訪問介護事業を立ち上げようと準備を進めているのですが、
どういったマニュアルを作成しないといけないのか良くわかりません…。
今回はこんな悩みにお答えすべく、訪問介護で作成が必要なマニュアルや指針をすべて紹介します。
加えて、各マニュアル・指針ごとに盛り込む項目も詳しく解説しますので、ぜひ作成整備する際の参考にしてください。
訪問介護のマニュアルは「必須」のものと「任意」のものがある
訪問介護のマニュアルとは、業務の目的や方法、手順、流れなどを具体的に示し、誰でも同じように実行できるよう標準化したものを指します。
指定訪問介護事業においては、苦情対応や事故対応など省令で義務付けられている「必須」のマニュアルと、認知症ケアや接遇など省令上の義務付けがない「任意」のマニュアルに分けられます。
前者の必須マニュアルは運営指導時にチェックされ、未整備であった場合は、運営基準違反となるため必ず作成しておかなければなりません。
後者の任意マニュアルは運営指導時にチェックされることはありませんが、介護サービス情報公表制度などにより作成を求められています。また、義務ではないとはいえ、業務や教育の効率化・平準化およびサービスの品質向上に役立つものですので、事業所の規模や状況に応じて作成に着手すると良いでしょう。
訪問介護で作成すべき「必須」マニュアル・指針一覧【7種】
指定訪問介護事業において、基準省令で義務付けられている必須のマニュアル・指針は以下の7つです。
※なお、この7つは訪問系障害福祉サービス(居宅介護、重度訪問介護など)においても作成義務があるマニュアル・指針になります。
①:緊急時対応マニュアル
【第27条】緊急時等の対応
訪問介護員等は、現に指定訪問介護の提供を行っているときに利用者に病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、速やかに主治の医師への連絡を行う等の必要な措置を講じなければならない。
基準省令の運営基準第27条により、指定訪問介護事業所の訪問介護員等は、サービス提供中に利用者の病状が急変した場合において主治医への連絡等の必要な措置を行わなければならないと定められており、こうした状況下で適切に対応するために、「緊急時対応マニュアル」や利用者個々の「緊急連絡票」などの作成が必要です。
緊急時対応マニュアルの策定にあたっては、
- 急変時の観察事項
- 急変時の連絡フロー(事業所、医療職、ケアマネ、家族など)
- 医療職への伝達方法
- 救急搬送すべき状況
- 救急搬送の手順(119番通報~搬送までのフロー、救急隊への伝達事項など)
- 応急処置等の方法
などの項目を盛り込みましょう。
※以下コラムで緊急時対応の方法等を詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
※応急処置の方法については、ヘルパー会議室より販売しておりますサ責白本の特典「想定される緊急時の対応方法」にて紹介しています。必要であれば購入を検討していただき、マニュアル策定時に付け加えてください。
②:事故対応マニュアル
【第37条】事故発生時の対応
指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により事故が発生した場合は、市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。
2 指定訪問介護事業者は、前項の事故の状況及び事故に際して採った処置について記録しなければならない。
3 指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない。
基準省令の運営基準第37条により、指定訪問介護事業者は、事故発生時に関係者へ連絡するとともに必要な措置を講じなければならないと定められており、こうした状況下で適切に対応するために「事故対応マニュアル」の作成が必要です。
事故対応マニュアルの策定にあたっては、
- 事故発生時の観察事項および安全確保の方法
- 事故発生時の連絡フロー
- 事故対応記録の作成について
- 市町村への報告方法(所管市町村に応じた報告が必要な事故状況、メール・FAX・入力フォーム等の報告方法の別など)
- 事故予防、再発防止の取り組みについて
などの項目を盛り込みましょう。
※以下コラムで事故対応の方法等を詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
