これから訪問介護で働こうと思ってるのですが、ホームヘルパーってなにするの?
なんとなくは知ってるけど、具体的な仕事内容や必要な知識を教えてほしい。
今回は、こんな悩みや疑問にお答えすべく、ヘルパー会議室運営部が作成した「訪問介護員(ホームヘルパー)業務マニュアル」を無料公開します。
本マニュアルは、訪問介護員(ホームヘルパー)が最低限知っておくべき業務の基本を体系化し、初心者にも理解できるよう分かりやすく解説した入門書です。
本マニュアルを読むことで、訪問介護員(ホームヘルパー)とはどのような職種で、なにを求められ、どう実践すべきかをすべて理解できます。これからヘルパーとして働き始める方や経験の浅いヘルパーは、ぜひ参考にしてください。
本マニュアルは、ヘルパー業務の平準化や事業所内研修の資料としても使えます。ヘルパーに限らず、管理者やサービス提供責任者の方々もご活用ください。
※ただし、本マニュアル内の文章および画像の著作権はヘルパー会議室が保有していますので、無断で使用することはできません。事業所でご活用される際には、以下お問い合わせフォームより必ずお知らせいただき、許諾を得てください。
序章:訪問介護員(ホームヘルパー)とは
訪問介護員(以下、ホームヘルパー)とは、支援を必要とする高齢者や障害者のお宅へ訪問し、その方が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるようサポートする専門職です。
基本的に1人の利用者に対してホームヘルパーが一対一で支援を行い、食事・排せつ・入浴等の介護や、掃除・洗濯・買い物・調理等の援助など、在宅での暮らしを維持するために必要な生活全般にかかるサービスを提供します。
ホームヘルパーの必要資格
入所施設やデイサービスなどの介護職員は無資格でも働けますが、訪問介護のホームヘルパーは無資格では従事することができません。ホームヘルパーとして従事できるのは、「介護福祉士または政令で定める者」に限られ、具体的には、
- 介護福祉士
- 介護職員初任者研修修了者
- 旧介護職員基礎研修修了者
- 旧訪問介護員1級課程修了者(ヘルパー1級)
- 旧訪問介護員2級課程修了者(ヘルパー2級)
- 生活援助従事者研修修了者(※生活援助中心型のみ)
などの資格うち、いずれかを有している必要があります。
ホームヘルパーは家政婦ではない
ホームヘルパーは家政婦ではありません!
こんな話を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか?
言われなくても分かってると思われたかもしれませんが、実のところ、家政婦やお手伝いさんのような仕事になっているホームヘルパーは少なくありません。
ホームヘルパーとして従事するにあたって、第一に理解しておいてほしいのは、訪問介護は介護保険法に基づく社会サービスであるということです。
みなさんには法制度により定められたルールを遵守する責務があります。「利用者の尊厳を保持し、自立支援を行うこと」や「利用者の心身の状況や生活環境を的確に把握し、ケアマネジャー等の関係機関と共有すること」など、確かな専門性のもとサービスを提供していかなければなりません。
ホームヘルパーの関わり方ひとつで、利用者の生活の質は大きく左右します。決して家政婦やお手伝いさんのように単に利用者の身の回りの世話をすれば良いわけではないのです。
このことを十分に理解した上で、在宅介護のプロとしての自覚をもって業務に臨みましょう。
第1章:訪問介護員(ホームヘルパー)の4つの業務内容
ホームヘルパーの業務内容は、大きく分別すると以下の4つに分けられます。
\ 4つの業務内容 /
- サービス訪問
- サービス提供記録の作成
- サービス提供責任者への報告
- 事業所研修への出席
これらはホームヘルパーの本分であり、必ず実施することになる業務です。
詳しく見てきましょう。
業務内容①:サービス訪問
1つ目の業務は、各利用者のお宅へ訪問して身体介護や生活援助などのサービスを提供する介護実務です。
その利用者を担当するケアマネジャーやサービス提供責任者が必要なサービスを検討し、自分で買い物に行けない方には買い物代行の支援を、自分でお風呂に入れない方には入浴介助を、といった具合にオーダーメイドで支援内容が決まります。
支援内容の詳細については、訪問介護のできることを示した厚生労働省通知「老計第10号」に具体的な取り扱いが記載されていますので、一読しておいてください。
身体介護
身体介護とは、利用者の身体に直接触れて行う介助(準備や後かたづけ等の一連の行為を含む)や利用者の日常生活を営むのに必要な機能の向上などのための介助、その他専門的な知識・技術をもって行う援助を指します。
介護の内容 | 概要 |
排泄介助 |
利用者の身体機能等に応じて、「ベッド上でのオムツ交換」「トイレ介助」「ポータブルトイレ介助」などの方法により排泄にかかる介助を行います。 |
食事介助 |
誤嚥などに注意しながら食事摂取や水分補給の介助を行います。 |
専門的調理 |
医師の食事箋や管理栄養士の指導のもと、嚥下困難者のための流動食等の特別食の調理を行います。
※一般的な調理は生活援助に含まれますが、専門的調理(特段の専門的配慮をもって行う調理)は身体介護として算定します。 |
清拭 |
顔・首・上半身・下半身をお湯で濡らしたタオル等で清拭します。 |
入浴介助 |
転倒に注意しながら衣服の着脱・移動の介助・洗髪・洗身・入湯介助などを行います。 |
洗面等の介助 |
洗面や歯磨き、うがいなどの口腔ケアを行います。 |
身体整容 |
手足の爪きり、耳そうじ、髭の手入れ、髪の手入れ、簡単な化粧などを行います。
⇒整容とは |
更衣介助 |
寝間着・下着・外出着・靴下などの着脱やスリッパや靴を履かせるなどの介助を行います。 |
移動・移乗介助 |
ベッド上での体位の交換や調整、ベッド等⇔車いすへの移乗介助、廊下・居室内の歩行介助および車いすの移動介助を行います。 |
通院・外出介助 |
病院や近隣のスーパー等への外出介助を行います。 |
起床介助 |
覚醒の確認やベッドからの立位などの動作介助を行います。(布団をたたみ押入に入れる等を含む) |
就寝介助 |
ベッド上の環境整備(シーツのしわを伸ばす、物を片付ける等)や布団をかけるなどを行います。 |
服薬介助 |
一包化された処方薬をテーブルの上に置くまたは手渡し、本人が薬を飲むのを手伝うなどの介助を行います。(服薬確認を含む) |
見守り的援助 |
見守り的援助は「自立支援、ADL・IADL・QOL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等」を指し、身体介護として算定できます。例えば、洗濯物を利用者と一緒に畳んだり、調理を一緒に行ったりなどの支援を行います。
※単なる見守りや本人が食材を切っている間にヘルパーが洗い物をするなどの場合は共同実践に該当せず、身体介護の算定はできません。 |
生活援助
生活援助とは、身体介護以外の訪問介護を指し、掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助を行うサービスです。利用者が単身の場合または同居家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが難しい場合に限り提供することができます。
介護の内容 | 概要 |
掃除 |
居室内やトイレ、風呂、卓上等の清掃、ゴミ出しなどを行います。(掃除道具等の準備・片付けを含む) |
洗濯 |
洗濯機または手洗いによる洗濯、洗濯物を干す、洗濯物の取り入れと収納、アイロンがけを行います。 |
ベッドメイク |
シーツ交換や布団カバー等の交換を行います。 |
衣服の整理 |
衣類の整理(夏・冬物等の入れ替え等)や被服の補修(ボタン付け、破れの補修等)を行います。 |
