訪問介護事業所の新人サ責です。
利用者さんの個人ファイルにどの書類を入れておけば良いかわからない…。
書類を挟む順番ってありますか?
今回は、こんな悩みにお答えします。
指定訪問介護事業所は、基準省令においてさまざまな帳票書類の整備を求められます。
しかし、必要書類の数はかなり多く、そのすべてを利用者個人ファイル(カルテ)に挟むことはできません。そのため、「どの書類を、どの順番で挟んでいけば良いの?」と疑問に思われている方もいるでしょう。
そこで、本記事では訪問介護事業所における利用者個人ファイル(カルテ)の運用方法の基本を解説し、その上でファイルに挟むべき17の必要書類を示します。ぜひ新人サ責の方々は参考にしてください。
本記事は、利用者個人ファイルに挟む書類のみを解説しています。
その他の必要書類等について知りたい方は以下のコラムを参考にしてください。
※本記事は、厚生労働省令やヘルパー会議室運営部の実体験および関係事業所の運用方法をもとに作成しています。できる限り正確な記述に努めていますが、各自治体のローカルルールや独自の取り扱い等を含むものではありません。本記事はあくまで参考程度にお考えいただき、各自治体に確認のもと日々の運用を行ってください。
訪問介護における利用者個人ファイルとは?|運用方法の基本
訪問介護における利用者個人ファイルとは、利用者に係る基本情報や計画書、契約書類など日々の実務に必要な書類をひとつのファイルにまとめたカルテのことです。利用者ごとに個別のファイルを準備し、書類を作成・入手する度にファイリングしていきます。
行政からの実地指導(運営指導)時には、基本的にカルテごと渡して各書類を確認されることになり、また、サービス提供責任者間の引き継ぎや、各ヘルパーへの指導・教育時にも活用しますので、だれが見てもわかりやすく整理・管理しておくことが大切です。
利用者個人ファイル(カルテ)の作り方
利用者個人ファイルは、上記図のようにA4サイズのファイルを使用するのが一般的。
ファイルの見開きに必要書類のチェック項目用紙を、各項目ごとにインデックスラベルを貼っておくと良いでしょう。それにより確認したいときに目当ての書類をすぐに見つけることができます。
なお、契約書類などは穴をあけるわけにいきませんので、そういった書類はクリアポケットに入れてから綴じ込むようにしてください。
書類の選定
前提として、利用者個人ファイルに挟む書類に決まりはありません。
どの書類をファイリングしようがしまいが、事業所の自由です。基本的には、サービス提供に直接関係する書類、例えば、アセスメントやケアプラン、訪問介護計画書、モニタリング、契約関係書類など、日々の業務の中で取り出して確認したり、追記・変更したりするものを中心にファイリングしましょう。(詳しくは後術に例を紹介しています)
重要なことは利用者個人ファイルになにを挟むかではなく、必要な書類がどこに保管されているのかを確実に把握しておくことです。くれぐれも実地指導(運営指導)時に「あの書類どこだっけ??」と手間取ってしまわないよう注意してくださいね。
書類を挟む順番
利用者個人ファイルに挟む必要書類の順番にも特段の決まりはありません。
各職員にとって運用しやすい順番でファイリングしていきましょう。ただし、利用者Aと利用者Bで書類の並び順が違うと混乱を招くため、事業所全体として各必要書類の項目ごとの順番は統一してください。
保管方法
利用者個人ファイルは個人情報そのものであり、厳重な管理が必要です。
鍵付きの書庫棚に入れて保管し、最終退勤者がカギをきちんと閉めてから退勤します。また書庫棚は、来客があった際などに目に入らないように、外から棚の中が見えないものを使用しましょう。
訪問介護の利用者個人ファイル(カルテ)に挟む必要書類一覧
ここでは訪問介護の利用者個人ファイルに挟む必要書類の順番と内容の一例を紹介します。
\ 書類の順番・内容 /
- 緊急連絡票
- 相談受付票
- 地図
- 介護保険被保険者証・負担割合証の写し
- 契約関係書類
- 居宅サービス計画(ケアプラン)
- サービス担当者会議の記録
- アセスメントシート
- 訪問介護計画書