※事故対応マニュアルについては、①の緊急時対応マニュアルと一体的に作成する場合が多いです。ヘルパー会議室にて「事故発生時・緊急時対応マニュアル」のひな形テンプレート(Wordファイル)を作成しましたのでご活用ください。
③:苦情対応マニュアル
【第36条】苦情処理
指定訪問介護事業者は、提供した指定訪問介護に係る利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない。
2 指定訪問介護事業者は、前項の苦情を受け付けた場合には、当該苦情の内容等を記録しなければならない。
3 指定訪問介護事業者は、提供した指定訪問介護に関し、法第二十三条の規定により市町村が行う文書その他の物件の提出若しくは提示の求め又は当該市町村の職員からの質問若しくは照会に応じ、及び利用者からの苦情に関して市町村が行う調査に協力するとともに、市町村から指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
4 指定訪問介護事業者は、市町村からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を市町村に報告しなければならない。
5 指定訪問介護事業者は、提供した指定訪問介護に係る利用者からの苦情に関して国民健康保険団体連合会(国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会をいう。以下同じ。)が行う法第百七十六条第一項第三号の調査に協力するとともに、国民健康保険団体連合会から同号の指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
6 指定訪問介護事業者は、国民健康保険団体連合会からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を国民健康保険団体連合会に報告しなければならない。
基準省令の運営基準第36条により、指定訪問介護事業者は、利用者やその家族からの苦情を迅速かつ適切に対応するために苦情受付の窓口を設置しなければなりません。また苦情を受け付けた場合には、記録の作成や市町村、国保連からの調査に協力するとともに改善報告等の対応を行う必要があります。
苦情対応マニュアルには、苦情受付から速やかに解決できるよう、
- 苦情受付の体制(窓口および担当者)
- その他の苦情受付窓口について(市町村および国保連)
- 苦情処理フロー
- 苦情対応記録について
などの項目を盛り込みましょう。
※以下コラムで苦情対応の方法等を詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
※ヘルパー会議室にて「苦情対応マニュアル」のひな形テンプレート(Wordファイル)を作成しましたのでご活用ください。
④:ハラスメント防止に関する基本方針
【第30条第4項】勤務体制の確保等
4 指定訪問介護事業者は、適切な指定訪問介護の提供を確保する観点から、職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより訪問介護員等の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない。
基準省令の運営基準第30条4項により、指定訪問介護事業者は、職場におけるハラスメントの内容および職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業者へ研修等により周知・啓発しなければなりません。加えてハラスメントに関する相談窓口の設置等の体制整備も必要です。
ハラスメント防止に関する基本方針には、
- 事業所におけるハラスメント防止の基本的な考え方
- ハラスメントの定義
- ハラスメント対策の取り組み(日頃からの取り組み、ハラスメント発生時の対応方法など)
- ハラスメント防止に関する職員研修について
- ハラスメントに関する苦情・相談体制について(ハラスメント担当者の選任、秘密保持についてなど)
などを盛り込みましょう。
※ハラスメント防止に関する基本方針の策定にあたっては、厚生労働省がマニュアルおよび研修の手引きを示していますので、こちらを参考にしてください。
⑤:衛生マニュアル(感染症・食中毒マニュアル)
【第31条第1・2項】衛生管理等
指定訪問介護事業者は、訪問介護員等の清潔の保持及び健康状態について、必要な管理を行わなければならない。