調理 |
一般的な調理、配下膳などを行います。 |
買い物代行 |
購入したい物の確認、近隣店舗への日常生活品の購入、購入品の片付けなどを行います。(※医師からの処方薬の受け取りも可) |
身体介護および生活援助に付随する業務
以下の業務は、身体介護や生活援助の事前準備として位置づけられているサービスです。この業務のみを目的として訪問することはなく、身体介護や生活援助に付随して行います。
介護の内容 | 概要 |
健康チェック |
利用者の安否確認や顔色等の確認、バイタルチェックなどを行います。 |
環境整備 |
室内の換気や室温・日あたりの調整などを行います。 |
相談援助 |
利用者の日常生活上の悩みや不安、疑問を受付け、それらに対して必要な情報を提供したりアドバイスを行ったりします。 |
通院等乗降介助
通院等乗降介助は、ホームヘルパーが自ら運転する車両に利用者を乗せて通院等の送迎を行うサービスです。
通院等乗降介助 |
車両への乗車・降車の介助や乗降前後の屋内外における移動等の介助、通院先もしくは外出先での受診等の手続き、移動等の介助を行います。 |
業務内容②:サービス提供記録の作成
2つ目の業務は、サービス訪問時の記録作成業務です。
いわゆるサービス提供記録や実施記録、訪問記録などと呼ばれる書類で、基準省令第19条に『指定訪問介護を提供した際には、提供した具体的なサービスの内容等を記録する』と定められているとおり、訪問の都度、必ず作成しなければなりません。
また、サービス提供記録は
- 介護報酬請求の根拠
- 継続的なケアを担保するチームケアの連携ツール
- 事故・苦情が発生した際にホームヘルパーの身を守る証明
としての役割を果たすとても重要な書類になりますので、記入漏れがないよう正確に作成しましょう。
記録する内容
サービス提供記録は、紙または電子いずれかの媒体を用いて運用します。
事業所によってさまざまですが、どの運用方法であるにせよ記録する内容に違いはありません。
紙媒体のサービス提供記録で運用する場合は、2枚複写式のものを用いるのが一般的で、上記イメージ図のような記録用紙に以下の内容を記入します。(消えるボールペン等は使用しないこと)
- 利用者の氏名、サービス担当者の氏名
- サービス提供日、提供時間
- サービスの種類(身体介護・生活援助(家事援助)などの別)
- 提供したサービスの具体的な内容
- 利用者の心身の状況
など
記録記入後は、利用者から確認を得た証拠として印鑑またはサインをもらいます。
なおサービス提供記録は、利用者から申し出があった場合に開示しなければならないため、控えを利用者宅に置いてある事業所ファイルに綴じ込んでおきましょう。
サービス提供時間内に記録を作成する
サービス提供記録に記入する時間は、訪問介護の所要時間に含まれるとされています。
したがって、例えば9:00~10:00のサービス計画において、10時から記録を書き始める必要はなく、終了の5分前程度から記入を開始してください。
紙媒体のサービス提供記録で運用している場合であって、書き間違いなどを訂正する際には、修正ペン・テープ等を使ってはいけません。訂正が必要な場合は、当該箇所に二重線を引いて利用者の印鑑で訂正印を押し、正しい内容を追記するようにします。
過去の記録を読んでから支援を開始する
訪問介護では、1人の利用者に対して複数のホームヘルパーが関わるケースがあり、こうしたケースにおいて肝要なのは、サービスの継続性です。他のホームヘルパーが訪問した際の情報を引き継ぎ、今回のサービスに活かす、この繰り返しにより継続した支援を提供していきます。
ですから、利用者宅へ訪問してすぐに作業に取りかかるといった支援の進め方では適切なサービスを提供できません。まずは過去の記録に目を通し、利用者の状況等を確認してから作業を開始しましょう。
また、利用者宅に連絡ノートが置いてある場合は、他職種や家族などからの申し送り事項が記されている場合がありますので、記録とあわせて必ず確認してください。
こまめに事業所に提出する
訪問介護事業所は、ホームヘルパーから回収したサービス提供記録を一枚一枚確認し、月末月初に国民健康保険団体連合会(国保連)へ提出する「介護給付費請求・明細書」やケアマネジャーへ提出する「実績記録」を作成し、請求業務を行います。
そのため事業所側からすれば、月末に当月分のサービス提供記録がすべて揃っていないと請求業務が滞ってしまい、とても困ります。
特に直行直帰で働く登録ヘルパーの場合は、記録の提出が疎かになりがちです。ひと月分の記録をまとめて提出したり、当月分の記録を次月に提出したりなどにならないよう注意してください。
提出頻度の目安としては、少なくとも週に1回程度は事業所へ立ち寄り、こまめに提出しましょう。
業務内容③:サービス提供責任者への報告
3つ目の業務は、サービス提供責任者への報告業務です。
サービス提供責任者(以下、サ責)とは簡単に言うと、訪問介護にかかるマネジメントを担うリーダー的な職種を指し、サ責の指揮のもとホームヘルパーは介護現場でサービス提供を行うこととなります。
この体制下において最も重要なのは、サ責とホームヘルパー間でたえず情報を共有し続けることです。双方向の情報共有を支援が完結するまで行うことにより、訪問介護サービスは円滑に回っていきます。
サ責⇔ホームヘルパー間の情報共有サイクル
サービス提供責任者 |
ホームヘルパー |
サービスの提供開始に伴い、各ホームヘルパーにその利用者の基本情報や訪問介護計画に定めたサービス内容・援助目標・策定の意図、支援手順、留意事項、他の専門職や家族と取り決めた内容などの情報を渡す。 | ↓ |
↓ | 受け取った情報を踏まえてサービス提供を開始。
日々の支援の中で得られた利用者の心身状態および生活環境に関する変化やサービス実施状況などをサ責へ適宜報告する。 |
各ホームヘルパーから上がってきた情報に応じて他職種や他のホームヘルパーへ報告したり、支援内容を変更調整したりする。
訪問介護計画および支援手順の変更があった場合や留意事項の変更・追加があった場合は、各ホームヘルパーへ情報を提供。 |
↓ |
↓ | 受け取った情報をサービスに反映して実施。
日々の支援の中で得られた利用者の心身状態および生活環境に関する変化やサービス実施状況などをサ責へ適宜報告する。 |
一方が欠けると訪問介護は成立しない
サ責・ホームヘルパー間の情報共有サイクルは、どちらか一方が欠けてしまうと訪問介護サービスそのものが成り立たなくなります。仮にホームヘルパーから何も情報が上がってこなければ、サ責は提供しているサービスが利用者に適したものであるか否かを判断できません。
介護現場で得た情報をサ責へ報告することは、ホームヘルパーに求められる大きな役割のひとつです。
利用者の抱える不安や悩み、困りごと、病状、身体機能および生活環境の変化、サービスの実施状況などの情報をきちんと報告し、常にサ責と情報共有を図りましょう。
それにより、サ責は利用者のニーズを的確に把握でき、その方に適したより良い支援の策定と実践ができるのです。
サ責はホームヘルパーから報告を受け取って終わりではなく、裏ではケアマネジャーや他職種へ連絡したり、スケジュール調整をしたり、訪問介護計画・手順を変更したりとさまざまな“動き”をしています。
ですから「後で連絡すればまぁ良いか」とホームヘルパーの報告が遅くなればなるほど、サ責の動き出しも遅くなってしまいます。基本的には、必要な情報はできるかぎり『その場ですぐ伝えるもの』と理解しておいてください。
業務内容④:事業所研修への出席
4つ目の業務は、事業所研修への出席です。
訪問介護事業所は、基準省令第30条2項によりホームヘルパーの資質向上のために研修を行うことを求められており、年度ごとに研修計画を策定した上で、定期的に勉強会を開催しなければなりません。
