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訪問介護のプライバシー保護取り組みマニュアル【研修資料に使える】

訪問介護 プライバシー保護 取り組みマニュアル

 

  • プライバシーってなに?個人情報との違いは?
  • 訪問介護ではなにがプライバシー侵害になる?
  • プライバシーを保護するための取り組みを教えてほしい。

 

今回は、こんな悩みや疑問を解決すべく、ヘルパー会議室運営部が作成した訪問介護のプライバシー保護取り組みマニュアル」を公開します。

利用者のプライバシーを保護することは、介護保険法(障害福祉サービスの場合は障害者総合支援法)の目指す「尊厳の保持」と「自立した生活」を実現するために欠かせません。

しかし実際の現場では、悪意なく利用者のプライバシーを侵害してしまうケースもあり、正しい知識を有しておくことが必要です。

本マニュアルでは、訪問介護におけるプライバシーの基礎知識のすべてをわかりやすく解説しています。

あわせて本マニュアルの後半で取り組むべきプライバシー保護施策の具体案を11個示しましたので、ぜひ最後まで読んでください。

 

本マニュアルは、介護サービス情報公表により求められるプライバシー保護マニュアルや研修資料としても活用できます。

 

研修テーマ集:【研修資料つき】訪問介護のヘルパ-勉強会テーマ39案

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この記事を書いた人

ヘルパー会議室編集部

くらたろう

30代男性。大阪府在住。東証一部上場企業が運営する訪問介護事業所に3年従事し、独立。事業所の立ち上げも経験。訪問介護の経験は11年目、現在も介護現場に自ら出つつサービス提供責任者として従事している。ヘルパー・サ責の学ぶ機会が少ないことに懸念を抱き、2018年に訪問介護特化型ポータルサイト「ヘルパー会議室」を設立。

【保有資格】 訪問介護員2級養成研修課程修了/介護職員基礎研修修了/社会福祉士/全身性ガイドヘルパー/同行援護従業者養成研修修了  
「ヘルパー会議室」コラム内文章の引用ポリシー
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プライバシーとは

訪問介護 プライバシーとは

 

プライバシーとは、「公開を望まない私的な情報」や「個人が私生活や社会行動において他人から干渉・侵害を受けない自由」のことを指します。

よくプライバシー権という言葉が使われますが、実はプライバシーに法的な規定はありません。しかし、憲法第13条「個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重」に関わるものとして認められており、裁判上で確立された人権のひとつです。

プライバシーは、あくまで感受性にもとづくものですので、その範囲を一概に線引くことはできません。ただ基本的には、他人に知られたくない・干渉されたくないと感じる私的領域“すべて”がプライバシーにあたると認識しておきましょう。

また、近年ではインターネットの普及・発達などにともない、「自己に関する情報をコントロールする権利(自己情報コントロール権)」もプライバシーに含まれるとされています。

 

自己情報コントロール権とは

例えば、みなさんが普段ネットショップで買い物をするときを思い浮かべてみましょう。

この際、氏名や住所、クレジット情報などの個人情報を入力しますが、ショップ側へ個人情報を提供する目的はあくまで商品を購入することのみです。ショップ側がみなさんの知らないところで第三者へ個人情報を公開することまでは許容していませんよね。

このように、自分の情報をどのように使われるのか公開・削除を含めて自分で決められる権利、あるいは事業者に提供した個人情報が法に則り保護される権利が、自己情報コントロール権です。

 

個人情報は特定の個人を識別できる情報のこと

訪問介護 個人情報とは

プライバシー保護に取り組むにあたって、よく議題にあがるのが個人情報の取り扱いについてです。

個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、氏名、生年月日、住所などにより特定の個人を識別できるものや番号、記号、符号などの情報単体から特定の個人を識別できる「個人識別符号」を含むものを指します。

 

具体的には

  • 氏名、生年月日、住所、電話番号、出身地、メールアドレス、口座番号
  • 個人の身体、財産、職種、肩書等の個人の属性に関する事実、判断、評価を表すすべての情報
  • 映像、音声による情報
  • 顔認証データ、指紋認証データ、虹彩、声紋、歩行の態様、手指の静脈、掌紋などの身体データ
  • 介護保険証・健康保険証の被保険者番号、パスポート番号、基礎年金番号、運転免許証番号、住民票コード、マイナンバー

