私の訪問介護事業所に行政から実地指導の通知が届いた・・・2週間後に来るらしい。
でも実地指導に向けて、何をどう準備したら良いのか分からず焦ってます。
こんな悩みを抱えている方は多いです。
訪問介護事業者からすると実地指導は「恐怖」の一言に尽きますよね。
「不正はしてないけど、もしかすると実地指導で引っかかるのでは・・・」と不安でいっぱい。。
そこで今回は、実地指導対策に困っている方に向けて実地指導の対策マニュアルを作成しました。
本マニュアルでは
- そもそも実地指導とは?
- 指導項目ごとの必要書類一覧
- 実地指導のスケジュール
- 引っかからないポイント7選
- 過去の行政指導の例
など実地指導に関することを網羅的に分かりやすく解説しています。
私は実地指導を3回経験していますのでリアルな情報をお届けできると思います。
訪問介護の実地指導はポイントさえ押さえて整備をすれば怖いものではありませんよ。
※すぐに実地指導の必要書類が知りたいっ!て方は下記からジャンプしてください。
【まるわかり】訪問介護の「実地指導」とは?
指定事業である訪問介護は介護保険法のルールを守る必要があります。(障害福祉サービスの場合は障害者総合支援法にもとづく)
実地指導は簡単に言うと「ルールを遵守し、適正な運営がなされているか」都道府県等の職員が確認を行います。
行政指導は「実地」と「集団」の2種類
行政からの指導には「集団指導」と「実地指導」に2種類に分けられます。
「集団指導」は説明会形式で行われる
集団指導は、管轄の訪問介護事業所を一定の場所に集めて説明会形式で行われます。
制度、各種サービスの取り扱い、介護報酬などについて行政職員が講習します。
※近年はコロナウイルスの影響から講習ではなく、動画視聴をしてアンケート提出を集団指導としている自治体も多いです。
実地指導は「運営指導」と「報酬請求指導」の2つに分けられる
実地指導は主に「運営指導」「報酬請求指導」の2項目に分けられます。
- 運営指導…人員基準、設備基準、運営基準をクリアしているかの確認
- 報酬請求指導…介護報酬の算定が正しくなされているかの確認
都道府県等の職員が事業所に出向き、上記内容を細かくチェックし、口頭の確認・ヒアリングを行います。
実地指導は開業後6ヵ月~1年以内にはほとんどの事業者に実施され、遅くとも指定更新までには1度は実施されます。
実地指導で悪質な不正が疑われると「監査」に変更となる
実地指導と監査を混同してしまっている方は多いです。
監査は、実地指導で「不正が強く疑われる場合」や「不正が発覚した場合」などに監査に切り替えて行われます。
行政処分は主に5つあり、概要は下記表のとおりです。
行政処分の種類 | 概要 |
改善勧告 | 文書で違反内容の勧告をうけ、期間内に改善策の報告を求められる。 |
改善命令 | 改善勧告に従わなかった場合、文書で改善命令を受けます。
(※改善命令の内容を公示される) |
指定の効力一部停止 | 一定の期間、特定の事業においてのみ活動が制限される
(※新規受け入れ停止など) |
指定の効力全部停止 | 一定の期間、指定訪問介護事業としての活動がすべて制限される。
(※再申請は不要。謹慎みたいなもの) |
指定取り消し処分 | 訪問介護事業者としての指定を取り消される。
(※事業再開は再申請が必要) |
訪問介護は「指定取り消し処分」件数がダントツトップ
上記は平成28年度、指定取り消しなどの行政処分をされた事業所の内訳です。
訪問介護は84件、居宅介護支援38件、デイサービス34件と訪問介護は行政処分の件数ダントツトップです。
なぜこんなにも訪問介護の行政処分が多いのか?