事業所によって頻度はまちまちですが、1~2ヵ月程度に1回の開催が一般的です。管理者・サ責または外部から招いた専門家が講師を務め、事業所や貸し施設などに各ホームヘルパーを招集して行われます。
事業所研修の実際
事業所研修の題材としては、虐待防止や感染症、ハラスメント等の法的に必須なテーマや、介護現場で困りがちな身体介護技術や認知症について等の身近なテーマなどがあげられ、ホームヘルパーとして働く上で必要な知識・技術の理解を深めます。
介護現場と私生活の合間を縫って都合をつけるのは大変なことかと思いますが、専門職として自己研鑽に努める姿勢がなにより必要です。事業所から研修開催の案内があれば、できるかぎり出席して積極的に学びましょう。
他のホームヘルパーと交流する貴重な機会
また事業所研修は、普段は顔を合わすことが少ない他のホームヘルパーと交流する機会にもなります。
事業所研修を上手く活用し、他のホームヘルパーがその利用者とどのように関わっているのか等を聞いてみると良いでしょう。もしかしたらベテランヘルパーならではの知恵を教えてもらえたり、自分にはない新たな視点を得られたりするきっかけになるかもしれません。
基本、単独で仕事をするホームヘルパーは、横のつながりを作りづらく孤立しやすい職種と言えます。しかし、そんな職種だからこそ、研修などの場面を通じて、意識的に他のホームヘルパーとの関係性を築くことも大切になるのです。
第2章:訪問介護員(ホームヘルパー)の6つの心得
ホームヘルパーのみなさんには、自らの職務の重要性を十分に認識し、ぜひ自信と誇りをもって業務に取り組んでいただきたいものです。そのためには、専門職としてあるべき立ち居振る舞いを自然にできる必要があります。ここで、その基礎となるホームヘルパー業務の心得を6つ紹介します。
\ 6つの心得 /
- 利用者の自立を促すこと
- 利用者の尊厳を保持すること
- 配慮のある接し方をすること
- 計画に沿ったサービスを提供すること
- 観察を怠らないこと
- チームケアの意識を持つこと
心得①:利用者の自立を促すこと
介護保険法第1条に、「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう…」と示されているとおり、訪問介護サービスは利用者の自立を促すものでなければなりません。
これを自立支援と言い、日常生活を営む上で必要な行為(ADL、IADL)について、利用者自身でできることは自ら行ってもらい、できないことのみをホームヘルパーが支援します。
また、本人自らできない行為であっても、利用者と共に行う等さまざまな工夫を凝らし、できることを増やしていけるよう働きかけるのも自立支援におけるホームヘルパーの役割です。
例えば
- 身体機能的に買い物に行けないなら…
⇒ヘルパーが買い物を代行し、利用者に購入したい物リストを作成してもらう、購入品を一緒に片付けるなど - 身体機能的に問題はないが料理をしたことがないなら…
⇒ヘルパーと利用者で献立を考え、一緒に調理(味付けや盛り付けなどを行ってもらう等)をするなど - 身体機能的に掃除機がけや床の拭き掃除ができないなら…
⇒ヘルパーが掃除機がけを代行し、利用者にクイックルワイパー等を活用し床ふきを行ってもらう、または一緒に行うなど - 認知機能的に洗濯機の使い方が分からないなら…
⇒ヘルパーが利用者に洗濯機の使い方をレクチャーして一緒に行うなど - 身体機能的に洗濯物を干す・取り込みができないなら…
⇒ヘルパーが洗濯物の干し・取り込みを行い、利用者とたたみ・整理を一緒に行うなど - 身体機能的に寝たきりであっても寝返りを打てるなら…
⇒オムツ交換時に、ヘルパーの補助のもと利用者自ら左右側臥位になってもらう、腰を浮かしてもらうなど
という具合に、利用者の状態・状況を把握し、できる行為・できない行為を見極めた上で実践します。
ホームヘルパーがなんでも代行してしまうと、利用者の身体機能や認知機能を低下させる恐れがあります。また、自らの生活を主体的に生きる意欲も失われていくでしょう。
自立支援とは利用者にその人らしい生活を送ってもらうための支援の根幹であり、まさに訪問介護サービス全体の指針・理念となるものなのです。
心得②:利用者の尊厳を保持すること
先の自立支援と同様に、介護保険第1条に「要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し…」、と明記されているとおり、ホームヘルパーは利用者の尊厳の保持に努めなければなりません。
では、尊厳とはなんでしょうか?
端的に言えば、尊厳とは年齢や性別、障害の有無に関わらずすべての人が生まれながらに持つものであり、『人間が人間として尊重されるべき存在であるという価値や権利』を指します。
例えば、みなさんは日々の生活の中で「どこに行くか」「なにを食べるか」などを自己責任のもと自分で選んで決定しているかと思います。この際、他人に選択権を奪われて勝手に決められたり、強制されたりしたらどう感じるでしょうか?きっと窮屈で自分の人生を生きているとは思えないはずです。また他にも、あなたの訴えを無視されたり、あなたのこだわりや価値観を否定されたら深く傷つくでしょう。
これは当然ながら利用者も同じです。
相手を敬い尊重する姿勢を忘れてしまうと、いつしか虐待などの重大な事案につながります。
利用者の尊厳を保持する上で大切なのは、自分がされて嫌なことを相手にしないこと。ホームヘルパーの行動や言動を利用者が受け取ったときに「嫌な気持ちにならないだろうか」と常に考えて対応にあたってください。
私生活の場に立ち入って仕事をするホームヘルパーは、利用者の住所・年齢・性別・生活歴・家族構成・病歴・心身の状態・価値観・間取り・物品の場所などあらゆるパーソナルな情報に触れることとなります。また、時には意図せず私的な情報を見聞きしてしまうこともあるでしょう。
利用者の尊厳を保持するためには、プライバシーを保護することが重要になります。人は誰もが自身の私生活を見られたり知られたりするのに抵抗があるものです。業務上で知り得た個人情報を口外しないのはもちろんのこと、個人情報が記載された書類の管理にも十分注意してください。
心得③:配慮のある接し方をすること
ホームヘルパーは、利用者の自宅にお邪魔する立場にあることを忘れてはいけません。
我が家のような振る舞いは厳禁です。仕事として適切な距離を保ち、接遇を念頭に置いて利用者と関わります。
実際の介護現場では、優れた介護技術を持っていても接遇ができていないことで利用者からの評判が悪いといったことがしばしばあります。もちろん介護技術は高いに越したことはありませんが、それだけで相手から信頼を得ることはできません。
適切な介護技術・知識に加え、目を配り・気を配り・心を配る、接遇マナーを身につけることで、はじめて一人前のホームヘルパーと言えます。
以下のポイントを参考に、自身の接遇マナーを振り返ってみましょう。
- あいさつ
利用者に目線を合わせて、聴き取りやすい声量・スピードであいさつをする。 - 身だしなみ
服装や髪、メイク、においなどに注意。身体介護場面では動きやすい服装で、危険物(アクセサリ-等)は外す。 - 表情・態度
眉間の力を抜き、柔和な表情を心がける。ダラダラしたりセカセカ動き回ったりしない。利用者宅の物品は丁寧に扱う。 - 言葉づかい
指示・命令口調、否定口調は使わず、敬意をもって適切な敬語を用いる。専門用語は相手が理解できないため平易な言葉に言い換える。 - 訪問予定時間の厳守
訪問予定時間に遅刻しない。交通事情等で遅刻する可能性ある場合は事業所へ連絡する。 - 節度のある行動
使用した物品は元の場所に戻す。無神経な発言をせず、利用者の話をしっかり傾聴する。利用者から物をもらったりあげたりしない。ヘルパー自身や他のホームヘルパーの電話番号等の個人情報を教えない。 - 声かけの徹底