などが個人情報に該当します。(※個人識別符号は政令により定められています。)

また上記のうち、情報ひとつだけでは誰のものか判別できなくても、複数の情報を組み合わせることで個人を特定できる場合、それらの情報全体が個人情報となります。

要するに、職種や役職のみの情報では個人を識別できませんが、氏名と組み合わせることで個人を特定できるため、職種や役職を含めた情報全体が個人情報とみなされるというわけです。

 

特に配慮が必要な「要配慮個人情報」

個人情報の中には、公開されることで、本人に不当な差別や偏見などの不利益が生じないよう取り扱いに特に配慮すべき情報があります。

これを「要配慮個人情報」といい、例えば、

  • 身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)などの障害があること
  • 人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により被害を被った事実
  • 医師等により行われた健康診断その他の検査の結果、保健指導、診療情報、調剤情報
  • 被害者または被告人として逮捕、捜索、差し押さえ、拘留、公訴、提訴など刑事事件に関わる手続きが行われた事実
  • 非行・保護処分等の少年保護事件に関する手続が行われたことの記述などが含まれる個人情報

などが該当します。

これらの要配慮個人情報を取得する際には、原則、本人から同意を得なければならず、漏えい等がないよう取り扱いに注意が必要です。

 

プライバシーは個人情報の保護を含む概念

プライバシー 個人情報 違い

プライバシーと個人情報は、お互いに関連しあうものですが、同じ意味ではありません。

それぞれの違いを端的にいうと、プライバシーは個人の主観による「権利」であり、個人情報は個人と他人を識別する客観的な「データ」です。

ただし個人情報は、あまり他人に知られたくない私的な情報でもありますので、個人情報の保護を含む広範囲をカバーする概念がプライバシーだと言えます。

つまり、利用者のプライバシーを守ることは、結果として個人情報の保護につながり、逆に、個人情報の紛失や漏えいを防ぐことは、プライバシーの保護につながるのです。

 

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訪問介護は、利用者のプライバシーに介入する業務

訪問介護 プライバシー 立ち入る

 

訪問介護に従事する方々に理解しておいてほしいのは、訪問介護サービスそのものが利用者のプライバシーに介入する業務だということ。

あたりまえに感じるかもしれませんが、私生活の場である利用者の自宅に立ち入り仕事をする訪問介護は、介護業種の中でも極めて特殊なサービスです。

利用者の性格や生活歴、家族構成、病歴、心身の状態、価値観、考え方、間取り、物品の場所などのパーソナルな情報を収集することで、はじめて利用者個々に適したサービスを実践できます。

とはいえ、人は誰もが自身の私生活を見られたり知られたりするのに抵抗があるものです。それは、当然ながら利用者やその家族にとっても同じであり、貴重で大切なプライバシー情報を抱えていることを自覚しましょう。

そして、利用者にもっとも近くでかかわる訪問介護だからこそ、必要以上に私的領域に踏み込まず、尊厳を傷つけないサービス提供を強く求められるのです。

 

プライバシーの保護は、法令および省令により定められた義務

訪問介護におけるプライバシー保護は、個人情報保護法ならびに介護保険法にもとづく基準省令(障害福祉サービスの場合は障害者総合支援法にもとづく)により定められた義務であることも忘れてはいけません。

 

個人情報保護法

個人情報保護法とは、個人情報を取り扱う事業者や団体に対して、その情報の保護に関する規則を定めた法律のことです。個人情報保護法上、プライバシーの規定はありませんが、個人情報の不正な取り扱いや漏えいなどを防止し、個人のプライバシーを保護することを目的としています。

個人データの漏えいなどがあった場合、事業者は個人情報保護委員会へ必ず報告しなければなりません。報告しなかったり、報告しても措置命令に従わなかったりすると法定刑や罰金刑が科せられます。

なおペナルティーの対象は、事業者だけでなく行為者となった職員個人にも科せられる可能性があるため注意しておきましょう。

 

ペナルティー(法定刑・罰金刑)
  • 法人等…1億円以下の罰金
  • 行為者…1年以下の懲役または100万円以下の罰金

 

