自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助』のいずれによる場合であっても、利用者の残存機能の維持・向上を目指した自立支援の観点をより強く求められます。
特に『1-6自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助』による買い物同行においては、
- 車イス等での移動介助を行って店に行き、本人が自ら品物を選べるよう援助
と例示されているとおり、単に日用品等を入手するだけが目的では趣旨になじみません。
そのため、日用品等の入手に加えて、利用者の買い物というIADL機能の向上や、生活の質を高める観点からサービスを提供する必要があります。
買い物同行と買い物代行の単位数の違い
買い物同行は「身体介護中心型」、買い物代行は「生活援助中心型」で算定します。
それぞれの単位数は以下のとおりです。
サービス区分 | 所要時間 | 単位数 |
身体介護中心型 | 20分未満 | 163単位 |
20分以上30分未満 | 244単位 | |
30分以上1時間未満 | 387単位 | |
1時間以上1時間30分未満 | 567単位 | |
生活援助中心型 | 20分以上45分未満 | 179単位 |
45分以上 | 220単位 |
※上記表は令和6年7月時点での単位数です
買い物同行と代行とでは単位差がかなりあります。
利用者負担額も大きく違ってきますので、単位数をしっかり把握しておきましょう。
ケアプランおよび訪問介護計画への適切な位置づけ
先のとおり訪問介護の買い物同行は、自立支援の観点から位置づけられるものです。
ですのでケアプランの策定においては、なぜ買い物代行ではなく同行なのか、その必要性をきちんと明記しておかなければなりません。
加えて、訪問介護計画についても、自立支援を取り入れた援助目標や支援内容を検討する必要があります。
例えば、以下のように設定します。
援助目標の例
- 「一人で買い物にいけるようになる」
- 「ヘルパーの支援をうけ購入したい商品を自分で選べる」
支援内容の例
- 「スーパー内は車いすを使わず、カートを自ら押して移動して商品を選ぶ」
- 「ヘルパーが目当ての場所まで移動介助にて誘導、安全を確保しつつ本人自ら商品を手に取り選定する」
- 「金銭の支払いを自ら行う」
また、買い物同行をケアプランおよび訪問介護計画に組み込むのであれば、サービス担当者会議にて天候不良や体調不良時の対応をあらかじめ取り決めておくことも重要です。
「雨天時や体調不良時は、買い物代行に切り替える」としたり、「普段は買い物代行としておき、調子の良い日は同行に切り替える」としたり、買い物同行と代行をその時々で柔軟に変更できるようケアプランに位置づけておき、その上で訪問介護計画書に組み込むと良いでしょう。
参考:【つかえる文例】訪問介護計画書の作成ガイド【書き方の完全版】
訪問介護の買い物同行における算定範囲
訪問介護における買い物同行の範囲に明確な規定はありませんが、基本的に買い物代行のものと同じとしている自治体が多く、ヘルパーが同行しようが代行しようが、購入できるものや店舗の範囲に違いはないと考えられます。
ただし、先のとおり買い物同行は、外出による生活意欲の向上や自立の観点など実施の目的が代行とは異なることから、代行より範囲を広く設定している自治体がある可能性は否定できません。
ですので、これから本項で紹介するものは、あくまで例として参考程度に捉えていただき、実際の運用にあたっては各自治体への確認を行ってください。
買っていいものと買ってはいけないもの
- 日用品(食器洗剤、洗濯洗剤、ラップ、ゴミ袋、ティッシュ、トイレットペーパー、殺虫剤、電池、電球、蛍光灯など)
- 食品(食材や調味料など)
- その他(下着、肌着、寝間着などの日常で着る服や生活家電など)
- 利用者本人以外のもの
- 趣味嗜好品(タバコ、アルコール、雑誌類など)
- 贈答品(お中元やお歳暮など)
- その他(外出着や家具、娯楽品など)
買い物同行で買って良いものは、日常生活上で欠かせない必需品であり、それがなければ生活が成り立たないものを指します。該当しないものは原則として買えません。
参考:買い物代行で「買っていいもの」と「買ってはいけないもの」
目的地が遠方の場合に買い物同行はできる?
基本的にできません。買い物同行の範囲は、原則として利用者の生活圏域内にある店舗に限られます。
そのため例えば、「安いから」といった理由で遠方のスーパーへ同行するなどは認められません。
ただし地域性を鑑みて、近くに日常必需品を購入できる店舗がない場合などは認められる場合もあると考えられます。
ヘルパーが運転する車で買い物同行はできる?
まず前提としてヘルパー自ら運転する車を使用する場合は、道路運送法上の許可・登録が必要です。(運送に係る反対給付を受け取らない場合は不要)加えて、自治体へ通院等乗降介助の届け出を行っており、かつケアプランに位置づけられていれば可能です。
なお、この場合は身体介護中心型ではなく通院等乗降介助(片道1回97単位)を算定することとなります。
複数の目的地への買い物同行はできる?
例えば、ひとつの店舗で揃えられるものを、わざわざ別店舗に行って購入するなどのケースは認められないでしょう。またスーパーに行った帰りにブティック店に立ち寄る、なども日常必需品ではありませんので、基本的に認められません。
ただし、日常必需品であって一部の商品がスーパーAには売っていない場合、その商品を買うためにドラッグストアへ立ち寄る、などであれば認められると考えられます。
また、同一店舗内に日用品や精肉店などの店舗が複数ある場合や、商店街など店舗が連なっている場合も、「日用品はA店で」「お肉は精肉店のB店で」といったように複数の店舗を跨いで買い物しても問題ないと考えます。
通院の帰り道にスーパーへ寄って買い物をすることはできる?
自治体によって判断が異なります。
例えば、買い物は通院と無関係であることから一連のサービスとみなすことができないため算定不可としている自治体や、通院後に買い物をする必要性や合理性が認められる場合に算定が可能としている自治体があり、取り扱いはさまざまです。
参考:【訪問介護の通院介助マニュアル】サービス手順や算定方法を解説
さいごに
今回は、訪問介護の買い物同行について解説しました。
買い物同行は、外出に機会にとぼしい利用者にとって外へ出る貴重な機会となります。ぜひ本記事および各自治体の意見を参考にしつつ適切なサービスの運用を行っていきましょう。
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