支援の都度、利用者に次に何をするのか声をかける。 - 過剰なサービスは行わない
他のホームヘルパーが提供するサービスと整合性が取れなくなるため「今回だけ」など特別を作らない。 - 金銭の取り扱い
買い物代行の都度、預り金・代金・おつりをレシートとともに説明する。金銭の貸し借りや一時的な立て替えをしない。
心得④:計画に沿ったサービスを提供すること
サービス提供にあたっては、サ責からその利用者の訪問介護計画書ならびにサービス指示書の説明を受け、これに従って実施します。
- その利用者に対する援助目標や援助内容、所要時間、提供日時などを示す個別支援計画
- 訪問介護計画書に位置づけた援助内容の具体的な流れや留意点が書かれた手順書
訪問介護サービスは、原則として訪問介護計画書に記載のない内容の提供はできません。
例えば、訪問介護計画書に「買い物代行」が位置づけられていないのに、利用者から「洗剤がなくなったからスーパーで買ってきてほしい」と要求された場合、勝手に援助内容を変更して買い物に行く等の対応はできませんので注意しておきましょう。
なお、訪問介護計画に定めた所要時間を大幅にオーバーする場合や、新たなサービス内容を追加・変更する必要がある場合は、サ責へ報告・相談し、計画の見直しを提案してください。
心得⑤:観察を怠らないこと
観察とは、利用者の状態やその変化を注意深く把握することです。
日々の利用者の健康状態、心身の状態、行動、言動、食事量、排せつ状況、生活環境などあらゆる情報を把握することで、異常の早期発見・早期対応につなげます。
ホームヘルパーの“気づき”が利用者の命を救う一助となったり、消費者被害を未然に防げたりする場合もあるため、観察力は業務上の必須スキルと言えます。
ただし、漠然と利用者を見るだけで観察したつもりになっていてはいけません。また、いつも元気な利用者だからといって観察を怠ってもいけません。
ホームヘルパーの観察は、利用者宅に訪問した時点で始まります。五感をフルに研ぎ澄まし、インターホン越しの声色や玄関を開けた瞬間のにおい、聞こえてくる物音、対面時の表情、足取り、室内の状況など、些細な変化も見逃さずしっかり情報を収集しましょう。
心得⑥:チームケアの意識を持つこと
利用者の在宅生活は、ケアマネジャーを中心に、主治医や看護、デイサービス等のさまざまな専門職により支えられており、ホームヘルパーだけが関わっているわけではありません。
それぞれの職種が専門的な見地から得られた情報を交換し合い、チームとなって支援していきます。これをチームケアと言い、ホームヘルパーも利用者を囲むチームの一員であることを自覚しましょう。
実際には、担当ケアマネジャーを介して他職種等と連携しますので、ホームヘルパーは他の専門職と顔を合わせる機会が少ないかもしれません。
しかし、利用者にもっとも長く接するホームヘルパーの情報は、他職種からしてみればとても貴重です。
訪問時に気づいた利用者の変化等は、どのような些細な情報であってもサ責へ報告してください。そして、サ責からケアマネジャーへ情報提供してもらい他職種等と共有を図りましょう。
以下に、訪問介護と連携が多い職種・サービスを列記します。
職種 | 概要 |
ケアマネジャー |
居宅介護支援事業所に属する専門職。介護保険サービスと利用者をつなぎ、ケアプランの作成やサービス事業者との調整など総合的なマネジメントを行います。利用者の関する内容(状態変化やサービス内容に関すること等)は、基本的にすべてケアマネジャーへ報告し、常に連携を図ります。 |
医師・歯科医師 |
診断にもとづく治療方針の決定、健康管理および指導を行います。心身の変化や健康状態に関することを相談し助言をもらいます。医師・歯科医師より日常生活上の指示がある場合は、指示を守ってサービスを提供しましょう。 |
訪問看護 |
訪問看護ステーションや病院・診療所から派遣された看護師が、療養上のサポートや診療の補助、医療処置を行います。医療ニーズが高い利用者の場合、状態変化時や緊急時などに相談し助言をもらいます。 |
訪問リハビリ |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が自宅に訪問し、利用者の心身機能の維持向上・日常生活の自立を図るために理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行います。
身体機能に関することを相談し、助言をもらいます。 |
デイサービス |
施設への送迎、食事・入浴・排泄介助、レクリエーション、機能訓練などを行う通所サービスです。デイサービスとの連携で、自宅外での利用者の様子を知ることができます。 |
居宅療養管理指導 |
薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士等が自宅へ訪問し、必要な指導などを行います。
|
福祉用具専門相談員 |
福祉用具貸与・販売事業所に所属している専門職で、福祉用具に関する相談や選定方法・使用方法の指導、用具の点検などを行います。 |
第3章:訪問介護の範囲(できること・できないこと)
訪問介護は、介護保険制度において給付対象となるサービス範囲が定められています。
仮に保険給付として不適切なサービスを算定してしまうと受領金の返還を求められる可能性があります。そのためホームヘルパーは、利用者からお願いされたからといって安請け合いしないよう注意するとともに、訪問介護の対象範囲を理解しておくことが必要です。
訪問介護で「できること」は、先の「業務内容①:サービス訪問」で説明したとおりですので、本章では「できないこと」を中心に解説します。
訪問介護の対象とならないサービス
※上記のうち「日常生活の範囲を超えるサービス」については、自治体によって日常生活の範囲の解釈が異なります。A市では対象となるがB市では対象外といった地域差が多々ありますので、実際の運用にあたっては市町村等に可否を確認してください。
身体介護
- 健康チェック・環境整備・サービス提供記録の作成等のみを目的としたサービス
- 散髪、カミソリによる髭剃り
- 道路運送法上の許可・登録を受けていない事業所であって、事業所またはホームヘルパーが所有する自動車に利用者を同乗させて外出するサービス
- 通院介助など外出介助時の交通機関乗車中において、気分の確認等を行わず、単に利用者の横に座っている時間
- 転院の付き添い
- 理美容院の付き添い
- 法事や墓参りの付き添い
- カラオケやパチンコ等の趣味・娯楽に関する目的地への付き添い
- リハビリを目的とした歩行訓練
- 自立生活支援のための見守り的援助として位置づけられていない散歩
- 自立生活支援のための見守り的援助における単なる散歩
- 自立生活支援のための見守り的援助において、家事を共に行う場合であって、ホームヘルパーと利用者が別々の行為をしている場合
- 自立生活支援のための見守り的援助において、安全を確保などを行わない単なる見守り
- 服薬管理(一包化されていない処方薬を袋から取り出して小分けし、セットする等)
生活援助
- 利用者以外のものに係る洗濯 、 調理 、買い物 、布団干しなど
- 普段の生活で利用者が主として使っていない居室等の掃除
- 来客の応接 ( お茶 、食事の手配など)
- 自家用車の洗車・清掃など
- 大掃除 、 窓のガラス磨き 、床のワックスがけ
- 室内外家屋の修理、ペンキ塗り
- 植木の剪定等の園芸
- 草むしり、花木の水やり
- 本人留守中の掃除など
- 家具、電気器具等の移動、修繕、模様替え
- 正月や節句等の特別な手間をかけて行う調理
- 生活圏外の店舗での買い物
- 雑誌、タバコ、お酒など趣味・娯楽品の買い物
- お中元やお歳暮などの贈答品の買い物
- 犬の散歩などペットの世話
- 単なる話し相手
- 本人に代わって金銭を引き出す行為や契約行為