基準省令

基準省令とは、介護保険法もとづく「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」を指し、訪問介護事業者が遵守すべきルールです。(障害福祉サービスの場合は、障害者総合支援法にもとづく「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」)

基準省令第33条には、プライバシー保護の観点から、以下のとおり「秘密保持」について明記されています。


第33条【秘密保持等】

指定訪問介護事業所の従業者は、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはならない。

2 指定訪問介護事業者は、当該指定訪問介護事業所の従業者であった者が、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなければならない。

3 指定訪問介護事業者は、サービス担当者会議等において、利用者の個人情報を用いる場合は利用者の同意を、利用者の家族の個人情報を用いる場合は当該家族の同意を、あらかじめ文書により得ておかなければならない。

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準より引用)

 

基準違反による行政処分

守秘義務を怠り基準違反が露見すれば、最悪の場合、事業所の指定取り消しなどの行政処分を科せられる可能性があります。

 

訪問介護におけるプライバシー侵害

訪問介護サービスの提供方法や情報の取り扱いをひとつ誤れば、プライバシー侵害につながります。

とはいえ、プライバシーは個人の感受性にもとづくものですから、どこから侵害にあたるのか判断が難しく、悩まれている方も多いはず。

以下は、訪問介護においてプライバシー侵害にあたる可能性のあるケースです。自身の行動や対応を振り返り、当てはまるものがないか確認してみてください。

 

 プライバシー侵害の例 

  • ヘルパーが訪問先に訪問予定表や提供記録を置き忘れる
  • 事業所が支給している携帯電話を訪問先に置き忘れる
  • サービス提供票(実績)をケアマネへFAXするつもりが、番号を間違え誤送信した
  • 「転倒するから」と利用者の行動を過度に監視したり、制限したりする
  • 「転倒するから」と排せつ・入浴時に過度に監視する
  • 「効率が良いから」といつも同じ献立の食事を提供する
  • 「効率が良いから」と入浴時に丸洗いする
  • 自身でトイレに行けるのにオムツの着用を強要する
  • 「こっちの方が絶対良いから」とヘルパーの価値観や考えを押し付ける
  • 利用者の許可なく、勝手にタンスの引き出しや備品類、手紙を開け、中を見る
  • 利用者の許可なく、SNSやブログに写真や私生活の情報をアップする
  • サービス提供に不必要な内容まで興味本位でヒアリングする
  • 職場外で利用者の実名を出しながら愚痴や悩み相談をする
  • 知人や関係性の薄い親族へ利用者情報を話す
  • 利用者の要望や要求に対して「面倒な利用者」とクレーマー扱いする

 

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訪問介護におけるプライバシー保護の取り組み11の基本

訪問介護 プライバシー保護 取り組み

これまでプライバシーの基礎知識について解説してきました。

では、実際に利用者のプライバシーを保護するためには、なにをどのように取り組めば良いのでしょうか。

ここでは訪問介護事業者やその職員が実践すべきプライバシー保護施策の基本を11個紹介します。

 

 11の取り組み施策 

  1. 訪問介護に対する利用者の権利の告示
  2. 情報収集時のプライバシー保護
  3. 帳票書類などのプライバシー情報の取り扱い
  4. サービス提供記録の言葉選び、表現方法
  5. 自己決定の原則に則ったサービス提供
  6. 日常での情報漏えい
  7. スマートフォンやタブレットからの情報漏えい
  8. 利用者宅への入室時の情報漏えい
  9. インターネット、SNSにおけるプライバシー情報の取り扱い
  10. 生活援助でのプライバシー保護
  11. デリケートな身体介護でのプライバシー保護

 

1:訪問介護に対する利用者の権利の告示

訪問介護は、利用者との契約を締結することによりサービスを開始します。

契約とは事業者・利用者の双方の意思表示の合致により成立するものであり、契約に際しては、利用者の権利について包み隠さず告げなければなりません。

具体的には

  • 利用者の意思をもって契約を破棄・解約できる自由
  • 事業者に対してサービス提供記録等の開示要求ができる権利

などを利用者やその家族へきちんと説明しましょう。

利用者の権利を告示することは、事業者に対する安心・信用につながり、トラブルを予防する一助となります。

 

参考:【トーク例つき】訪問介護の契約の流れと実践

 