- サービス指示書(手順書)
- 見取り図
- モニタリング記録・報告書
- 支援経過記録
- 苦情受付票(苦情内容および対応に関する記録)
- 事故対応記録(事故の発生状況および対応に関する記録)
- 市町村等への通知に係る記録
- その他
①緊急連絡票
緊急連絡票は、利用者の体調急変時などにおける緊急連絡先と連絡順序などを記入する書類です。
契約時などに利用者や家族などと相談して取り決めておき、利用者個人ファイルの1番目に挟みます。なお、緊急連絡票をもとに緊急時対応を行いますので、事業所だけでなく利用者宅にも置いておきましょう。
②相談受付票
相談受付票は、訪問介護サービスの利用申し込みがあった際に、相談者や手段、基本情報、依頼したいサービス内容・日時、受け入れの可否などを記録する書類です。
基本的には、ケアマネジャーからの依頼になるかと思います。所定の様式に沿って相談内容を確認し、相談受付票に記入したらファイリングしましょう。
③地図
事業所から利用者宅までの地図(Googleマップ等を印刷したものでOK)を作成して挟んでおきます。
④介護保険被保険者証・負担割合証の写し
サービス提供開始前や介護認定の更新時に、介護保険被保険者証により給付資格を確認しなければなりません。
ケアマネジャーから写しをもらう、または利用者から介護保険被保険者証をいったん預かりコピーをとる、などにより入手してファイリングしましょう。
※ケアマネジャーに介護保険被保険者証等の写しをサービス事業所に渡す義務はありません。また、利用者から介護保険被保険者証を預かる場合は、預かり証を取り交わすようにしてください。
⑤契約関係書類
以下の契約関係書類を利用者と取り交わし、ファイリングします。
- 契約書
- 重要事項説明書
- 個人情報使用の同意書
なお、報酬改定や体制加算を新たに取得する等により利用料金が変更になる際など、重要事項の別紙同意書を利用者と取り交わした場合は、その度に挟んでいきます。
⑥居宅サービス計画(ケアプラン)
居宅サービス計画(ケアプラン)は、居宅介護支援事業所に属するケアマネジャーが作成する介護サービス計画です。このケアプランに沿って相違がないよう⑨の訪問介護計画書を作成しなければならないため、ケアマネジャーから交付される度にファイリングします。(受領書がついている場合は、あわせて保管)
⑦サービス担当者会議の記録
サービス担当者会議に出席する度に、記録を作成しファイリングします。
サービス担当者会議の記録は、ケアマネジャーが作成する「サービス担当者会議の要点(ケアプラン第4表)」で問題ありません。ただし、ケアマネジャーに交付義務はありませんので、もらえない場合は別途サービス担当者会議用の記録様式に記入する、あるいは⑬の支援経過記録に記入するなどにより対応しましょう。
また、サービス担当者会議が開催されない、または欠席した場合にケアマネジャーから送られてくる照会書類についても、返送後にあわせてファイリングしてください。
⑧アセスメントシート
アセスメントシートは、利用者の日常生活全般の状況や課題分析などを記録する書類です。
これはケアマネジャーが作成するアセスメントシート等で代替することはできません。あくまで訪問介護の目線から訪問介護サービスによって解決すべき問題の状況を明らかにするものであり、サービス提供責任者が行ったヒアリング・分析内容をもとに作成・整備してください。(追記、更新を行う度にファイリングすること)
また利用者が入退院をしていた場合などにおいて、ケアマネジャーから入退院時情報提供書をもらった場合は、あわせてファイリングしておきましょう。
⑨訪問介護計画書
訪問介護計画書は、その利用者に対する援助目標や担当する訪問介護員等の氏名、具体的なサービス内容、所要時間、日程等を記入する書類です。基本的にケアプランが交付される度に、作成・更新しファイリングしていきます。
⑩サービス指示書(手順書)
サービス指示書は、サービス提供開始から終了までの支援の具体的な内容や手順を記入する書類です。
訪問介護計画書で示したサービス内容を補完する役割もありますので、訪問介護計画書の作成・更新に合わせてサービス指示書も作成・更新し、ファイリングします。