※上記は、厚生労働省が一般的に介護保険の生活支援の範囲に含まれないと考えられる事例を示した「老振第76号」を参考に作成しています。
※障害福祉サービスの居宅介護および重度訪問介護については老振第76号を準用しないとされているため、同等の取り扱いをしないようお願いします。
医療行為の範囲
医療行為(医行為)とは「医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼすおそれのある行為」を指し、原則、ホームヘルパーは行えません。
ただし、平成24年4月から指定研修および実地研修を修了したものに限り、以下の医療行為を実施できることになりました。
[対象となる医療行為(実施できる特定行為)]
- 喀痰吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)
- 経管栄養(胃ろう又は腸ろう、経鼻経管栄養)
[実施者]
- 介護福祉士 (平成28年度以降の合格者が対象)
- 介護職員等で一定の研修を修了したもの
医療行為ではないとされている行為
厚生労働省の通知「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」に『原則として医療行為でないと考えられる行為』が示されています。
以下は、この解釈通知から一部抜粋してまとめた一覧です。
爪切り |
爪や周囲に異常がない場合の爪切り・爪の手入れ(基礎疾患に糖尿病がある場合を除く) |
---|---|
耳掃除 |
耳垢の除去(耳垢塞栓(耳垢が溜まり耳の穴をふさいでしまっている状態)の除去を除く) |
口腔ケア |
歯ブラシや綿棒による、歯・口腔粘膜・舌の汚れの除去 |
処置等 |
|
測定 |
|
服薬等 |
※医師の処方を受けた薬であって、薬剤師の服薬指導や看護師の指導のもと介助すること |
その他 |
|
できないことを利用者に依頼された場合の対応
ほとんどの利用者は、これまで紹介してきた訪問介護の範囲をよく理解していません。契約時に説明していても忘れてしまう場合が多く、悪気なく訪問介護対象外のサービスを依頼してくることがあります。
この場合は、ホームヘルパーから介護保険の対象とならない旨を丁寧に説明します。「できません!」と突っぱねるような伝え方はせず、利用者が何に困っていて生活にどのような支障があるのか、話しを最後まで傾聴した上で断ることが重要です。
利用者なりに困り事があるからホームヘルパーを頼っているわけです。その気持ちを無下にしないよう応対してください。加えて、依頼内容によっては自費サービス(介護保険外サービス)で対応できる場合もありますので、サ責に連絡して代わりとなるサービスがあるかを確認してもらうと良いでしょう。
なお、丁寧に説明しても利用者に納得してもらえない場合は、その場の話を一旦切り上げ、サ責から改めて説明してもらってください。
第4章:認知症の利用者への対応
認知症とは、脳の病気や障害等により、記憶力や学習能力、思考力、判断力などの認知機能がが低下し、日常生活に支障をきたす状態です。(こころの情報サイトより参照)
その方が人生の中で培ってきた経験と記憶、知識が徐々に失われ、これまでと同じように暮らすことが難しくなります。認知症だからといって何もできなくなるわけではありませんが、その不安から同じことを何度も聞いたり、大きな声で怒ったりすることがあり、日常生活の支援が必要となります。
認知症の代表的な症状
認知症には、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症など色々な種類のものがありますが、その症状は「中核症状」と「周辺症状(行動・心理症状:BPSD)」に分けられます。
概要 | 症状 | |
中核症状 | 記憶障害を中心に認知症の方であれば必ず現れる症状。程度の差はあるが、疾患が進行するにつれ悪化する傾向あり。 |
など |
周辺症状 | 中核症状の二次症状として現れ、身体の不調や介護者の不適切なケア、本人のストレス、不安感、環境の変化などから引き起こされる。
人によっては目立った症状が見られない場合もあり、また重度の認知症だからといって必ずしも周辺症状が現れるわけではない。 |
など |
認知症の方との基本的な関わり方
否定しない |
認知症の方々は認知面に障害があるとはいえ、私たちには計り知れない人生経験を積み、多くの困難を乗り越えてきたという自負を持っています。たとえ繰り返し何度も同じ話をしてきたとしても、無視したり適当にあしらったりせず、丁寧に応対してください。
また本人の置き忘れ、しまい忘れにより「ヘルパーが盗った」と疑われてしまう場合があります。ホームヘルパーからすれば盗ってないと言いたくなりますが、この場合であっても否定はせず、まずは本人の「ここにしまったはずなのにない」という感情に寄り添うことが重要です。そして「一緒に探しましょう」などと伝え、本人自らが見つけられるように手助けします。 |
---|---|
4つの基本ケア |
認知症の方は、脱水や低栄養、便秘などの身体の不調が原因で、興奮して歩き回ったり怒鳴ったりすることがあります。こうしたケースの場合、問題行動に対してアプローチする前に、以下4項目の視点からケアを行います。
|
共に過ごす関わり |
認知症の方は、心もとない記憶の中で生きており常に不安を抱えています。ある人は、「自分は何者なのか」と苦しみ、アイデンティティが崩れていくように感じているかもしれません。
こうした言いようのない漠然とした不安感は、時として周辺症状を引き起こす場合があり、それゆえに孤独にさせない関わりが大切です。サービス提供中は、作業ばかりに目を向けるのではなく、できる限り声をかけて本人の話を聴いたり、徘徊に付き添ったり、ただ一緒にいるだけでも構いませんので「共に過ごす」を意識して関わってみてください。 |
役割づくり | 本人の「好きなこと」や「こだわってきたこと」を探り、それをもとにして日常生活の役割づくりを行います。認知症のあるなしに関わらず、人は「役割」を持つことで人生に意味を見いだし、生きる活力になります。何に興味・関心を示すのか反応を見て、本人のできることを手伝ってもらうなどでサービスに落とし込むと良いでしょう。 |
本人のペースに合わす |
認知症の方は、歩く・食べる・着替える・排せつする、といった日常動作がうまくできず、時にはホームヘルパーのみなさんを苛立たせる場面があるかもしれません。とくに次の訪問先が控えている場合は、「お願いだから早くして…」と思うこともあるでしょう。
しかし、どのような状況であるにせよ利用者の行動を急かしてはいけません。急かされると興奮しやすくなることがありますので、ゆっくり待つ関わりが大切です。サービス時間の超過が目立つのであれば、利用者の行動を速めようとするのではなく、訪問時間や訪問ルート、サービス内容などの見直しをサ責と相談してください。 |
生活環境の整備 |
認知症の方は、記憶障害や見当識障害により家の中であっても迷子になることがあります。また、注意力の低下から転倒しやすくなるため、安心・安全な生活空間を整えることが必要です。手すりの設置や段差の解消、動きやすいスペースの確保など、転倒リスクに考慮し、加えて本人にとって「わかりやすい」環境を意識して整備しましょう。
例えば、トイレの場所が分からない方であれば、ひと目で分かるように「お手洗い」や「便所」と書いた張り紙を貼ったり、日付や季節が分からない方であれば、カレンダーに印をつけて一緒に確認したり、季節感のある飾りを置いたりなど工夫します。 |
行動の原因を探る |
暴言・暴力や徘徊、介護拒否などの認知症における周辺症状は、基本的に何らかの原因があって出現するものです。言い換えれば“その人なりの理由”がどこかにあるため、問題行動に至ったその理由を考えます。