2:情報収集時のプライバシー保護

アセスメント時に、興味本位で必要以上に踏み込んだヒアリングを行うなどは絶対にしてはいけません。

利用者情報を収集する際には、利用者や家族が答えたくない内容の追及は避け、訪問介護計画の立案やサービス提供に必要な内容のみに留めます。サービス提供に支障をきたす内容を答えてもらえない場合は、なぜその情報が必要なのかを丁寧に説明し理解を求めましょう。

また、アセスメントは初回以降も更新し続けるものですから、一度ですべての情報を収集する必要はありません。サービスを提供する中で信頼関係を築きつつ、徐々に情報収集する対応も大切です。

その他、収集した利用者や家族の個人情報をサービス担当者会議等で共有する場合がありますので、使用目的・範囲をあらかじめ説明し、書面で同意を得ておきます。(基準省令第33条「秘密保持等」に明記)

 

参考:訪問介護のアセスメント実践ガイド

参考:「個人情報使用の同意書」ひな形テンプレート

 

3:帳票書類などのプライバシー情報の取り扱い

利用者のプライバシーに関する帳票書類には、以下のようなものがあります。

  • 利用者名簿
  • 介護保険被保険者証の写し(障害福祉サービス受給者証の写し)
  • 介護券(生活保護受給者の場合)
  • 契約書・重要事項説明書などの契約関連書類
  • サービス提供票
  • アセスメントシート
  • ケアプラン(障害福祉サービスの場合はサービス等利用計画)
  • 訪問介護計画書(障害福祉サービスの場合は個別支援計画書)
  • サービス指示書、見取り図
  • サービス提供記録
  • 訪問予定表(ルート表)
  • モニタリング記録
  • 請求関連書類

これらの帳票書類は、利用者のプライバシー・個人情報そのものですので厳重な管理が必要です。

具体的には

  • サービス提供記録や訪問予定表などの紛失や置き忘れに注意する。
  • 「デスクの上に書類を置きっぱなしにしない」「外から中が見えない鍵付き書庫に保管する」などの保管ルールを定める。
  • 「基本的に帳票書類は事業所外へ持ち出さない」「やむを得ず持ち出す場合は、必要最小限の情報に留める」などの持ち出しルールを定める。
  • パソコンのパスワード設定、ウィルス対策ソフトの導入などセキュリティーシステムを強固に設定する。
  • クラウドシステム、アプリケーションなどスマートフォンを活用する場合は、パスワード設定を行う。

などの取り組みを実施しましょう。

 

4:サービス提供記録の言葉選び、表現方法

サービス提供記録は、ヘルパーだけでなく利用者や家族も見ることがある書類です。

そのため、読み手が「どのように感じるか」「嫌な気持ちにならないか」を考えながら作成する必要があります。

特に自由記述欄(特記事項)を記載する際には、言葉選びや表現方法に気を配りましょう。

例えば

  • ひどい臭い
  • 汚かったので○○した
  • 勝手に○○する
  • しつこく何度も同じことを聞いてくる

などは利用者の尊厳を傷つける表現方法です。

「ひどい」「汚い」「勝手に」「しつこい」といったヘルパーの主観的な表現を用いるのではなく、客観的な事実を記載するようにしてください。

また、利用者との関係性が築けてくると「家族にも言えない内緒の話」をヘルパーにしてくることがあります。

こうした私的な情報を記録したことが明らかになれば、利用者との信頼関係は崩れてしまいます。

プライバシー侵害にならないよう「誰にも知られたくない秘密」は、記録に残さないなど配慮して作成にあたりましょう。

 

参考:サービス実施記録の書き方ガイド【記入例あり】

 

5:自己決定の原則に則ったサービス提供

自己決定の原則とは、その名のとおり「自分のことは自分で決める」という援助の基本原則を指します。

訪問介護を利用する・しないを含めたサービス全体に関することや、「今日なにを食べるか」「お風呂に入るか入らないか」など日常生活でのあらゆる行動について、決定するのは利用者自身です。