それは単に訪問介護事業者の数が多いからといった理由だけではありません。
1番の理由は法令知識の不足です。
法令は「知らなかった」では済まないのです。
「忙しいから」「面倒だから」と何かにつけて後回しにして、正しい知識を得ようとしない。
その慢心が指定取り消しなどの厳しい行政処分につながります。
実地指導に対する危機感を常にもって運営することを心がけましょう。
【一覧表あり】訪問介護の実地指導で準備すべき必要書類
実地指導でチェックされる項目と必要な書類をはやく教えてください!
ここでは実際の実地指導では「どのような項目をチェックされて、どのような書類を準備すれば良いのか?」について解説してきます。
~ 実地指導 2つの項目~
それぞれの指導項目に対する「必要書類」を表にまとめました。
(※下記チェック表は厚生労働省の示している実地指導標準項目や各自治体の自己点検シートをもとに作成しています)
チェック項目 | 必要書類 |
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※自治体によっては5年間保管としてるところもあります。 |
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チェック項目 | 必要書類 |
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【スケジュール】訪問介護における「実地指導の流れ」
訪問介護の実地指導は下記の流れで行われます。
(自治体によって多少の違いがありますのでご了承ください)
- 指導の2週間~1か月前実地指導の通知がくる
2週間~1か月前に役所から実地指導の通知書が届きます。
(※虐待が疑われる場合は事前通知なし)
通知書に記載されている内容は下記のとおりです。
- 実地指導の根拠法令
- 対象事業所名と対象事業
- 実地場所と日時
- 担当職員(2名~3名)
- 事前提出書類
- 当日に準備する書類
が記載されています。
事前提出書類は自治体によってさまざまですが主に下記のとおりです。
- 自己点検シート
- 運営規定
- 勤務表
- 月ごとの利用者数を記載した書類
- 重要事項説明書
- パンフレット、チラシ
- 平面図
などを提出します。
ちなみに郵送する場合は書留か特定記録郵便をおすすめします。証明になりますので。
通知書が届いたら焦らず、着実に書類を揃えていきましょう!
- 指導当日実地指導のスケジュール
実地指導当日は
- 運営指導
- 報酬請求指導
- 講評
の流れで、部屋に行政職員が閉じこもって書類を確認していきます。
不明点や不備があればそのつど呼ばれ管理者やサービス提供責任者が対応をしていきます。
また準備している書類の全てをチェックされるの?と気になる方もいると思いますが
答えはNOです。
例えば、利用者全員の訪問介護計画書やサービス実施記録を確認することはありません。
ですが、すべての利用者の書類をしっかり揃えておく必要はあります。
なぜなら、どの利用者の書類をチェックされるかは当日にならないと分からないからです。
行政の職員が利用者台帳の中からランダムに選んだり、初回加算を算定しているケースを選んだり、独居の利用者を選んだりとさまざまなのです。
なので、どの利用者をチェックされても良いように準備しておきましょう。
また最近の実地指導は効率化が進んでいることから、9時~12時までで終わることが多くなっています。
ただし自治体によっては9時~17時まで行われることもありますので、当日は1日空けておくことをおすすめします。
ちなみに私の事業所は9時30分~12時で実地指導が行われました。
まだまだ自治体によってバラツキがあるみたいですね。
- 指導の1週間~2週間後実地指導の結果通知が届く
指導が終了し1週間~2週間後に自治体から結果通知が届きます。
何かしらの改善報告を求められることがほとんどですので、所定の改善報告書に記入し提出します。
改善報告書を提出し、審査を通れば実地指導は無事終了となります。
ちなみに平成28年の実地指導では約半数が「改善報告」を求められ、1割近くの事業所が「過誤調整」を指示されています。
実地指導で「引っかからない」ための注意ポイント7選
訪問介護の実地指導において下記の7つのポイントに注意しておきましょう。
- 加算関連は厳しくチェックされる傾向にある
- 各書類の「整合性」を保つように整備する
- 書類の「日付」に注意する
- 過去「2年間」分の書類整備しておく
- 実地指導時は「嘘」をつかず「誠実」に対応する
- 管理者、サ責以外の職員にもヒアリングされる場合もある
- 実地指導は「粗さがし」に来るわけではない
それぞれ見ていきましょう。
① 加算関連は厳しくチェックされる傾向にある
訪問介護の実地指導は加算要件を満たしているかを厳しくチェックされる傾向があります。
その中でも特に
- 特定事業所加算
- 介護職員処遇改善加算・特定加算
などは引っかかりやすい加算ですので、算定要件の根拠となる書類をしっかり準備しておきましょう。
参考:【全12種】訪問介護の「加算・減算」まとめ【2021年最新】
要件をクリアせず加算を取得していた場合、さかのぼって2年間分を全額返還となる可能性もあります。
② 各書類の「整合性」を保つように整備する
例えば
- 訪問介護計画書はケアプランが反映されているか?