⑪見取り図
見取り図は、利用者宅内の構造(段差や手すりの有無等)や物品の置き場所などを記入する書類です。
⑧アセスメントシートや⑩サービス指示書と一体的に作成する場合もあります。
⑫モニタリング記録・報告書
モニタリング記録・報告書は、サービスの実施状況や利用者の状態変化、目標の達成度、利用者の満足度などを記入する書類です。モニタリングの実施後に都度記録を作成し、ケアマネジャーへ提出、その後ファイリングします。
※省令上、ケアマネジャーに報告書を提出する義務はありませんが、居宅サービス計画の見直しにつながるものですので提出しておきましょう。(加えて、実施状況報告書などを毎月提出するのが一般的ですが、これについては必須書類ではありません)
※総合事業(旧介護予防訪問介護)については、計画期間内に1回は実施状況を把握(モニタリング)記録し、加えてケアマネジャーに毎月状況報告書を提出する必要があります。
⇒モニタリング報告書兼サービス実施状況報告書ひな形ダウンロード
⑬支援経過記録
支援経過記録とは、相談受付から支援終了までの経過を時系列で記録する書類です。
省令上の必須書類ではありませんが、緊急時訪問介護加算の算定する場合やケアマネジャー等との連携内容、サービスのキャンセル・日時変更などを記入しておくことで、他の書類を補完することができますので、随時記入してファイリングしましょう。
⑭苦情受付票(苦情内容および対応に関する記録)
苦情受付票は、利用者等から苦情を受け付けた際に、受付日や苦情内容、対応の経過等を記入する書類です。
利用者や家族などから苦情が寄せられた場合は、随時記入してファイリングします。
⑮事故対応記録(事故の発生状況および対応に関する記録)
事故対応記録は、訪問介護サービスを起因として発生した事故について、発生状況や処置内容、対応の経過等を記入する書類です。
事故の内容によっては市町村等へ所定の様式を用いて報告します。また市町村等へ報告する必要がない案件(例えば皿を割ってしまった、など)であっても記録を残してファイリングしておきましょう。
⑯市町村への通知に係る記録
市町村への通知に係る記録は、利用者が故意に要介護状態を悪化させた場合や不正に保険給付を受けようとした場合に市町村へ通知する書類です。
この書類を作成することは基本的にないと思いますが、上記の事由が見られた場合は通知文書を作成し、市町村へ提出後にファイリングします。
⑰その他
その他、利用者宅の鍵を事業所で預かる場合は、鍵預かり証を取り交わしファイリングします。鍵を返却した場合も鍵返却証を取り交わして保管しておいてください。
また、ケアマネジャーや他職種などとFAXで利用者の状態・状況の変化等を報告する等のやりとりがあるかと思います。このFAX記録もケアマネジャー等ときちんと連携を図っている証拠書類になりますので、捨てずにファイリングしておきましょう。(電話でのやりとりよりFAXなど書面等に残る手法の方が良いとされています)
これらの書類のうち⑮,⑯,⑰は、利用者個人ファイルとは別に保管する場合があります。
というのも苦情や事故などは、すべての利用者に発生することではないため、実地指導時に「苦情や事故の記録はとってますか?見せてください」と言われた際に、「苦情の記録残してたのってだれだっけ…?」となりがちです。
このとき、利用者個人ファイルからひとつづつ探すとなると時間がかかって仕方がありませんので、別に保管しておくことで、いざ実地指導(運営指導)が来た際にもスムーズに対応できます。
さいごに
今回は、訪問介護の利用者個人ファイル(カルテ)に挟む書類の内容や順番などについて解説しました。
ファイリングする書類は、事業所によって多少差異があるものの、基本的には本記事で示した例を参考に運用していただければ問題ないかと思います。
また、本記事は紙媒体での運用を前提としたものですが、電子媒体で運用する場合は、わざわざ印刷してファイリングする必要はありませんので一応お伝えしておきます。
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