訪問介護側が「ヘルパーの時間を〇時からに変更します」「今日は○○を食べてください」「お風呂に入ってください」などと強制してはいけません。

もちろんヘルパーの都合や病気や障害などにより制限が必要な場面もあるでしょう。

ですが、ここで大切なのは、なぜそれが必要なのかを説明した上で、選択肢を用意することです。

例えば

  • 「申し訳ありませんが、いつもの時間を〇時もしくは〇時からに変更していただくことは可能でしょうか?」
  • へ「今日は何を食べたいですか?」→利「○○が食べたい」→へ「○○は医師から控えるよう言われていますので、例えば○○はどうでしょう?」
  • ヘ「○○さんお風呂に入りましょうか」→利「今日は何となくしんどいので入りたくない」→ヘ「血圧も問題ないですし、お風呂入ったらさっぱりしますよ」→利「入りたくない」→へ「でしたらお風呂は止めて温かいタオルで体を拭きましょうか?」

など訪問介護側の意向を押し付けない説明を心がけましょう。

利用者の自己決定を尊重することは、自身の人生を自らの意思で生きるという主体性を保持・育むことにつながります。

 

6:日常での情報漏えい

利用者宅外で発生しやすい日常での情報漏えい場面としては

  • 担当ヘルパー間の日常会話
  • 街中で偶然あった近隣住民に利用者の情報を聞かれる
  • 関係性の薄い家族から利用者の問い合わせがあった

などがあげられ、こうした状況で安易に実名を出したり、プライバシー情報を話したりしてはいけません

特に、ふだん利用者に接していない家族や親戚から問い合わせは、「家族なら問題ないだろう」と安易に答えてしまいがち。しかし、利用者本人が情報の公開を望まない場合、思わぬ家族間トラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。

 

7:スマートフォンやタブレットからの情報漏えい

訪問介護では、一般的にスマートフォンやタブレット等の機器を使用して利用者情報を共有します。

電話やメール、他にもLINEなどのアプリケーションを活用すれば、サービス提供責任者とヘルパーがすぐに連絡を取り合え、非常に便利です。

一方で、そのスマートフォンやタブレットには利用者のプライバシー・個人情報がたくさん保存されており、便利だからこそ情報漏えいに対するリスク管理が必要です。

具体的には

  • スマートフォンやタブレットの紛失や置き忘れに注意する
  • パスワード設定をする
  • 公共のフリーWi-Fiに接続しない

などの取り組みを実施しましょう。

上記のうち、「通信費を安く抑えたいから」とコンビニやカフェ、交通機関、商業施設などに設置されたフリーWi-Fiに接続した経験のある方は多いのではないでしょうか。

フリーWi-Fiは、不特定多数の人が使用できるがゆえに情報が漏えいしてしまう可能性があります。

例えば、メールなどの通信内容が漏えいしたり、連絡先を盗まれたり、LINEアカウントを乗っ取られたりと非常に危険です。事業所支給・個人所有を問わず、スマートフォンやタブレットを使用する際には、フリーWi-Fiの利用を控えましょう。

 

8:利用者宅への入室時の情報漏えい

利用者がオートロックのマンションに住んでいるケースや、キーボックス等を活用しているケースでは、入室時の情報漏えいに細心の注意が必要です。

ヘルパーがロックを解除する際は、周囲を確認し、暗証番号が人の目に触れないよう注意してください。

また、利用者の中には訪問介護を利用していることを他人に知られたくない方もいます。

この場合は、「インターホン越しに事業所名を告げない(ヘルパーの名前のみ告げる)」、「制服の上から衣服を羽織り、見えないようにする」など配慮しましょう。

 

9:インターネット、SNSにおけるプライバシー情報の取り扱い

情報化社会の発展により、SNSやブログなどインターネットを介して簡単に情報発信できる時代になりました。

法人であれば採用の強化やマーケティング手法の一環として、個人であれば自身の影響力を高めたり、情報交換を目的として、SNSやブログをうまく活用できればとてもメリットがあるツールです。

しかし、不特定多数の目に触れるインターネットを介した情報の発信は、プライバシー侵害のリスクが潜んでいることを重々理解しておかなければなりません。

例えば

  • 本人や家族の許可なく利用者または自宅が映り込んだ画像をアップする
  • ブログに利用者の実名を載せ、サービス提供時の様子を公開した

などはプライバシー侵害にあたります。

後者の事案については、実際に利用者家族から訴訟され、事業者と行為者(ヘルパー)に損害賠償が命じられています。下記の参照リンクを貼っておきますので確認してください。