2 指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所の設備及び備品等について、衛生的な管理に努めなければならない。
基準省令の運営基準第31条1,2項により、指定訪問介護事業者は、訪問介護員等の健康および衛生管理に努めなければならないと定められており、ディスポーザブル手袋や消毒液の準備、衛生マニュアル等の作成が必要です。
衛生マニュアル(感染症・食中毒対策マニュアル)に策定にあたっては、
- 感染症・食中毒の種類と特徴
- 感染予防対策(手指消毒の方法、ガウンテクニックなど)
- 利用者・訪問介護員等の健康管理について
- 感染拡大防止対策について(消毒やケアの方法についてなど)
などを盛り込みましょう。
※以下コラムで訪問介護向けの感染症・食中毒対策について詳しく解説しています。マニュアル策定や研修資料等に使えますので、あわせて参考にしてください。
⑥:感染症・食中毒の予防およびまん延防止のための指針
【第31条第3項】衛生管理等
3 指定訪問介護事業者は、当該指定訪問介護事業所において感染症が発生し、又はまん延しないように、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
一 当該指定訪問介護事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置その他の情報通信機器(以下「テレビ電話装置等」という。)を活用して行うことができるものとする。)をおおむね六月に一回以上開催するとともに、その結果について、訪問介護員等に周知徹底を図ること。
二 当該指定訪問介護事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための指針を整備すること。
三 当該指定訪問介護事業所において、訪問介護員等に対し、感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練を定期的に実施すること。
基準省令の運営基準第31条第3項により、指定訪問介護事業者は、感染症・食中毒の予防およびまん延の防止のために、平常時の対策や発生時の対応を規定する指針を整備しなければなりません。
感染症・食中毒の予防およびまん延防止のための指針の策定にあたっては、
- 事業所における感染症・食中毒の予防およびまん延防止の基本的な考え方
- 感染管理の組織体制
- 平常時の対策(事業所内の衛生管理、標準的な感染予防対策、訪問先での感染対策など)
- 感染発生時の対応(発生状況の把握、感染拡大の防止、関係機関との連携、行政等への報告など)
などを盛り込みましょう。
※以下、厚生労働省の手引き(P132)に例が示されていますので参考にしてください。
⇒厚生労働省「介護現場における感染症対策の手引き(第3版)」
※上記の手引きに示されている指針は、施設向けです。訪問介護向けのひな形が欲しい方は、ヘルパー会議室より販売しております「サ責白本」の特典にてひな形をプレゼントしています。業務継続計画についてもひな形をお付けしていますので、必要であれば購入をご検討ください。
⑦:虐待防止のための指針
【第37条の2】虐待の防止
指定訪問介護事業者は、虐待の発生又はその再発を防止するため、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
一 当該指定訪問介護事業所における虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)を定期的に開催するとともに、その結果について、訪問介護員等に周知徹底を図ること。
二 当該指定訪問介護事業所における虐待の防止のための指針を整備すること。
三 当該指定訪問介護事業所において、訪問介護員等に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。
四 前三号に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置くこと。
基準省令の運営基準第37条第の2により、指定訪問介護事業者は、虐待の発生または再発を防止するために虐待防止委員会の設置・開催、担当者の配置、研修の実施、指針の整備等を行わなければならず、これらが未実施の場合は減算対象となります。
虐待防止のための指針の策定にあたっては、