- 訪問介護計画書、手順書、サービス実施記録の各項目・時間の相違はないか?
- 運営規定と重要事項説明書の内容に相違はないか?
このように書類同士の整合性を保つように作成することが大事です。
③ 書類の日付に注意する
例えば
- 重要事項説明書
- 訪問介護計画書
は利用者に説明し同意を得たら、同意日を必ず記載します。
同意日は必ずサービス開始日の前になるため注意しておきましょう。
誤ってサービス開始後を同意日としていた場合は、実地指導で引っかかるので事前チェックが必要です。
④ 過去「2年間」分の書類整備をしておく
実地指導では何年分の書類を確認されるのか?ですか
近年の実地指導は簡素化されてきているため、書類は過去1年間分としている自治体が多いです。
ですが、実地指導時に疑義があると追加で過去2年間分の書類を確認されるケースもあります。
そのため準備書類は過去2年間分を整備しておくようにしましょう。
⑤ 実地指導は「嘘」をつかず「誠実」に対応する
「指定取り消し」などの行政処分は「虚偽の答弁」など不誠実な対応が原因のひとつです。
よほど悪質な不正ではない限り、間違いを認めて誠実に対応することで重い厳罰を免れるケースも多いです。
仮に、実地指導で何かしらに引っかかっても嘘だけは止めておきましょう。
行政の職員もひとりの人間です。不誠実な人に対しては厳しくもなりますよ。
⑥ 管理者、サ責以外の職員にもヒアリングされることがある
基本的に実施指導時の対応は管理者やサービス提供責任者が行います。
ですが、行政の職員によっては他の従業員に話を聞き、間接的に虚偽の答弁が無いかを試してくる方もいます。
虚偽はなかったとしても食い違いがあると、あらぬ疑いを掛けられる可能性もあるので、事業所内で情報を共有しておくようにしましょう。
全てを共有することが難しければ、実地指導の時は対応する職員以外は事務所に戻らないようにした方が良いかも・・・
⑦ 実地指導は「粗さがし」に来るわけではない
実地指導は「何がなんでも不正を見つけてやるっ!」と粗さがしに来るわけではありません。
不正を見つけるために行うわけではなく「適切な運営、介護報酬請求を指導すること」を目的としています。
法令や制度を理解しているつもりでも解釈が間違っていることもあります。
実地指導は、そういった解釈の違いを正し、適切な運営をしていくためのアドバイスだと認識して臨みましょう。
実地指導はめったにない機会ですので、普段気になっていることや疑問に思っていることを質問しまくると良いですよ。
実際にあった訪問介護の指導事例
ここでは実地指導で引っかかってしまった実例を紹介していきます。
- 「改善報告、過誤調整」レベルの指導事例
- 「指定取り消し、効力停止」レベルの違反事例
に分けてみていきましょう。
※各自治体の判断により行政処分は変わりますのでご注意ください。
① 改善勧告レベルの違反事例
訪問介護計画書の長期・短期目標について個別性・具体性に欠ける内容であった。
訪問介護計画を利用者に説明、同意、交付をしたことが不明確であった。
居宅サービス計画が変更になったにも関わらず、訪問介護計画の見直し・更新がされておらず、訪問介護計画が居宅サービス計画に則した内容になっていなかった。
サービス提供記録の作成において、実際にサービス提供を行った時間を適切に記載されていなかった。
サービス提供記録の作成において、通院介助における診察時間や処置時間(算定対象外となる時間)が不明確であった。