また、たとえ実名を載せていなくても、その他の情報からわかる人には特定が可能です。個人情報を載せないのはもちろんのこと、極力仕事内容には触れず不用意な発信はつつしみましょう。

 

参考:介護の様子をブログに記載してプライバシーを侵害した事案

 

10:生活援助でのプライバシー保護

訪問介護は、利用者の価値観をできる限り尊重しながらサービス提供を進めます。

利用者のこれまでの生活習慣から培われた価値観は、特に調理や掃除、洗濯、買い物といった生活行為にその方なりの仕方やこだわりとして表れます。

ですから、例えば

  • 「こっちの方が絶対良いから」と、利用者から頼まれた商品と違う商品を勝手に購入する
  • 「こっちの方が早いから」と、利用者がこだわっている掃除の仕方と異なる方法で掃除をする

などとヘルパーの価値観や考えを押し付ける介助方法にならないよう注意してください。

利用者の要望すべてに応える必要はありませんが、決して価値観を否定せず、「このような方法はいかがですか?」などと提案する程度に留めましょう。

また整理整頓時には、利用者宅の備品や私物に触れる機会があるかと思います。この際、利用者の許可を得ず、手紙の内容を勝手に見たり、引き出しを勝手にあけたりしてしまうとプライバシーの侵害にあたります。

あくまでも訪問介護は利用者の自宅にお邪魔している立場です。そのことを忘れず、節度ある対応を心がけましょう。

 

参考:訪問介護の接遇マニュアル

参考:訪問介護の掃除マニュアル

参考:訪問介護の調理マニュアル

 

11:デリケートな身体介護でのプライバシー保護

排せつ、更衣、入浴、清拭などの身体介護では、人前でデリケートゾーンをさらすという最も私的な領域に立ち入らなければなりません。

「排せつ音を聞かれたくない」「見られたくない」「くさいと思われたくない」、このような感情を抱くのは人として当然のこと。認知症などの疾患や障害の有無にかかわらず、十分な配慮を求められます。

具体的には

  • 手早く行い、肌の露出時間をできる限り少なくする
  • 陰部等のデリケートゾーンにタオルをかけ、できる限り肌の露出部位を減らす
  • 自力歩行が可能な方であって、トイレに行ける場合は、できる限りドアの外で見守る
  • 身体等をじろじろ観察しない
  • 排せつ物のにおいに反応しない
  • 利用者の行動を急かさない

などの取り組みを実施しましょう。

安全確保のための「過度な監視」や効率を重視した「一律的な介助方法」は、時として利用者の羞恥心や自尊心を傷つけてしまいます

相手の気持ちに配慮したちょっとした気遣いを加えるだけで、利用者が受ける精神的な苦痛は軽減されるのです。

 

参考:訪問介護の清拭マニュアル

参考:訪問介護の更衣介助マニュアル

参考:訪問介護の排泄介助マニュアル

参考:訪問介護の入浴介助マニュアル

 

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さいごに:自分に置き換えてプライバシーの保護を考えよう

「プライバシーを保護しなさい」と言われても、実際の現場ではなかなか難しい場面もあるかと思います。

重度化するにつれて利用者自らできることは少なくなり、それと同時にプライバシーも無くなっていきます。特に身体介護では安全確保を優先し、訪問介護主導のサービス提供にせざるを得ないケースもあるでしょう。

しかし、そんな場面でも忘れてはならないのは「自分が同じことをされたら、どう思うか」という視点です。

もしあなたが自分の体を動かせなくなったとき、誰かに急かされたらどう思うでしょうか?

もしあなたの秘密を、知らないところで誰かに話されていたらどう思うでしょうか?

自分に置き換えて考えてみることで、おのずと答えは出るはずです。

プライバシー保護の本質は、自分がされて嫌なことを相手にしないこと。

ぜひ、自らのサービス内外の対応や行動を省み、これからの業務に活かしてください。

 

本マニュアルの参考資料

厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」

当サイトヘルパー会議室では、ホームヘルパーやサービス提供責任者の初心者向けに業務マニュアルを無料公開しています。

この機会に合わせてチェックしておきましょう。

サービス提供責任者の完全業務マニュアル

【ホームヘルパーの完全業務マニュアル

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