- 事業所における虐待の防止に関する基本的考え方
- 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
- 虐待の防止のための職員研修に関する基本方針
- 虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針
- 虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項
- 成年後見制度の利用支援に関する事項
- 虐待等に係る苦情解決方法に関する事項
- 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項
- その他虐待の防止の推進のために必要な事項
などを盛り込むこととされています。(老企第25号より)
※訪問系障害福祉サービス(居宅介護、重度訪問介護、同行援護など)については、努力義務ですが「身体拘束適正化の指針」の作成を行わなければならず、未整備の場合は減算対象になります。
※訪問介護および訪問系障害福祉サービス事業者向けの虐待防止の指針のひな形を、ヘルパー会議室より販売しております「サ責白本」の特典にてプレゼントしています。必要であれば購入をご検討ください。
訪問介護で作成を推奨する任意マニュアル一覧【18種】
指定訪問介護事業において、作成整備を推奨する任意マニュアルは、以下の18種です。
これらは基準省令上の義務はありませんが、介護サービス情報公表制度により求められているものやヘルパー会議室運営部がおすすめするものになります。(※必須マニュアルと重なるものは省いています)
①:認知症マニュアル
認知症マニュアルは、認知症の利用者への日常的な配慮や基本的な接し方、認知症の症状に応じたケアの方法を示すマニュアルです。
認知症マニュアルの策定にあたっては、
- 認知症の種類(アルツハイマー型、脳血管性など)
- 認知症の主な症状(中核症状と周辺症状)
- 認知症ケアの基本(自尊心の尊重、観察と健康管理、共に過ごす関わり、役割づくり、利用者のペースに合わせた対応、問題行動の原因究明、生活環境の整備など)
- 問題行動別の対応方法(徘徊、暴力・暴言、妄想、介護拒否など)
- 認知症の方とのコミュニケーションの基本
などを盛り込みましょう。
※以下コラムで認知症ケアについて詳しく解説しています。マニュアル策定や研修資料等に使えますので、あわせて参考にしてください。
②:プライバシー保護の取組に関するマニュアル
プライバシー保護の取組に関するマニュアルは、プライバシーポリシーや個人情報保護方針など、利用者の個人情報・プライバシー保護の取組について示すマニュアルです。
プライバシー保護の取り組みに関するマニュアルの作成にあたっては、
- 個人情報、プライバシーの概要
- 個人情報に関する法令について
- 規範を遵守すること
- 個人情報の提供・利用・収集に関する配慮等について
- 事業所として実施するプライバシー保護の取り組み内容
などを盛り込みましょう。
※以下コラムで個人情報・プライバシー保護について詳しく解説しています。訪問介護事業所向けの取り組み例をいくつか示していますので、あわせて参考にしてください。
③:入浴介助・清拭・身体整容マニュアル
入浴介助・清拭・身体整容マニュアルは、入浴や清拭、整容(日常的な身だしなみを整える行為)について注意点や手順などを示すマニュアルです。
入浴介助・清拭・身体整容マニュアルの作成にあたっては、
- 入浴介助・清拭等の概要
- 目的と効果
- 実施にあたっての基本原則
- 必要物品
- 実践手順
などを盛り込みましょう。
※以下コラムで入浴介助・清拭・身体整容について詳しく解説しています。マニュアル策定や研修資料等にも使えますので、あわせて参考にしてください。
④:排せつ介助マニュアル
排せつ介助マニュアルは、排せつ介助(ベッド上のオムツ交換、トイレ介助、ポータブルトイレ介助など)について注意点や手順などを示すマニュアルです。
入浴介助・清拭マニュアルの作成にあたっては、
- 排せつ介助の概要
- 排せつ介助の重要性
- 実施にあたっての基本原則
- 必要物品
- 実践手順
などを盛り込みましょう。
※以下コラムで排せつ介助について詳しく解説しています。マニュアル策定や研修資料等にも使えますので、あわせて参考にしてください。
⑤:食事介助マニュアル