その行動は、「いつ」「どこで」「どのような状況で」現れたのか?また、逆にどのような状況下でその行動が見られないのか?周辺症状が現れる時間や場所、状況を観察し、出現するきっかけを探りましょう。それにより、対応の方針が定まり、適切にケアすることで周辺症状の緩和につながります。 |
※以下のコラムで、認知症の知識や関わり方、ケースごとの対応方法について詳しく解説していますので、こちらもあわせて参考にしてください。
第5章:障害者支援の理解
訪問介護事業所の中には、障害者総合支援法を根拠とする障害福祉サービス(居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、移動支援)も一体的に運営している所が多いかと思います。
この場合、ホームヘルパーは高齢者だけでなく障害者の方々への支援も行うことになるわけですが、双方は制度上の提供範囲や支援の在り方がまったく異なるため注意してください。
根拠法が異なるということは、ホームヘルパーに求められる役割も変わるということです。
本章では、介護保険サービスと障害福祉サービスを混同して取り扱わないように、障害者支援の基本的な姿勢や考え方を解説します。
介護保険サービスと障害福祉サービスの「自立観」の違い
障害福祉サービスを提供するにあたり、前提として理解しておくべきなのは「自立」の捉え方の違いです。
介護保険サービスでの自立は、「リハビリテーションやサービスの利用により、介護予防を強化し要介護状態の維持・改善を図ること」です。そのために訪問介護では、日常生活を営む上で必要な行為(ADL、IADL)について、本人のできることを減らさず、可能なかぎり増やしていけるような支援を目指します。(先の「心得①:利用者の自立を促すこと」で述べたとおり)
一方で、障害福祉サービスでの自立は「自らの生活を自己決定し、介護や支援を利用して、住み慣れた地域等で自分らしい生活を実現すること」です。端的に言えば、『自己決定』と『自己実現』が可能な生活を自立と位置づけています。
したがって、障害福祉サービスにおける自立支援とは、本人が自ら選んで決められるような土壌を築き、本人の自己決定を下支えすることにより、本人の望む生活の実現を促していく支援ということになります。
障害福祉サービスは、介護保険サービスのように身体機能等の維持・改善を基本スタンスとしていませんので、この点を混同せず障害者の方々への支援を行いましょう。
障害者は、ADLやIADLといった生活行為を遂行する機能がある程度のレベルで止まってしまいます。ですから、高齢者介護とは違って基本的に身体的な自立を求めません。
介護サービスを利用するなど誰かの手助けを受けながらでも、「何事も自分で決めて、社会に属す(参加する)」ことが障害者にとっての自立なのです。
意思決定支援
「意思決定支援」は、障害者本人が自分の人生を自分で決めていくために欠かせない支援です。
どれだけ重い障害をもっていても意思はあり、自らの意思を表現することが難しい方であっても、本人の思いが反映された生活を送ることができるように支援します。
判断能力を評価する
本人の判断能力は意思決定に大きな影響を与えます。
日常生活や社会生活において、理解・判断能力の程度を適切に評価した上で支援することが必要です。
些細なことでも本人に選んでもらう
人の営みは、「何を食べるか」「何を着てどこに行くか」「どこの店舗で何を買うか」「いつお風呂に入るか」など意思決定の連続です。当たり前すぎて、普段の生活で意識することがないかもしれませんね。
ですが、こと障害者支援となると、良かれと思ってホームヘルパーが本人に代わって選んでしまいがちと言えます。例えば、買い物代行の場面で「いつも食べてる総菜を買ってきますね。」と、本人が好きないつもの商品を買ってはいませんか?
確かに本人の好きなものではありますが、もしかしたら「今日は別のものを食べてみたい」と思っていたかもしれません。それなのにも関わらずホームヘルパーが決めてしまうと、本人の自己決定を奪ってしまいます。また他者へ意思を伝えようという意欲も育まれません。
支援の中で何かを決定するときは、どれだけ些細なことであっても、必ず本人の意思を確かめて一緒に決めてください。また、一度決めたことでも時間経過とともに変化していくものですので、定期的に再確認しましょう。
自己決定できるように工夫する
本人が自己決定する際に必要な情報の提供時には、本人が理解できるように工夫して説明することが重要です。
例えば写真や絵、図などを用いて説明したり、選択肢が多く選ぶことが難しいようであれば選択肢を絞ったりするなど、本人が自ら選択できるようなあらゆる創意工夫を行います。
不合理であっても本人の選択を尊重する
支援者側からすると「ん?それはどうだろう?」と不合理に思われる決定でも、他者への権利を侵害しないのであれば、その選択を尊重するように努める姿勢が大切です。
例えば、疾患により主治医から食事制限を指示されているのに、制限されているものを作ってほしいと意思表示があったとします。こんなとき「先生からダメと言われているので…」と言ってしまいがちですが、「どの程度なら食べても問題ないのか、似たような食べ物で疾患に影響のないものを作れないか」と検討・工夫する姿勢を求められます。
他にも、生活を圧迫するのが分かっているのにギャンブルがしたいと意思表示があったとしても、本人の意思を尊重し「どの程度の金額までならギャンブルに使っても問題ないかを一緒に考える」などの関わりが必要です。
障害の程度によっては、どうしても本人の意思決定や意思確認が難しい場合もあるでしょう。このようなケースでは、本人をよく知る関係者が集まって、これまでの本人の生活の様子、表情、行動などの情報を集め、根拠を明確にしながら本人の意志を推定します。
合理的配慮
平成28年に施行された障害者差別解消法により、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思表明があった場合には、その内容に応じて、過重な負担にならない範囲で必要かつ合理的な配慮を行うことが求められることになりました。
合理的配慮がなされないことは、障害者への差別であるとされており、先の意思決定支援においても、本人の自立を促進することにおいても非常に重要な便宜、取り組みになります。
合理的配慮の例
合理的配慮を適切に実施するためには、その利用者の障害特性を十分に理解しておかなければなりません。
また、合理的配慮はあくまで本人の意思表明にもとづくものであり、本人が望まない配慮は合理的とは言えず「過剰」と表現できます。その配慮が本人にとって単なるお節介にならないよう注意しておきましょう。
以下は、障害種別ごとの合理的配慮の一例です。
身体障害(視覚障害) |
|
---|---|
身体障害(聴覚障害) |
|
身体障害(肢体不自由) |
|
知的障害 |
|
精神障害 |
|
発達障害 |
|
第6章:緊急時の対応(事故・急変)
訪問介護の緊急時とは、利用者の急変や介護事故などを指します。
身体機能の低下や疾患等により、高齢者や障害者はいつなんどき緊急事態にみまわれてもおかしくありません。こうした緊急時においてホームヘルパーには、事業所や医療機関への連絡、救急搬送など状況に応じた判断と対応を求められます。
施設介護とは異なり単独で仕事をする訪問介護では、そばで誰かがフォローしてくれるわけではありません。緊急時に冷静かつ適切な対応できるよう常日頃から準備しておきましょう。
慌てず落ち着いて状況を確認する
サービス中に緊急事態が発生した場合は、まず慌てず落ち着いて状況の把握・確認を行います。
- 意識の有無、意識レベル(反応が薄い、ぼーっとしているなど)、自覚症状はあるか
- 痛みの有無、痛みの個所、痛みの質(刺し込む痛み、押さえると痛いなど)、痛みのパターン(強くなったり弱くなったりするなど)、いつから痛みがあるのか
- 出血量、出血部位はどこか?
