訪問介護の仕事をしていると、否が応でも利用者さんのプライバシーを知ってしまうことになります。
時々、訪問介護のヘルパーが利用者様の状況を家族との話題に出していることや、訪問介護にまつわる話題をブログに書いている話も耳にします。
名前を出さければ誰だかわからないだろう、という気軽な気持ちなのでしょうか。
しかし、我々ヘルパーには「守秘義務」があり利用者のプライバシーを侵害することがあってはなりません。

法的に守られていることを漏らすことに対して意識が薄れているとしたら、それは非常に危険なことです。
そこで今回は
- 訪問介護におけるプライバシーとは?
- プライバシー侵害の事例
を解説します!
ヘルパーという仕事をしていく以上、しっかり理解しておく必要があるので一緒に見ていきましょう。
そもそもプライバシーって何?
プライバシーとは何か?と言うとWikipediaによると
プライバシー、プライヴァシー(英: privacy)は、私生活上の事柄をみだりに公開されない法的な保障と権利である[1]。個人情報保護の文脈では、他者が管理している自己の情報について訂正・削除を求めることができる権利(積極的プライバシー権)を指す。英語の privacy を片仮名表記したものであり、日本語では私事権や私生活と訳されることもある。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
となっています。
訪問介護はサービスの性質上
利用者の私生活に介入することになりますので、利用者のプライバシーに踏み込んでいく仕事になります。
訪問介護現場でのプライバシーとは
前述のとおり訪問介護は利用者のプライバシーに踏み込んでいく仕事になりますが、実際どのような情報がプライバシーになるのでしょうか?
以下にまとめてみました。
- 氏名
- 生年月日
- 出身地
- 住所
- 既往歴
- 服用している内服状況
- かかりつけ医情報
- 経済状況
- 身体状態
- 精神状態
- 家族構成
- 居室内の状態
- 訪問介護実施記録などの帳票
などヘルパーしか知ることができない情報も多くあります。
訪問介護によるプライバシー侵害の例
プライバシー侵害と言っても、訪問介護をする時にどんなことに気をつけたら良いのでしょうか?
実は何気なく普段行っている行動の中にもプライバシー侵害となることがあります。
業務上の責任があるので「知らなかった」では済まされないので十分な注意が必要です。
では実際に、ヘルパーがプライバシー侵害をしてしまっていた例から見ていきましょう!
たまたま顔見知りだった利用者とヘルパーの事例
ある日、利用者Aさん宅へ、ヘルパーが勤務しはじめました。
このヘルパーはAさんと同じ町内に住んでおり、もともと地域の町内会でも顔をあわせていることから、偶然にも顔見知りでした。
ヘルパーは何の気なしにAさんの介護を受けるようになったきっかけなどについて、本人に詳しく聞くようになりました。
ある時、町内の集まりがありAさんのことを町内の1人に尋ねられたため
「病気から後遺症を患っているので介護に入っている 」ことや
「介助がないとトイレに行けない」ことなどを話してしまいました。
後日、町内の女性から他の人にも噂が広まりヘルパーから口外したことが知れてしまい問題になりました。
事例から学ぶプライバシー侵害の要点
この事例のプライバシー侵害になってしまった要因は
- 「病気から後遺症を患っているので介護に入っている 」
- 「介助がないとトイレに行けない」
などの私生活での個人的な情報を他者に漏らしてしまった事ですね。
Aさんが知られたくない病気のことや、もともと地域の人が知らなかった個人的なことを
同じ町内であっても、ヘルパー業務を通して知り得た情報は、決して他人に話すべきではありません。
利用者の情報をSNSに載せてしまった事例
利用者Bさんは家事援助のサービスを受けていますが、ゴミ屋敷状態で部屋が散乱していました。
長年のゴミ屋敷だったのですが、ヘルパーはどうしても誰かに見せたくて個人のブログにBさんの部屋が散乱している画像をアップしてしまいました。
個人のブログだからバレないだろうと思っていた矢先、たまたま利用者の家族がその記事を発見。
利用者や家族とトラブルとなり訴訟問題にまで発展してしまいました。
事例から学ぶプライバシー侵害の要点
この場合、SNSであげた画像をとおして、どこの誰かを特定できるような公開をしたことが問題です。
ヘルパーもプライバシーに対する認識がかなり甘かったようです。
ネット上に1度出たものを回収することは実質的に不可能です。
決してあってはならないケースですので十分注意してください。
その他のヘルパーによるプラシバシー侵害の例
訪問介護の現場で、排泄時や入浴時もこの「プライバシー」にあたります。
自分がやられたら嫌だと思うことは、すべてプライバシーの侵害にあたると考えたうえで、介助すること、言動に気を付けることを意識しましょう。
例えば、
- 排泄時は外から見られたくない(カーテンやドアが開けっ放し)
- 入浴時は、他人に見られたら嫌なデリケートな部分がある
- 断りもなく引き出しや冷蔵庫など家のものを除かれる
- 自分の個人的なことや都合の悪い情報を自分に聞こえる場所で他者に伝えている
- 外で自分の細かい情報を知らない人に話される。
など、大抵の人はされたら嫌ですよね。
認知症の人でも、感情は一生変わらず持ち続けています。それをうまく表現できないだけです。
プロのヘルパーとして、技術やスキルよりも大切な「利用者の気持ちに寄り添う心」を持ってケアにあたるようにしましょう。
ただ、利用者によっては、「ドアは開けたままでいいよ」「いちいち聞かなくても勝手にやってよ」など、価値観は様々なので、一律的に実践するのではなく、利用者さんに確認を行いながら、臨機応変に対応することも必要です。
プライバシー保護のためのちょっとした配慮を意識する
排泄介助時や入浴時、環境整備を行うことは最低限必要ですが、それでも利用者からしてみると、本当は他人であるヘルパーにも見られたくないですよね。
そんな気持ちに、寄り添うための一工夫ができる配慮の方法を、お伝えしていきます。
①おむつ交換時はデリケートゾーンを見過ぎない
ヘルパーとしておむつ交換時はどうしてもデリケートな部分に目がいってしまい、慣れていないと夢中になってしまいます。
最低限、皮膚の状態等を確認する時のみに目線を配り、それ以外は余裕があれば会話しながら行うと、利用者も気が紛れますし羞恥心の配慮にも繋がります。
②入浴時は見られたくない場所にタオルなどで隠す
バスタオルなど複数枚あれば、デリケートな部分にタオルをまいてあげると良いです。タオルを結ぶ方法もあれば、洗濯バサミでつなぎ目を挟んであげると、片手がふさがらずに介助することが可能です。
③トイレで排泄時などは出来るだけトイレの外で待つ
中には立ち上がり時が心配だからと、トイレ内で待つヘルパーさんもいますが、利用者のプライバシーを大切にしましょう。終わったら声をかけてもらうこともできますし、それができなければ、ドアを少しだけ開けさせてもらい、隙間から除けるくらいであれば大丈夫です。
利用者が見られているという羞恥心に配慮しながら、安全も確保するように、工夫をしてみましょう。
まとめ
今回は訪問介護のプライバシーに関して解説しました。
ヘルパーが理解しているプライバシーの認識が甘いことがあります。
はじめはプライバシーについてしっかり守ろうと思っていても、長年勤めている、同僚がSNSで気軽にあげている、などの状況で感覚は変わってくることがあります。
また秘密保持義務違反は、介護福祉士法で罰則があり「懲役1年以下、または30万円以下の罰金」が科せられてしまいます。
そのこともしっかり理解したうえで情報の取り扱いには注意していきましょう。
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