身体介護1生活援助1のプランだったが、サービス提供記録は生活援助のみの記載であった。
サービス開始月内にサービス提供責任者が訪問していないのにも関わらず初回加算を算定していた。
ケアマネジャーへ連絡せず、訪問介護事業所がサービス提供を開始する時間を居宅サービス計画に位置付けられていない時間へ変更していた。
重要事項説明書と運営規定の内容に相違があった。
重要事項説明書を交付したことが不明確であった。
利用料などの領収書について、医療費控除対象者に対して対象額の明示を行っていなかった。
年間研修計画が作成されていなかった、また研修不参加者への対応が不明確であった。
非常勤の従業者について定期健康診断など健康状態の管理がなされていなかった。
介護職員処遇改善加算の従業者に対する周知が口頭のみであった(文書等により確実な方法で周知を図ること)
② 指定取り消し、効力停止レベルの違反事例
指定取り消しなど、事業運営を継続できないレベルの行政処分は下記の違反がほとんどです。
- 不正請求
- 不正な手段による指定
- 虚偽の答弁や書類の偽装
- 改善・監査の拒否
それぞれの事例を見ていきましょう。
【指定の一部効力の停止】(3カ月新規受け入れ停止)
サービス提供記録の作成及び整備並びに訪問介護員等の業務の実施状況の把握について、平成〇年〇月〇日の実地指導において指導を受けたにもかかわらず、これを怠った。
【指定の全部効力の停止】
(1)不正の手段による指定
事業開始時から指定とは異なる場所で運営を行っていた。
(2)不正請求
実際の事業所と同一の建物内にある有料老人ホームの利用者にサービスを提供しているにもかかわらず、必要な同一建物減算を行わず、介護報酬を請求した
【指定取り消し】
指定申請において、明らかに勤務することが不可能な者の名義を使用し不正の手段による指定を受けた。また人員基準が満たせているかのような虚偽の申請を行い、介護給付費を不正に請求、受領した。
【指定取り消し】
実地指導の改善報告について、報告の義務を知りながら報告をせずに3ヶ月以上放置していた。また監査に出頭を求めても従わなかった。
【指定取り消し】
(1)人員基準違反
常勤専従が要件であるサービス提供責任者が、同一法人が経営する有料老人ホームの職員として夜勤などを行っており人員基準違反していた。
(2)不正な手段による指定
また常勤専従の要件を満たすかのような虚偽の勤務形態一覧表を作成して申請、指定を受けていた。
【指定取り消し】
平成〇年〇月から〇月のあいだ計5回にわたり、実態がないにも関わらず、利用者3人に訪問介護を実施したなどとする虚偽のサービス提供記録を作成。介護報酬計2万6,880円を不正に請求し受給した。
この事例はたった3万円弱の不正請求で指定取り消しになりました。虚偽の答弁や記録の偽装が悪質だと判断されたようです。
不正に受領した介護給付費は、加算金をプラスした金額を返還することになります。
基本的に不正請求は「内部告発」や「外部からの情報提供」でバレます。
悪事は結局いつかはバレますので止めておきましょうね。
(参考)
まとめ
今回は訪問介護の実地指導対策マニュアルを解説しました。
かなり長文になってしまいましたが、本マニュアルを読んでいただければ、かなりの実地指導対策になると思います。
ぜひご活用ください!
当サイトではサービス提供責任者の初心者向け「業務マニュアル」を無料公開しています。