- 嘔吐量、嘔吐物の内容
- 平常時との違い
- 体温、血圧、脈拍
- 排便・排尿状況、水分・食事状況、服薬状況
など
上記項目をケースに応じて確認し、意識がないなど明らかに救急搬送すべき状況であれば119番へ、そうではない状況であれば主治医や訪問看護などの医療機関に連絡して指示を仰ぎます。(あわせて事業所へも必ず連絡してください)
急変の状況によっては応急処置を求められる場面もあります。
例えば「喉に食べ物が詰まった」など窒息が疑われる場合ではハイムリック法や背部叩打法、「意識障害を起こしている」場合では気道の確保や回復体位、「出血している」場合ではガーゼを当てて圧迫止血、など状況に応じた処置が必要です。
※訪問介護で想定される緊急時の応急処置については、ヘルパー会議室より販売中のサ責白本の特典にて紹介していますので、良ければ購入をご検討ください。
医療機関へ報告する際の注意点
主治医や訪問看護などの医療職へ連絡する場合は、利用者の状態をありのまま報告します。
ただし、話がだらだらと長く要領を得ない説明では上手く伝わらず、医療職が適切な判断を行なえません。
ポイントは「相手が知りたい情報を過不足なく伝える」ことです。例えば、以下のように要点を先に伝え、後から情報を補足すると判断しやすくなります。
- 「○○ヘルパーステーションの○○と申します。●●さんから腹痛の訴えがあり指示をいただきたいです。痛みの個所は右下腹部で、刺し込むような強い痛みがあるようです。痛みは昨日から続いているようで、2~3時間おきに強い痛みを繰り返していると仰っています。また1週間程度、便秘気味なようでほとんど便が出ていないとの事なのですが…」
救急搬送の手順
- STEP1119番に通報
119番に通報すると「火事(消防)ですか?救急ですか?」と問われるので「救急です」と答え、利用者の住所、利用者の状態、自身がホームヘルパーである旨を伝えます。
- STEP2救急車が到着する
救急車が到着したら、救急隊員に下記を伝えます。
- 利用者の現在の症状(通報時との違いがあるか)
- 急変時の状況(何をしていて急変したのか)
- 既往歴
- 服用している薬
- 搬送指定先の病院(あれば)
- かかりつけの病院
- 家族の連絡先
- ケアマネジャー、訪問介護事業所の連絡先
- STEP3救急搬送
搬送先の病院が決まれば、救急搬送されます。
この際、救急隊員から「ヘルパーも同乗してもらえないか」と依頼される場合がありますが、同乗する・しないは事業所の取り決めに従ってください。ただ、基本的に「同乗しない」と取り決めている事業所が多いです。(仮に救急車に同乗したとしてもその時間はボランティア(報酬請求できない))
緊急連絡票を確認しておく
緊急時の対応手順・連絡順序はケースによって異なります。
利用者ごとに上記イメージ図の「緊急連絡票」が作成されていますので、必ず事前に確認してください。
例えば、救急搬送先の病院が決まっているケースにおいて、別の病院へ搬送してしまうと二次トラブルに発展してしまいますので注意しておきましょう。
第7章:感染症対策
感染症とは、病気のもととなるウィルスや細菌、寄生虫などが人の体内に侵入して、さまざまな症状が現れる病気の総称を指します。
ホームヘルパーが相手にする利用者は、基礎疾患や加齢、障害などにより抵抗力が落ちている方々であり、ひとたびウィルス等に感染して発症すれば、命に関わるケースが少なくありません。
加えて、各訪問先を順次回る訪問介護という業態においては、訪問先から訪問先へと集団感染になりうる可能性があるため、病原体を訪問先に持ち込んだり、訪問先で拡げたり、訪問先から持ち出したりしないよう細心の注意を払う必要があります。
決して軽んじることなく感染症予防に取り組み、感染症が発生した場合には、最小限に食い止められるよう適切な対応を行いましょう。
感染症が成立する3つの要因
感染症は、「病原体(感染源)」「感染経路」「感受性宿主(感染のしやすさ)」の3つの要因が揃うことで成立します。したがって、これら3要因を取り除いていくことが感染症対策の基本となります。
感染症対策の基本
感染症対策の基本は、「スタンダード・プリコーション(標準予防策)」「感染経路別予防策」「利用者・ヘルパーの健康管理」を徹底することです。
スタンダード・プリコーション(標準予防策)
スタンダード・プリコーション(標準予防策)は、利用者の感染症の有無にかかわらず、血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜などはすべて感染源とみなし、感染する危険性があるものとして取り扱う対応の方法です。
具体的には、以下を実施します。
- 手指衛生(石鹸と流水で1ケア1手洗いの励行、手指の消毒)
- 手袋の着用(一度着用した手袋を連続して使用しない、手袋を外した後は手洗い・消毒を行う)
- マスク、エプロン、ガウンの着用
- 環境消毒(器具、手すり、とって、机、床、リネン等の消毒)
感染経路別予防策
スタンダード・プリコーション(標準予防策)と併せて、感染経路に応じた予防策を行います。
これを感染経路別予防策と言い、感染が疑われる症状がある場合には、医師による診断の前であっても、すみやかに予防措置を図ることが重要です。
感染経路 | 概要 | 対策 |
飛沫感染 | 会話やくしゃみ、咳などをしたときの飛沫を直接吸い込むことで感染する。飛沫は1m程度(くしゃみや咳の飛沫は2m程度)で落下し空中を浮遊し続けることはない。 | 不織布マスクの着用、室内の換気、環境消毒など |
空気感染 | 病原体が感染者の咳やくしゃみをしたときの飛沫と共に体外に排出され、その中に含まれる微粒子が空気中に漂い、それを吸い込むことで感染する。 | N95マスクの着用、室内の換気など |
接触感染 | 感染者との接触や、病原体に汚染されている物を触ることで感染する。病原体が付いた手で、目や鼻、口、傷口などを触ることで病原体が体内に侵入して感染が成立する場合が多い。 | 手洗い、手指の消毒、環境消毒など(感染源に触れる場合は、手袋・ガウン等を着用する) |
利用者・ヘルパーの健康管理
感染症対策では、日々の訪問業務の中で利用者の健康管理を適切に行い、「なんとなく様子がおかしい」「いつもと比べて口数が少ないな」など、普段との違いにいち早く気づくことが重要です。
また、ホームヘルパーが感染者となった場合、ホームヘルパーを介して利用者や家族、他の職員へ感染が拡大するおそれがありますので、ワクチン接種や日頃から栄養・睡眠を十分にとるなど自身の健康管理にも努めましょう。
※以下のコラムで、感染症・食中毒の対策についてより詳しく解説していますので、こちらもあわせて参考にしてください。
第8章:訪問介護員(ホームヘルパー)自身の健康管理
多種多様な利用者への対応は、みなさんが思っている以上に心身への負担が蓄積しやすいものです。
体重の重い方への身体介護やハラスメント行為をしてくる方への対応、作業環境が整っていないお宅での介助など、きれいごとでは済まされないストレスが降りかかってきます。
こんな状況の中でも、いきいきとホームヘルパーの仕事を続けていくためには、正しい健康管理の知識を身につけて自身の健康状態に気を配ることが必要です。
腰痛予防対策
腰痛というと、多くの方は排せつ介助や移動・移乗介助などの身体介護が主な要因に思い浮かぶのではないでしょうか。しかし、掃除や洗濯、調理といった生活援助にも腰痛リスクが潜んでおり、必ずしも身体介護と比べて作業負担が小さいとは限りません。
生活援助の方が提供回数が多いケースもたくさんありますので、身体介護だけでなく家事の場面でも腰痛リスクに注意し予防に取り組みましょう。
適切な姿勢で重い物を持ち上げる | 重い物を持ち上げるときは、できるだけ身体を対象物に近づけて重心を低くする姿勢をとります。次に片足を少し前に出してしゃがむように抱え、膝を伸ばすように持ち上げましょう。
それにより、腰ではなく脚・膝の力で持ち上げることができますので、不良姿勢を回避しやすくなり、腰の負担が軽減されます。 |
---|---|
掃除機をかけるときの工夫 | 掃除機をかけるときは、中腰や前かがみの姿勢となるため腰に負担がかかります。