食事介助マニュアルは、食事介助(ベッド上の介助、イスに座っての介助など)について注意点や手順などを示すマニュアルです。
食事介助マニュアルの作成にあたっては、
- 食事介助の概要
- 食事介助の目的、重要性
- 実施にあたっての基本原則
- 必要物品
- 実践手順
などを盛り込みましょう。
※以下コラムで食事介助について詳しく解説しています。マニュアル策定や研修資料等にも使えますので、あわせて参考にしてください。
⑥:口腔ケアマニュアル
口腔ケアマニュアルは、歯磨き介助やうがい、義歯洗浄等について注意点や手順などを示すマニュアルです。
口腔ケアマニュアルの作成にあたっては、
- 口腔ケアの概要
- 口腔ケアの目的と効果
- 口腔ケアの種類(器質的ケア・機能的ケア)
- 実施にあたっての基本原則
- 必要物品
- 実践手順
などを盛り込みましょう。
※以下コラムで口腔ケアについて詳しく解説しています。マニュアル策定や研修資料等にも使えますので、あわせて参考にしてください。
⑦:移動介助、外出支援マニュアル
移動介助、外出支援マニュアルは、「移乗・移動介助」や「通院・外出介助」について注意点や手順などを示すマニュアルです。
移動介助、外出支援マニュアルの作成にあたっては、
- 外出介助、移乗・移動介助の概要
- 支援の目的
- 外出介助の支援の範囲
- 実施にあたっての基本原則
- 実践手順
などを盛り込みましょう。
※以下コラムで移動介助、外出支援について詳しく解説しています。マニュアル策定や研修資料等にも使えますので、あわせて参考にしてください。
⑧:生活援助マニュアル
生活援助マニュアルは、掃除、洗濯、買い物、調理等の家事支援全般について注意点や手順などを示すマニュアルです。
生活援助マニュアルの作成にあたっては、
- 生活援助の種類と概要
- 実施にあたっての基本原則
- 実施方法(注意点、ポイント)
などを盛り込みましょう。
※以下コラムで各生活援助について詳しく解説しています。マニュアル策定や研修資料等にも使えますので、あわせて参考にしてください。
⑨:利用者の状態に合わせた調理マニュアル
利用者の状態に合わせた調理マニュアルは、調理に関して留意すべき事項(嚥下力の低下、疾患による制限、障害特性による留意点)がある利用者の状態に合わせた調理の実施方法などについて示すマニュアルです。
このマニュアルについては、先ほど紹介した生活援助マニュアル内の調理の項目に盛り込んでおくことで良いかと思います。
なお嚥下食の調理方法については、当サイトのコラム「調理マニュアル」内で紹介していますので、そちらを参考にしてください。(※疾患による制限食などについては後日コラムを書きます)
⑩:接遇マニュアル
接遇マニュアルは、訪問介護員が守るべき接遇マナー等を示すマニュアルです。
接遇マニュアルの作成にあたっては、
- 接遇マナーの概要と必要性
- 接遇マナーの基本
- 接遇チェックリストの活用について
などを盛り込みましょう。
なお、訪問介護は利用者のお宅に上がって仕事をする性質上、施設介護など一般的な介護職とは異なる接遇マナーを求められます。そのため、表情やあいさつ、身だしなみといった基礎的な内容だけでなく、訪問介護ならではの項目も盛り込むようにしてください。
※以下コラムで訪問介護向けの接遇マナーについて詳しく解説しています。マニュアル策定や研修資料等にも使えますので、あわせて参考にしてください。
⑪:金銭管理マニュアル
金銭管理マニュアルは、買い物代行時の利用者との金銭のやりとりに関する規定を示すマニュアルです。
金銭管理マニュアルには、
- 預かる金額の上限について
- 金銭のやり取りに関する禁止事項
- 金銭のやり取りに関する手順
- 金銭のやり取りに関する記録方法
- 買い物代行で金銭管理簿や金銭出納帳を使用するケースについての規定
などを盛り込みましょう。
なお、基本的に事業所で利用者の生活費等を預かり管理することは行うべきではありませんが、実施する場合は、財産管理等の関する規定も盛り込むようにしてください。
※以下コラムで買い物代行時の金銭のやり取りについて解説しています。あわせて参考にしてください。
⑫:鍵管理マニュアル
鍵管理マニュアルは、利用者宅の鍵を事業所で預かり管理する場合に作成するマニュアルです。
鍵管理マニュアルには、
- 預かり証の交付について
- 鍵の保管場所について
- 鍵の管理責任者の選任
- 鍵の持ち出しルールについて
- 鍵管理表の整備・記入について
などを盛り込みましょう。
※ヘルパー会議室では、鍵管理表や預かり証のひな形テンプレートを無料提供しています。必要な方は以下からダウンロードしてご活用ください。
⑬:予定していた訪問介護員が訪問できなくなった場合の対応手順書
訪問介護事業所の都合で、予定していた訪問介護員が訪問できなくなった場合の対応手順などを示すマニュアルです。
策定にあたっては、
- 利用者ごとに対応が可能な訪問介護員の一覧
- 各訪問介護員の連絡先一覧
- 各利用者および居宅介護支援事業所(担当ケアマネジャー)の連絡先一覧
- 訪問できなくなった訪問介護員の連絡フロー(誰に連絡するのか)
- 対応担当者(管理者やサ責)の対応フロー(担当サ責が代行訪問、代替訪問介護員への連絡依頼、状況によって時間・曜日変更を利用者へ連絡し振替訪問を依頼する、担当ケアマネジャーへの報告など)
⑭:倫理規程
倫理規定は、適切な事業運営を確保するために、事業所としての倫理や心得を訪問介護員等が共有できるよう明文化したものを指します。倫理規定の策定にあたっては、「全国ホームヘルパー協議会の倫理綱領」や「日本在宅介護協会の倫理網領」を参考にすると良いでしょう。
⑮:職務権限規程
職務権限規程は、組織として適切にサービスを提供するために、組織の構成員(管理者・サービス提供責任者・訪問介護員等)の役割と権限を明文化したものを指します。
職務権限規程の策定にあたっては、
- 職務権限規程の目的
- 用語の定義(職務とは何か、権限とは何か)
- 権限行使の基準
- 権限の代行基準と行使者の選任
- 責任の範囲
- 管理者の職務内容および権限
- サービス提供責任者の職務内容および権限
- 訪問介護員の職務内容および権限
- 組織全体の事業運営体制(組織体制図など)
などを盛り込みましょう。
※職務とは、経営活動として行うべき業務のうち、管理者・サービス提供責任者・訪問介護員など職位ごとに遂行すべきものとして割り当てられた具体的な業務のこと。
⑯:非常災害時対応マニュアル
非常災害時対応マニュアルは、非常災害が発生した場合の対応手順、役割分担等について定めるマニュアルです。
マニュアルの策定にあたっては、
- 災害発生時の初動対応(安全確保や災害情報の収集)
- 災害発生時の連絡フロー
- 避難場所の所在と避難する基準
- 訪問時に災害が発生した場合の対応の基本
- 地震・風水害など災害ごとの対応方法
- 停電時の留意点
- 関係機関との連携について
などを盛り込みましょう。
※令和6年4月より指定訪問介護事業者および指定訪問系障害福祉サービス事業者(居宅介護、重度訪問介護、同行援護など)において、自然災害発生時の業務継続計画(BCP)の作成整備が義務化されます。非常災害時対応マニュアルと業務継続計画は、共通する部分が多く密接に関わり合うものになります。
※ヘルパー会議室より販売しております「サ責白本」の特典にて、自然災害発生時の業務継続計画のひな形をプレゼントしていますので、必要であれば購入をご検討ください。
⑰:体調の悪い訪問介護員の交代基準マニュアル
体調の悪い訪問介護員が発生した場合において、他の訪問介護員に交代する目安や判断基準を事業所として定めるマニュアルです。なお、就業規則等に別に定めている場合は作成する必要はありません。
マニュアルの策定にあたっては、
- 体温〇℃以上の場合
- 咳、鼻水等の風邪症状がある場合
- 利用者等に感染する可能性がある場合
⑱:請求業務マニュアル
請求業務マニュアルは、訪問介護費の請求にかかる一連の流れや手順などを示すマニュアルです。
これは介護サービス情報公表制度で求められていないマニュアルですが、業務の引き継ぎ等の際に効率化を図ることができるため作成をおすすめします。
請求業務マニュアルの策定にあたっては、
- サービス提供票(実績票)の作成方法
- 国保連への請求の流れ
- 介護給付費請求書・明細書の作成方法
- 返戻・保留時の対応方法
- 介護ソフトの使い方
※以下コラムで請求業務について詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
さいごに
今回は、指定訪問介護事業において作成が必要なマニュアルについて解説しました。
今回紹介したマニュアルのうち、必須のものは基準省令で定められた事業者の義務ですので、基準違反とならないよう必ず作成してくださいね。
当サイト「ヘルパー会議室」では、サービス提供責任者の初心者向けに業務マニュアルを無料で公開しています。ぜひ、この機会にあわせてチェックしてみてください!