このような姿勢が頻回にある場合は、こまめに姿勢を変え、できる限り直立に近い姿勢で行ったり、手を膝にあてたりして自分の身体を支えると腰の負担を軽減できます。 |
適切な身体介護技術を身につける | 排せつ介助や入浴介助、移動・移乗介助などの身体介護では、何かしらの場面で腰への負担が生じます。適切な自立支援介護の実践方法やボディメカニクスを活用した移乗・移動介助の方法を学んだり、サ責に同行訪問をしてもらってその利用者に適した介助方法や福祉用具の活用方法のレクチャーを受けるなどにより技術・知識の習得に努めましょう |
冷え対策 | 「冷え」は腰痛のリスクを高めます。冷たい水を使う際は、ゴム手袋を着用する、貼るカイロ等を使用する、足を冷やさないように厚手の靴下を着用したりスリッパを持参したりする、などの対策を行うと良いでしょう。 |
身体のメンテナンス | 作業開始前後や帰宅後に腰痛予防体操やストレッチングを行う、帰宅後にゆっくり入浴して十分に睡眠時間を確保するなど自身の身体を労り、次の日に疲れを残さないようきちんとメンテナンスしましょう。 |
メンタルヘルス
真面目で責任感が強い人ほど自分の限界を超えて無理をしてしまう傾向があり、バーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクを高めます。ストレスを溜め込んでしまわないよう以下のポイントを意識してみてください。
自己覚知 | 自己覚知とは、簡単に言うと「自分の性格を客観的に理解する」ことです。自分の価値観や考え方の傾向、物事の捉え方の癖などを深く知ることで一時の感情に捕らわれることなくコントロールできるようになります。
自己覚知には以下のような方法があります。
|
---|---|
俳優になったつもりで演じる | 利用者によっては相性の合わない方もおり、我慢し続けるとストレスが蓄積します。
人と人が関わる仕事である以上、相性の問題を避けることはできませんので、ホームヘルパー自ら合わせに行く姿勢が大切です。 その利用者が受け入れやすくなる役柄を設定し、例えば「利用者が何かを教えたくなるお孫さんのような役柄」、「利用者から話しかけやすいご近所さんのような役柄」、「利用者が頼りたくなるハキハキした好青年のような役柄」、といった具体に俳優になったつもりで演じてみましょう。 |
上司や同僚に相談する | サービスで不安や疑問、悩みを感じたら、我慢せずすぐにサ責や管理者に相談してください。
また、ホームヘルパー自身の気持ちを分かち合えるのは、同じ仕事に携わる同僚ヘルパーです。問題解決にならなくても、悩みや不安を吐き出して共有するだけで気持ちが楽になりますので、日ごろから事業所に顔を出し、同僚ヘルパーとの交流を深めて相談しやすい環境を作っておきましょう。 |
私生活を充実させる | 私生活を充実させて仕事上のストレスを上手く発散しましょう。
好きな映画やドラマを見たり、部屋の模様替えをしてリフレッシュしたり、また思い切って今までできなかった新しいことにチャレンジしてみる等、何かに没頭できる時間を意識的に作るようにしてください。 大切なのは“素の自分”に戻ってリラックスできる時間をきちんと設けることです。 |
自分を褒める習慣をつける | 自分自身を過小評価し、「上手くできないのは私のせいだ」と追い詰めてはいけません。
些細なことでも構いませんので、一日に1回は頑張っている自分のことをほめてあげましょう。 |
アンガーマネジメントを習得する | アンガーマネジメントとは、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。怒りは誰にでも起こりうる自然な感情ですが、その怒りに振り回されると精神的に疲弊してしまいます。
以下のコラムでアンガーマネジメントの手法を詳しく解説しています。 |
以下のコラムで自己覚知の方法などを詳しく解説していますので、こちらもあわせて参考にしてください。
第9章:訪問介護員(ホームヘルパー)に関するよくある質問
Q1:訪問時の必需品(持ち物)は何がありますか?
提供するサービス内容にもよりますが、一般的な持ち物としては以下があげられます。
- 身分証(※1)
- サービス提供記録
- 筆記用具(シャチハタの印や認印を含む)
- ディスポーザブル手袋(※2)
- アルコール消毒液(※2)
- タオル
- 入浴介助用エプロン
その他、衛生環境が整っていないお宅へ訪問する場合は、替えの衣類や靴下、スリッパなどを持参すると良いでしょう。
※1)運転免許証やマイナンバーカード等のことではありません。顔写真つきの訪問介護員としての身分を証明する証明書であり事業所が準備します。
※2)基準省令により事業所が用意しなければならないと定められていますので、支給されたものを持参してください。
Q2:訪問先への移動手段は?
自転車やバイク、自動車による移動が一般的です。中には電車を使う場合もあります。
事業所の方針や提供エリアの範囲、地域性によりさまざまですので、所属する事業所の取り決めに従ってください。
Q3:予定時間より早く仕事が終わったら帰っても良いですか?
訪問介護計画に位置づけたサービス内容を提供した上で、早く終わったのであればその時点で切り上げても制度上の問題はないと考えられます。ただし、訪問介護計画の見直しを検討する必要があるため、必ずサ責や管理者に連絡報告してください。(サービス提供記録には実際の時間を記入すること)
また、利用者によってはホームヘルパーが早く帰ることで苦情につながる場合や、退室後に事故が発生した場合の責任の所在などの問題もありますので、残りの時間をコミュニケーションにあてる等の検討も行ってください。
⇒訪問介護で時間が余った場合「ヘルパーは早く帰っても良いの?」算定上の注意点を解説。
Q4:訪問したら不在(留守)だった場合はどう対応すれば良いですか?
訪問介護は、利用者が不在の際にサービス提供をすることができません。
インターホンを鳴らしても応答がない場合は、事業所へ連絡して指示を仰ぎます。
一般的には、その場で15分程度待機し、それでも応答がない場合は不在キャンセルとなります。なお、この場合は、ホームヘルパーが訪問した証明として「〇時〇分に訪問しましたが不在だったため帰ります」などと記載したメモ用紙をポストなどへ入れておいてください。
また、利用者が中で倒れている等の気配がある場合は、大家や物件の管理会社へ連絡を入れ、警察等と一緒に対応するようにしましょう。
⇒訪問介護でよくある「本人不在」。留守時はどうする?対応方法を解説。
Q5:ヘルパーを交代してほしいと言われて落ち込んでいます…
適切に仕事をした上で、交代依頼があったのであれば気にする必要はありません。訪問介護では、ヘルパーの交代依頼はしばしばある話しですし、100人中100人に好かれる人はこの世にいません。
ただし、交代依頼が度重なる場合は、ホームヘルパー自身の振る舞いに問題があると考えるべきでしょう。サ責からフィードバックを受け、交代理由をしっかりと受け止めて至らない点の修正に努めてください。
Q6:利用者とのコミュニケーションが苦手です…上手く話す方法はありますか?
上手く話そうとするのではなく、聞き上手になりましょう。
コミュニケーション能力が高いホームヘルパーは、総じて利用者の話を聞くのが上手いです。聞き上手になるためのポイントは、利用者の話しに適切な相槌をうつこと。誰でもそうですが、リアクションが薄い人には話そうという気持ちになりません。
相槌は「しっかりと話を聞いています」「あなたの話に興味がありますよ」という合図みたいなものであり、利用者が「自分の話に興味を持ってくれている」と感じることができれば、ホームヘルパーが話さなくとも利用者から自然に話しかけてくるようになります。
⇒訪問介護でのコミュニケーションが上手くいく5つのテクニックと心構え
さいごに
訪問介護員(ホームヘルパー)業務マニュアルは以上です。
かなりの長文となってしまいましたが、ホームヘルパーとして働く上で必要な内容は、本マニュアルにすべて盛り込んでいますので、繰り返し読んで学んでくださいね。
また当サイトでは初心者のサービス提供責任者向けに業務マニュアルを公開しています。ホームヘルパーからキャリアアップしたいと思っている方は、ぜひこちらもチェックしておきましょう。